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対策するということ

Zac Hill / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2012年4月20日

原文はこちら

 私が協力と対策のどちらに立っているかと言われれば、対策の側に所属している。そこに愛は少ない。醜く、遠慮のないものだ。それは(たいてい)私たちが問題を起こした、ということを表す。でもそれは問題を解決する。角を丸くし、誤りを正してくれる。適所を得た対策カードは、環境全体を均衡へと戻し得る。その一方で、へたな場所に置いた対策カードは、それが解決するよりも多くの問題を生み出し、まさにその不均衡によって環境を予測できない危険な方向に向ける。

 もし君たちが対策好きな人ならば――そう、少なくとも対策カードを使う人ならば――本日のお宝は君たちのためのものだ。

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 オーライ。確かにこのカードは君たちのクリーチャー・デッキのマナ基盤を整え、基本的に君たちの唱えるものを、望めば解決できるようにする。私たちはこれがプレイ可能なフォーマットのほとんど全てで際立つことを期待している。しかし、君たちには見定められると私は確信しているが、このカードはより大局的な見通しの一部だ。はっきり言うなら、ひとつ大きな疑問が確実に君たちの頭の中にある。最後の能力はどうして付けたんだ?

 うん、よくぞ聞いてくれた!

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 君たちには正直でいよう。私たちは《瞬唱の魔道士》に釘を刺したのだ。

 私はこの場に座って、君たちのことを見て《瞬唱の魔道士》がフェアなマジックのカードである、ということを伝えるつもりはない。同時に、この問題について同僚たちを咎めるつもりもない。そのカードのデザインはティアゴ・チャン/Tiago Chanと一緒に取り組んだもので、それがスタンダードで豊富な1マナキャントリップ持ちと結託した場合の強さを私たちが正しく理解する頃には、とっくに市場に出ていたのだ。それはスタンダードを牽制するために叩くべきものであったと、私たちは知った。どうやって叩くかが一番の難題だったのだ。

 それでは、その過程をもう少し深く掘り下げる前に、私たちが環境を制御しようと試みるカードをどのように作るのか、ということについてお話しするのに少しだけ時間を割こうと思う。ここに対策カードの持つ2種類の性質がある。ひとつは――こちらで詳しく探求した、《墓掘りの檻》のようなものは――、ある特定のカードまたは戦略の集合に対する、強力で、限られた範囲での、ピンポイントな回答だ。あるカードが制御できなくなる場合、檻のようなカードが保管庫から飛び出してそれらを強力に吹き飛ばし、メタゲームをしかるべき状態に戻すことができる。だが、もうひとつの方は、少しだけ捉えにくいものだ。そちらはメインから入れられ、使い道が多い。直接何かに対策するというだけでない、広い用途がある。私は《強情なベイロス》のようなカードをこのグループに分類したい――メイン・デッキに入れられて、何に対して使ってもいいが、その有用性は(例えば)誰かが君たちに《荒廃稲妻》を撃った時、急激に大きくなる。

 この両タイプはそれぞれ、長所と短所を持ち合わせている。前者のカードは、それが成し遂げようと意図した仕事を実際に成し遂げるものが多い。そのおかげで使い道の多さは問題にならないので、私たちは必要な効果だけを用意することができる。私たちはこういうカードが対策する場面から外れたところでプレイされることを積極的には望まないので、そこに大きく悩む必要はないのだ。短所は、その対策先が問題になっていないことが場合で、そうなると、貴重な財産と優雅さを無駄にし、屑のようなカードを作ることになってしまうのだ。この問題は、特定の状況での目的から外れたところにも多少は有効である後者のカードではある程度回避されている。さらに、このようなカードはメイン・デッキに入りやすいので、ゲームの大部分に関わることにより、それらが機能した場合にはメタゲームの変化により強く影響を及ぼすことになる。短所は、それらはより広く適用できるものでなければならないので、ある特定の狭い目的に念入りに対応することはできない、ということだ。それゆえ、それらの影響は私たちの見込みよりもはるかに広い範囲に及ぶようになりがちである。

 それがバランスを保つ、ということなのだ。

必要なのは決断だ

 オーライ。確かに私たちは瞬唱デッキと、青黒コントロールや青白《ムーアランドの憑依地》のように瞬唱を用いるアーキタイプにうんざりしている。しかし、このカードがこの問題にどう影響するというのだろうか? このカードはフラッシュバックについてなんにも言わないのだ!

