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Play Design -プレイ・デザイン-

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リミテッド向けのバランス調整

Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年8月25日

原文はこちら

 「Play Design -プレイ・デザイン-」へようこそ。今回はわたしたちがリミテッド、特にドラフトのバランスをどのようにして取っているかについてお話ししようと思います。わたしたちがバランスが取るための手段はたくさんありますが、今回はプレイテストとフィードバックのための一般的な仕組みについてお話しします。

ステップ1:簡易評価

 「簡易評価」はカードをパワー・レベルに基づいて「バケツ」にグループ分けすることを指す用語です。サム・ストッダート/Sam Stoddardがこちらでもう少し詳しく触れています。

 その名の通り、簡易評価は簡易です。わたしたちは、特定のカードがどれぐらい強いか弱いかに全員が同意するために、カードについて議論し評価することに多くの時間をかけたりはしません。カードはとても頻繁に、ほぼ毎日変更されているので、カードに毎日パワー・レベルに基づいた評価を割り振ることは効果的な時間の使い方ではありません。簡易評価はわたしたちの目的をとても早く達成し、プレイ・デザイナーのチーム全体がこの作業に参加することで、わたしたちの見積もりと結果がそのセットでプレイテストするのに十分正確なものになります。

 では簡易評価はどのように行なわれるのでしょうか? 通常、3人から4人のプレイ・デザイナーがカードにそれをどの程度強いあるいは弱いと思うかに基づいて評価値を割り振ります。それからすべての評価値を平均し、それぞれの色を比較します。

 わたしたちはレアリティごとに各パワー・レベルのカードが何枚あるべきかという目標と、レアリティごとにどれだけ強いカードが存在できるかという決まりがあります。例えば、《サンドワームの収斂》のようなカードはアンコモンにはふさわしくありません。これは極めて影響が大きく強力な効果で、頻繁に出過ぎると楽しくありません。もう1つの例は《砂かけ獣》で、これはリミテッドでとても強力な効果をを持っていて、もしこれがコモンだと、赤はドラフトで他の色よりもはるかに魅力のある色になるでしょう。

 簡易評価のもう1つの働きは、カードがさまざまなパワー・レベルになるようにすることです。もしすべてのカードのパワー・レベルが同じなら、ドラフトは特に経験不足のプレイヤーにとって、とても難しくなってしまいます。さまざまなパワー・レベルのカードがあることはドラフトでプレイヤーに方向性を与える助けになります。もちろん同じようなパワー・レベルのカードはあり、そしてプレイヤーの技量とカードのシナジーはドラフトを新鮮で面白いものに保つ助けになります。

 評価値を割り振ったら、次のステップは会議室に座って数字の処理を行います。例えば青に強いカードが多すぎる場合、何枚か弱くします。そしてある色が弱すぎるように見えたら、何らかの方法で強化します。ここでの目標は、各色にわたしたちが割り振った各パワー・レベルのカードを同じ枚数にすることです。各色の目標が達成できたら、ドラフトの準備完了です。

ステップ2:ドラフトする

 プレイテストのドラフトはリミテッドのバランスにおいて最も重要な性質です。そのセットはパワー・レベルの評価で見る限り立派に見えるかもしれませんが、そのカードをプレイしてみないとそのセットが楽しいかどうかやシナジーがあるかどうかは分かりません。わたしたちは通常1つのセットのドラフトを最低週に1回は行い、そのドラフトで得たことやそのドラフトをしたプレイヤーの意見に基いた変更について話し合うための会議を行います。

 わたしたちは何種類かのドラフトを行います。マジックにはさまざまなタイプのプレイヤーが存在し、プレイ・デザイン・チーム以外の人々からの視点を得ることは大事です。

 全てのプレイテストが競技プレイヤーによって行われた場合、問題が起こる可能性があります。そのセットはドラフトするのが難しく、スパイク的で、とても複雑なものになるでしょう。わたしたちは全てのプレイヤーにその人たちのやり方でセットを体験してほしいので、デザインやクリエイティブ・チームの開発部メンバーを加えることは重要です。

 また開発部以外の人たちにもプレイテストを開放しています。「Magic Online」のデベロッパーがプレイテストに加わることで独特な「新しいプレイヤー」の視点がもたらされ(彼らは基本的にそのセットを初めて見ます)、潜在的なデジタル面の問題に注意を向けることもできます。

