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木曜マジック・バラエティ

2011.10.27

浅原晃の「デッキタイムトラベル!」 Part11 -白単ウィニー

By 浅原 晃


 今回のデッキタイムトラベルは白単ウィニー。

 『核戦争があっても、ゴキブリと白ウィニーだけは生き残る』とは、名プレイヤーであった、ランディー・ビューラーが言った比喩表現であり、正確には正しくない、のは当然なのだが、つまりは、それほどまでに白ウィニーというのは環境の選択肢として常に存在し続けたということを意味している。時には、相手にするプレイヤーが嫌になるほどに。

 今回はその白ウィニーを取り上げ、どうして、白ウィニーが現在に至るまで選択肢として存在し続けているのか、その強さを紹介していきたいと思う。それでは、レッツタイムシフト!


■1996~1998年 騎士と修道士、ときどき僧侶

 最初期のマジックで白のクリーチャーといえば《セラの天使》が真っ先に挙がるかもしれない。コントロールデッキでは攻守に渡って戦場を駆け巡り「The Deck」のフィニッシャーとして活躍した。

 初期での《セラの天使》、最近では《悪斬の天使》のような強力な飛行クリーチャーである天使は白の特徴の一つである。しかし、それとは別に軽く優秀なクリーチャーも白の特徴であることも良く知られている。《神の怒り》のような全体除去だけでなく、優秀なクリーチャーの枠が広いことで、白はコントロールにもビートダウンにも良く使われるのだ。

 白ウィニーと呼ばれる白のビートダウンデッキは、軽くコストパフォーマンスに優れた白のクリーチャーを展開して対戦相手を打ち倒すデッキである。
 それが最初にもっとも大きな活躍を見せたのは世界選手権1996だろう。

『12Knights』 Tom Chanpheng
世界選手権1996 優勝 / スタンダード
15 《平地》
4 《ミシュラの工廠》
4 《露天鉱床》
1 《Kjeldoran Outpost》

-土地(24)-

4 《Order of Leitbur》
4 《白き盾の騎士団》
4 《サバンナ・ライオン》
4 《白騎士》
2 《Phyrexian War Beast》
2 《セラの天使》

-クリーチャー(20)-
4 《剣を鍬に》
1 《土地税》
1 《増援》
1 《臨機応変》
1 《Lodestone Bauble》
1 《Zuran Orb》
4 《解呪》
1 《天秤》
1 《復仇》
1 《ハルマゲドン》

-呪文(16)-
1 《臨機応変》
1 《魂の絆》
1 《Kjeldoran Outpost》
4 《神への捧げ物》
1 《黒の万力》
1 《Energy Storm》
1 《復仇》
2 《アレンスンのオーラ》
1 《流刑》
2 《鋸刃の矢》

-サイドボード(15)-

 このときの白ウィニーは『12Knights』と呼ばれる、12体の騎士を主軸に据えたデッキになっている。最初期からいる《白騎士》に、フォールン・エンパイアから《Order of Leitbur》、アイスエイジから《白き盾の騎士団》を加えて12体のプロテクション(黒)を擁したデッキとして黒いデッキに対しては特に効果的に働いた。

 そして、このプロテクション(黒)が絶大な力を発揮したのがこの世界選手権だった。このときに最強と言われていたデッキが黒単色のネクロデッキだったため、このデッキはネクロデッキの黒い除去やクリーチャーを無視することができたのだ。

 《ネビニラルの円盤》は天敵となるカードではあったが、白には《解呪》があったために対処できないということはない。むしろ、ネクロデッキは土地を破壊されることも致命的であったため、《天秤》や《ハルマゲドン》といった呪文も苦手としていた。

 決勝ではネクロを操るMark Justiceが《Demonic Consultation》を2回使いライブラリーをすべて失ったのは有名なエピソードだが、それも、白ウィニーがメタに合致しており、ネクロデッキをそこまで追い詰めたからとも言えるだろう。

