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Latest Developments -デベロップ最先端-

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プレイテスト・カード

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年12月2日

原文はこちら

 こんにちは、そして「Latest Developments -デベロップ最先端-」にようこそ。今回はマジックの日常業務にとってとても重要な物理的オブジェクト、プレイテスト・カードについてお話しします。

プレイテスト・カードの構造

 最も基本的なプレイテスト・カードはおそらくもっとも分かりやすいもの――白紙です。

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 我々がこれを使うのは、デザイン初期に多くのカードを時間をかけてデータベースに投げ込んでいられないときがほとんどです。通常これらは新しいメカニズムをテストするときや、フューチャー・フューチャー・リーグですぐにデッキにカードを入れたいときに使われます。これは至ってシンプル――ペンを使ってカードに書き入れるだけです。

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 カードを実際にデータベースに入力して印刷するとなると、そのカードに必要とされる情報を全て埋める厳格な過程が存在します。この後でそのカードに書いてあることの詳細について説明していきますが、まずはそれらがどのように印刷されるか見てみましょう。

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カード番号とセット名

 常に多くのカードが進行中であり、名前はよく変更されるので、これはとても重要です。カード番号とセット名を書くことによって、そのカードが過程のどの段階にあるのか興味を持った場合にそれがどこにあるのかすぐに特定することができます。カードの問題点を指摘するなら、それがデザイン初期なのか後期なのかの違いは大きなものです。

カード名

 これについては後で詳しくやります。ここでの目的は人々が会議でそれについて話せてどんな動きをするのか十分覚えやすいものをつけることです。それは素敵なものでもかまいませんが、カードを上手く説明するべきです。〈ザックの受賞したジャグ・バンド/Zac's Prize-Winning Jug Band〉は楽しいプレイテスト名かもしれませんが 、少なくともセットがデベロップに入る時まではその価値よりも注意を散らす可能性のほうが高いでしょう。

 我々がステッカーを貼るときには同じ色のカードに貼ります。我々はカードを校正する過程の一環として、そしてスペルスリンガーのためのストックを持っておくために大量のカードをプリンターから入手します。この余剰は結局この目的のために使われることになります。プレイテスト・カードにはアートが(どころか実際に多くは色さえ)ないので、我々はステッカーを貼る下地のカードを通して色を認識します。これは特にドラフトでパックを広げたときにどれに集中する必要があり、どれを無視することができるかをすぐに把握する助けになります。

 これの最大の問題は金色セット(実物の金色カードはそのカードに含まれる色を反映します)と、『戦乱のゼンディカー』のような枠に強い「制約」があるセットです。『戦乱のゼンディカー』は色付きカードを使った場合、そのカードが欠色を持っているかどうかがとても伝わりづらかったので特に大変でした。無色のカードを使うと今度はパックに目を通すのに時間がかかります。

マナ・コスト

 我々のステッカー印刷ツールはこれを自動的に行い、右上の数字を見慣れたシンボルに変換します。我々は使用するためのシンボルをいつも用意できているわけではありません。(『新たなるファイレクシア』や『ゲートウォッチの誓い』のように)新しいシンボルが必要な新しいマナを使うことに決めた場合、我々はよく文字でマナ・コストを貼り付けます。

 たとえば、『ゲートウォッチの誓い』のプレイテスト時、我々はK(「コジレック・マナ」なので)を「無色限定」マナ・コストを表すために使い、ステッカー印刷ツールはCを他のシンボルとして使っていました。これなら、たとえそのマナ・コストを初めて見たときに説明が必要でも、そのマナ・コストが何であるかが簡単に伝わります。我々はツールをアップデートする機会があり、そしてこのメカニズムが定着することが分かっていたので、すぐにそれを変更しました。

クリーチャー・タイプ

 ファイルで作業をする人はこれらが十分に妥当であり、混乱するようなものが何もないようにします。たとえば、「クリーチャー ― ウィンナー・犬(訳注:Wiener Dogはダックスフンドのこと)」ばかりのセットは楽しいかもしれませんが、プレイテストで実際のそのカードよりもクリーチャー・タイプに関して多くのコメントを得ることになるかもしれません。普通の、クリーチャー ― 猟犬にしたほうがいいでしょう。

 クリーチャー・タイプが(何らかの理由で)セットで意味がある場合、我々はクリエイティブにこれがそのタイプである必要があることを知らせるために、クリーチャー・タイプの後に感嘆符を入れます。クリエイティブがアートの描写を書いて発注したときに〈飢えたゾンビ〉が〈飢えた人間〉になるかもしれないので、単純に名前をつけるだけでは不十分です。もしそのセットやそれと同時期のスタンダードにある他のセットにゾンビ部族の必要が何もなければそれでもかまわないかもしれません。しかしそのカードをゾンビ・デッキに入れてFFLでプレイしている人がいたら、突然それが人間に変わった場合、彼らのデッキが混乱するかアートの再発注をするかのどちらかになるかもしれません。

 しかしながらクリーチャー・タイプが必要とされるのはスタンダードとリミテッドだけではなく、そのクリーチャー・タイプを確定させる他の理由もあるかもしれません。たとえば、『マジック・オリジン』に取り組んでいるとき、私は《潮流の先駆け》をスタンダードのためではなくモダンやレガシーのマーフォーク・デッキ向けに「マーフォーク!」にしました。一方で《死橋のシャーマン》はリミテッドのエルフ・デッキのために「エルフ!」になりました。