 またわたしたちはカスタマーサポート、ブランド、コミュニティ・チームのようなウィザーズの他のチームにもプレイテストを開放しています。これらのプレイヤーは必ずしもゲーム・デザイナーではありませんが、彼らがプレイテストに参加することは、複雑さのチェックのような事柄や、そのセットのメカニズムやテーマを機能させるようにする助けになります。

 これらのドラフトでは、プレイ・デザイナーは必ずしも勝とうとはしません。わたしたちの目標は物事を試すことと、すべてが機能するようにすることです。例えば、デッキの軸になる変なカードを初手でピックして、それが機能するかどうかを見るためだけにオールインするかもしれません。もしそれが機能しないけれどもそのデッキが楽しいなら、わたしはそのシナジーにもっと支援を加えるように提案します。また弱い色の組み合わせがどのようにプレイされているか、成功するために何が必要かをつかむために試すかもしれません。

 勝つことはこれらのドラフトで重要でではありません。わたしたちはそのセットのバランスを適切に取りプレイして楽しいものにしたいので、そのセットについて、できる限り多くのことを知ろうとします。


《火をつける怒り/Kindled Fury(HOU)》 アート:Craig J Spearing

 わたしたちが行うもう1つのタイプのドラフトが「場外」ドラフトです。このドラフトは過程のかなり遅くに、プレイ・デザイン・チームのメンバーによって行われます。これはそのセットが引き渡されて仕上げに入る直前の最後のドラフトです。

 このドラフトはバランスの最終チェックで、その目的は全ての色の組み合わせが競争力を持つようにすることです。わたしたちがこれを場外ドラフトと呼ぶのは、文字通り会社の外の手近なホテルに行って会議室を借りるからです。わたしたちはこのドラフトの時には集中を乱されたくなく、とても真剣にやっています。わたしたちはプロツアーやグランプリ2日目のようなプロ・レベルのイベントを再現しようとしています。このドラフトでの目標は最高のデッキをドラフトして勝つことです。

ステップ3:フィードバック

 各ドラフトの後、そのプレイヤーは何か意見を書いてそれを内部のwikiに投稿します。わたしたちはさまざまな種類の意見を求めています。いくつかの例を挙げると、

  • 楽しかったか?
  • そのメカニズムをどう思ったか?
  • 何をドラフトしたか? デッキは機能したか? デッキに足りないものはないか?
  • 強すぎるもしくは弱すぎると感じたカードはないか?
  • 個別のカードについて何か気づいたことは?

 全員が自分の意見を書いたあとで、そのセットのデザイン・チームはその意見について話し合ってそれに基づいたカードの変更を行うための会議を開きます。以下はわたしが実際に『破滅の刻』のために実際に書いたものです。

  • わたしは黒赤ミッドレンジをドラフトしました。シナジーはあまり多くありませんでしたが、クリーチャーと除去が混ざっていました。これは一般的な黒赤のドラフト・デッキにとても良く似ていました。全体的にドラフトするのは難しすぎず、ドラフトとゲームは楽しいものでした。
  • 赤はまだ弱すぎると感じました。他のクリーチャーに改善が必要だと思います。《ケンラの潰し屋》はまだ弱く感じましたが、今回は実際にデッキに入れてみました! でもあまりこれに感銘は受けませんでした。ただの《暴動の小悪魔》ですね。
  • 平均以上の枚数の『アモンケット』のカードをプレイしました。わたしはそれが赤が弱く、わたしのデッキが『アモンケット』に行ってから支援を必要としていたからだと考えています。間違っているかもしれません。
  • あの黒緑の余波のレアはわたしにはレアらしく見えません。もうちょっと味付けが必要だと思います。ものすごくアンコモンみたいです。
  • わたしは〈Shirking Slug〉(CB08)に行った変更が好きです。わたしは2枚プレイし、デッキに-1/-1カウンターを置く方法がたくさん入っていました。いつもすぐ除去されていたのでこのナメクジが実際に誘発することはなかったのですが、アンタップしていたならわたしのターンに6~9点のライフを得ることもできていました。今はいいところにあると思います。(注:このカードは最終的に《魂のたかり屋》になりました。このプレイテストの時点では、-1/-1カウンターを置いたときにライフを得ていました。)
  • 《ラムナプの遺跡》は強いです。強すぎるとは思いませんが、要注意です。これが6点ダメージを与えるのを何度も見ました。起動コストの変更を考えてもいいかもしれません。
  • わたしは加虐を楽しみました。攻撃を推奨して戦闘を面白くします。

