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変身の変身

Tom LaPille / Translated by Shin'ichiro Tachibana / Translation Supervised by YONEMURA "Pao" Kaoru.

2012年1月13日

原文はこちら

 やぁ、元気だったかい?ひさしぶりだね。ザックにひきついだこのコラムを私もとても楽しみにしているのだけれど、今回はちょっとだけこの場をお借りするよ。

 私は闇の隆盛のデベロップ・リーダーだった。そして今日は今週はじまったプレビューの最終日だ。早くもプレリリースまであと2週間だ。今日の私のプレビュー・カードで混乱しないように心の準備をしておいてくれたまえ。と、その前に私のチームを紹介しておこう。彼らなくして、私がこのセットを作ることはできなかったのだからね。

トム・ラピル/Tom LaPille

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 まずは私だ。闇の隆盛までにMasters Edition III、Archenemy、Masters Edition IV、基本セット2012のデベロップ・リーダーを務めた。また、基本セット2010、ワールドウェイク、基本セット2011、ミラディン包囲戦、新たなるファイレクシア、イニストラード、"Hook"ではデベロップ・チーム、基本セット2011、イニストラードではデザイン・チームに所属していた。そして、直近までこのコラムの担当でもあった。昨年の11月にMagicのR&DからDungeons & DragonsのR&Dに異動となり、そこで私は次のD&Dコアルール設定部門で働いている。

マーク・ゴットリーブ/Mark Gottlieb

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 マーク・ゴットリーブはたくさんの役職を務めあげてきた。何年間かルールマネージャーをしていたのだが、彼の頭が沸きそうになってきたのでデベロップ・チームへと交代することとあいなった。マークはミラディン包囲戦のデザイン・リーダーだった。あなたに特に知っておいてもらいたいのはマークの頭はちょっとばかり構造が違うということだ。いかに構造が違うかというのは、彼が書いた記事の数々を見れば分かる(リンク先は英語)。彼はジョニーの独創的なデッキ構築コラムを長期連載し、その独創性を闇の隆盛でも遺憾無く発揮してくれた。私が問題解決のための気の利いたテキストや、スペースが空いたレアを埋めるカードが必要となったとき、マークはたいていその要望に答えてくれた。

ザック・ヒル/Zac Hill

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 2009年にザックがプロツアー・ホノルルで初のベスト8になったとき、直ちに彼が引き抜かれた。彼はその能力を製品デベロップ・チームのフューチャー・フューチャー・リーグにおいてい遺憾なく発揮し、今でも休むことなくFFLのデッキを作り続けている。このプロジェクトにおいてザックは闇の隆盛デザイン・チームの責任者だった。今回の工程でいつもと異なる点は、ザックは重要な要素であると感じたときはその要素を守ったり、そうでないと思った時には容赦なくそれをばっさり切ったりという作業を数多く繰り返していたことだ。

 私は名誉なことに、現在Zacが初めてデベロップ・チームのリーダーを務めるセットで、そのチームに名を連ねている。彼のするMagic 2013の素晴らしい仕事ぶりを目の当たりにして、実際のカードでドラフトができるのが大変待ち遠しいかぎりだ。

デイブ・ハンフリー/Dave Humpherys

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 デイブはマジック開発部デベロップ・チームのマネージャーだ。デイブはさまざまなカードゲーム製品の裏方をするとともに、プロツアー殿堂入りも果たすという特殊な経歴を持ってウィザーズへ入社した。デイブはウィザーズに入って間もないということもあって開発会議においてあまり目立った発言はなかった。しかし技術的な決定において彼の意見を欲したとき、彼はいつも過激で鋭い意見を返してくれた。デイブのデベロップ・リーダーとしての初仕事はアヴァシンの帰還でお見せしよう。

ケン・トループ/Ken Troop

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 ケンはDuels of the Planeswalkers and the mobile app(リンク先は英語)といったマジック開発部のデジタル部門のマネージャーだ。ケンは私のデベロップ・チームに、紙としてのマジック開発部の工程を学ぶために在籍していた。その時点で彼にカードゲーム開発の経験はなかったのだが、彼はゲーム製品で多くのマネージャーをしていたこともあり、問題があればそれを恐れずに指摘してくれたので、私が次に何をするべきか考える際に非常に助けになった。