 また、もう一つのエピソードとして、プロテクションの書き換えやサイド後のために《臨機応変》を入れたものの、《アダーカー荒原》をデッキリストに書き忘れてしまい、使えなかったというデッキでもある。それでも優勝してしまうのだから、デッキのポテンシャルも確かなものなのだろう。

 この『12Knight』が示すように、伝統的な白ウィニーは2マナ域のクリーチャーを軸として組まれること多い。2マナ域の優秀さが環境での白ウィニーの強さを計るバロメーターになっているのだ。

 テンペストブロックでは、シャドーを持つクリーチャーが登場し、トーナメントレベルで2マナ域の白のウィニークリーチャーが活躍した。

『シャドーウィニー』 David Bachmann
プロツアー・ロサンゼルス1998 3位 / テンペストブロック構築
19 《平地》
4 《不毛の大地》

-土地(23)-

4 《サルタリーの修道士》
4 《サルタリーの僧侶》
4 《暁の騎士》
4 《サルタリーの使者》
4 《堅牢な防衛隊》
2 《復讐する天使》

-クリーチャー(22)-
4 《呪われた巻物》
4 《解呪》
4 《勇士の決意》
3 《拷問室》

-呪文(15)-
4 《ボトルのノーム》
1 《サマイトの癒し手オアリム》
2 《雲を追う鷲》
2 《穏やかな捧げ物》
4 《煮沸ばさみ》
2 《日中の光》

-サイドボード(15)-

 シャドーとは、簡単に言えばシャドーを持つ同士でないとブロックされない/できないというキーワード能力だ。
 飛行に近い役割を果たすが、決定的に違うのはシャドーを持たないクリーチャーを止められないため、ほぼブロッククリーチャーとして期待できないということだろう。テンペストブロックの一部のクリーチャーにしか備わっていなかったこともあり、シャドーは「ブロックされない代わりにブロックできない」といった意味合いで使われることが多かった。

 シャドーのクリーチャーはそういった性質からアグロなデッキで好まれることになる。防御的なデッキならば、ブロックされないことよりもブロックできないことが致命的なデメリットになるが、ウィニーデッキならば、ブロックされないメリットを生かして相手のクリーチャーをかいくぐって倒すことができたからだ。特に能力を多く持ち、サイズそのものはそこまで大きくない傾向のある白のクリーチャーにはうってつけの能力と言えただろう。

 特にプロテクション(赤)を持つ《サルタリーの僧侶》は《モグの狂信者》といったウィニーキラーのカードに対して強かったことで広く使われ、また、プロテクション(黒)を持つ《サルタリーの修道士》も除去耐性としての強さを持っており、テンペストブロックの白ウィニーを代表するクリーチャー達となった。

 ただ、同じテンペストブロックには《呪われた巻物》があったことが最大の障害であったというのも一つの事実として挙げておくべきだろう。除去でありながら赤でも黒でもないこのアーティファクトは、優秀な白ウィニーのクリーチャーをすべて除去することができる。この時代の赤いビートダウンデッキが隆盛だったのも、プロテクション(赤)というカードに対しての対策が自然とできていたことが大きな点の一つといわれている。

 そのため、このデッキはその《呪われた巻物》に対処できるように、《解呪》や《勇士の決意》などの対策カードが取られているのだ。

 しかし、《勇士の決意》のようなオーラカードは基本的には使われないというのが構築の常識ではあるだろう。除去カードに対して簡単に2対1を取られてしまいかねないし、何よりもさほど効率がいいカードというわけではないからだ。しかしウェザーライトでは《浄火の鎧》という一つの例外が生まれている。

『アーマースキン』 Brian Hacker
世界選手権1998 ベスト8 / スタンダード
17 《平地》

-土地(17)-

4 《魂の管理人》
3 《コーの遊牧民》
4 《白騎士》
4 《サルタリーの修道士》
4 《サルタリーの僧侶》
4 《コーの戦士》
3 《ヴェクの聖騎士》
1 《サルタリーの幻想家》