 《瞬唱の魔道士》のようなカードを叩く場合難題となるもののひとつは、そのカード・アドバンテージだ。だから君たちは、それと戦う場合にそれに匹敵するアドバンテージを得る道を見出さなければならない。さもなければ、機会費用がゼロなんてハメになる。もしそうならなければ、問題の克服には成功するかもしれないが、結局解決する以上に多くの問題を生み出すことになるだろう。例えば、《墓掘りの檻》のようなカードは派手に《瞬唱の魔道士》をやり込めるが、その代償としてカードを1枚失う。その結果、もし私が瞬唱を使う側なら、君たちが檻を唱えてくれれば比較的ラッキーとも言える。《瞬唱の魔道士》を戦場に出すよりも前の段階で、対戦相手は私がフラッシュバックを使えないようにするために事実上のマリガンを強いられていることになるのだ。

 こういうカードを叩く際に他に難点となるのは、まさに本来もつ使い道の多さだ。もし私が、例えば、《ヨーグモスの取り引き》――明らかに《瞬唱の魔道士》より多くの実があるカード――のようなカードをやり込めようとする場合、私が取る手段はわかっている。《ヨーグモスの取り引き》は特定のことだけをするからだ。《瞬唱の魔道士》を使われたとしても、それはひとつの軸による価値判断にしかならない。《送還》か、キャントリップか、打ち消し呪文の再利用か、それとも《四肢切断》をフラッシュバックしてくるのか、他にもあり得る。その戦略を正確に特定するのは非常に難しいのだ。

 そこで、この問題に手を掛けるために私たちがしなければならなかったことは、腰を据えて瞬唱がしていたこと全てを把握することだった。私たちがその早い段階でわかったことは、《マナ漏出》がかつてのティアゴ・チャン自身とほとんど同じように、大暴れをしているものだ、ということだった。

 これに関する問題のひとつは、《マナ漏出》が単純にモダンでのデベロップ・ルール下で安心して印刷できるとされているものよりはるかに強力なものだということだ。剣が強すぎるのと同じ理由で――それらのコストは、作り手が装備品のコストのつけ方を本当に理解するよりも前に決められていた――《マナ漏出》は過ぎ去った時代の遺産なのだ。

 今では、私はこういった主張をするたびに議論になっている。判断するのが難しいからだ。次のような形で対話したことが何度あったことかわからない。

「君らはそうやってカードパワーを高めようとする側なんだね」

「うーん。私はそうは思わないなぁ。結局のところ、昔の環境を席巻していた呪文に今印刷しようとは決して思わないものはたくさんあるよ。《強迫的な研究》や、《魔力の乱れ》、《差し戻し》に、『印鑑』とかね」

「ああ、確かに、でもクリーチャーがどんどん良くなっているから、バランスが取れているんじゃないかな」

 この議論は真実を言っているので、見た目には意義のあるものだ。私たちは以前よりずっと強いクリーチャーを作っている。だが実態は、(ごく平均的な「金魚すくい」の状態を解決するのに必要なターン数に基づき、数学的に証明できるマジックの歴史のほとんどでクリーチャーが弱すぎるという事実以上に)単純に『クリーチャーより呪文の方が本質的に強い』ということだ。クリーチャーは「待機 1」を持ち、呪文は速攻を持っている。呪文に対応できるのはその呪文がスタックにある間だけだが、クリーチャーにはソーサリー速度でさえ対応することができる。だからクリーチャーを意味のあるものにするのは、スペルを意味のあるものにするよりもずっと大変なことなのだ。


