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グランプリ・名古屋2014

観戦記事

第11回戦:村瀬 浩司(愛知) vs. 山本 賢太郎(埼玉)

By Masashi Koyama

 グランプリにおいて初日を突破するためには、敗戦はたったの2度しか許されない。そして、参加人数が1000人をゆうに超える昨今のグランプリにおいてはトップ8入賞のラインもこれまた2敗であることが多い。つまり、2敗で何とか初日を抜けたプレイヤーたちにとって、2日目は全ての戦いが負けると夢絶たれる背水の陣なのだ。

 そんな2敗の崖っぷちラインから今回フィーチャーマッチに選ばれたのは、昨年のプロツアー『テーロス』で入賞するなど、日本を牽引するトッププレイヤーである山本 賢太郎(埼玉) と村瀬 浩司(愛知)の一戦だ。

 今期プロポイントを36点保持し、念願のプラチナ・レベル確定まであと3点だという山本にとって、トップ8の座は喉から手が出るほどに欲しいものだろう。一方の村瀬にとっても、負ければグランプリでの決勝ラウンド進出の目がほぼ無くなるだけに、相手が誰であれ一歩も引くことはできない。

ゲーム1

 後手の村瀬が1、2ターン目に《アクロスの十字軍》、《死呻きの略奪者》というグッドスタート。マリガンした山本も《オレスコスの太陽導き》でとりあえずクリーチャーは召喚するものの、《》《平地》で土地がストップしてしまう。村瀬は3ターン目こそ追加の戦力が無いものの、山本の土地が止まり続けているのを見ると、《稲妻の一撃》で《オレスコスの太陽導き》を除去すると、《ミノタウルスの頭蓋断ち》を加え一挙7点! 事故っているならばその隙にとダメージを重ねる。

 山本がようやく土地を引き《戦いの柱》をキャストしても、村瀬の軽快な手つきは止まらない。《アクロスの十字軍》に《ドラゴンのマントル》をエンチャントし、生み出されたトークンと《ミノタウルスの頭蓋断ち》、《死呻きの略奪者》でアタック。ダメージで押される山本としては、ブロックするしか選択肢が無いのだが、《戦識の武勇》で一方的にクリーチャーを失ってしまうと、次のドローを見て土地だけの盤面を片付けたのだった。

村瀬 1-0 山本

 土地事故という不本意な形で1本目を落としてしまった山本。普通なら愚痴のひとつでもこぼしたくなるところだろうが、その端正な表情を全く崩さない。サイドボードを確認し、数枚のカードを入れ替えると、淀みなくシャッフルへ移る。山本は村瀬のアグロデッキに対し、以下の4枚をサイドイン。

 タフネスの高いクリーチャーを中心に受けに回ろうという姿勢が明確に見て取れる。プラン通り村瀬の攻勢をしっかり受け止めきることができるか。


山本 賢太郎

ゲーム2

 先ほどとは逆に、山本が7枚をキープ、村瀬がマリガンとなる。山本の《戦識の重装歩兵》に村瀬が《稲妻の一撃》を合わせるところから立ち上がり。返す山本が再度《戦識の重装歩兵》を繰り出すと、村瀬が「2枚目!?」と驚嘆の声を上げる。驚く村瀬を尻目に、山本はこれに《神託者の眼識》をエンチャント、ライブラリーを着々と掘り進め、強力レアの《クルフィックスの預言者》までたどり着く。

 村瀬はアドバンテージ面では最早勝負にならないため、《双頭のケルベロス》に《ニクス生まれの盾の仲間》を授与、《ミノタウルスの頭蓋断ち》を追加し、ダメージで押し切ろうとする。

 だが、《クルフィックスの預言者》の能力で《氾濫潮の海蛇》をキャストすると、村瀬は「なんだこれ!?」と悲鳴を上げる。《双頭のケルベロス》が相打ちに取られ、思うように山本のライフを削ることができない。

 《槌の一撃》でガンである《戦識の重装歩兵》こそ除去し、これ以上のアドバンテージ獲得は阻止するが、残る村瀬のクリーチャーはたった2体、《ミノタウルスの頭蓋断ち》と《ニクス生まれの盾の仲間》という寂しいもの。

 その残り少ないクリーチャーも、《クルフィックスの預言者》をダブルブロックした際に、山本がサイドインした《くぎ付け》で《ミノタウルスの頭蓋断ち》を失ってしまう。

 押せ押せの山本は次々とクリーチャーを追加する。《オレスコスの太陽導き》と《渦潮の精霊》《沈黙の職工》、《戦いの柱》とみるみるうちに4体ものクリーチャーが現れ、山本の盤面を強固なものにしていく。

 村瀬はなんとか《野蛮な祝賀者》で《戦いの柱》を破壊し一糸を報いるが、先ほど《神託者の眼識》でドローを進めていた山本の手が切れるはずも無い。

 山本の戦場に《海檻の怪物》が追加され、怪物化できるマナがあるのを確認すると「強かったなあー」と笑いながら土地を畳んだ。

村瀬 1-1 山本


山本はポーカーフェイスを崩さない

 サイドボードの間、二人の姿は対照的だ。表情を崩さず淡々と作業をこなす山本に対し、矢継ぎ早に笑顔でトラッシュトークを投げかける村瀬。だが、ここは負ければトップ8争いから滑り落ちる崖の上。シャッフルを終え、マリガンチェックに入るや否や、村瀬も山本と同じ厳しい顔つきへと変わり、緊張感が一気に場を支配する。

ゲーム3

 力強く7枚でのキープを宣言した村瀬が《忠実なペガサス》、《ニクス生まれの盾の仲間》というスタート。山本も《オレスコスの太陽導き》、《戦いの柱》とライフを守るクリーチャーを繰り出していく。だが、村瀬はそれぞれ《槌の一撃》と《戦識の武勇》で討ち取り、さらに山本の追加の《戦識の重装歩兵》にも《稲妻の一撃》を差し向ける。

 だが、これを山本が《くぎ付け》で守ると流れが変わり始める。

 村瀬の《ミノタウルスの頭蓋断ち》と《双頭のケルベロス》が山本の2枚の《戦識の重装歩兵》と相打った後、山本はこれまた2枚目となる《オレスコスの太陽導き》に《神託者の眼識》をエンチャントし、アドバンテージとライフの両方を一気に獲得していく。《野蛮な祝賀者》は《渦潮の精霊》で対応し、村瀬の攻撃陣が切れるのをじっと待つ。


村瀬 浩司

 山本はさらに《メレティスのダクソス》と、再度引いてきた《渦潮の精霊》を追加する。この《メレティスのダクソス》は《ニクス生まれの盾の仲間》をブロックした際に、《戦識の武勇》で失うものの、《オレスコスの太陽導き》のおかげで、ライフは13という高い水準に保てている。

 一方の村瀬は攻め手を継続することができない。《解消の光》で《神託者の眼識》を破壊し、これ以上のアドバンテージ獲得は防ぐものの、山本の《オレスコスの太陽導き》がアタックに回りライフがゼロから遠ざかっていく。

 ようやく《》を引いてきた山本が《クルフィックスの預言者》をキャストすると、数ターンの間セットゴーを繰り返していた村瀬が笑顔で感想戦を始めた。

村瀬 1-2 山本

 試合が終わると、ふっと緊張の糸が切れ、再び村瀬がトラッシュトークを始める。「強い人と当たれてよかった」という村瀬に、はにかみながらも「いえいえ、そんなことないです」と謙虚に応じる山本。崖っぷち対決を制した山本がトップ8、そしてその先に見えるプラチナ・レベルへと歩を進める。

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