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Latest Developments -デベロップ最先端-

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印刷までの長く苦しい道のり

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年4月21日

原文はこちら

 デザインとデベロップの過程全体および編集とフューチャー・フューチャー・リーグ(FFL)に費やされる時間は約2年です。その時間の中で、デザイン・チームはとても多くの個別のカードを作り、その中で実際にファイルに進むものはほとんどなく、そして印刷されるものはさらに少なくなります。デザインが会議で出したカードが大きな変更を加えられることなく印刷まで進むのは極めて稀な出来事です。

 今回の「Latest Developments -デベロップ最先端-」では、カードが印刷されるまでに最初からどのような道のりをたどるか、いくつかのカードが実際に印刷される理由、そして実際に取り除かれるものについてお話しします。

カードを作る

 開発部でカードが作られる主な方法は2つあります。1つめは会議(それらは通常穴埋めをするか、コンセプトを証明しようとするカードです)で、2つめは宿題です。チームに所属する人たちは、より複雑なアイデアやトップダウンなどのブレインストーミングを求められ、そして我々は会議を通してどれを試すかを考え出します。全体的に、我々はセットのデザインをしながらたくさんのカードを作ります。

 マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterの見積もりでは、作られたカードが印刷される確率は1%をはるかに下回っていて、これは恐らく正解ですが、少し語弊があります。印刷されるのは実際にテストされたカードの1%以上ですが、会議や宿題を通して実際にはテストされないカードが多く作られます。それらの多くが{2}{G}3/2にそのセットのキーワード能力をつけただけのものや、{R}で「2点のダメージを与える」ものがセットのテーマでアップグレードされたものです。

 すぐに変動したりボツになるカードのほとんどはコモンで、それらはそのセットのリミテッド環境の必要に応じて大きく変化します。それらのほとんどは超エキサイティングなカードではなく、会議の時に複数の人が同時に提出することがあります。頻繁に、あるキーワード能力やメカニズムを自然なデザインにつけただけのものが適正な出発点になります。我々が高名のテストを始めたとき、1マナ1/1と2マナ2/2に高名をつけたものはほぼ明らかな出発点でした――これはどのキーワードをそれらにつけるかを考え出すためだけのものでした。

 我々がより高いレアリティ、具体的にはデッキの軸になるアンコモンや面白いレアに取り組んでいるときは、それらを何度かリミテッドで試せるように十分長い間維持しようとしました。あるカードが1回テストをしたあとで間違っていると感じたとしても、そのカードに適切なデッキを見つけるには数回かかることもあります――その後我々はそれが難しすぎて機能しないか、そのカードをどのようにしてそのセットに適正なパワーレベルに変更できるかを決めることができます。

 独特でクールなデザインにはセットには合わない多くの価値があります。我々は現実的にどこにでも行ける《至高の評決》や《謎めいた命令》の鉱脈を何枚か求めています。どちらもそれらの収録されたセットのメカニズムとは関係がなく、ギルドや部族の戦略を気にしない人が手に入れて彼らがやりたいことが見つけられるクールで強力なデザインです。

 またこれらはどこにでも行けるのでボツになる可能性が高いカードでもあります。我々はこれらを各セットに何枚か欲しいと思いますが、究極的にはそれらのローテーション期間はとても長いので、我々はセット独自のテーマとメカニズムのカードを印刷するようにする必要があります。これにより我々は新しいマジックのカードを長い期間見つけ続けることができるようになります。我々がセットに強いテーマを持っていなかったなら、マジックを毎年興味深いものにし続けることはとても難しくなります。

カードがボツになる理由

 ここまでカードの作り方について少しお話ししてきましたが、今度はカードがどのようにしてボツになるかについてお話しします。セットがデザインからデベロップに引き継がれるとき、我々はそのセットのファイルを完成したセットに存在することになる確定事項のリストとしてよりも見取り図として用います。我々がセットの中で維持しようとする特定の「デザインのお気に入り」は認めていますが、他のカードはほとんど固定されていません。セットの他のほとんど全ては融通が利き、そのセットを通しての体験が可能な限り楽しいものになるためだけに存在しています。