文章欄

 ここの目的は文章欄に文章を書きすぎないことと、物事が機能するために十分同じような書式にすることです。もしカードが話し言葉すぎたり間違っている場合、人々はそれを間違ってプレイします。もしそのカードの重要な部分を注釈文のどこかに埋めてしまうと、人々はそれを見逃してしまいます。我々はプレイテストでプレイするカードとして明確で簡潔な説明を求めています――現実世界のカードのテンプレートと一致するかどうかは問いません。

 さて、デザイン中のある時点でおかしなテンプレートが発生することがあります。『イニストラードを覆う影』のデザイン時、「ライブラリーの上からX枚のカードを墓地に置く」を違う書式で実験して、「死亡する」と同じ方法で人々が直感的に分かる言葉を見つけられないかどうか探してみました。「死亡する」は多くの人々が瞬間的に反応できます――すでに彼らがそう言っているからです。ライブラリーを削ることを「忘却する」と言うのはそれと同じようにはいきません。そして「削る」は奈落のみんながマジックの専門用語に通じているから通じているだけで、改めてこのゲームを手に取った平均的な人々には通じないでしょう。いつの日か我々がライブラリーを削ることを簡単に表す言葉を思いつく可能性はありますが、数年おきに挑んではいるものの、いまだそれにたどり着けていないのは明らかです。

パワー/タフネス/忠誠値

 これは至ってシンプルです。ここは創造的すぎない傾向にある領域であり、カードのこの部分は事実を反映しているべきです。

良い名前、悪い名前

 プレイテスト名の要点はただ機能的であることだけではありません。我々はゲームを作っていて、それは楽しんでいるということです。我々はそれを読む人に何かを思い起こさせる名前を使うことを好みます。

〈おっとサイ〉
{7}{G}
ソーサリー
トランプルを持つ4/4のサイ・クリーチャー・トークンを1体戦場に出し、居住を行う。(あなたがコントロールするクリーチャー・トークンのコピーであるトークンを1体戦場に出す。)

 《角呼びの詠唱》は、結局のところマジックの世界観と基調によってこのカードに適正なカード名です。しかし「おっとサイ」はかなり可愛らしく、このような素晴らしい名前は人々がこのカードを実際にテストを行うようにする良い方法です。

 またこれはトップダウンの要素を持つセットでも重要です。『テーロス』ブロックはギリシャ神話を多く参考にしていました。我々はよくそれらのトップダウン・カードに人々がアートの助けがなくても元ネタが分かるようにするためとても正確な名前をつけました。たとえば、このカードは『テーロス』のファイルに長い間ありました。

〈トロイの木馬〉
{4}
アーティファクト・クリーチャー ― 馬
防衛
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手1人はこれのコントロールを得る。
あなたのアップキープの開始時に、各対戦相手はそれぞれ白の1/1の兵士・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。

 しかしこのカード名はクリエイティブの観点からあまり素晴らしくない歴史を暗示していました。現実世界の神話とテーロスの神話を分けたいというクリエイティブ・チームの要望によって、このカードはこうなりました。

〈異国の地のライオン〉
{4}
アーティファクト・クリーチャー ― ライオン
防衛
[カード名]が戦場に出たとき、対戦相手1人はこれのコントロールを得る。
あなたのアップキープの開始時に、各対戦相手はそれぞれ白の1/1の兵士クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。

 ここでのギャグはギリシャ神話のように木馬ではなくライオンであるということでした。問題点は、プレイテストのバージョンを馬ではなくしたら即座に、人々がこれを使うのを止めてしまったことです。アートと人々にそれを説明することによってその混乱を避ける機会もありましたが、最も熱心なプレイヤーに対してしかその選択肢がありませんでした。マジックを新しく始めたばかりの人がこれをパックから引くこともありえますし、そうなるとこの元ネタを全く見逃してしまうかもしれません。

 我々がプレイテストでカードにつける名前は重要です。ここで分かったように、全体が全く機能しなくなります。

 プレイテスト・カードの目標は完成版のカードに求める物事を伝えることであるべきです。何か伝えたいものがあるなら、プレイテスト名はそれを明らかにするべきです。それが重要な役割を持っているなら、プレイテスト名はそれを伝えるべきです。しかし、おそらくそれよりも重要なのは、プレイテスト名は人々をつまづかせたり混乱させたりさせるべきではないということです。火力呪文は火力呪文らしく聞こえるべきです。打ち消し呪文は打ち消し呪文らしく聞こえるべきです。そして我々はカード名で人々を惑わせたり間違わせたりしないように気をつける必要があります。

 こんなカードを思い浮かべてください。

〈稲妻々〉
{R}
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。[カード名]はそれに2点のダメージを与える。
再々(このターンあなたが2体以上のクリーチャーで攻撃している場合、[カード名]をあなたの手札から唱えたとき、コピーを1つスタックに置く。あなたは新しい対象を選んでもよい。)

 ええ、このギャグはこれが《稲妻》ではなく〈稲妻々〉だということです。再々に合わせています、お分かりですか? 誰もが《稲妻》が何かを知っていることは除きます。このカードは一見すると《稲妻》にとてもよく似ています――1マナで、ダメージを与えます。この名前は素敵ですが、シールドやドラフトのデッキを組むときやこれを唱えるときに多くの人々を間違えさせます。これはファイルの中にあると楽しいものですが、プレイテストを台無しにしてしまう恐れがあります。

 結局のところ、我々はカードを作ることを楽しんでいますが、データベースに入力する楽しいタイピングを良いプレイテストの手順よりも優先しないよう気をつける必要があります。我々はプレイテスト・カードが明確なものであり、変更前の古いカード(現在我々が簡単に新しいカードを印刷できる理由です)、もしくは書式や名前によってカードの挙動を間違えている人によってプレイテストが汚染されないようにしたいと考えています。

 今週はここまでです。来週は一問一答で皆さんの質問にお答えします。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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