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グランプリ・京都2015

観戦記事

第13回戦:Cho, Jeong Woo(韓国) vs. Olivier Ruel(フランス)

By 矢吹 哲也

 日本で行われるグランプリで、海外からやってくるプロプレイヤーのプレイを間近に見られるのは僥倖と言えるだろう――それが殿堂顕彰者であるなら尚更だ。

 オリヴィエ・ルーエル/Olivier Ruel。プロツアー・トップ8入賞5回を誇り、グランプリ・トップ8入賞にいたっては27回という驚異的な数字を持つ彼は、殿堂顕彰者の中でも一際目立つプレイヤーだ。楽しそうにマジックをプレイする姿は生放送でも取り挙げられ、現地でも多くの注目を集めている。

 一方、普段は日本でマジックを楽しむチョ・ジョンウ/Cho, Jeong Woo。昨年のワールド・マジック・カップ2014では韓国代表チームとして参戦し、トップ8入賞に貢献している。

 現在2敗のラインで留まっている両者。まだトップ8入賞の目はあるものの、ここからすべての試合がバブル・マッチとなる。


オリヴィエ・ルーエル vs. チョ・ジョンウ

 フィーチャー・マッチ・エリアのすぐ外で急いで牛丼を掻き込み、コミカルな動きで席につくルーエル。シャッフルもダイス・ロールも楽しそうに行い、それに引き込まれたジョンウも笑顔を見せる。しかしシャッフルを終えたデッキを手にするなり、緩やかに広がっていた両者の笑顔は引き締まった。ここからは勝負の世界だ。

ゲーム展開

 手札を吟味したのちにキープを宣言したジョンウに対して、険しい表情で首を傾げマリガンを宣言するルーエル。ジョンウが初手から《コジレックの審問》を放つと、公開されたルーエルの手札は《遺産のドルイド》、《ラノワールのエルフ》、《自然の秩序》、《イラクサの歩哨》、《エルフの幻想家》、《垣間見る自然》という強力なもの。ジョンウは《遺産のドルイド》を抜き去りルーエルの爆発的なマナ源を奪うと、続けて展開されたルーエルのエルフたちを《渦まく知識》で人為的に起こした「奇跡」――《終末》で一掃する。

奇跡は起こすもの

 再び少しずつ盤面を作っていくルーエルだが、さすがに展開力は落ちている。ジョンウの《石鍛冶の神秘家》が持ってきた《殴打頭蓋》に攻撃を許し、さらに《梅澤の十手》が戦場に出ると、ルーエルはカードを片付けた。


大量に展開されるエルフを一掃する力を持つチョ・ジョンウ。

 2ゲーム目、今度はルーエルが初手《思考囲い》でジョンウの手札を攻めた。《終末》、《目くらまし》、《思案》、《不毛の大地》、《霧深い雨林》、《死儀礼のシャーマン》2枚というジョンウの手札から、《思案》を抜き去る。ジョンウは《死儀礼のシャーマン》を展開し、《不毛の大地》でルーエルの《Bayou》を破壊した。

 《ラノワールのエルフ》を展開したルーエルは次のターンにフェッチランドから《ドライアドの東屋》を持ってくると、《ガイアの揺籃の地》を設置して《緑の太陽の頂点》。《エルフの幻想家》を持ってきてカードを引くと、ターンを渡した。

 ジョンウは《剣を鍬に》で《ラノワールのエルフ》を除去すると、さらに《瞬唱の魔道士》で《剣を鍬に》を「フラッシュバック」。《ドライアドの東屋》を除去し、徹底的にマナ基盤を攻める。

 攻勢そのままに《石鍛冶の神秘家》で《梅澤の十手》を持ってくるジョンウだが、そこへルーエルは《再利用の賢者》。「持ってるか」という表情を一瞬浮かべたジョンウだが、すぐに切り替え、《思案》で手札を整え《瞬唱の魔道士》で攻撃していく。

 そこで、ルーエルが反撃に出た。《ワイアウッドの共生虫》に続けて手札から繰り出される《窒息》。ジョンウは《目くらまし》でタップ状態の《Underground Sea》を手札に戻し、それを設置し直すだけでターンを終えた。

 ルーエルはドロー後少し間を置いて考え、《自由なる者ルーリク・サー》を展開。盤面になんとか6点分のパワーを用意したジョンウは、《自由なる者ルーリク・サー》の攻撃を全軍で受け止める。

 だがルーエルの猛攻は終わらない。《垣間見る自然》を引き込んだ彼は《ガイアの揺籃の地》から大量のマナを生み出し、エルフの展開を始めた――しかしフィニッシュまでは届かず。口惜しい気持ちでターンを返すルーエル。

 《窒息》で土地を縛られたジョンウだが、《死儀礼のシャーマン》からマナを確保し、引き込んだ《終末》を「奇跡」でプレイ。再び盤面は振り出しに戻り、ルーエルはもう一度エルフを展開し出す。しかし《窒息》は確実にジョンウの動きを狭め、貴重な土地を使って《渦まく知識》を唱えても後が続かない。《コジレックの審問》でルーエルの手札を確認したジョンウは勝利の手立てがないことを悟り、投了を宣言したのだった。


たとえ全体除去を受けても、ルーエルのエルフたちは再び盤面を埋めていく。

 残り時間が迫る中行われた最終ゲーム、ルーエルは1ターン目に《緑の太陽の頂点》をX=0でプレイ。《ドライアドの東屋》を持ってきたものの、それは即《剣を鍬に》を受けた。

 ジョンウはターンを迎えると《不毛の大地》でルーエルの土地を破壊する。続く《樺の知識のレインジャー》にも《目くらまし》を差し向け、ルーエルの動きを許さない。次のターンの《遺産のドルイド》は通るものの、さらにルーエルが《死儀礼のシャーマン》を繰り出すとジョンウは悩みながらも《Force of Will》を切った。

 素早い決断が求められる中で、序盤から手札を消費し全力を尽くす両者。一進一退の試合はやがて規定の試合時間を使い切り、勝負は延長ターンに委ねられた。

延長ターン1:《思考囲い》でジョンウの残り1枚の手札を抜き去ろうとするルーエルだが、その1枚は《封じ込める僧侶》だった。チュウは瞬速でそれを繰り出し、難を逃れる。

延長ターン2:ジョンウのドローは《思考囲い》。ルーエルの手札は《森の知恵》、《緑の太陽の頂点》、そしてジョンウの《翻弄する魔道士》で使用を禁じられている《窒息》。その中からジョンウは《森の知恵》を抜き去った。

延長ターン3:《ワイアウッドの共生虫》で《エルフの幻想家》を手札に戻し、それを再び戦場へ出しライブラリーを掘り進めるルーエル。有効牌がくれば、延長ターン内でも勝負が決まるはずだ。しかしゲームは......決まらない。

延長ターン4:ジョンウのドローは《渦まく知識》。彼はさらに《コジレックの審問》を引き込み、ルーエルの手札から《緑の太陽の頂点》も取り去る。

延長ターン5:最終ターンを前に手を合わせ祈る両者。ルーエルは再度《エルフの幻想家》を出し直し、2枚目の《ワイアウッドの共生虫》を引き込んだ。さらに複雑になった盤面から彼はマナを引き出し、エルフを追加し、ドローを進め......それでもなお、勝負を決めることは叶わなかった。

「Draw」

 寂しく響くルーエルの声。疲れた表情で苦笑いを交わし、握手をする両者。決着がつかないまま、両者のトップ8入賞の目は潰えたのだった。

オリヴィエ・ルーエル 1-1-1 チョ・ジョンウ
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