-クリーチャー(27)-
4 《税収》
3 《解呪》
4 《浄火の鎧》
1 《沈黙のオーラ》
4 《大変動》

-呪文(16)-
3 《呪われた巻物》
3 《魂の絆》
3 《中断》
1 《解呪》
3 《沈黙のオーラ》
2 《ハルマゲドン》

-サイドボード(15)-

 《浄火の鎧》は今までのオーラに比べて、優れていたのはその打撃力だ。手札分だけパワーとタフネスを上げるいわゆる『マロー』効果は手札が潤沢にある序盤戦で絶大な力を発揮した。白ウィニーのクリーチャーは除去耐性がそもそもあり、それゆえに打撃力に乏しいという弱点があったが、除去に対して使いにくいオーラと、除去耐性はあるが打撃力に乏しいクリーチャーの組み合わせは、お互いの短所を消し長所を伸ばしあう組み合わせだったのだ。

 火力といった飛び道具が無いため、スピードという点で赤に劣る点があった白であるが、この《浄火の鎧》を手に入れた『アーマースキン』は白ウィニーの代表的なデッキの一つになっていく。

 また、デッキ圧縮と手札を増やす目的で使われる《税収》、《ハルマゲドン》以上にこのデッキとは相性のいい《大変動》なども採用されている。《浄火の鎧》があればクリーチャーは1体残ればよいというのはまさに理に適っていることだろう。


■1999~2000年 聖戦と頌歌

 テンペストブロックのシャドーに続いて、ある種の伝説的な白ウィニーが語られるとき外せないデッキが『ホワイト・ライトニング』かもしれない。ウルザ・ブロックで登場した、対戦相手のクリーチャーを迎撃するための防御的な呪文である《要撃》はその意図とは当初、別の形で使われることとなった。

『ホワイト・ライトニング』 Kyle Rose
アメリカ選手権1999 優勝 / スタンダード
20 《平地》

-土地(20)-

4 《魂の管理人》
4 《ルーンの母》
4 《長弓兵》
4 《サルタリーの歩兵》
4 《サルタリーの僧侶》
4 《コーの戦士》
2 《マスティコア》

-クリーチャー(26)-
4 《十字軍》
4 《解呪》
2 《栄光の頌歌》
4 《要撃》

-呪文(14)-
3 《魂の絆》
3 《中断》
3 《沈黙のオーラ》
3 《呪われた巻物》
1 《解呪》
2 《ハルマゲドン》

-サイドボード(15)-

 《要撃》は3体の2/2トークンを出すインスタントで、3マナと効果の割には軽くはあるものの、そのトークンはターン終了時にゲームから追放されてしまう。
 これは、相手の攻撃クリーチャーに対して使うと最初は思われたが、ルールの穴を突くという形で攻撃的に使うことができた。「ターン終了時」というタイミングはターン終了ステップの最初にチェックするために、ターン終了時にこの《要撃》をプレイすれば、そのターンにはチェックされず、次のターン終了時に持ち越され、自分のターンにトークンが攻撃することができたのだ。

 通常の状態でも6点というダメージ、さらに当時は《十字軍》と《栄光の頌歌》という自軍のクリーチャー全体を強化できるエンチャントがあったため、9点以上のダメージをたたき出すことも容易だった。

 何より奇襲性があるというのが白にとってはうれしい点だろう。《神の怒り》を持ってしても、《要撃》はまるで速攻を持つクリーチャーかのように機能したからだ。『ホワイト・ライトニング』の名前はまさにそういったところから付けられている。

 しかし、意図しなかったデザインということもあり、エラッタによってこの動作ができないようにすぐに改められるようになった。

 ただ、横並びのクリーチャーを《十字軍》と《栄光の頌歌》によって強化するスタイルの強さを示すことには成功したと言えるだろう。

『エイトクルセイド』 阿部和史
The Finals1999 ベスト8 / スタンダード
19 《平地》
2 《リシャーダの港》

-土地(21)-

4 《レイモス教の兵長》
4 《ルーンの母》
2 《セラの盲信者》
1 《レイモス教の副長》
4 《長弓兵》
4 《不動の守備兵》
1 《レイモス教の隊長》
2 《夜風の滑空者》
1 《熱風の滑空者》
2 《誠実な証人》

