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戦略記事

ReConstructed -デッキ再構築-

ゼンディカー次元統一タイトルマッチ

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ゼンディカー次元統一タイトルマッチ

Gavin Verhey / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV testing

2015年10月12日


 お集まりの紳士、淑女、その他の方々、少年、少女、エルドラージ・末裔の皆さま――ようこそいらっしゃいました。今、ここに、1000年に一度の大一番、スタンダード級ゼンディカー次元統一戦を開催いたします!

 ああああ赤コーナー、ゼンッッッディカアアアア! 大地そのものが「生きている」この次元は、変幻自在に姿を変えて戦う至高のシェイプシフター! かのロッキー・バルボアでも、ゼンディカーの厳しい自然を前にはひとたまりもない! さらに、まるで大地だけでは物足りないと言わんばかりに、その住民たちも屈強な精鋭揃い、過酷な環境を生き抜くクリーチャーたち! ゼンディカーの者たちはその牙に爪、帆凧、ありとあらゆる武器を用いて、どんな相手に対しても一歩も引きません! クリーチャーと大地、それらが手を携えてともに戦えば、あらゆる敵を打ち倒すことでしょう!!

 しかし、その例外となり得る「敵」が、今ここに。

 青コーナーから挑戦者――重さでは測れない階級無視! 舞台に上がってきた、ううううウラモグだああああ! まさに「マイティ・モグ」と恐るべきエルドラージの血族は、ゼンディカー次元を今まさに引き裂く! 侵攻方向に存在するあらゆるものを呑み込むそれらは、ゼンディカーの住民がどこへ逃げようとも天高く立ちはだかり、その命と希望まで踏み潰す! 中でも最大級の種族にとっては、この次元の武器など小さなハチにチクリと刺された程度にしか感じられないはずです!!

 さて、もう座っていいよ。カードを手にしてくれ。これから君たちは、陣営を選ぶことになる。「戦乱」に備えよう!

エルドラージ

 まずは挑戦者側から見ていくぞ。

 エルドラージは巨大で、強力だ――だが同時に、重い。「欠色」を軸にした素早い形もあるものの(例えば、何週間か前に赤黒の形を紹介したね)、ここではやっぱりウラモグという怪物を繰り出したいところだ。

 幸運にも、「ReConstructed」読者のみんなが私の想いにぴったりなものを届けてくれたぞ。

 そこからひとつ、シナジェル/Sinagelが送ってくれたものを見てみよう。

シナジェルの「エルドラージ・ミッドレンジ」
スタンダード[MO] [ARENA]
3 《
3 《
3 《
2 《燃えがらの林間地
4 《樹木茂る山麓
3 《溢れかえる岸辺
2 《伐採地の滝
2 《見捨てられた神々の神殿

-土地(22)-

4 《爪鳴らしの神秘家
4 《失われた業の巫師
3 《狩猟の統率者、スーラク
2 《連射する暴君
3 《忘却蒔き
2 《虚空の選別者
3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ

-クリーチャー(21)-
3 《森の占術
2 《珊瑚兜への撤退
3 《粗暴な排除
2 《彼方より
4 《書かれざるものの視認
3 《深海の主、キオーラ

-呪文(17)-

 エルドラージにとって理想的な組み合わせは、マナ加速を持つ緑だろう。それは納得できるね――だが、赤と青は何をしてくれるんだろう?

 その通り、このデッキに青が与える大きな影響は――正確には青と緑だが――《深海の主、キオーラ》だ。彼女自身は信じられないほど強力だから、あとは彼女に合ったデッキがあるかどうかだね――恐らく彼女は、溢れんばかりのエルドラージの大群とも力を合わせることができるだろう。

 例えば、次のような動きを想像してみてくれ。

 こんなに強烈な《絶え間ない飢餓、ウラモグ》の登場があるだろうか。まだ5ターン目に......しかも「最初の2ターンは何もしていない」のに!

 《失われた業の巫師》は、巨大エルドラージを唱えるためのマナ加速に使うことで大きな力を発揮する。そして、このデッキはその力を存分に活かせるようになっているのだ。《失われた業の巫師》から《忘却蒔き》へ繋げるのも凄まじいぞ!