《聖トラフトの霊》 アート:Igor Kieryluk

 とにかく、全ての問題は《マナ漏出》が《秘密を掘り下げる者》や《聖トラフトの霊》のようなカードに加えて《瞬唱の魔道士》の強さの大部分を生み出している、ということだ。その理由は、それらのカードが「イニシアチブ」――ゲームの形勢において対戦相手に行動を強いるようなポジション――を獲得するのを非常に簡単にし、《マナ漏出》がそのイニシアチブを維持するのを非常に簡単にするからだ。私が3ターン目に《聖トラフトの霊》を唱えた場合、《マナ漏出》は君たちに、私がアンタップする前に戦場に脅威を展開することを強いる。だが、君たちがそうしたところで、必要になるのは《蒸気の絡みつき》か《四肢切断》のようなものだけで――あるいは《幽体の飛行》のような回避能力を与える2マナのメカニズムだっていい――急にそのゲームを完全に取り返しのつかないものにしてしまう。

 その盤面にある脅威を非難することは魅力的だ。しかし、イニシアチブを得ているカードが《秘密を掘り下げる者》や《聖トラフトの霊》、《深夜の出没》または《ムーアランドの憑依地》、あるいは《戦争と平和の剣》や《ルーン唱えの長槍》といった装備品の一部を身につけた《瞬唱の魔道士》の脅威であろうとそうでなかろうと、それらを共通して繋ぐものとは、強力でコストの高い呪文を唱えて対抗することを不可能にする《マナ漏出》の存在なのだ。高コストの呪文は解決されようもなく、テーブルに脅威を投入するためにタップ・アウトしてしまえば、どうぞ強力なカードを何枚でも使ってひどい目にあわせてください、と言っていることになる。

 だが、そもそもの問題に戻ると、《マナ漏出》のようなカウンター呪文の伝統的な対策方法のひとつに「試し撃ち」として唱えることがある――唱える側としては解決できなくても構わないが、対戦相手はそれでも対応しなくてはならないようなものだ。普通は、一度カウンター呪文のひとつを「つぶせば」好機を得る。しかし、《瞬唱の魔道士》があると、一度《マナ漏出》を使うと、実際には最初の呪文よりも次に来る呪文の方を打ち消しやすくする。3枚残っている《マナ漏出》に加えて、墓地の《マナ漏出》を「使用可能」にできる《瞬唱の魔道士》が4枚あるからだ。

 どれだけの数のフューチャー・フューチャー・リーグの試合で、《マナ漏出》で呪文が打ち消され、続く脅威も封印されて、ずっと《マナ漏出》+《瞬唱の魔道士》を構え続けられたままでフラッシュバック持ちのカードを唱えられたり基本でない土地を起動されたりしたか、私にはわからない。

 ゆえに、私たちはその問題をつぼみのうちに刈り取ることを決めた。

我、魂を得たり。我が名は「兵士」

 私たちがエルドラージ覚醒でやらかしたミスのひとつは、ゼンディカーとワールドウェイクで登場したテーマに十分な愛を向けてやらなかったことだ。その乖離はあまりにも明確だった。だから私たちは、アヴァシンの帰還がいくつかの方法で、イニストラード・ブロックにおける部族テーマの探求に一役買うべきである、ということはわかっていた。


《ケッシグの狼の地》 アート:Eytan Zana

 私たちが気づいたことのひとつは、多くの部族デッキがアグレッシブであることを望みながら、構築する上でそのマナ基盤が小さな悩みの種となっていたことだった。例えば、狼男デッキはおそらく最初のターンに《狼に噛まれた囚人》と《無謀な浮浪者》のどちらも唱えたいが、その助けになる二色土地は、スタンダードにはひとつしかなかった。一方で、《ゲラルフの伝書使》を唱えたいと切望しながらもそれまでに青いクリーチャー全てを完全に無視するわけにもいかない、というようなゾンビデッキもある。ゆえに私たちは、これらのデッキを補うことのできる土地を作るべきだと決意した。その土地は君たちにクリーチャー・タイプを選ばせ、タップで無色マナか選んだタイプのクリーチャーを唱えるために使える好きな色のマナのどちらかを出せるものだ。

