READING

開発秘話

Latest Developments -デベロップ最先端-

マジック的一問一答

authorpic_samstoddard.jpg

マジック的一問一答

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2015年12月11日


 こんにちは、そして一問一答版「Latest Developments -デベロップ最先端-」へようこそ。今回私はまさにあなたのような読者の質問をTwitterからいくつか取り上げ、それらに全力で答えてゆきます。今後の一問一答で質問を掲載されたい方は、私をフォローして次回の募集をお待ちください!

 《先祖の結集》が『運命再編』で出たとき、皆これはクソだと思ってたが、3セット経った後にアーキタイプになった。これは計画通りなのか?

 今の形のデッキは計画通りではありませんでしたが、《先祖の結集》自体はある種の成功の兆しを持っていると我々は考えていました。我々はこのデッキの成功のためにどのような類のカードが必要かは分かっていました――戦場に出たときの能力を持つクリーチャー、サクり台、クリーチャーに速攻を与える方法――それらのものをこのカードがローテーション落ちする前に一緒にするかどうかだけの問題でした。我々はこれを多くのカードでやってきて、そしてそれらの大部分は《先祖の結集》ほどの影響を与えられなかったと思います。潜在的に何かをしそうなカードがたくさんあることで、マジックをプレイするコミュニティが考え出すデッキを見るのが楽しみになりますし、その中のあるものはアーキタイプとなるのに十分な強さです。

 基本セットのない世界ではどれぐらいのカードが再録されると想定していればいい?『戦乱のゼンディカー』では10%よりも低かった!

 『戦乱のゼンディカー』自体は再録において奇妙な位置にあって、いくつかのカードを初代『ゼンディカー』ブロックから再録できた一方で、このセットは欠色のような多くの制約があり、我々は再録よりも多くの新規カードを作ることになりました。もし我々がこのようなセットをもう一度作るなら実際に異なった方向へ向かい、異なる大きな足跡を残すメカニズムを披露するので、再録カードの枚数が多くなる確率は低くなります。我々がメカニズムよりもクリエイティブ寄りのテーマを持ったセットを作るときには、再録をより効果的に使うことのできるチャンスがあります。

 我々は確かにもっと再録をしたいのですが、その数はトータルの割合で言えば年間で基本セットがあったころを越えることにはならないでしょう。しかしながら、基本セットの再録カードは基本セットの半分を占めていましたが、それは1年間に発売されるカードのうちおよそ14%に過ぎないということは覚えておいてください。

 私たちはよく「デベロップがあるカードを推している」という文を見かける。そういうのを作るときに何をしてるの?

 構築フォーマットのバランスを取ることの中には、同じパワー・レベルのカードがたくさんあるようにすることの他にも、もっと多くの事柄があります。我々が変化の起きない完全なフォーマットを作ったならば、それは可能です――しかしセットの作り方はそうではありません。我々は新しいセットが出るたびにデッキと戦略の進化を求めますが、我々はよく、何らかのデッキが1年を通して安定しすぎるようなところや、ある戦略もしくはメカニズムが助けなしでは十分な競争力を持っていないところに踏み込んでしまいます。我々はそれらのデッキを互角に近い条件に持っていくために、構築フォーマット向けのカードを推すのです。

 原則的に、我々は全てのカードを「もう1マナ重ければ構築フォーマットでプレイされないだろう」というぐらいの強さの範囲に収めたいと考えています。我々がカードを推すときには、通常そのことよりも影響が少ない方法でやろうとします。それはクリーチャーのパワーかタフネスを1上げることかもしれませんし、プレインズウォーカーの初期忠誠値と奥義のコストを1上げることや、呪文のコストを{1}{R}{R}から{2}{R}にすることかもしれません。既に十分楽しく、かなりバランスが取れていると信じているカードにこれらのような小さな変更を加えることは、メタゲームの中でするべきことが十分にあるようにする助けになります。

 年間2ブロック制になって「詰め物」が少なくなったからちょっと推し難くなったメカニズムってありますか?

 さて、実際に我々はまだこの新しい制度で大量のセットをデベロップをしていないのですが、最終的にこれらのメカニズムをセットごとに推すのは少し難しくなり、1ブロックごとの視点に近くなると私は信じています。私にとって最も良いことは、過去の3セットに散りばめられたメカニズムには実際に2ブロック制に適していると感じたものがたくさんあることです――質問にあったような「詰め物」のことです。

 なんで今の《忘却の輪》効果は全部「対戦相手」のパーマネントなの? 「してもよい」で不利は避けられるしプレイするのに十分じゃない?

