EVENT COVERAGE

グランプリ・神戸12

読み物

Round 3: Terry Soh(マレーシア) vs. 正直 知也(兵庫)

By Junya Takahashi  たとえ日本で開催されていようと、グランプリには世界各国からマジック・ザ・ギャザリングを愛する人たちが数多く来訪する。  このラウンドのフィーチャーマッチエリアに呼ばれたTerry Sohもその一人で、プロツアートップ8を3回も経験しているマレーシアの強豪だ。
 《ラクドスの穴開け魔道士》と言えばハッとくる方も多いだろうか。2005年度のインビテーショナルを優勝したことでデザインカードになっていることでも有名なプレイヤーである。  それに対するのは、地元の兵庫からの参加者である正直 知也だ。グランプリやプロツアーといったわずかな機会でしか対戦することの無い世界の強豪とのゲームをどのように戦うのだろうか。 Round 3
Game 1
 ダイスロールの結果、先手を取ったのはSoh。《》と《》を並べて《軽蔑された村人》を戦場に繰り出す。対する正直も鏡打ちのように《》と《平地》から《軽蔑された村人》を展開した。  Sohは3ターン目に土地が止まったものの、《夜明け歩きの大鹿》という「擬似的な土地」があって、土地事故という致命的なロスには至らなかった。  返すターンで正直はSohの土地が止まったことを確認すると、《》を置いて素早く《不死の火》をプレイする。  しかし、フィーチャーならではの緊張か、そのプレイ対象を《夜明け歩きの大鹿》にしてしまう。土地はタップ状態であるものの、Sohのコントロールする《軽蔑された村人》がアンタップ状態であることを見逃してしまっていたのだ。Sohはにんまりとほほ笑んで《夜明け歩きの大鹿》を生贄に捧げると《》をサーチした。  だが、無事に4マナを手に入れたものの、Sohにはライブラリの上からの土地はもたらされない。まあできることをするか、といった軽いジェスチャーで《暗茂みの狼》と《歩く死骸》を戦場に送り出す。  先程の失敗を繰り返さないようにか、正直は慎重な手つきで《硫黄の流弾》を《軽蔑された村人》に打ちこむと、自身の《軽蔑された村人》を陰鬱を満たした《吠え群れの飢え》により3個の+1/+1カウンターで強化した。  更なるターンも土地が伸びないSohは、4/4の《軽蔑された村人》のみをコントロールする正直と比較すると、《暗茂みの狼》と《歩く死骸》で攻勢に回っている分だけ展開量で勝っているものの、いつ逆転されてもおかしくないほどマナベースに差が付き始めている以上、余裕の表情は見えない。攻撃した後に追加した《スカースダグの剥ぎ取り》も、能力を使用できる一人前になるためにはあと1枚土地を引きこむ必要があるのだ。  未だにマナベースの改善が見られないSohを尻目に、正直は潤沢なマナから《弱者の師》からの《絡み根の霊》と連続して繰り出した。《弱者の師》の能力で手札の減らない正直に一気に形勢が傾いていく。  すこし気持ちを込めてカードを引いたSohはホッとして4枚目の土地である《》を置いたものの、正直の場を見ると、4/4に育っている《軽蔑された村人》、《弱者の師》と2種類の除去対象があるため、気軽にに《スカースダグの剥ぎ取り》の能力を使用することができない。  育った《軽蔑された村人》に削り落された自分のライフと《弱者の師》を見比べると、Sohは《弱者の師》を自身のターンで処理することを諦めてターンを返した。  その判断はいい方向へ転がることとなった。正直には後続の勢力が無かったのだ。大きな《軽蔑された村人》をチャンプブロックしながら能力で《軽蔑された村人》を倒すと、形勢の傾きは再びSohへと揺れ戻っていった。  