 カードがボツにつながる理由は、

  • メカニズムがそのセットから取り除かれた
  • メカニズムが加えられて空間が必要になった
  • リミテッドのバランス再調整が必要になった
  • そのカードが構築フォーマットに悪い影響を与えた
  • 構築フォーマット向けのメタゲーム・カードを作る必要ができた
  • そのカードがまだ印刷されていないセットの別のカードに似すぎていた
  • そのカードがデベロップがFFLのためにそのセットに加えたい別のカードに似すぎていた
  • そのカードがスタンダードの何かを壊してしまった
  • そのカードがルール的に機能しなかった
  • そのカードがデジタルで機能しなかった

 時々、我々があらゆるカードを管理して維持することはかなり驚異的なことに感じられます。デベロップは可能な限りのものを保存し、デザインがそのセット内のセットに求めているビジョンを維持するために最善を尽くします。可能な限り我々はデザインがそのセットで本当に楽しんだものを維持しようとし、可能な限り多くのカードの原型を保とうとします。

 究極的には、セットからボツになったカードはそのカードの利点が判断されたのではありませんが、個別のカードよりもそのセット全体のほうが重要であり、我々はセットをデベロップを通してたくさん変更する必要があるという認識があります。デザインとデベロップ過程の大部分は楽しくなり得るもの、最初にプレイするときに楽しいもの、30回目に楽しいものを調査することです。ボツになった多くのカードは我々に完成版のカードがどのようになるべきかを教えてくれます。

カードが変更される理由

 テセウスの船とは、船の部品をどんどん別のものに置き換えていき、全ての部品が置き換わってもそれはまだ同じ船であるといえるのだろうか? という思考実験です。どこかの時点でそれは元の船でなくなるのでしょうか? マジックのセットはカードがどれくらい変更されてもまだ元のカードと同じなのか、という同じような疑問を抱えています。

 たとえば、以下のようなカードがあると考えてください。

〈ビルダー・ボブ〉
{1}{W}{B}{G}
伝説のクリーチャー――人間・戦士
[カード名]が戦場に出たとき、4点のライフを得る。
4/4

 これが{1}{W}{B}{G}4/4から{W}{B}{G}3/3になった場合、同じカードでしょうか? {2}{G}{G}4/4になった場合はどうでしょうか? この能力が「あなたのコントロールするクリーチャーの中で最も高いタフネスの値と同じ点数のライフを得る」に変わるとどうでしょうか? 完全に新しいものを作って、楔の伝説のクリーチャーというアイデアだけがそのままだとどうでしょうか?

 この手の質問は、デザイナーごとに、そしてそのカードが達成しようとすることによってもカードごとに異なります。プレインズウォーカーは個別の能力が全部変わるかもしれませんが、呪文を参照するならば同じカードだと考えるには十分かもしれません。これがなぜ我々が実際にどのカードを誰が作ったかを記録しなかったり個別のカードにクレジットを乗せない理由です――そのようなクレジットでみんなを満足させるには、あまりに多くの変更とグレーゾーンが存在します。

 『テーロス』に取り組んでいるとき、デザインは以下のようなカードを引き渡してきました。

〈ヘラクレス〉
{2}{G}{G}
伝説のクリーチャー――人間・戦士
[カード名]はあなたが12個以上のパーマネントをコントロールしていない限り攻撃したりブロックしたりできない。
12/12

 このカードのポイントはトップダウンのヘラクレスであること、そして12という数字は彼の成し遂げた試練の数を参照しているということでした。では、このカードはどの時点で変更されすぎて同じカードではないとみなされるのでしょうか? 数字を変更とクリーチャー・タイプの人間からの変更(これはハイドラになり、FFLの理由で《霧裂きのハイドラ》に変更される前にこのカードの物語を弱めてしまいました)はデザインの明確な意図を曇らせてしまいました。これは我々がデザインの意図を保ち、みんながカードに満足するようにしようとする複雑な種類の問題です。

 多くのセットが変更されるので、デザイナーやデベロッパーとしての個人の仕事の成果が完成版ではほとんど残っていないように感じられることはよくあります――しかしその仕事の多くは無駄ではなく、それはインスピレーションを与え完成したセットのカードの礎となります。

カードを変更する方法:ケーススタディ

 私がセットをリードするときにやることの1つは、デザインから引き渡されたときのそのセットと、デベロップが終わったときの各カードと、完成版の各カードのコピーを印刷することです。これは私がセットの過程を経て物事がどのように変更されていったかを思い出す助けになり、新しい開発部メンバーにどんな種類の変更が想定できるかということについての良い例も兼ねています。これはその過程の全体で私が何を考えていたかについての良い備忘録です。

