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Latest Developments -デベロップ最先端-

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リミテッドの強さ対安定性

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年1月27日

原文はこちら

 マジックのマナのシステムには多くの問題があり、その中で最も目立つのはそれのせいで起きるゲームにならないゲームの数です。これらのゲームにならないゲームがあることによって、デッキを組む際にはそれらを最小限にするようにすることが可能になり、そしてそのようなデッキを組むべきということになります。さらに、その方法に関する決定がマジックのデッキ構築の面白さにおいて大きな部分を占めています。

 これがどんなデッキでも4マナ以上のカードだけを大量に使うようにはしない理由です――それらのカードは必要な時に、あるいは全く、プレイできないかもしれません。6~7マナの呪文を唱えて相手を圧倒したいのなら、7~8ターン目にそれを撃つチャンスが実際にあるような計画を立てたほうがよいでしょう。後半のターンに入ってからのチャンスを最大限にするためには、デッキの中に理論上弱いデッキを入れる必要があるかもしれません。

 このマナ・システムがプレイヤーにデッキの安定性を取るか強さを取るかを選ばせる圧力はマジックの大きな強みです。そのような働きを他の方法でもできたかもしれませんが、私にはそれをこれほど楽しい方法でできたかは分かりません。それに取りかかるときに、強さと安定性の対立がマジックのデッキ構築においてプレイヤーの最大の問題になるでしょう。私はこの質問がマジックが過去23年間成功してきた理由の大部分であり、我々が取り組み続けているものだと思います。

 私は個人的に、数日後や数週間後で何度もデッキをプレイして微調整することができないので、この矛盾はリミテッドで最も興味深いということを発見しました。この強さと安定性の問題はドラフトしているときやシールドデッキを構築しているときに何度も繰り返されるので、自分の戦略が何であるかを急いで見つけ出さなければいけません。前回のドラフトでの正しい選択は今回は正解ではないかもしれません。

 今回の「Latest Developments -デベロップ最先端-」では、強さと安定性の対立について問題を提起するために、我々が使うリミテッドのいくつかの興味深いところについてお話しします。

ファーストピック

 ドラフトを機能させ、プレイヤーが主体性を持つようにするために重要な点のひとつが、ドラフトで興味深いファーストピックを作り出すことです。

 もし全てのレアが超爆弾カードで唱えるのが簡単だったら、あなたの色は最初に開けたパックによってほとんど決まってしまします。同時に、もし全てのレアがとても弱かったら、人々が最強のコモンのある色に時間を費やしすぎ、そのフォーマットが程度の差はあれどとても早く解明されてしまうことになります。我々はそこに紛れを求めています。各色が正確に均等な強さでないとしても、人々は開けた、もしくは回ってきた強いレアによって弱い色に向かうことの見返りを得ることができます。

 全体として、レアは平均してアンコモンよりも強く、アンコモンは平均してコモンよりも強力です。あなたは多分ファーストピックでコモンを取ることは半分もない(これはドラフトの多様性を増やすことの助けになります)でしょうが、そうすることは間違いではありません。最初のパックに強いレアやアンコモンがなかったからといってひどく罰せられることはありません。そのファーストピックはあなたをいずれかの方向に向かわせることはありますが、あなたがどの色がドラフトされていないかに注目できる控えめなものになるかもしれません。

 では、『霊気紛争』の1パック目で起こるかもしれない選択肢を見てみましょう。

 これには興味深い選択がたくさんあります。

 《極上の大天使》は確かに爆弾カードですが、多くのマナがかかります。ファーストピックとして大いにありえますが、あなたは長期戦を望むデッキを得ることに契約することになります。

 《才気ある霊基体》は単体で見ればその次に強力ですが、黒のダブルシンボルは生半可なコストではありません。最終的に黒いデッキになったとしても、このカードをマナ・カーブに近いところで唱えるのには実際問題があります。4~5ターン目に出てきてもとても優秀ですが、ゲームのかなり後半まで唱えられないのであればこれの強さの多くを逃しています。