-クリーチャー(25)-
4 《十字軍》
4 《栄光の頌歌》
3 《解呪》
3 《恭しきマントラ》

-呪文(14)-
2 《マスティコア》
1 《悟りの教示者》
2 《死者への敬意》
1 《絶対の優雅》
1 《絶対の法》
1 《解呪》
1 《静寂》
4 《呪われたトーテム像》
2 《死後の生命》

-サイドボード(15)-

 横並びの強さに注目し、《十字軍》と《栄光の頌歌》この2つをフルに使ったデッキは『エイトクルセイド』と呼ばれた。この全体強化エンチャントの恩恵を受けるためには、より多くのクリーチャーを展開する必要があったが、それに噛み合ったクリーチャーのシステムである「レベル」がメルカディアン・マスクスから加わることで一気にシナジーを生み出した。

 元々、《ルーンの母》といった最高クラスの1マナクリーチャーを擁していたが、加えて、アドバンテージエンジンとなる《レイモス教の兵長》を採用することにより、1ターン目から効果的に動くことが可能になっている。放っておくと、デッキからレベルがワラワラと戦場に湧き出し、8枚の「クルセイド」によってそのサイズを強化して相手を蹂躙するのだ。

 そして、ネメシスが加わり、当時の最高のクリーチャー1つと言われた《果敢な勇士リン・シヴィー》が加わるとレベルを主体にしたデッキが大きく勢力を伸ばしていく。

『リベリオン』 Chris Pikula
マジック・インビテーショナル2000春 優勝 / スタンダード
18 《平地》
4 《ガイアの揺籃の地》
1 《黄塵地帯》

-土地(23)-

4 《レイモス教の兵長》
4 《ルーンの母》
4 《レイモス教の副長》
4 《長弓兵》
4 《不動の守備兵》
2 《果敢な勇士リン・シヴィー》
1 《夜風の滑空者》
1 《熱風の滑空者》
1 《誠実な証人》
4 《マスティコア》

-クリーチャー(29)-
4 《解呪》
4 《栄光の頌歌》

-呪文(8)-
1 《誠実な証人》
2 《スランの鋳造所》
1 《悟りの教示者》
3 《十字軍》
3 《浄化の印章》
1 《絶対の優雅》
2 《ぐらつき》
2 《神の怒り》

-サイドボード(15)-

 リベリオンの最大の魅力はクリーチャーを使ったアドバンテージエンジンだ。今までの白ウィニーが1マナ、2マナ域によるビートダウンが主体なら、リベリオンは展開こそ一緒だが、そこから攻撃することはない。マナを使ってデッキから直接クリーチャーを戦場に送り、その物量でもって相手を押しつぶす。

 特に《果敢な勇士リン・シヴィー》はその起動型能力がどちらも優秀であり、デッキの主軸として真っ先に呼び出される存在だった。当時のレジェンドルールは先出し完全有利だったために、同型対策を見込んで他に色を足していくリベリオンも見られた。

 さらに《十字軍》は同型を考えると採用しづらく、《ハルマゲドン》はマナを必要とするリベリオンには合っていない。基本的に白ウィニーでは重宝されるこれらのカードが使われていない、ということを考えると白のクリーチャーデッキの中でもリベリオンは異質なデッキと言えるかもしれない。


■2005~2007年 象徴無き後に

 インベイションブロックなどでは、ほとんど活躍することの無かったが白ウィニーだが、それは多色環境によるものであったと言えるため、ブロックの特色であると言ってしまってもいいだろう。

 しかし、《ハルマゲドン》が基本セット落ちしてしまったことで戦略に大きな変化が生まれたというのも間違いない。白ウィニーにとって対コントロールの切り札となっていた《ハルマゲドン》は、対戦相手にとって脅威であり、それを警戒されないということは、コントロールデッキにとっても簡単に《神の怒り》が打てるといった、非常にやりやすい状況になってしまっていた。