闇の隆盛の隆盛

 小型エキスパンションの作成にあたって、デザイナーと開発者には大型のときとは異なる問題がある。大型セットはそのブロックにおいて創造性、メカニズム、環境の志向を示す。イニストラードではゴシックホラー風、フラッシュバック、そして特殊な低速の墓地利用デッキが使える環境であり、闇の隆盛はそれを満足できる形ででそれをフォローする必要があったんだ。

《魂を捕えるもの》/《恐ろしい憑依》 | アート:Lucas Graciano

 しかし全く同じものではだめだ。新鮮な感じをだすために、ほんの少し味付けをする必要があった。その挑戦というのは大型セットのその志向に新規性をもたらすため、正しい方法を見つけることだ。

 マーク・ローズウォーターによるイニストラードの両面カードデザインの調整により、われわれは容易に新規性を見つけられたことに感謝している。 イニストラードの両面カードは、両面がともにクリーチャー(またはプレインズウォーカー)だった。闇の隆盛では、片方ないし両方の面がクリーチャーでないものを持つ両面カードがいくつか存在する。

 昨秋、私はイニストラードの両面カードにクリーチャーだけがフィーチャーされてることにフォーラムで不満が投稿されているのをみかけた。さらにはクリーチャーだけだと、もしかしてアイデアを使い尽くしたんじゃない?という意見すら散見された。我々はイニストラードのデザイン中の非常に早い段階で両面カードに多くの可能性を発見していたため、これを楽しみながら見ていた。マーク・ローズウォーターは、我々が闇の隆盛でそれを越えて拡大することができるように、この方法を選んだのだ。彼の選んだ方法はとても正しかったと思っている。

 簡易性という観点からもこの点について論じることができる。両面カードは既存のマジックのカードたちと非常に異なっており、単語数が多く、多大なルールサポートが必要だ。もっとも単純な両面カードでさえ、最初は多くのプレイヤーは疑問を浮かべただろう。しかしながら私はRPG部門で働いた経験から、異なる視点からゲームを見る事ができるようになった。そこで別の角度から話そう

 ちょっとお時間を拝借して...。ここに指輪物語を一言にまとめた一文がある。

「2人の小さな人が世界を救うために魔法の指輪を大きな火山に投げ入れる。」

 こんな文に感動できるかい?この文に基づいた大ヒット小説や映画の三部作を想像できるかい?あなたが受けた感動を友人と共感するために

 この文章だけが書かれた1枚の紙を友人に渡せるかい?そんなことはもちろんできないだろう。

 多くのものを通して、マジックのカードは物語をなしている。フレイバーテキストで物語を綴ることは可能だが、より印象的な物語をカードテキストを用いることで紡ぐことができる。私にとってプレイヤーがどう感じるかを決定し、テキストボックスをそう感じられるように作ることは、マジックのカードの作成を通してプレイヤーに本当の物語を伝える大切な機会だ。

 面白くあるために、物語には起承転結が必要だ。指輪物語と同様、ミラディンの傷跡ブロックのストーリーを一文で表してしまうとと非常につまらないものになる。「ファイレクシアがミラディンを征服した」という一文は興味がそそられるかもしれないが、十分な物語が語られる余裕がなければ拍子抜けになってしまう。

 素晴らしいフィクションを書く人たちは、いかにさまざまな要素が作品の全体的な出来にに影響するかを理解している。例えば必死の追跡のシーンを記述するのには短い単語を使い、終わりなき陰気な退屈を記述するのには長い単語を使い、突然何かが起こったことを記述するのに「突然に」などとは書いたりしない。

 マジックの各カードは下半分を文章欄が占めている。変化を伝えるにはその内部メカニズムを変更しなければならない。変更するということは、今まで通りではだめだということだ。

 先に述べたように、我々は両面がクリーチャーでないカードを闇の隆盛に入れた。以下に2つの例を挙げよう。


画像をクリックで変身

《生の杯》/《死の杯》 | アート:Ryan Yee

イニストラードでは収録余地の不足により除外されてしまったのだが、同様に新しくて独特な変身メカニズムを持ったホラーテイストを伝えるいくつかのカードがあった。

画像をクリックで変身

 しかしながら、うれしいハプニングで開発中に収録余地ができてそれらの両面カードを入れられるようになった。闇の隆盛の開発をはじめて約1か月ほどたったときだろうか、私はセットの神話レア枠に華やかさが欠けていると感じた。しかしながら私は華やかな神話レア作成に疎く、そこで1時間半ほどアーロン・フォーサイスとマーク・ローズウォーターを《Mishra's Workshop》へと連れ込んだ。私たちは様々なアイデアを出し合い、試行錯誤の末、今回のセットへ含まれることになったいくつかの神話レアを生みだすことが出来た。