一気に楽になったSohは、調子良く5マナ目を引きこむと《ホロウヘンジの獣》を繰り出し、続くターンでは戦闘後に《覚醒舞い》を展開して今だとばかりに畳みかけていく。  正直もこのまま終われないとばかりに《残忍な峰狼》による誘発能力でドローを進めると、《捕食》《アヴァシン教の僧侶》《茨群れの頭目》で強引に盤面を収めに掛かる。  それでもSohの攻勢は未だに圧倒的で、トップデッキした《死の愛撫》が《弱者の師》を奪い去ったことで、健闘した正直の希望は潰えたかと思えた。  しかし、ここで正直は更なるトップデッキである《高まる献身》だったことで再び形勢は振り出しに戻った。  その後は《高まる献身》のフラッシュバックに必要な2枚の土地に辿り着きたい正直と、そのマナを用意される前に攻め切りたいSohというレースになるかに思われた。  ただ、あっさりとSohが《神聖を汚す者のうめき》を引きこんだため、正直には土地を2枚も引いている余裕が残されていなかった。 Terry Soh 1-0 正直 知也
Game 2
Terry Soh
Terry Soh
 仕切り直してSohのマリガンから始まったGame 2は、Sohが《アヴァシンの巡礼者》からの《暗茂みの狼》を、正直が《軽蔑された村人》から《絡み根の霊》、という互いに順調な序盤を迎えた。  《アヴァシンの巡礼者》のおかげで3ターン目に4マナを用意したSohだったが、手札が芳しくなかったため《歩く死骸》を展開するに留まった。  このプレイを好機と見た正直は、《捕食》でSohの《アヴァシンの巡礼者》を狙い打つアグレッシブなプレイでSohの展開を阻害しにいった。  再び4マナのターンを迎えたSohは少し悩むと、正直が使用した《捕食》に目をやり、《暗茂みの狼》と《歩く死骸》の両方を守勢に回すことで膠着や消耗戦を挑む姿勢を見せる。  一度動き始めた以上、正直の手は休まらない。先のターンで不死した《絡み根の霊》が攻撃に参加し、戦闘トリックを警戒したSohはあっさりと《絡み根の霊》を本体で受けとめた。少し目論見と違ったのか、意外そうな表情を見せた正直は今引いてきた《内陸の隠遁者》を追加する。  ドローステップでため息をついたSohの手札は、《ガヴォニーの居住区》《覚醒舞い》《森林の捜索者》の3枚。白マナが無く起動できない《ガヴォニーの居住区》、陰鬱しそうにない2枚の陰鬱クリーチャーという悲惨な状況は、Sohの展開を著しく制限していた。  また、《内陸の隠遁者》の登場が更に状況を複雑にしている。つまり、このターンに呪文をプレイしないことで《内陸の災い魔》へと変身させ、《暗茂みの狼》を4/4に強化して討ち取るプランが見えているのだ。しばらく悩んだ後、Sohは静かにターンを返し、《内陸の災い魔》を迎え撃つことにした。  案の定というか能力の都合で攻撃せざるを得ない《内陸の災い魔》を、Sohは計画通りに《暗茂みの狼》でブロックしてダメージが解決される前に強化する。  しかし、そこに正直による起死回生の《不死の火》が打ちこまれてしまった。ブロックに参加しなかった《月傷の狼男》を横目で見ながら、失敗したという表情のSohは、《覚醒舞い》を陰鬱無しで送り出して今度こそ狼男を迎え撃つ。  はたして、またしてもSohの願いは届かなかった。このターンの攻防も正直の《茨群れの頭目》が《内陸の災い魔》を強化したことでSohの戦線の傷が余計に深まってしまったのだ。  2回の戦闘で完全に戦線が崩壊したSohは、ドローが土地だったことを確かめると、残り10分を表示している時計を指さして「ちょっと急ごうか」と片付けた。 Terry Soh 1-1 正直 知也
Game 3
正直 知也
正直 知也