 その状況を少し変革を与えたのが、神河ブロックの《塵を飲み込むもの、放粉痢》だ。

『白ウィニー 神河ブロック初期型』 Michael Patnik
アメリカ選手権2005 べスト8 / スタンダード
17 《平地》
3 《ちらつき蛾の生息地》
1 《永岩城》

-土地(21)-

4 《灯籠の神》
4 《陽光尾の鷹》
3 《今田家の猟犬、勇丸》
4 《オーリオックのチャンピオン》
4 《レオニンの空狩人》
4 《塵を飲み込むもの、放粉痢》

-クリーチャー(23)-
2 《金属モックス》
4 《急報》
4 《栄光の頌歌》
4 《減衰のマトリックス》
2 《崇拝》

-呪文(16)-
2 《八ツ尾半》
4 《天羅至の掌握》
3 《凶運の首輪》
2 《信仰の試練》
4 《梅澤の十手》

-サイドボード(15)-

 《塵を飲み込むもの、放粉痢》は《冬の宝珠》を内蔵したクリーチャーで、お互いのプレイヤーは土地を1枚しかアンタップできなくなるといった能力を持っている。これによって、マナを縛り、その間にクリーチャーによって殴りきる。多くマナを使うコントロールデッキにとって、タップアウトの瞬間に《塵を飲み込むもの、放粉痢》を出されてしまうと致命的とも言える状況になってしまうのだ。

 相手の大きなアクションに対して、より効果的な回答策があるかないかというのは相手のプレイングの自由度に関わっている。《ハルマゲドン》とはまた違った効果ではあるものの、相手の行動をけん制するという点ではその役割を十分果たしていたクリーチャーだろう。

 神河ブロックが《塵を飲み込むもの、放粉痢》と共に退場すると、白ウィニーも土地を縛ってフィニッシュするという形ではなく、単純に優秀なクリーチャーで攻めるといった形へとシフトしていく。それが如実に現れたのが時のらせんだ。

『白ウィニー Ver. 時のらせんブロック構築』 Jan Kortla
プロツアー横浜2007 / 時のらせんブロック構築
23 《平地》

-土地(23)-

4 《アイケイシアの投槍兵》
4 《聖なる後光の騎士》
4 《セラの報復者》
4 《サルタリーの僧侶》
2 《ベナリアの騎兵》
4 《カルシダーム》
4 《トロウケアの影》

-クリーチャー(26)-
4 《時間の孤立》
1 《聖なるメサ》
4 《グリフィンの導き》
2 《オパールの守護者》

-呪文(11)-
4 《雲を追うケストレル》
4 《太陽の槍》
3 《聖なるメサ》
2 《名誉の道行き》
2 《オパールの守護者》

-サイドボード(15)-

 古き良き伝統的なスタイルを思わせる白ウィニーとなっている。《聖なる後光の騎士》、テンペストから復活した《サルタリーの僧侶》は共に除去耐性を持つ2マナのクリーチャーであり、1マナ域から《アイケイシアの投槍兵》、《トロウケアの影》と動くことができる、《浄火の鎧》ほどの爆発力は無いものの、《グリフィンの導き》はコストパフォーマンスに優れ、一旦付いてしまえば、損をしづらいオーラであった。

 これらの優秀なパーツによって、時のらせんブロック構築で行われたプロツアー横浜07では有力なデッキの一つと言われていたが、結果的には青黒コントロールや赤単といったデッキに駆逐されることなる。

 その原因はメタられすぎたことと言われているが、《ハルマゲドン》や《塵を飲み込むもの、放粉痢》ほどに、プレッシャーを与えるカードが無かったのも原因の一つであろう。火力という飛び道具を持たない白ウィニーでは、代わりにプレッシャーとなるカードがマスターピースとして必要なのかもしれない。


■2008~2010年 土地と部族とレインジャー

 ローウィンブロックは7つの部族によって争われる世界観だが、スタンダードの世界では、2つの部族が台頭していた。一つは環境最強と言われたフェアリーであり、その対抗馬でもあるのがキスキンだ。キスキンは白単色で組まれるビートダウンで、白ウィニーの流れを継承していた。

