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研修生の楽しいデベロップ

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMRA "Pao" Kaoru

2012年9月28日

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 私の名前はサム・スタッダート/Sam Stoddard、ここウィザーズ・オブ・ザ・コーストでデベロップの研修生をやっております。知らない人に説明しますと、ウィザーズの開発部は素質がありそうなデベロッパーやデザイナーを研修生として雇う傾向にありまして、そこで私達はビジネスについて学んで、その成果を証明する機会を得ている、ってわけなんです。ビリー・モレノ/Billy Moreno、ザック・ヒル/Zac Hill、トム・ラピル/Tom LaPille、エリック・ラウアー/Erik Lauer、その他多くのデベロッパーが研修生としてその経歴を出発していまして、私もその一部であるということはとても嬉しく、誇りに思います。私はマジックを始めて18年以上経っていて(その数字はとんでもないことに聞こえますね)、プロツアーの記事を書いたり、ポッドキャストの司会をしたり、イベントのビデオ・カバレッジのチームの一員になったり――これらの全ては、研修生の空いている枠に応募してみないか?というデイブ・ハンフリー/Dave Humphreysのメールを導くことになりました。こんな誘いを断ったりします?

 私の研修生活はちょうど約4ヶ月前に幕を開けました。仕事の初日、基本的な仕事が終わった後に、私は、作業の準備のための机と、パソコン、それと椅子、書き入れるための箱いっぱいの無地のマジックのカード、そしてプリントアウトされた来年のマジックといったいくつかの物を与えられました。最後の一つはちょっと手ごわいものと呼びましょう。何日か前に、私はマジック・オンラインでアヴァシンの帰還のリリース・イベントに出て、そのリミテッド・フォーマットを学ぼうとしていました。それから、マジック2013、ラヴニカへの回帰、ギルド門侵犯、そして「Sinker」についての情報が流し込まれたのです。あなたは『マトリックス』のネオが100の戦闘の動作を脳にアップロードして会得したシーンをご存知ですか? 背景のポニーを武器化する方法についての多くの議論以外は、これはそんな感じでしたね。誰も脅かすつもりじゃないんですが、私達は近づいてます。多分、とっても、近づいてます......


《水馬/Aquus Steed》 アート:Warren Mahy

 デベロッパー研修生としての私の仕事に含まれるのは、フューチャー・フューチャー・リーグ(FFL)のデッキを作って回すこと、次のセットのリミテッドのプレイテストをいっぱいすること、そして多元宇宙にコメントをつけることです。これは本当に大変な暮らしですが、しかし誰かがそれやらねばならないのはわかっています。もちろん、ただそれだけではなく、もっと多くのものがあります。マジックのセットのデベロップは流れるようには終わりません――私達が作り上げるセットの全体的な質をよくするための多くの過程があり、それらの過程において多くのミーティングを行います。さらに、私達は新しいセットが世に出るたびにさらなる知見を得ます。当然、そのセットに関して満足できたことと、もっと上手くできたと分かったことが出てきます。私達は、その前者の数を増やし、後者の数を減らす為に日夜働いているのです。

 ラヴニカへの回帰のデベロップの仕事が始まった時にまだ私はウィザーズにいなかったので、その過程に関してはあまりお話できません。代わりに、ラヴニカへの回帰であなたがするのにそっくりな経験をしました。つまり、作る側ではなく使う側としての体験です。これから、私が新人のデベロッパーとしてどのようにセットについて学ぶという仕事に取り組んだか、カードの性能を試したか、そしてギルドの都に回帰する時に私が何を求めていたかについてお話しします。


《矢来の巨人/Palisade Giant》 アート:Greg Staples

ラヴニカへの回帰を体験する

 みなさんと同じように、私はPAX Eastのマジックのパネルで次のセットが再びラヴニカを舞台にすると聞いた時に興奮しました。ラヴニカは私のハートの中で特別な位置を占めており、旧ラヴニカ・ブロックはイニストラードが出るまでリミテッドにおいて私のお気に入りでした。それはまた、プレイヤーとしての私が一番強かったと感じたセットでもありました。研修生になった時に、わたしはラヴニカへの回帰では旧ラヴニカと同じ経験ができないのだという残念な思いで胸が締め付けられるようでした。

 セットを初めて体験することに関して、シート上のリストで見るのと、あなたの手にあるような実際のカードで見るのとには大きな違いがあります。全てのマジックのデベロッパーには、デベロッパーになった時点でまだ発売前ではあっても、デベロップはすでに終わっている、という「空白期間」にあたるセットがあります。私にとって、ラヴニカへの回帰はまさにそれでした。だからといって、私がオリジナルについて知っていたのと同じようにラヴニカへの回帰について知ることができないと言うわけではありませんが、しかし、それには少し時間がかかるでしょう。奈落(編訳注:開発部の冗談めかした別名)のほとんどの人と違い、私はまだラヴニカへの回帰のリミテッドでは1ゲームもしておらず、また、その期間のFFLを見てもいませんでした。私は皆さんと同じぐらいに、このセットの実際のカードを使ったプレリリースで最初のゲームをプレイすることに興奮しています。皆さんとの違いは、私の参加するプレリリースがウィザーズ・オブ・ザ・コーストで行われるということだけです。

 ラヴニカへの回帰のテキスト・スポイラーで私が最初にしたことは、最後のページをめくって土地をチェックすることでした。私はショックランドが帰ってきたのを見て興奮し、門のサブタイプを見て何が起こるかに興味を惹かれました。私にとってマナは旧ラヴニカの鍵となるセールスポイントの一つで、強力なマナ基盤は、特にマジック2013やイニストラードの「M10ランド」を加えれば2色や3色のデッキをプレイするのに問題がないことを示しています。何にせよ、この多色の世界が待っているのです。

