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グランプリ・京都2015

観戦記事

第7回戦:山本 賢太郎(埼玉) vs. 高橋 優太(東京)

By 小山 和志

 プロツアー・サンディエゴ2007。かつて双頭巨人戦で行われたこのトーナメントで準優勝という成績を収め、一躍トップシーンに躍り出た2人の若者がいた。


プロツアー・サンディエゴ2007
イベントカバレージ
より

 それが山本賢太郎と高橋優太だ。

 その後先に名を馳せたのは高橋だった。グランプリ・静岡2008グランプリ・神戸2008と国内グランプリを連覇し、一気に日本のトッププレーヤーへの道を駆け上った。それからは継続的にグランプリ上位入賞やワールド・マジック・カップ2012日本代表など実績を積み重ねてきた。スタンダードやリミテッドはもちろんのこと、エターナル・フェスティバル2013で優勝を果たすなど、レガシープレイヤーとしての実力も非常に高いものがある。

 一方の山本は、高橋がブレイクした頃には目立った活躍こそ無かったものの、Magic Onlineでの研鑽を積み重ねていた。花開いたのは昨シーズン、プロツアー『テーロス』でトップ8入賞を果たすと、プラチナ・プロまで登りつめ、世界選手権2014の参加権利を獲得するまでに至った。今季もプラチナレベル維持を目指しトーナメントシーンで戦っている。

 あれから8年、辿ってきた道は違えども、今2人は「Hareruya Pros」のチームメイトとして、このグランプリ・京都2015の全勝テーブルにいる。

 かつて隣で共に戦った相棒が今、対戦相手としてお互いに向かい合う。


かつての仲間が火花を散らす

ゲーム1

 山本の先手でゲームがスタート。《ギタクシア派の調査》から。
 高橋の手札を確認する立ち上がり。レガシーもこよなく愛する高橋が選んだデッキは奇跡コントロールのようだ。

 高橋は《渦まく知識》で手に入れた《相殺》を唱えると、これを山本が《呪文貫き》で弾く。さらに山本は《渦まく知識》からの《時を越えた探索》。これに高橋が一言「いい回り過ぎるだろ」。

 実際、これをカウンターできない高橋にとっては辛い展開で、《師範の占い独楽》で対抗策を何とか手に入れようとする。

 もちろん、山本は手札にコンボを持っており、《実物提示教育》を唱える。

 高橋は《師範の占い独楽》を「お願い、お願い!」と起動するが、山本が手札から《全知》、《引き裂かれし永劫、エムラクール》と見せると、おとなしく土地を片付けたのだった。

山本 1-0 高橋

 サイドボードに手を伸ばすやいなや、高橋が山本に語りかける。「《Force of Will》持ってた?」「持ってた」「完璧じゃん」。

 ゲームの最中でもかつての相方との語らいは止まらない。


高橋優太

ゲーム2

 先手の高橋、山本ともに7枚でゲームを開始し、山本がいきなり《すべてを護るもの、母聖樹》、《防御の光網》と、高橋のゲームプランを崩しにかかる立ち上がり。

 高橋は《防御の光網》に対し《渦まく知識》を唱え、これを許可すると返すターンに《相殺》を設置する。山本が次のターンにコンボを決めてしまいさえしなければ、軽量のドロー呪文を打ち消すことで、アドバンテージの点では優位に立つことができる。

 果たして、高橋のプランは成就した。山本は《渦まく知識》を唱えるも、3枚目の土地を置けずにターンを返す。高橋はさらに《精神を刻む者、ジェイス》からの《渦まく知識》モードに突入して、アドバンテージ面で山本を引き離していく。

 なんとか3枚目の土地を引き込めた山本だが、《ヴェンディリオン三人衆》で高橋が手札の検閲を行う。

 《実物提示教育》《全知》が2枚ずつ。

 これに高橋が思わず笑みをこぼすが、冷静に《全知》を下に送り、山本の《実物提示教育》から出てきた《全知》を《造物の学者、ヴェンセール》で手札に戻し、目に見えた脅威を捌いてみせる。

 そして《精神を刻む者、ジェイス》が毎ターンフレッシュなカードをもたらし、着々と山本の逆転の機会を奪っていく。

 やがて、高橋が《エーテル宣誓会の法学者》まで追加すると、今度は山本が土地しかない戦場を片付けるのだった。

高橋 1-1 山本

 ゲームの間もお互いに少し笑顔を見せながら通常ならマッチ終了後に行うような感想戦を行う。そう、付き合いの長い2人に隠すことはない。

 泣いても笑っても最終ゲーム、全勝キープは山本か、高橋か。


山本賢太郎

ゲーム3

 戻って山本が先手で、2ターン目に《思案》からスタート。高橋はそのターンエンドに《渦まく知識》から、自身のターンに《対抗呪文》、《赤霊破》、《エーテル宣誓会の法学者》が控えている中から《相殺》の設置を試みる。

 これには山本が《呪文貫き》で対処し、1ゲーム目を彷彿とさせるが、山本の《実物提示教育》に対し、高橋が即決でカードを伏せる。これを見た山本はさきほどの《造物の学者、ヴェンセール》がよぎったのか少考する。

 結局、《全知》と《引き裂かれし永劫、エムラクール》から《全知》を選び、これを戦場に出すと、高橋が明らかにしたカードは《エーテル宣誓会の法学者》。

 これで山本はこのターンに《引き裂かれし永劫、エムラクール》を唱えることができず、手番を渡す他ない。高橋は山本のターンのアップキープに《赤霊破》で《全知》を破壊し、《相殺》《師範の占い独楽》を連続で唱えて「独楽相殺」を完成させ、一気に勝利への手綱を引き寄せる。

 だが、山本もプラチナプロ、簡単に勝利を手放すことはできない。《防御の光網》でまず高橋にお伺いを立てると、引いてきた《狡猾な願い》から《時を越えた探索》を手札に加え、キャスト。これを高橋がスルーし続くターンに《定業》を囮に《実物提示教育》を唱える。

 高橋が《師範の占い独楽》を起動し、《相殺》の宣言をすると、そこには《ヴェンディリオン三人衆》の姿が。

 山本は何か勝ち手段はないかと模索を続けるが、高橋は《精神を刻む者、ジェイス》で山本のライブラリーをチェック、勝利へのカウントダウンを加速する。

 やがて、高橋が高速で《精神を刻む者、ジェイス》を起動し続け、有効牌を引き込めないことを悟った山本は静かに投了を告げた。

高橋 2-1 山本
高橋Wins!

 マッチが終わり、再び感想戦が始まる。会話に八十岡翔太も加わり、あの時どうすべきだったか、プレイの選択は正しかったかの熱い検討が交わされている。その姿を見ると、きっと何年経っても山本も高橋もマジックをプレイしているのだろうと思う。かつての仲間との語らいはこれからも続いていく。

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