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開発秘話

Latest Developments -デベロップ最先端-

『イニストラードを覆う影』一問一答

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『イニストラードを覆う影』一問一答

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年5月13日


 今回の「Latest Developments -デベロップ最先端-」は――皆さんの質問にお答えする一問一答の時間です!

 今のスタンダードって青より緑のほうがドローが強くない?

 現在は――その通りです。これは我々が時間をかけて調整しようと取り組んでいる事柄です。我々は緑にいくつかのとても強力な状況に依存するカード・ドロー(たとえばあなたのコントロールするクリーチャーと同じ枚数や、最も高いクリーチャーのパワーと同じ枚数のカードを引く)を与えてきていて、素直なカード・ドローと比較してマナを軽くすることができます。《ヴリンの神童、ジェイス》は我々を青い素直なカード・ドローに関して臆病にさせ、スタンダードにおける青いカード・ドローの総数を我々が好むよりも少なくさせました。また我々は他の多くの色に、それが厳密なカード・ドローではないにせよ、青のドローよりも強力なカード・アドバンテージを得る手段を与えました。

 青は最終的にはスタンダードでのカード・ドローの王者に返り咲きます。ただ新しいセットが出るまで時間が必要なだけです。

 スタンダード/リミテッドで動かすのに一番問題があったのはどの部族?

 スピリットです。我々はそれらのための素晴らしい種もなく(後から思うと《雷鳴のワイヴァーン》をスピリットにしておけばよかったのですが)、それらのプレイスタイルは我々が適正にしにくいものでした。我々はフェアリー・デッキではない飛行クリーチャー満載のアグレッシブで撹乱的なデッキを求めました。結局のところ、これはカジュアルと競技を考えてもスタンダードにデッキがない『イニストラードを覆う影』唯一の部族です。

 とはいえ、我々は『異界月』に全ての部族を支援するのに値するカードを用意してあります。

 デベロップの中で最も遅くに変更されるのはどんな種類(タイプとかレアリティ)のカード?

 間違いなくプレインズウォーカーです。これらはほとんどのカードよりも(攻撃できるので)干渉しやすく、調整できる部分が多く、そして我々はすべての変更をそのキャラクターに合ったものにする必要がありました。プレインズウォーカーがそのセットで最後に変更されるカードになることは稀ですが、デベロップの最後の数週間で多くの変更が行われます。

 開発部は青のデザインをどう見ているんですか? あなたがたが白で何年も苦労していましたが今は青がそれを引き継いたように思えます。

 青は去年ある問題を抱えていました。青は『イニストラードを覆う影』期のスタンダードにおいて、メインの色としてよりもサポートの色として目立っていながらも依然としてとても強力です。その理由の一部はジェイスがとても強いからなので、我々は他の青いカードを推すことにしました。そして他の一部は《骨読み》、《苦い真理》、《薄暮見の徴募兵》、《ゴブリンの闇住まい》、《集合した中隊》など他の色にスタンダードで最強のカード・アドバンテージを得る手段を与えたことでした。我々は青のできることの拡大に関して確実に取り組んでいて、スタンダードのデッキのメインカラーとしてより競争力があるようにしています。

 《道理を超えた力》に関して。これを強化型《巨大化》としてテストしましたか? 例えばターン終了時まで+2/+2で昂揚すると代わりに2個カウンターを置くなど。

 いいえ、我々は昂揚インスタントやソーサリーの強さの差分を少なくともレアより下に止めようとしました。基本的に、昂揚カードを唱えたほうがいいときに昂揚ボーナスがどれだけ強くても、そのカードを唱えないことが正しいプレイになるようにはしたくないと考えました。

 セットのサイズを大きくするとリミテッドのデベロップにどう影響するの? もっとアーキタイプの種をまけるようになる? もっと単発デッキの中心になるカードが増える?