 お分かりのように、最初の列の多くは空白です――これらはオリジナルのデザインの引き継ぎからの直系の子孫を持たないカードです。皆さんに私の『マジック・オリジン』のバインダーを、その生涯の異なる時点でどのように見えるかを理解してもらえるように、何ページかお見せします。

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 〈Gideon's Fortitude〉は最初、魔巧を達成していると強くなるプレインズウォーカーの「得意呪文」のようなものでした。十分いいアイデアでしたが、最終的にとても基本的な理由で変更されました――魔巧による強化に十分な意味がなく、赤白の高名横並びを推奨するデッキでは十分プレイできませんでした。このカードの完成版(《キテオンの戦術》)はキテオンが非正規軍のリーダーであった彼の物語に結びつけることと、『ニクスへの旅』の《捨て身の抵抗》の回顧をよりよく助けました。

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 〈Jace's Path〉が《スフィンクスの後見》に変更されたことは、どれぐらいカードを大きく変えても本来のアイデアのままにできるかというよくある例です。ショーン・メイン/Shawn Mainが『マジック・オリジン』を引き渡したとき、それぞれのプレインズウォーカーがそうなるために進まなければならない道を表した「Path」カードのサイクルがありました。これらはそれぞれ関連した試練を持った、とてもデッキの軸になるカードでした。私がファイルを引き継いだとき、私はそのアイデアを維持しましたが、最終的にはその次元を表しそのプレインズウォーカーの基本戦略と機能して、具体的な試練は持たないデッキの軸となるカードにしました。

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 後の《炎魔の精霊》である〈Man of Impeccable Timing〉は、デザイン・チームがほぼ正解にたどり着いていたカードで(高名持ちの速攻クリーチャーはこのメカニズムを表す良い方法でした)、我々はただ数字をいじるだけに長い時間を費やしました。我々は5マナ3/2が弱すぎ、しかし4マナ3/1もまた弱いことを発見しました。しかしながら、どちらも同じ問題を抱えていて、タフネスが増えることが大きな除去耐性となるので、これで殴れればとても強烈で、特に5マナのほうはより顕著でした。最終的には、我々は高名の恩恵をどれぐらい大きくするか、そしてこれが卓のどちらかにいるとどれぐらい楽しいかをたくさん学びました。

 またこのページでは〈Chandra's Scorching〉(後の《焦熱の衝動》)が最終的にマナ・カーブに適応させるためにどのように物事を変えるかを表しています。本来の呪文には何も間違いはありませんでした。我々は単に序盤の高名クリーチャーに対してうまく機能するように《ショック》を必要とし、またこれは構築フォーマットで興味深い可能性を作り出すのにも役立ちました。

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 〈Giant Enchantress〉は当時、『テーロス』とより良く結びつくエンチャント・テーマであった赤白デッキに恩恵をもたらすように作られたカードでした。このセットに取り組むにあたって、我々はいくつか横道戦略を減らす必要があり、最終的に赤白のこの側面を取り除き高名にだけ焦点を当てることに決めました。私はそれでもフィニッシャーになれる大きなクリーチャーが好きで、結局この巨人をランプに基づいた赤緑でうまく機能する〈Landslide Elemental〉(そして《地震の精霊》)に変えました。この土地を生け贄に捧げる能力はほとんどフレイバーだけのためで、最終的にはより分かりやすくするためにボツになりました。

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 〈Woodrager〉はカードのクールなアイデアがルール的にちょっと変な挙動をし、大抵統率者戦のようなフォーマットで深刻な問題を作り出す例です。このカードは十分良さそうに見えますが、マナ変換能力によってこれを好きなだけ大きくできるので、我々はこれをカウンターを得るバージョンに変えました。最終的には、我々はこれを小さい数にして規模を大きすぎないようにすれば、クールな構築フォーマット向けカードになるかもしれないと判断しました。

 《ニッサの天啓》もまた興味深い事例で、これはこのセットの主なデベロップが終わったあとに作られました。我々は「マジック・デュエルズ」のいくつかのアートを発注し、そしてこれはニッサの物語の重要な部分を表していて他のものを表していないとして戻ってきました。私はストーリー・チームとアート・チームと一緒にこのセットで何か見逃していてこのアートが使える物語がないか考え出しました。私は最終的にデザインに合わせたアートではなく、このアートに合わせたカードをデザインしました。

 今週はここまでです。来週は不朽のデベロップについてお話しします。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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