 引き分けを望まない両者は素早くシャッフルを済ませる。Sohが先手を宣言して《猛火の松明》からの《暗茂みの狼》を並べたところで、正直の手札からは例のクリーチャーが繰り出される。  《内陸の隠遁者》である。  先程のGame 2を壊滅的なまで荒らし切ったこの狼男への対処は、一歩間違えば致命的であることは身を持って経験している。  再び《暗茂みの狼》の強化に頼るのか。  安全には安全を期して《猛火の松明》で除去するのか。  普通に手札のクリーチャーを展開して変身を妨げるのか。  多くの選択肢を検討した結果、Sohは意を決して《暗茂みの狼》の強化を試みることにした。この度の戦闘で仮に《暗茂みの狼》が処理されたところで、相手も呪文を使う以上は平等な交換には違いない。そして更なるターンで手札に抱えているクリーチャーがブロックすれば振り出しに戻るだけ。有利な交換を取れる機会をみすみす逃すわけにはいかない。  そんな声が聞こえてくるような覚悟を決めた表情で強化を宣言したSohの《暗茂みの狼》に、デジャブの様な《不死の火》が突き刺さる。  だが、Sohの心はまだ折れない。そこまでは想定の範囲内なのだから。  そして、手札に残ったブロッカーである《覚醒舞い》を送り出し、《内陸の災い魔》との相打ちを進言する。  しかし、正直の答えはSohの心をへし折る《野生の飢え》。
   そして追加で出された戦力は《アヴァシン教の僧侶》と、恐ろしいほど都合の悪い局面へと突入していく。  《ホロウヘンジの獣》を2体連続で繰り出して膠着を望むが、正直の《信仰の縛め》が再びSohの提案を跳ねのける。  ようやく《猛火の松明》を装備して、《内陸の隠遁者》を《ホロウヘンジの獣》で迎え撃つ態勢を整える。正直の墓地には《野生の飢え》が眠っているため、普通に《猛火の松明》を起動しただけでは《アヴァシン教の僧侶》も《内陸の隠遁者》も倒せない。  ライフが5のSohにはブロッカーがおらず、《猛火の松明》を持ち《信仰の縛め》のついたアンタップの《ホロウヘンジの獣》と潤沢なマナだけが残されている。  それを見た正直は、《内陸の災い魔》をレッドゾーンに繰り出して《野生の飢え》をプレイした。《猛火の松明》を構えていたSohは目を丸くして、椅子取りゲームの様な反応で《猛火の松明》を起動する。  それを見越していた正直は手札から《吠え群れの飢え》をプレイする。これで《内陸の隠遁者》のタフネスは3となり、《猛火の松明》の2点では倒せない。  しかし、Sohが前のターンに引きこんでいたのは《悲劇的な過ち》であり、正直のビッグムーブは空振りに終わってしまった。  こうなってしまうと一気に戦況はSohに傾いていく。《神聖を汚す者のうめき》、《死の愛撫》と矢継ぎ早にカードをプレイしていく。もはや残り少ないラウンドの時間だけがSohの問題に思われた。  しかし、ゾンビトークンへのブロッカーに《茜の狼》を用意して稼いだ1ターンで、正直は《声無き霊魂》を引きこんだ。致命的な回避能力を持った飛行生物だが、僅かにSohの攻勢の方が速い。  この間に残り時間は1分を切り、Sohのターンで追加5ターンを迎えた。  《アヴァシン教の僧侶》を《死の愛撫》で処理したことで解放された《ホロウヘンジの獣》が正直を襲う。次のターンには押し切られてしまうだろう。  しかし、正直は《声無き霊魂》と《茜の狼》を前に押しやってダメージが解決されたことを確認した後、Sohに残された僅かなライフを吹き消すように《硫黄の流弾》で削り取った。 Terry Soh 1-2 正直 知也 ※編注とお詫び:  上記の観戦記事において、《内陸の災い魔》の能力が「攻撃強制」であるかのようにお伝えしてしまいましたが、正しくは「ブロック強制(ブロックされなければならない)」です。誤りをお詫びいたします。申し訳ございません。  なお、お伝えしている試合内容につきましては、事実との錯誤はございません。
  • この記事をシェアする