 それから、《深海の主、キオーラ》は《書かれざるものの視認》へ繋げる助けにもなってくれる。《書かれざるものの視認》を用いた戦略は、『戦乱のゼンディカー』導入後のスタンダードで有力視されているものだ。巨大なエルドラージを素早く盤面に繰り出すという動きは対戦相手にとって極めて厄介であり、このデッキでは《深海の主、キオーラ》の助けを借りて4ターン目に《書かれざるものの視認》を唱えることができるのだ!

 言うまでもなく、「獰猛」を達成していればエルドラージと《狩猟の統率者、スーラク》を同時に繰り出すことも狙えるようになる。すぐに攻撃? 私も仲間に入れてくれ!

 青のカードとしては《珊瑚兜への撤退》も採用されているが、これについてはちょっと納得できない。《失われた業の巫師》のようなカードとともに使ったときの爆発力は相当なものだが、序盤に引けなければ何もしないことの方が多いだろう。

 それでは赤の方はどうかと言うと、《粗暴な排除》が採用されている......なんとも「粗暴」だね。こういったカードは本来ランプ系のデッキには噛み合わないのだが、《粗暴な排除》はいくつか残してもいいくらい時間稼ぎに役立ってくれるだろう。

 それから、《森の占術》で特定の土地を持ってくるのは悪くないけれど、私としてはもっと直接的にマナ加速ができるものを採用したい。そこで、《荒野の囁く者》の出番だ。大型のエルドラージを繰り出せば生み出せるマナが2倍になるこのカードも、まるで《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を唱えるために作られたかのような1枚だ。こいつは自身がどちら側に属するのか、よくわかっているのだろう!

 そして最後にもうひとつ、私にはマナ加速から繋げたい大型クリーチャーがいる。それは《龍王アタルカ》だ。《連射する暴君》も素敵だけれど、《龍王アタルカ》の方がずっと楽にダメージを飛ばすことができて、しかも強力なのだ。背景世界的には噛み合っていない気もするけれど、もしそれらが出会ったら、エルドラージはアタルカをも支配下に置きそうじゃないかい?

 ちょっと調整を加えると、以下のようになるだろう。

ガヴィン・ヴァーヘイの「ティムールドラージ」
スタンダード[MO] [ARENA]
3 《
2 《
2 《
2 《燃えがらの林間地
1 《梢の眺望
1 《大草原の川
2 《樹木茂る山麓
4 《吹きさらしの荒野
2 《溢れかえる岸辺
2 《開拓地の野営地
3 《伐採地の滝

-土地(24)-

4 《爪鳴らしの神秘家
4 《荒野の囁く者
4 《失われた業の巫師
3 《狩猟の統率者、スーラク
3 《忘却蒔き
3 《龍王アタルカ
1 《虚空の選別者
3 《絶え間ない飢餓、ウラモグ

-クリーチャー(25)-
2 《粗暴な排除
2 《彼方より
4 《書かれざるものの視認
3 《深海の主、キオーラ

-呪文(11)-

 「エルドラージ・ランプ」デッキを使うなら、この形から始めるのが間違いないだろう。現在のスタンダードでは、マナ加速を担うのは《不屈の自然》のようなカードではなく、クリーチャーたちだ。このデッキには十分な数のマナ加速が搭載されていて、重い呪文の数々を早い段階で楽に唱え出すことができるはずだ。

 さて、強大なエルドラージがこれだけのものを出してくるとなると、ゼンディカー側には何ができるだろうか? よし、見てみよう!

ゼンディカー

 次元として全体でエルドラージに立ち向かうゼンディカー側としては、「上陸」がもっとも優位な戦略だと思う。「上陸」戦略なら、クリーチャーとゼンディカーの大地が力を合わせて次元に迫る触手を打ち倒す、ということが表現できるだろう。

 では、「上陸」デッキはどんな形になるだろうか? よし、ザック・スタインブルック/Zach Stainbrookが送ってくれたものから始めてみよう。

ザック・スタインブルックの「上陸」
スタンダード[MO] [ARENA]
11 《
2 《
4 《燃えがらの林間地
4 《樹木茂る山麓
2 《吹きさらしの荒野
1 《血染めのぬかるみ
1 《荒廃した森林

-土地(25)-

4 《鎌豹
2 《竜使いののけ者
4 《獣呼びの学者
4 《下生えの勇者
3 《巨森の予見者、ニッサ
4 《オラン=リーフのハイドラ
3 《忘却蒔き
1 《ムラーサの緑守り
2 《怒りの座、オムナス
1 《龍王アタルカ

-クリーチャー(28)-
3 《アタルカの命令
2 《爆発的植生
2 《精霊信者の剣

-呪文(7)-

 「上陸」デッキの鍵となるのは、強打と速度だ。そのため、普通はゲームが進行するにつれて土地をプレイするのを控え、土地を置くときはその恩恵を最大限に引き出したい。そこで、マナ・カーブを軽い方へ寄せることで大きな後押しになるだろう。とりわけ今回のように、エルドラージの脅威へ立ち向かう場合に有効だ!