『キスキン』 Hannes Kerem
世界選手権2008 ベスト4 / スタンダード
17 《平地》
4 《ひなびた小村》
4 《風立ての高地》

-土地(25)-

4 《運命の大立者》
4 《ゴールドメドウの重鎮》
1 《ブレンタンの炉の世話人》
4 《皺だらけの主》
4 《メドウグレインの騎士》
3 《イーオスのレインジャー》
4 《雲山羊のレインジャー》

-クリーチャー(24)-
4 《損ない》
4 《幽体の行列》
2 《遍歴の騎士、エルズペス》
1 《黄金のたてがみのアジャニ》

-呪文(11)-
2 《ブレンタンの炉の世話人》
2 《白蘭の騎士》
4 《静月の騎兵》
1 《萎れ葉のしもべ》
3 《目覚ましヒバリ》
2 《忘却の輪》
1 《黄金のたてがみのアジャニ》

-サイドボード(15)-

 構成するクリーチャーの強さというのはもちろんだが、ビートダウンは土地の強さというものもかなり重要なファクターになっている。かつての《露天鉱床》しかり、《不毛の大地》しかり、《樹上の村》しかり。土地を多く引いてしまうということはマジックでは良くあることだが、それをどうやってカバーできるかというのは土地そのものが効果を持っているかどうかに掛かっている。

 この時代の代表的な土地といえば《変わり谷》であり、ほとんどのビートダウンには採用されているのは自身の強さ以上に土地の過剰を緩和してくれる効果があるからだ。

 ただ、白いデッキはその特性として、色マナ拘束がきついという弱点があった。{W}{W}はもちろん、{W}{W}{W}といったカードさえ普通に存在しているのだ。そのため、環境最強の土地と言われた《変わり谷》でさえデッキには採用されないことも多い。

 しかし、土地の強さという点で引けを取るかというとそうではない、《風立ての高地》や《ひなびた小村》は優れた土地であり、さらに白マナを供給したために、キスキンデッキの屋台骨を支えるカードとなった。こうした、土地の強さがキスキンの強さといえる部分だろう。

 また、《遍歴の騎士、エルズペス》などのプレインズウォーカーの存在も大きい。全体除去によってクリーチャーが一掃されても脅威を戦場に残せるというのはビートダウンの戦略に幅を持たせることができたのだ。

 ローウィンでは部族といったシナジーで構成されていた白のビートダウンデッキも、ゼンディカーの登場とともに一つのカードを軸に形成されることになる。そのカードとは《イーオスのレインジャー》だ。

『上陸+イーオス』 William Cavaglieri
世界選手権2009 ベスト8 / スタンダード
14 《平地》
4 《乾燥台地》
4 《湿地の干潟》
2 《ガーゴイルの城》

-土地(24)-

4 《白蘭の騎士》
4 《ステップのオオヤマネコ》
2 《魂の管理人》
2 《白騎士》
2 《エメリアの天使》
4 《イーオスのレインジャー》

-クリーチャー(18)-
4 《流刑への道》
2 《精霊への挑戦》
1 《軍部政変》
4 《清浄の名誉》
4 《征服者の誓約》
3 《忘却の輪》

-呪文(18)-
4 《真心の光を放つ者》
2 《魂の管理人》
1 《精霊への挑戦》
3 《光輝王の昇天》
2 《天界の粛清》
1 《未達への旅》
2 《遍歴の騎士、エルズペス》

-サイドボード(15)-

 《イーオスのレインジャー》は1マナ以下のクリーチャーを2体サーチできるクリーチャーだ。4ターン目における、1マナクリーチャーはたかが知れているというのが本来のマジックではあるが、ゼンディカーから加わった《ステップのオオヤマネコ》は1ターン目でなくとも、遜色のないパワーを持っており、また、《魂の管理人》はトークンを生み出す《征服者の誓約》と合わせて大きなライフをもたらしてくれた。

 そして、こういった、横に並べる戦略が使われるということは、かつての歴史から見ても分かるとおり、全体強化のカードが存在しているということが言えるだろう。

 基本セット2010から加わった《清浄の名誉》はマナ拘束が軽くなり、自分のクリーチャーだけに影響がある《十字軍》という破格のカードで、白のクリーチャー戦略の中心を担うカードとなっていたのだ。