 スタンダードと同じように、わたしたちはドラフト・フォーマットでも反復工程をたくさん行います。わたしたちはこの意見に基いてカードに変更を加えます。例えば、このフィードバックでわたしたちは赤が弱すぎることに気づいたので、赤のコモンのクリーチャーにいくつか強化を施しました。また砂漠が強すぎ対処が困難だと判断したので、同様に少し変更を加えました。

 この変更の期間の後、わたしたちはまたドラフトをしてこの過程を繰り返します。相当量の変更が行われたら、わたしたちは物事のバランスが取れて機能しないものがないようにするために簡易評価を行い、それからドラフトをする、という過程を繰り返します。場外ドラフトを行うことによってリミテッドを仕上げた後は、リミテッドに影響を与える可能性がある将来の変更に対して特に注意をします。

 理想的には、リミテッドのバランス取りが終了したときに、そのセットがドラフトで興味深い選択をもたらすようにしたいと考えています。わたしたちはプレイヤーがただ自分の爆弾レアをピックしてその色をやることを強制されるようにはしたくありません。わたしたちはプレイヤーがデッキの軸にできるような強力なコモンやアンコモンや、ドラフト中にプレイヤーが重要な決断をしたと感じられるようにさまざまなパワー・レベルのカードや、新しいプレイヤーがドラフト中にある程度の方向性を持てるように十分強く魅力的なカードを求めているのです。

 今週はここまでです! お読みいただきありがとうございました!

 ではまた次回。

メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)


今週のプレイ・デザイン・チーム

(今週はポール・チェオン/Paul Cheonがお送りします。)

 2か月前、私は配信者としての人生を辞めてウィザーズ・オブ・ザ・コーストのプレイ・デザイン・チームのメンバーになる決断をした。私は3年間フルタイムのマジック配信者をやってきて、そのあらゆる面を愛していたので難しい決断だった。私は自分の時間を作り、毎日マジックをプレイして、同じくマジックを愛する大勢の素晴らしい人たちと交流できるようになった。しかしウィザーズは(ダン・バーディック/Dan Burdickを通じて)私に彼らがマジックをどうしたいかについてのビジョンを売り込んできて、そして私はその一部となる機会を諦めたくはなかったんだ。

 私は最後の日に「配信を止める」ボタンを押す瞬間まで、配信がなくなったらどれだけ寂しくなるのか気づかなかった。そういうことか......それは終わった。これはここ数年間の私の人生の中において素晴らしい部分だったものであり、そして私は急に離れることになったのだ。あらゆる種類の疑問が私の頭の中に浮かび始めた。私はまた配信できるだろうか? 「Chlog」は終わっただろうか? 私はまだチェオンのトップ10にいるだろうか?

 まあ、結局は両立できるということが分かった。何人かの素晴らしい人たちとの一連の会議の後(ありがとうトリック/Trick、ケーラ/Kayla、ショーン/Sean、ダン!)、我々は初めての社員配信を立ち上げることができた。自宅のよりも10倍豪華なセットに座っても、信じられなかった。私は本当にマジック:ザ・ギャザリングの配信をウィザーズ本社からやったんだ!

 この配信ではさまざまな同僚と『破滅の刻』リミテッドやヴィンテージ、モダンで戦ったのでとても楽しいものだった(Tier3のデッキを使った)。この配信の見どころはアンドリュー・ブラウン/Andrew Brownとの対戦で4回《残酷な根本原理》を唱えたところだ。これは私が日常的に交流していた視聴者と再びつながるのに良いものだった。彼らは基本的に私が1日8時間、1人で座って配信している間の同僚であり友達だった。このことは私が本当になくしていたものはこれなんだと気づかせてくれた。過去に支援を表明してくれた全ての視聴者へ、ありがとうございました。

 さて、初のウィザーズ社員の配信は記録されて、その次は? もちろんもっと配信をする! 我々はこれを開発部内のさまざまなメンバーを取り上げてもっと定期的なものにしようと取り組んでいる。私の個人的な計画は、実際には私がふざけているだけのときにも私が配信の「仕事をしている」と彼らが思うように騙し続けることだ。次の配信でみんなに会えるのを楽しみにしているよ!

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