 私のメール受信ボックスには多くの「上陸」デッキが送られてきたけれど、その多くが《オラン=リーフのハイドラ》のようなカードに注目していた。確かに《オラン=リーフのハイドラ》も魅力的なカードだけれど、私の考えるスタンダードの「上陸」デッキに採用したいものではない――私は素早く強打を繰り出したいのだが、6マナ域にそれは望めないのだ。

 同様に《爆発的植生》のようなカードも「上陸」を2回誘発できるのは魅力的なのだが、それが大きな活躍を見せるのは、「上陸」を持つクリーチャーが戦場に並んでいて、それらの攻撃が安全に通ることがわかっていて、さらにクリーチャーを追加することや火力呪文を撃ち込むことが有効でない場合に限るのだ。あるカードを採用するということは、別のカードの枠を奪うことでもある。このデッキにおける《爆発的植生》は、別のカードの枠を奪うような力を発揮できないのだ。その一方で、《荒廃した森林》は完璧だ。これは《爆発的植生》と同じことができる「土地」であるため、デッキの枠を圧迫することなく必要なときにその力を引き出すことができる。

 私は以上のカードを抜いて、《マキンディの滑り駆け》や《噛み付きナーリッド》といったカードを増やしていきたい。そうすれば、ゲーム序盤でも一気に大きなダメージを与えられるだろう。さらに、それらの軽量クリーチャーは早い段階で戦場に出ているため、その後に土地を引き過ぎてしまった場合にも安定したダメージ源になってくれるはずだ。ややゲーム序盤に力を注ぎ過ぎている面があるため、ゲーム中盤まで「上陸」に頼って戦うことになると、ドラゴンやエルドラージが入ったデッキに食われてしまうだろう――だがゲーム序盤は、間違いなくこちらのものだ。

 それでも、ゲーム序盤「だけ」を見据えているわけじゃないぞ。《竜使いののけ者》や《巨森の予見者、ニッサ》を採用したおかげで、ゲームが長引いた場合や消耗戦になった場合でも、重いコストのクリーチャーを使わずに中盤を戦う力を持つことができるだろう。

 以上のアイデアを当てはめると、どうなるだろう? こんな感じはどうかな!

ガヴィン・ヴァーヘイの「ゼンディカーの上陸」
スタンダード[MO] [ARENA]
5 《
2 《
2 《燃えがらの林間地
4 《荒廃した森林
4 《樹木茂る山麓
4 《吹きさらしの荒野
4 《血染めのぬかるみ

-土地(25)-

4 《鎌豹
2 《鐘突きのズルゴ
1 《竜使いののけ者
4 《マキンディの滑り駆け
4 《噛み付きナーリッド
4 《下生えの勇者
3 《巨森の予見者、ニッサ
3 《アクームの火の鳥

-クリーチャー(25)-
4 《乱撃斬
4 《アタルカの命令
1 《火口の爪
1 《精霊信者の剣

-呪文(10)-

 この形なら、ゲーム序盤も中盤も力強く様々な角度から攻撃を仕掛けられる。《アクームの火の鳥》は、このデッキを象徴する1枚だ――戦場に出るなり3点で攻撃できるだけでなく、ゲームが長引いても粘り強く戦えるのだ。

 このデッキと先ほどのエルドラージ・デッキが対決すれば、必ずや一進一退の素晴らしい戦いが楽しめるだろう。さらに、これらを対になるデッキとしてそれぞれ鍛え上げ、ゼンディカーとエルドラージがどのような戦いを繰り広げていくのか見ていくのもいいだろう!

 ぜひ楽しんでくれ!


 何か意見や感想、質問があれば、気軽にツイートを送ったり、Tumblrで質問したりして、私に伝えてほしい。送っていただいたものには、必ず目を通しているよ。

 それではまた次回!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

(編集より:今週のデッキ募集はありません。)

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