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プレインズウォーカーのためのイニストラード案内 序説

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プレインズウォーカーのためのイニストラード案内 序説

Magic Creative Team / Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori

2011年8月24日



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 陽が翳り、イニストラードに月が昇る時、人類は例外なく獲物となる。

 狼男の群れが満ち潮のように現れる。月に引き寄せられ、彼らの人間性は獣の怒りに洗い流される。吸血鬼の一門は人間の血の匂いに牙をむき出しにする。歩く死者の軍勢は生者への本能的な渇望に突き動かされ、荘園や荒野をよろめき進む。錬金術で創造された忌まわしきもの達は、錬金術師の実験室で生を求めて身体を引きつらせている。幽霊達は人間の乱雑な街に出没し、暗き交差路をゆく旅人を脅かす。イニストラードの最も深き淵では、強大なデーモンと悪戯な小悪魔が人間を堕落させようと画策し、その影響は人間社会のあらゆる階層へと広がっている。


Steve Prescottによるコンセプト・アート

 イニストラードの人間たちは抵抗すべく最善を尽くしてきた。彼らは忌まわしきものを炎で清めるために松明を振るう暴徒となった。彼らは超自然的な怪物に逆襲するべく、聖戦士と呼ばれる専門化された神聖戦士を訓練した。他の誰よりも、彼らはアヴァシン教会の信仰の力を振るった。


Steve Prescottによるコンセプト・アート

 だが庶民や兵士、聖職者たちの武器はことごとく意味をなさなかった。彼らの囁く祈祷と魔法の護法印はその本来の力を保ってはいなかった。銀のタリスマンはもはや夜行性の怪物を恐れさせない。アヴァシンの聖印はもはや葬られた死者をかき乱す侵入者を押しとどめてはおけない。この次元の主要な四つの地域に広がる人類にとって、事態は次第に悪化している。


アート:Ryan Yee

イニストラードの四つの州

 イニストラードの既知の大陸は州と呼ばれる四つの地域に分かれている。


Richard Whittersによるコンセプト・アート

ガヴォニー

 ガヴォニー州は人類が最も安全に、かつ最も堅固に生き残っている地である。アヴァシン教会の巨大な聖堂が鎮座する世界の信仰の中心地であり、かつて偉大なる大天使が統括していた、既知の世界で最大の都市スレイベンを擁する。より小規模な都市はスレイベンから放射状にガヴォニーの岩がちな荒野へと広がっている。小さな雑木林がゆるやかな丘と荒れ野の風景に点在している。どこよりも多くの人間がここには埋葬されているゆえに、ガヴォニーは他の州よりも多くのアンデッドに悩まされている。そして同様に幽霊も他の州よりもありふれている。


Jung Parkによるコンセプト・アート

ケッシグ

 ケッシグと呼ばれるイニストラードの広大な森深い奥地は、永遠の秋が続く州である。小さな人間の共同社会が農業用の村を切り開き、そして狩人と罠師たちは生活のために危険を冒して森へと分け入っているとはいえ、ここでは深い森が王である。ケッシグに到着したばかりの者でさえ、夜に出歩いてはいけないことを知っている。荒れ野がもし取り憑かれたように見えなくても、安全とは言えない。狼男達は州をうろつきまわっている。時には単独で、時には群れで。


Vincent Proce、Daarken、Jung Parkによるコンセプト・アート

ステンシア

 この次元における最も暗く、最も山がちな地域のステンシア州は、吸血鬼が支配している。この地の常緑樹の森は常に立ち枯れているように見え、街道は常に霧深くさびれている。ぎざぎざの丘によって用心深い人間の村と吸血鬼の領地が互いに隔絶されている。州境では、みじめな松の木があえて誰も挑もうとしない高い崖へと道を作っている。ステンシアでは、太陽は奇妙な色の雲から決して姿を見せようとしない。