 この戦略はエクステンデッドにおいても活躍する。

『殿堂白単』 Paul Rietzl
プロツアー・アムステルダム2010 優勝 / エクステンデッド
10 《平地》
4 《トロウケアの敷石》
4 《乾燥台地》
4 《湿地の干潟》
1 《地平線の梢》

-土地(23)-


4 《ステップのオオヤマネコ》
4 《闘争の学び手》
4 《運命の大立者》
4 《エーテル宣誓会の法学者》
4 《白蘭の騎士》
2 《イーオスのレインジャー》

-クリーチャー(22)-
4 《精霊への挑戦》
2 《マナの税収》
1 《流刑への道》
4 《清浄の名誉》
4 《幽体の行列》

-呪文(15)-
3 《ブレンタンの炉の世話人》
3 《流刑への道》
1 《天使の嗜み》
4 《大祖始の遺産》
1 《天界の粛清》
1 《確実性の欠落》
2 《法の定め》

-サイドボード(15)-

 「殿堂白単」と呼ばれるこのデッキは、プロツアー・アムステルダムにおいて、殿堂プレイヤーが多く使用したことから付けられた名前だ。あの伝説のKai Buddeをトップ8に送り、優勝者も生み出した。より1マナ域に特化した構成に《イーオスのレインジャー》を加え、《清浄の名誉》と《幽体の行列》を組み合わせており、スマートに強いデッキであるということが分かる構成になっている。

 また、コンボデッキに対しては《エーテル宣誓会の法学者》で封殺する。対応できるビートダウンデッキとして見事にメタゲームを制した形だ。

 ただ、もっとも《イーオスのレインジャー》を活かしたデッキということなら、次のデッキを挙げておきたい。

『ソウルシスターズ』 Conley Woods
アメリカ選手権2010 14位 / スタンダード
15 《平地》
4 《カビーラの交差路》
4 《地盤の際》

-土地(23)-

4 《コーの火歩き》
4 《セラの高位僧》
4 《魂の管理人》
4 《魂の従者》
4 《アジャニの群れ仲間》
4 《イーオスのレインジャー》

-クリーチャー(24)-
4 《精霊への挑戦》
4 《生き残りの隠し場所》
2 《忘却の輪》
3 《遍歴の騎士、エルズペス》

-呪文(13)-
3 《流刑への道》
4 《光輝王の昇天》
2 《天界の粛清》
1 《テューンの戦僧》
2 《静寂の守り手、リンヴァーラ》
2 《忘却の輪》
1 《太陽のタイタン》

-サイドボード(15)-

 ソウルシスターズ。《魂の管理人》と《魂の従者》、同じ能力を持つ、この2人が共存した時代に生まれたライフゲインデッキだ。

 ライフ回復はビートダウンとは無縁のように思えるが、《セラの高位僧》や《アジャニの群れ仲間》といった、ライフ回復によって、致命的なサイズになるクリーチャーの登場によって、ライフを回復して、その後に大きなクリーチャーで相手を倒すといった流れを作れるようになった。
 このデッキのライフを回復する力は大きく、《イーオスのレインジャー》によって、回復の種はもちろんフィニッシャーを持ってくることができたため、除去の薄いデッキにとっては悪夢のようなデッキといっても過言ではないだろう。


■2011年 装備品の時代

 《イーオスのレインジャー》を擁したアラーラブロックが退場し、ミラディンの傷跡ブロックが加わると、まずまっさきに注目されたのは白単の《聖なる秘宝の探索》デッキ、『白単アーマー』だ

『白単アーマー』 仙波 恒太郎
The Finals 2010 優勝 / スタンダード
20 《平地/Plains》

-土地(20)-

4 《メムナイト/Memnite》
4 《羽ばたき飛行機械/Ornithopter》
4 《きらめく鷹/Glint Hawk》
4 《闘争の学び手/Student of Warfare》
4 《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》
4 《コーの装具役/Kor Outfitter》
4 《戦隊の鷹/Squadron Hawk》
4 《コーの空漁師/Kor Skyfisher》