 《ショック》は最もエキサイティングではありませんが、基本的にゲームのあらゆる場面でかなり優秀な用途の広いカードです。加えて、もし戦略が少し横にそれても常にこれをタッチしてデッキに入れることができます。さらに、残された戦略は最も幅広く、高速でも低速でも、どのようなマナの配分でも問題なく、赤をプレイするなら《ショック》は強力です。

 理想的には、このような選択肢はプレイヤーがある色や戦略を好む場合その助けにもなります。ファーストピックで受けの広さよりも単体での強さをずっと高く評価するプレイヤーもいます。

 単に個人的好みだけではなく、最も高いレベルのプレイにおいては他にも考慮すべき事柄があります。誰が同じ卓に座っているのか、そしてあなたはどのような成績を必要とするのでしょうか? もし卓の全員があなたよりもリミテッドが強いなら、爆弾に頼ってやり取りの少ないデッキに向かいたいと思うかもしれません。あなたのデッキがよほどひどいものでない限り卓の誰にも負けないと思うのならば、手広く受けて平均的にデッキの質を高くする安全なピックをするかもしれません。また成績も関わってきて、特にグランプリでは3-0と2-1の差が大きい場合が何度もあります。トップ8に残るために3-0しなければならないのなら、強いデッキを作るためにドラフトの序盤に大きなリスクを背負うのが正解かもしれません。

 このような決定は、1つのフォーマットのドラフトを繰り返し深みを増すことと、そのフォーマットがもたらすリスクと利益の種類を深く学びたい人々に報いることの助けになります。

タッチするか否か

 強さと安定性の曲線を試すための最も有名な方法は、ドラフトでいくつの色をプレイするか考えることです。

 あなたがドラフトした全ての呪文を特定の色マナの必要なくプレイできるところを思い浮かべてください。最終的に黒と赤の最強の除去、青と白の最も優秀な飛行クリーチャー、そして緑のファッティを使うことになるでしょう。パックで開けたどの爆弾カードも使うことができます。全てのシナジーが機能するデッキは作れないかもしれませんが、カードの平均的な強さは並外れたものになります。

 マジックにこのような完璧なマナが存在しない理由は、単体で最強のカードをプレイすることと、最も安定したマナ基盤を持つことの間の興味深い選択を作り出すためです。我々は多色中心(金色)のセットでタッチすることを強く推しますが、理論的にはあらゆるフォーマットで5色デッキはプレイできます――ただそのカードを引く必要があるだけです。一番強いカードを全部デッキに入れることは可能ですが、それを手札に抱えたまま負けてしまうかもしれません。

 使う色が増えるほど、このゲームの性質上デッキの安定性は失われていきます。安定性を最大にしたいなら、単色デッキを使うことができます。適正な枚数の土地を引けないかもしれませんが、単色デッキをプレイすれば間違った組み合わせの土地を引くことはありません。これの問題点は、デッキでカード・プールのわずかな部分しか使えず、対戦相手のカードの質に対抗するのに苦労することになるという点です。

 2色はほとんどのセットで最適なバランスである傾向にあり、(特にどの色が空いているか把握するために、何とかして広く受けようと十分な時間待っている場合)ドラフトのカード・プールの選択に膨大な幅を与えてくれます。何ゲームかで片方の土地を5枚引いてもう片方を1枚しか、もしくは全く引かずに負けることもありますが、勝ちの平均数は2色が最も多くなり、色が増えるごとに少なくなっていきます。

 理論的には3色以上をプレイする時の勝率は下がっていきますが、全てのドラフトに与える影響が同じだということではありません。3色目にする価値のある質の高いカードが出るかもしれませんし、驚異的な強さのマナ基盤があるかもしれませんし、ドラフトが本当に失敗して、勝つ可能性が最も高いのが使える中で最強のカードを入れてマナがうまく機能することを祈るしかない状況もありえます。