《忠実な聖戦士》/《不浄な聖戦士》 | アート:Ryan Pancoast

 私は会議で神話レアの狼男を誕生させたいと考えていた。それをせずに両面カードのある世界から移動することはもったいないからだ。違う面へ変身することで能力が誘発するカードをAaron Forsytheが思いついた、それが今回のプレビューカードだ。このアイデアは、狼男のために非常にマッチしていると言えるだろう - その感じを味わうために《村の鉄鍛冶》の絵とテキストをチェックしてみて欲しい。アーロンのものはとても複雑だったので、私は満足できずさらにもう一つ作ることにした。狼男が変身するたび物を壊す?実にいい!これがその狼男だ!

画像をクリックで変身

 私としてはメカニズムとしては面倒だがわかりやすいカードだと思った。だがこのカードを作ったときアーロンはそうは考えなかったようだ。そのカードには2つの文章欄で実に96語もあるのだ。なんとそれは《Ice Cauldron(ICE)》のオラクルの語数よりも多いのだ。こいつは化け物だ!

《苦悩の脱走者》/《狼男の荒らし屋》 | アート:David Palumbo

画像をクリックで変身

 こういったカードをファイルに入れるときには面白いことが起こる。最初に、人々は、私が夜の面を提示するまでに昼の面の内容を忘れる。そして彼らは笑い出す、そこにはデザイン的に詩的な面白さがあるからだ。そしてファイルへ入れる。その後、人々はこのカードがいかにおかしいかマルチバースへコメントを残し、それを私がファイルから取り除くようにと願う。じきに私が本気であることを認識し、実際にそれをテストプレイして、我々は各パラメータが異常だということを理解する。おおっと。

《高原の狩りの達人》/《高原の荒廃者》 | アート:Chris Rahn

 だが私が《高原の荒廃者》を愛していなければこの検閲を免れなかっただろう。私はパターンマッチング、詩的なデザイン、突発的な複雑さの塊のようなものが好きで、このカードはそれらの私のツボにはまっている。それは不幸なことに同様に何人かのプレイテスターのツボにはまっていた−それがスタートした時にくらべて、少しパラメータがよくなった。私にとって「少し」は「非常に大きい」を意味する。なにしろこのカードは変身するたびに何度も何度もメリットを得るのだ、少しの数字も繰り返すたびに得られるものが増えていく。

 他のデベロップ・メンバーとは違い、私はルールやテンプレートを楽しんで扱っている。このカードは新しいメカニズムの用語の定義を通してルールチームと真剣に話し合う機会を設けてくれた。例えば「〜が変身するたび/When 〜 transforms」という誘発型能力が昼の面に書かれていたとき、これは昼の面が夜の面に変身するときに誘発するのか、それとも夜の面が昼の面に変身するときに誘発するのか、といった具合だ。こうして最終的に決まった定義に私はとても満足している。

 《高原の荒廃者》の昼の面に書かれた誘発型能力については私の考えていた最良とまではいえないものの、これ以上を望むのは酷だろう。

 闇の隆盛において、私は総合ルールに新たなエントリーを加えた。基本セット2012で加えられた呪禁は数えない、それはマーク・グローバス/Mark Globusがデザイン・リーダーをするセットだったからだ。だが「変身」のルールは完全に私の手で加えてやったのだ!

 広大な可能性にもかかわらず闇の隆盛の両面カードはその偉大なスキームに対して枠に収まったおとなしい形となった。それらのカードはすべて出るべき面が定められ、必ず他方へと変身するパーマネントなのだ。いつの日か、再び両面カードをつくるだろう。われわれはインスタントやソーサリーも作れる。出る側を定めないカードも作れる。または全く変身しないものも作れる。だが、それを作るときには新規性があるカードを出すだろう−われわれは常に新しいものを追い続けているからだ。

 みんなには私が《高原の荒廃者》や闇の隆盛の他のカードを制作したのと同じくらい楽しんでほしい。プレリリースまであと2週間。私はレントンにあるShane's Cards and Comicsに行くつもりだが、残念ながら長居はできない。私がいない間に人間を1、2人生け贄に捧げといてくれ。そうすればそう遠くない未来にまたお会いできるだろう。

闇の隆盛 2月3日発売

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