Vincent Proceによるコンセプト・アート

ネファリア

 この沿岸部の州には数多くの小〜中規模の港町があり、そのほとんどは遥か内陸から流れてくる川の河口に位置している。ネファリアの沼地、海霧、そして神秘はその商業と犯罪を覆い隠している。主に人間、幽霊、吸血鬼が居住しており、彼ら全てが仕事、秘密、もしくは孤独を探し求めている。岩がちの岬と海食洞で途切れている銀砂の海岸からは、霧に覆われた海へと最も簡単に近づくことができる。


James Paickによるコンセプト・アート

アヴァシン教会


アート:Slawomir Maniak

 アヴァシン教会こそが、イニストラードにおける人類の真の宗教である。教会の中心人物は真にして強大なる大天使アヴァシンであり、彼女はイニストラードの暗黒を抑え付けていた。近年まで、アヴァシンの存在はあまりに強大であるゆえに、彼女への信心はクレリック達や他の信徒達へと真の力をもたらしていた。彼女への祈りは邪悪なるクリーチャー達を退けた。彼女の司祭に祝福された銀の武器は大いなる怪物をも打ち負かした。彼女のシンボルが彫られた魔法印は一つの村全てを護った。教会の力は現実のもの、目に見えるものであり、怪物達が徘徊する世界での歓迎される武器であった。


アート:Greg Staples

 だが大天使アヴァシンはここ数季節の間姿を見せておらず、彼女の不在は人々の口に上り始めた。アヴァシンが姿を消して以来、遠方の村では、かつてのように狼男の攻撃を祈祷で遠ざけることができなくなった。聖印は高山の小路で旅人を獲物とする吸血鬼を防がなくなった。死人は、グール呼びや肉体を動かす錬金術師スケイベレン達による墓暴きから守られなくなった。教会の支配者である月皇ミケウスを含む教会の長老達はアヴァシンに何が起こったのかを知っているようだが、彼らは沈黙を貫いている。


アート:Steven Belledin

 アヴァシンは本当に姿を消してしまったのかもしれない。かつて人間達の最も偉大な武器であったものは彼らを見捨て、イニストラードの暗黒を抑え付ける教会の力は衰え始めている。


Vincent ProceとDaarkenによるコンセプト・アート

祝福されし眠り

 アヴァシン教会の鍵となる教義は、死の状態に重きを置いている。イニストラードの住人達にとって、良い人生の終着点は永遠の生を探し求めることではなく、安らぎに満ちた「眠り」を死後に得ることである。祝福されし眠りは永遠に続く平穏な忘却であり、イニストラードではしばしば起こるような、苛まれしスピリットや切断された屍、もしくは不死の忌まわしきものと化す恥辱よりも遥かに望ましいものである。祝福されし眠りは高潔で用心深い人生の報酬であると考えられている。「貴方が大地で永遠を過ごしますように」はイニストラードの人々のありふれた祝福の言葉である。


銀の月とイニストラードの季節

 イニストラードの月は希望の源であり悲哀の前兆でもある。イニストラードの天文学者の多くは、月は純粋な銀の粒でできた広大な砂漠であり、イニストラードに現存する銀は全て月からやってきたものであると信じている。聖戦士と司祭達は、特別に祝福された銀が狼男を傷つけ、他の怪物を遠ざける力を持つことを知っている。ゆえに月は大天使アヴァシンの聖なる力に関連づけられた。ある者はイニストラードの月面の黒ずんだ部分に白鷺の形を認め、ゆえに白鷺はアヴァシンのシンボルとなった。だが月が昇ることは防護魔法をくじき、狼男達を人間から狼へと変身させる。気まぐれな銀の月は人間を支えるとともに、その内にある最悪を呼び覚ます。


アート:Peter Mohrbacher

 季節が変化するとともに月は奇妙な影響を世界にもたらすのだと思われている。このためイニストラードの人間たちはまた、月の異なる容貌から世界の季節を名づけている。


収穫月

 イニストラードの秋である。橙から血の赤へと色の変わる巨大な月が夜空にかかる。昼は次第に短くなる。日ごとに気温は下がり、森は鮮やかな色に変化する。この季節には吸血鬼達が最も強くなると考えられている。収穫時、薄暮の後遅くまで農場で働く時にはしばしば焚火が起こされる。焚火は吸血鬼を遠ざけると考えられている。