 そして、私たちは《マナ漏出》の問題を解決するためには、《すべてを護るもの、母聖樹》のようなものが本当に必要なのだと実感していた――誰もがプレイできて、ついでに《マナ漏出》の監視の中でも嫌なものを吹き飛ばせるような土地を。こうして、私たちは《魂の洞窟》となるそのカードに「母聖樹」のテキストを加えることを決めたのだ。

 これはカードの機能性を根本的に変えた。それは「部族」のニーズを満たすものにも関わらず、4体くらいしかクリーチャーを使わないデッキにある種の「保険」として役立ち、30体の場合と同じにする。それは同時に、君たちに脅威をプレイする順序を慎重に組み立てることを与えたのだ。テストの時に《魂の洞窟/Cavern of Souls(AVR)》で選ばれたクリーチャー・タイプの上位はこちら。

  • 人間
  • エルフ
  • スピリット
  • ゾンビ
  • イリュージョン
  • 多相の戦士
  • トロール(毎回厄介なものだった)
  • 狼(ふーむ)
  • ドラゴン(!)
  • 巨人
  • スフィンクス
  • 法務官

 ご想像の通り、このカードはもうプレイするのに躊躇しなくてよい中堅や高コストのクリーチャーの数を急増させた。

クリーチャー――触れてはいけない話題

 それでも、このカードの印刷による結果のうち無視できない巨大なものがひとつある。《マナ漏出》がタイタンを牽制する力のひとつであったことだ。《魂の洞窟/Cavern of Souls(AVR)》は、《原始のタイタン》に守られるようなところにある時に、最も恐ろしいものになる。タイタンを解決した後に対戦相手を倒すのはかなり簡単だからだ。


《魂の洞窟》 アート:Cliff Childs

 なるほど確かに、タイタンはいつも《マナ漏出/Mana Leak(M12)》や《雲散霧消》が刺さって攻撃できない世界で、練り上げられたプランを必要としていた。ただ座ってそれらを無視することなどできない。私個人的には、赤緑ランプが巨大な脅威をひとつ通すことに大きく依存している以上、《蔑み》や{警告:未公開カード}のようなカードでも同じくらいの成功を収めたと思う。もしさらに重いものがいいなら、《記憶殺し》で悪漢たちを全部抜いてしまうことができる。それは相手の手札の中から該当するカードを複数捕らえやすくなるので、環境のクリーチャーが大きくなればそれに比例して強力になるのだ。《大修道士、エリシュ・ノーン》と《グリセルブランド》のデッキの中に《堀葬の儀式》を入れたものを公平に分けてしっかりプレイすると、数ターンを準備に費やした後、大人気でファッティな脅威たちが全て永遠に追放されるような激しい戦いになる。

 それでも、私たちは《魂の洞窟/Cavern of Souls(AVR)》が全てのフォーマットで跡を残すであろうと、わかっている。これは《Force of Will》も《呪文嵌め》も派手に対策する。フェアリーデッキに対しては、脅威を片付けるのに重たい《ヴェンディリオン三人衆》に頼らざるを得なくする。統率者戦でも活躍する。多くのことを成し遂げる。だが、私たちは多くの場面で呪文が通る確信がある場合、マジックはより面白いものになると堅く信じている。さらに言うなら、このカードにも代償はある。デッキの脅威を散らせば散らすほど、戦場には《枯渇地帯》が置いてあることになるのだ。これは全てのデッキに何も考えずに詰め込めるようなカードではない。だが、これは問題を――確かにそこにある問題を――解決するようなカードで、スタンダードを正しい方向へとかき混ぜてくれる、と私たちが期待するようなカードなのだ。

 君たちのクリーチャーが、霊気に包まれた食卓の上を最後まで安全に旅することができますように。

Zac(@zdch

アヴァシンの帰還

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