 枚数が増えることはセットのリミテッドにとって良い傾向にあります。4枚の追加のコモンはそれほどでもありませんが、20枚アンコモンを追加すればデッキの中心になるカードに大量の余地が出てきます。我々は普通、デッキの中心となるアンコモンをたくさんセットに入れていますが、それらのほとんどは単体では弱めです。しかしながら、そこには得るものが多くあります。我々は追加のカードがどのように『イニストラードを覆う影』のリミテッドを助けたのかを見てとても満足しています。私は『イニストラードを覆う影』が初代『イニストラード』と同じぐらい良いかどうかは分かりません――その多くは人々がどれぐらい長く『イニストラードを覆う影』をプレイするか、そしてその人々の1〜2か月の意見次第です――しかし控えめにいっても、『イニストラードを覆う影』はその名に恥じないものになりました。

 潜伏が面白いのはものすごく狭い範囲のパワーとタフネスだけに見えます。これの将来の展望をどう考えてますか?

 今のところよくわかりません。我々はこれを常盤木メカニズムのテストとして『イニストラードを覆う影』に入れてみましたが、デザイン空間は我々が望んだよりも少ないことがわかりました。潜伏は公正なバージョンの《不可視の忍び寄り》を作る方法として起用され、それはほとんど真実なのですが、このメカニズムはとても数学臭いのです。これは確かに我々が果敢をすぐに理解したような方法での回答策ではありません。我々は人々が潜伏をどう好むかの評価と、これが後に復活させるべきなのか、もしくは異なる青黒の常盤木メカニズムを試すべきなのかを見続けます。

 果敢は『戦乱のゼンディカー』や『イニストラードを覆う影』であまり使われませんでした。この理由の割合はデベロップとクリエイティブでどれぐらいですか?

 100%デザインとデベロップによるものです。果敢は『戦乱のゼンディカー』のデザインのかなり遅くまで常盤木メカニズムに認定されず、デベロップもこのブロックにたくさん追加したりもしませんでした。『イニストラードを覆う影』にはいくらかありますが、『タルキール覇王譚』よりも少数です。その理由は現在常盤木メカニズムであり、ブロックのメカニズムではないからです。今後のセットでは『イニストラードを覆う影』と同じぐらいの割合で見かけることになるでしょう。

 《流刑への道》や《石の宣告》の流れの白の除去の立ち位置は何?

 我々はこれが少しあるのは好きですが、たくさんあることは好みません。黒と赤の除去が「最良」の位置にあるべきですが、現在は《石の宣告》がスタンダード最強の除去です。その理由の一部は追放除去であることで、一部はその受けの広さにあります。全体的に、我々は白の除去が今よりも少し弱いときがより満足です。私は《石の宣告》の欠点が実際に欠点であることを嬉しく思いますが、1対1の除去で黒や赤を使う理由がもっとあるほうがよりハッピーです。

 開発チームは、競技シーンにおいてマッドネスの採用が比較的遅いことに驚きましたか?

 少し。グリクシス・マッドネスがスタンダードで見られるように、我々はジェイスとマッドネスの相性がどれぐらい良いかは分かっていましたが、今回はもっと赤黒マッドネスやそれに近いデッキが見られると思っていました。その理由の一部は基本的に白単のほうが早く、マッドネス・デッキは《集合した中隊》デッキが得ているような有用性を得られなかったからです。我々はマッドネスのプレイについてはかなりうまく制御できていて、そして私の想定よりも少しだけ下回っていますが、それでもかなり満足の行くものです。

 あと逆に、調査は現在のスタンダードで最も使われている『イニストラードを覆う影』のメカニズムのように見えます。これには驚いていますか/想定どおりですか?

 大きな驚きはありません。我々は《石の宣告》や《スレイベンの検査官》のようなカードがとても強力なことは知っていましたが、調査デッキが存在するとは思っていませんでした。我々は構築フォーマットで調査を占術のようにライブラリー操作の立ち位置にしようとしました。そして、とてもうまくいっていると私は思います。

 何でファストランドとかのエキサイティングなサイクルを完成させないで新しい土地にするんだ?