 私がファイルを最初に通過したときに起きた、最も忘れられない興奮したことは、単にカードをプレイするのとは異なり、このセットがついに発売されたときに家に帰った私の友達がどんな反応をするかを分かっていることです。あるカードは見た誰かがキューブに入れるだろうと分かっているし、ある伝説のクリーチャーはすぐに友達の統率者デッキのスロットに入るでしょう。またあるジョニー的なカードをブレイクさせようとして私の友達のうち一人がすぐに取りかかることもわかっています。私がマジックについて好きなことのひとつは常に楽しさや新しいことを発見する興奮を共有することで、そしてその反対側の端にいることは興味深いものでした。私がここにいればいるほど、そして多くのセットに関わるほど、私が手をかけたカードに人々がどんな反応をするかに興奮していくことになるでしょう。

 仕事に戻って、私はカードファイルの残りに目を通し、私がデッキを組んで試してみたいカードに○をつけて、既存のアーキタイプに入るだろうカードに☆をつけました。その後、新しいテキストファイルを開いてキーボードを叩き始めました。


《ギルド渡りの遊歩道/Transguild Promenade》 アート:Noah Bradley

テストの手順

 一旦デッキリストをいくつか組みあげ、非凡なるデベロッパーのデイブ・ガスキン/Dave Guskinの作ったとても便利なステッカー印刷ツールの使い方を指導されたら、戦闘の時間です。私達がFFLで行うテストは、現実世界でプレイされる競技マジックとはちょっとした違いがあります。FFLでは、私達は物事を少しごまかすようになります。1人がマナの問題を抱えていては多くを学べないので、開発部流のマリガン手順は土地か呪文が0か1枚の場合はフリーマリガンです。そして、どちらが前のゲームに勝ったかではなく、ダイスロールに基づいて交互に先攻後攻を決めます。これは結局テストなので、単純に誰が誰を倒せるかではないのです。あなたが圧倒的なデッキを持って、恐らくはもう少し微調整できるカードを持った人を倒すという日もあれば、あなたは不利なマッチアップで負けることで、そのフォーマットに何を加えることができるかを見つけ出すという日もあります。

 今あなたに爆弾発言をします。マジックのデベロッパーであることは、一日中楽しくマジックをプレイできることがすべてではありません。その多くは確かですが、マジックの新しいセットを一日中楽しくプレイできるようにすることは真剣なビジネスです。デベロップの究極の目標はただ壊れたカードが確実に存在しないようにするだけではなく、マジックが確実に楽しめるようにすることです。その両方のポイントを共存させるためには多くのとても楽しくないゲームをプレイして、そしてより良い地点にどう調整するかを考え出すことが必要です。FFLでの成功したデッキ構築はあなたが結局あなた自身のデッキを急速に廃れさせるのを演出させることを意味します。私達は決して完璧にはなれません。来年のマジックで何がプレイされるかを推測する私達の人的資源は、そのセットで実際にプレイするマジックのコミュニティ全体にはまったく敵わないでしょう。しかし私達は各々のマジック・セットに誰もが持っている興奮する何かを確実にしようとしています。そして、一つの戦略が支配的になり過ぎないようにいくつかの安全弁を置いています。

 最初の数日は、あまりのデータ量を捌くのに大変でした。どのカードがどのセットにあったか、どれが変更可能だったか、どれが既に「書き付け」られているのかを思い出すのは困難でした。あなたが開けたブースターの中身はもう確定したものなので、現実世界ではそれらのことを伝えることは簡単ですが、ウィザーズの内部では少し違っていました。キャスティング・コストは変化するし、能力とキーワードはころころ変わるし、パワーやタフネスは不確定でした。何ゲームかプレイした後で前とちょっと違った性能のクリーチャーを見かける、なんて言うことも珍しくなく、その構成の方が楽しいかどうかを確認してから、毎週のFFLミーティングで推薦をします。いつの日かデベロッパー研修生になるかもしれない誰かのためへのプロのヒント。最初の週にあなたのテストに基づいてどのカードを変更するべきか提案する場合、プリンターに無いカードに注目するようにしましょう。ちょっとした修正で世界を磨き上げるような翼のあるサルの類のものをデベロップしているのでないなら、デベロップ段階のカードの方がずっと調整しやすいものです。


《不安定な装置/Volatile Rig》 アート:Mathian Kollros

成果の到来

 4ヶ月の中で、私はラヴニカへの回帰の意味するところについてとてもよく理解できたと思います。そして、それは来年に渡って構築フォーマットにインパクトをもたらすでしょうが、しかし私が間違っていると証明されることを楽しみにしています。マジックの美しい事柄の一つは、一旦セットが世界に向けて発売されたら、それのデベロップは私達の手から離れて皆さんの手へと渡ることです。

 デベロップの過程は、セットを意図し、そして豊かで楽しくなると私達が思う方向へと導きますが、しかしマジックは私達デベロッパーよりも巨大です。セットはしばしば構築の中で私達が見たことの無い方法で私達の目標を達成します。私は人々が新しく予期せぬ方法でカードを使う、もしくは私達が知らないシナジーの存在を見つけることを素晴らしく思います。それは全体としてどれだけマジックが生きて呼吸しているかを表しています。私達がプレイしたどの新しいデッキが現実世界に現れるでしょうか? どんな思いもよらないカードが古いフォーマットへのインパクトを持っているでしょうか? 人々はリミテッド環境でどんな反応を見せるでしょうか? それはまだ誰にもわかりません。しかし、私は皆さんがそれを見つけてくれると期待しています。

 次にこの記事で会える時まで、皆さんがラヴニカへの回帰を私と同じぐらい楽しめますように!

サム

ラヴニカへの回帰

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