-クリーチャー(32)-
4 《聖なる秘宝の探索/Quest for the Holy Relic》
2 《肉体と精神の剣/Sword of Body and Mind》
2 《アージェンタムの鎧/Argentum Armor》

-呪文(8)-
4 《未達への旅/Journey to Nowhere》
4 《真心の光を放つ者/Devout Lightcaster》
4 《コーの火歩き/Kor Firewalker》
3 《白騎士/White Knight》

-サイドボード(15)-

 《聖なる秘宝の探索》はゼンディガーブロックの最初から存在していたものの使われていなかったカードだが、ミラディンの傷跡が加わったことで、困難なクエストの達成、優秀な装備品の獲得というの2つの問題点をクリアしてトーナメントレベルのカードへと進化した。

 クエストの効果を使うにはクリーチャー呪文を5回唱えなければいけないが、基本的に5回は早期には難しい、しかしミラディンの傷跡で《メムナイト》、そして《きらめく鷹》が加わると、この2枚だけで1ターンに3回のクエストが乗る計算になり、それも1マナしか掛からなかったために、クエストの達成が現実的になったのだ。

 そして、クエストによって出てくる装備品が《アージェンタムの鎧》を選択できるようになったのも大きかった、最速で2ターン目にクエストを達成するこのデッキは、つまりは、2ターン目から《名誉回復》を打ち続けられるかもしれないということなのだ。

 デッキの中の強弱がはっきりしているために動きにムラがあるという弱点はあるものの、コンボを内蔵したビートダウンとして活躍した。

 『白単アーマー』はミラディンの傷跡ブロックが加わった際に登場した初期のデッキだが、ミラディン傷跡ブロック後期~ブロック構築から、別に装備品に注目したデッキが登場した。

『純鋼の聖騎士』 David Sharfman
プロツアー・名古屋2011 優勝 / ミラディンの傷跡・ブロック構築
19 《平地》
4 《墨蛾の生息地》

-土地(23)-

4 《メムナイト》
4 《きらめく鷹》
4 《大霊堂のスカージ》
4 《純鋼の聖騎士》
2 《レオニンの遺物囲い》
4 《刃砦の英雄》

-クリーチャー(22)-
1 《オパールのモックス》
2 《急送/Dispatch(NPH)》
4 《皮剥ぎの鞘》
4 《迫撃鞘》
4 《戦争と平和の剣》

-呪文(15)-
2 《レオニンの遺物囲い》
3 《王の摂政、ケンバ》
3 《ミラディンの十字軍》
2 《存在の破棄》
2 《四肢切断》
2 《白の太陽の頂点》
1 《平地》

-サイドボード(15)-

 《純鋼の聖騎士》を中心としたこのデッキは多くの装備品が入っており、《純鋼の聖騎士》ドローエンジンとして使える構成になっている。しかし、本当に恐ろしいのは、金属術を達成したときの、装備コストを{0}にする能力だろう。これによって、《迫撃鞘》は《ゴブリンの砲撃》と同じように機能し、《戦争と平和の剣》は戦場に出した途端に使えるというとんでもない装備品になるのだ。

 プロツアー・名古屋2011では、ミラディンブロック構築が行われたのが予選ラウンドのみとはいえ、このデッキを使ったDavid Sharfmanが優勝を果たしている。


■2011年~ イニストラード

 イニストラードでは、白にトークン戦略をサポートするカードが多く存在する。

 《無形の美徳》などもそうだし、《月皇ミケウス》なども白の横並びの戦略に非常にマッチしているカードだ。
 基本的には白緑といった形のビートダウンになることが多いかもしれないが、白のビートダウンがより強い形を示すときには必ず白単色のウィニーへと帰ってくるのは、間違いなく歴史が証明しているのではないだろうか。



 今回はここまで。

 次回は最終回となりますので、デッキタイムトラベル特別編を個人的な趣向でお送りしたいと思います。それでは。

グランプリ・広島2011

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