 まず1つは、我々は『イニストラードを覆う影』に友好色の土地を必要としていて、敵対色のファストランド(編訳注:『ミラディンの傷跡』に収録されている、《金属海の沿岸》および同等の能力を持つ2色土地)を印刷するのはかなり困難でした。また我々は基本的に素直に土地サイクルを再録するよりも、可能ならば新しい土地サイクルを探そうとします。過去4年間で『基本セット2013』『ラヴニカへの回帰』『基本セット2015』『タルキール覇王譚』『マジック・オリジン』『戦乱のゼンディカー』は土地の再録か土地サイクルの完成のどちらかを行っていました。我々がこのペースを維持するならば、ここ数年内で完成する土地サイクルはないでしょう! 同時に、私は占術土地のスタンダードでの動きを本当に気に入っていました。新しいサイクルがいつも満足行く結果に終わるわけではありませんが(バトルランドとフェッチランドのように)、大事なのは可能なときに新しい土地を押し出したマナ基盤をスタンダードで作ろうとすることです。

 実際は、1ターン目にアンタップ状態で戦場に出る2色土地の良いサイクルはわずかしかなく、素直に再録する前に我々は新しいものを試したほうが良いのです。時には(フェッチランドを『戦乱のゼンディカー』の前に仕込んだように)真っ直ぐな理由から再録のサイクルを使おうとすることもありますが、通常我々はまず新しいものを少なくとも試そうとはします。シャドウランド(編訳注:『イニストラードを覆う影』に収録されている、《港町》および同等の能力を持つ2色土地)は最終的に現在のデザインに至るまで多くの繰り返しを経てきました。そして最終的に我々はこれらのデザインにかなり満足しています。もしこれらがうまくいき、そして人々がこれらを1年経っても楽しんでいるならば、我々は将来完成させる新たなサイクルを手に入れることができます。

 『オデッセイ』のスレッショルドのように1ブロックで5色全てにあるメカニズムはまたあるの? もしくは今は陣営が当たり前?

 昂揚は5色全てにあり(とはいえほとんどが白、黒、緑ですが)、調査もそうです(ほとんどは緑、白、青ですが)。授与、占術、英雄的、信心などもそうです。我々は最近もこれを成し遂げてきました――『タルキール覇王譚』と『ラヴニカへの回帰』ブロックが派閥争いに焦点を当てていただけです。

 我々はすべての色に均等でないメカニズムを持つことを好みますが、スレッショルドが『オデッセイ』で1枚しか青になかったのも事実です。たくさんのメカニズムが均等にあるとは思いませんが、多くは5色全てに存在します。

 シールドやドラフトのプールに両面カードのアンコモン、レア、神話レアを加えることに関してやったことは?

 我々はセットの中の「爆弾」レアの数に確かな目標を持つことを好みます。我々は人々がドラフトやシールドで方針を固定できる強力なカードを十分に持つようにしたいのですが、レアを毎回最初にピックすることはそう多くはありません。我々は約8パックに1枚両面レアが出るという事実を考慮して『イニストラードを覆う影』の数字の割合を少し調整しました。また我々は基本的にこのセットにデッキの中心となるアンコモンを入れる余地をより多く持っていました。

 あなたのチームは『イニストラードを覆う影』でイニストラードに起きる物語上の出来事をどれぐらい知っていて、それはどのようにデベロップに影響しましたか?

 とてもよく知っていました。ストーリー・チームはストーリー・ガイドとワールド・ガイドをまとめ上げ、そのセットのデベロップ・チームは各自それを一冊持っていました。それは極めて詳細なものではなく――ただレベルの高いものでした。主な出来事のストーリーボードのようなものでした。それらに変更がないということではありませんが、我々にトップダウンのデザインのために知っておくべき背景と、抑えておくようにするそのセットの重要な物語の注釈を与えてくれました。

 どのクリーチャーがホラーかを決めた方法は何ですか

 これは「A Voice for Vorthos」――ダグ・ベイヤーのTumblr向けの質問です!(リンク先は英語) ほとんどはクリエイティブが決めたものなので、その中の多くの洞察を私は知りません。彼らには彼らの決めたルールがあり、ホラーは主要な部族ではないのでデベロップの感知する問題ではないのです。このセットの終わり際に、我々は《氷の中の存在》に複数あった場合お互いをバウンスしないように「ホラーでない」の一文を加えることに決めましたが、それ以外はどれがどれかはクリエイティブの決定に任せました。

 フォーマットが異なることを踏まえて『イニストラード』『闇の隆盛』と『アヴァシンの帰還』の雰囲気を混ぜようとして君らが出くわした問題は?