狩人月

 イニストラードの冬である。寒気は大気から決して去ることなく、太陽の頂点は地平線に近い。最も長い季節であり、食料が最も欠乏する時でもある。多くの狩人達が食料を求めて自然の中を旅し、その結果、人間に対する攻撃は増加する。この季節には狼男が最も強くなると考えられている。この季節の間、より多くの人間達が森の中で狩りや旅をするゆえ、狼男の攻撃はさらに日常的となる。一年で最も多くの狼男に脅かされるとはいえ、狼男の攻撃は季節そのものに関係があると人間達は信じている。


アート:Ryan Yee

新月

 イニストラードの春とも言える、最も短い季節である。昼は最も長く太陽は最も輝き(それでも他の世界と比べて青ざめた色をしているが)、そして森では新芽が伸びる。人間達はこの季節を自分達の季節であるとみなしており、新たな生命と誕生に関連づけている。新月のもとで生まれた赤ん坊はより聖なる存在であるとみなされ、祝福されし眠りを得る、より多くの機会があるとされている。


イニストラードのデーモン

 遥か昔、イニストラードにおいてデーモン達は囁かれるだけの脅威であり、吸血鬼と人間の両方から怖れられていた。彼らは死に絶えて長いか、神話上の存在であると考えられていた。だがアヴァシンと彼女の天使達が現れ、彼女の存在とともに世界は新たな均衡状態に達した。吸血鬼、狼男、そしてアンデッドは人類と世界との調和を修復するために退けられた。だが彼らの退却による空白は、イニストラードの地獄の軍勢が現れる好機によって埋め合わされた。一体また一体と、デーモンと小悪魔の軍勢が現れはじめた。


アート:Matt Stewart

銀の首輪

 当初アヴァシンはこの新たな脅威を無視したが、デーモン達が力を蓄積するに従って、彼らを破壊しなければならないと知った。一体また一体と彼女は交戦し彼らを打ち負かした。だが彼女がデーモンを一体倒すたびに、新たなデーモンがその後すぐに出現した。デーモン達は純粋なマナからなる存在ゆえに、彼らを殺すことはできるものの異なる姿となって戻ってくる。それはただちに明らかになった。このことを悟り、アヴァシンは「破壊し得ぬ物は縛られるであろう」と布告した。そして彼女のシンボルは銀の首輪、首をあらゆるデーモンの類から守る、象徴的に鍛えられたものとなった。


Wayne Reynoldsによるコンセプト・アート

スカースダグ

 古代の悪魔崇拝から生まれたスカースダグは、今やスレイベンの高地都市を本拠地とする秘密の悪魔崇拝教団である。この秘密結社にはあらゆる階層の聖職者、貴族、商人達からなる人間のメンバーが所属している。小さいながらも、何世代にもわたってそれは続いてきた。悪魔グリセルブランドが他の全デーモンを失墜させようと力を得た時、スカースダグもまた名を上げた。グリセルブランドはアヴァシンとほぼ同時に姿を消した。支配者の不在の中、彼の目的に向かって邁進するようスカースダグの人間達へと言い残して。


アート:Clint Cearley

闇への隆盛

 かつてイニストラードには救世主がいた。暗黒を押しとどめていた天使が。今や人間達は食物連鎖の最下層にしがみつき、怪物に脅された世界で生き延びようともがいている。死者が大地を闊歩する時、司祭の祝福に何の意味がある? 友が獣の姿をした敵へと変身した時、どうやって信じることができる? 貴族的な不死人が生き血をすすって闊歩する時、生に何の意味がある? イニストラードの人間は影に包囲されている。そして彼らが生き延びる術を見つけない限り、影は彼らを覆い尽くしてしまうだろう。

 人類の物語は終わってしまうのか? プレインズウォーカーたちの行動だけが結果を語るだろう。


Vincent Proceによるコンセプト・アート

プレインズウォーカーのためのイニストラード案内 目次

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