《果敢な爆破/Daring Demolition(AER)》 アート:Svetlin Velinov

 全てのセットにはマナを整えるカードが何枚かは入っています。それは単純にタップ状態で戦場に出る土地かもしれませんし、ごく普通の《進化する未開地》かもしれませんし、オベリスクのサイクルのような大きなものかもしれません。

 これらのカードはそれ自体がかなり質が低い傾向にありますが、安定性を高めることによってデッキの強さを向上させます。タップ状態で戦場に出る土地を18枚使いたいとは思いませんが、少なくとも1~2枚入っていることによって恩恵を受けない2色デッキはほとんどありません。同じように、3~4色に十分な強さのカード(恐らく3色以上のカードもあるでしょう)があるなら、デッキの残りを確実に唱えられるようにするためにオベリスクのような弱いカードを何枚か使うかもしれません。

 また、タッチするための隠された秘密の方法もあり、それはただ単に遅いデッキをプレイするだけです。アグレッシブなデッキを使って平均6ターンで終わらせたいなら、デッキで見ることができるカードはわずか14枚前後です。そうではなく、11~12ターンかけたいのであれば見られるカードは18枚、もしくはおそらく何枚かカードを引けたりデッキから探してくるカードがあるのでさらに多くなります。突如として、3色目のカードをプレイすることが功を奏する可能性が高くなります。

 ドラフトしている時、もしくはデッキを作っている時でさえも、使う色をいくつにするかの決断は常に簡単なものではありません。最適な数はドラフトごとに変わり、カード・プールや見かけたカードも関係してくるかもしれません。

 時にはなめらかなデッキがつまづくことはめったにないと信じて大きくて派手なカードを無視することで得をすることもありますし、また時には3パック目に出てきた何枚かの強力なカードを取って3色にすることで得をすることもあります。これはつまり何度も繰り返されている最適な戦略が何であるかを判断することによって得られる恩恵は、全てのドラフトで同じではないということです。

サイドボードのカード

 ドラフトのトップ・プレイヤーとただ単に強い人を分ける要素のひとつは、サイドボードの使い方です。昔はドラフトをして使うのに満足するカードを23枚見つけるのは困難でしたが、現在はほとんどの人がドラフトのデッキから何枚かのカードを外す必要があります。そのようなわけで、状況が限られるカードをパックの中盤で取ることは、パックで他に取るものがないときにそれが取れるように願うよりもいいアイデアです。

 強力なアーティファクト破壊もしくはエンチャント破壊のために、使うのに不満がある極めて平凡なカード、もしくは2パック目中盤の4枚目の4マナ域をあきらめるのは名案かもしれません。そのカードを使わないにしても、ドラフトの後半でサイドボード用に何かを取っておくと成績の平均が高くなるかもしれません。

 しかしながらサイドボード・カードには対策カードやシルバーバレット以上の意味があります。十分な数のプレイアブルなカードが増えたことで、かなりの数のカードをカットし、そしてそれらのカードにサイドボードとしてアクセスできるようになります。

 露骨に聞こえるかもしれませんが、あなたはどれぐらいの頻度でサイドボードからアグレッシブなデッキに対して{1}{U}1/3を入れたり、7枚目の土地を置こうとするデッキに対して《精神腐敗》を2枚入れたりするでしょうか? プレイアブルなカードが多くなったことで、シグナルを読み違えてプレイするカードが十分でなくなってしまう可能性があるときに使われていた技術は存在しなくなり、基本的に影響の少ないような意識した判断に置き換えられましたが、より楽しくなりました。

 我々はリミテッドで最弱のカードでさえ、それが何らかの理由で構築フォーマットに求められているのでない限り、サイドボードから入れられるようにしています。《祝祭の開幕》のような弱いカードでさえ《踏み荒らし》効果を持つデッキと対するとき大きな助けになりえます。

 我々の最高のリミテッド・フォーマットは、全てのカードに少なくとも1つはサイドボードで使われる状況があるフォーマットです――それがたとえはるかに速いデッキを相手にしてゲーム後半にたどり着けるようにするための減速材の役割であったとしてもです。

 今週はここまでです。来週はMファイル『霊気紛争』編をお送りします。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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