 『アヴァシンの帰還』をほとんど無視しました。『戦乱のゼンディカー』に取り組んでいたころ、確かに我々は『ゼンディカー』と『エルドラージ覚醒』を合わせる実際の問題を抱えていて、その結果セットは詰め込みすぎの状態になっていました。イニストラードへ戻ることについて考えたとき、我々は最初の2セットについて深く考え、『アヴァシンの帰還』の平和な世界については意識し過ぎないようにしました。ストーリー・チームは呪い黙らせのような元に戻す手段を考え出し、そしてデザインは主に『アヴァシンの帰還』よりも『イニストラード』から続くものを作るようにすることに焦点を当てました。

 『イニストラード』は愛されているセットだ。どうしてここからもっとユニークでいい再録をしないのか?

 我々がスタンダードを前に見たことがあるものよりも新しく異なったものにしようとします。我々はただ古いスタンダードの焼き直しをしたいのではありません。幸運にもそれらのカードを再録できる場所が他にあるので、将来それらを見かけることになるでしょう。ただそれはスタンダードではありませんが。

 多くのカードはそのメカニズムが使えないので再録できません――これで《蜘蛛の発生》と《瞬唱の魔道士》は駄目です。もう死んでいるので《グリセルブランド》が使えないのも明らかです。物語上の彼女の変化を表すために我々は新しいバージョンのアヴァシンを必要としました。我々は新しいものを作りたいので、たとえそれが優れていて人気があるとしても『イニストラード』のメカニズムをただ繰り返すことはしないと決めました。

 数字を変更できないので、カードの再録は難しいものです。このセットのいくつかのカードは最初は新しいアートの再録カードで、我々は様々なリミテッドでの理由――マナ・カーブ、色のバランスなど――でそれらを変更しました。構築フォーマットでさえ、我々はよくパワーを小さくしたり異なるマナ・カーブにすれば良くなるカードを見つけますが、再録では操作できません。私は《思考囲い》が3点のライフを失うならスタンダードがもっと楽しくなったと思います――そのカードに変更を加えることをしなければ、実際に審議されませんでした。

 結局のところ、多くの人々が再録を本当に再録してほしいと言っていたカードのいくつかは、スタンダードの楽しさを損なう、もしくは少なくともバランスを損なう可能性が高いのです。ここ数年のスタンダードを振り返ってみると、どのようにプレイされるか正確に分かっていたならもう少し強くしたり弱くしていたカードが大量にあります。我々はまさに多くのカードで間違いを犯そうとしてるのです。

 我々はカードのパワーレベル帯を特定の範囲にし、いくらかはそれを越えいくらかは下回るように狙っています。ここで注意してほしいのは、狙っていると言っていることです――我々は明らかにモダンでも十分に強いカードを作りますが、それらは大抵の場合我々の想定以上に強くなっています。《瞬唱の魔道士》《ヴェールのリリアナ》《高原の狩りの達人》《ガヴォニーの居住区》らは全て想定よりも強力でした――我々がそれらをとても強力だと想定していたとしてもです。《集合した中隊》は恐らくモダンを改善しますが、新しいセットに再録したなら我々がスタンダードに望むよりも強力です。

 《苦渋の破棄》が3点ではなく2点のライフを失っていた時期がデザインとデベロップの間にありましたか? もしあったらなぜ変更されたんですか?

 オリジナル・バージョンの《苦渋の破棄》は追放した土地以外のパーマネントの点数で見たマナ・コストと同じだけのライフを失っていました。これは変身前のアヴァシンを追放するのにはとても痛くて、変身したら全然減らないところが素敵でした。しかし明確にその物語が非常にうまくいかなかったので、我々はとにかくそのルールを変えることにしました。このカードにさらに取り組むに際し、我々はもっと大きなものに打つことに焦点をあてたほうが好みであることに気づき、人々がギデオンやアヴァシン、エルドラージの巨人を対象にとっても痛い目に合わないように数字を調整しました。


 今週はここまでです。来週はスタンダードについてと、我々がこのフォーマットをどう思っているか、我々の想定、そして我々を驚かせたものに関する中間報告をします。

 それではまた来週お会いしましょう。

サムより (@samstod)

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