 我々は対戦相手だけに絞って「してもよい」にしないことと、どのプレイヤーにも効果が及んで「してもよい」することの間で揺れています。大きな問題は《払拭の光》のようなカードで「どれぐらいの頻度で故意にそれが起こるか?」ということで、私はそんなに起きないと思っています。対象を対戦相手のものに強制して選択を取り除くことにより、Magic Onlineと『マジック・デュエルズ』のクリックが少なくとも1つは削減されました。これは大したことではないように見えるかもしれませんが、このような一連の小さな変更をセットの中で行うことができれば1マッチ中の総クリック数は大きく減少し、そして私はこれが紙のマジックに大きな犠牲を出すことなくこれら全てのデジタル製品を著しく向上させると考えています。

 その反対も真実であり、そしてデジタルのほうでより簡単に何かできて紙に悪影響を及ぼすと我々が考えたときは、紙のほうで間違いを犯す傾向にあります。

モダンの禁止リストが「完成」するか、このフォーマットを維持するために継続的に変更され続けるかどちらだと考えている?

 私は禁止リストは完成されることはないと信じています。我々はこのフォーマットにカードを出し続けるつもりなので、バランスのために他のカードを禁止リストに加えることになることはあり得ます。また、このフォーマットがどんどん大きくなっていくにつれて、カードが禁止リストから外れる可能性が生じます。私は《頭蓋骨絞め》や《超起源》が近い将来解禁されるとは想定していませんが、他の多くのカードの解禁はかなり安全でこのフォーマットの多様性の維持を助ける、というところまで達していると言えます。

とぐろ巻きの巫女》はスタンダードで強すぎ?

 一言で答えるなら「いいえ」です。

 長く答えると《とぐろ巻きの巫女》は弱いカードではありませんが、しかしまたどんなに想像力を働かせてもゲームを壊すものではありません。私はこれがかなり良いパワー・レベルで、そしてどこかでセットに入れることができると考えていますが、問題はいつ、どこで、そしてそれによって環境が良くなるのか悪くなるのかです。理論的にはスタンダードで強すぎというわけではない、というカードは山ほどありますが、いろいろな理由があってそれらは再録されていないのです。時には我々はより多様性を好む環境を持っているからで、時にはそのカードが周りに合っていないからで、またある時には我々が色の長所を他の方法で推したいからです。

赤のぶっ壊れ2マナ生物サイクル枠は《ケラル砦の修道院長》と《若き紅蓮術士》のどどっち?

 はっきりしておくと、我々はぶっ壊れ2マナサイクルをデザインしようとしたわけではなく、これは偶然です。ご存じない方のために説明しますと、このサイクルとは通常《石鍛冶の神秘家》、《瞬唱の魔道士》、《闇の腹心》、そして《タルモゴイフ》であると考えられています。こんなカードができてしまった理由は、2マナ域は我々が最も間違いを犯しやすい箇所、少なくともエターナル・フォーマットにおいてはそうであるからだと私は考えています。我々は通常1マナのカードが強すぎる場合は伝えることができます。確かに《死儀礼のシャーマン》や《秘密を掘り下げる者》は想定以上の強さになってしまいましたが、2マナ域は我々が最も間違いやすいところです。2マナ域はクリーチャーが実際に興味深いテキスト欄を持ち始め強くなりすぎる可能性がある一方、エターナル・フォーマットでほとんど唱えられないよう程度には重いところです。

 私はこれらのサイクルのどのクリーチャーも3マナになればレガシーやヴィンテージでプレイされるとは思いませんが、それでもスタンダードでは十分な強さです。なので、これらはそれほどずれているわけではないのです。

 とは言っても、私は《若き紅蓮術士》をこれに加えるのには同意しようと思います。《ケラル砦の修道院長》をデザインした人間としては、《ケラル砦の修道院長》を推したいところです――しかし《若き紅蓮術士》がレガシーやヴィンテージでプレイされている数を考えると、私から見てもやり過ぎたと思うところまで来ています。

稲妻の一撃》効果がスタンダードにない具体的な理由は何?

 我々が赤で取り組んでいることの1つは、その強さを火力呪文だけではなく様々な事柄に広げることです。過去1年間、我々はかなりの数のとても強力な赤いクリーチャーを印刷してきたので、この色のどこかを弱くする必要がありました。そのどこかとは赤の本体火力をいくつか取り去ることでした。加えて、現在《アタルカの命令》はライフを速やかに20から0にする大きな働きを見せていて、この瞬間にさらに火力を追加することは、多分赤が必要以上に強くなりすぎることになるでしょう。

 しかしご心配なく――《稲妻の一撃》ぐらいの強さの呪文が永遠にスタンダードからなくなるわけではありません。この色の強いところを少し拡散させるということは、我々が時間をかけてその強さを1つの要素かその他に置く能力を持つということであり、それらの要素は増進と衰退を繰り返すでしょう。青の強さがカードを引くことと呪文を打ち消すことの間で広がっているようなものです。

@maro254はデベロップが速攻の第3色を緑にすることを求めていると言ってた。なんで?

 緑の一番デカいクリーチャーがいるという強さは、クリーチャーの攻撃とブロックがスタンダードよりも重要なリミテッドにおいてより大きな影響があり、そこでは耐性が重要になってきます。緑が再利用性の面で構築レベルのゾンビやスケルトンに太刀打ちできることは滅多にありませんし、赤のように火力で相手に止めを刺す能力も持っていないので、対戦相手が全体除去を唱えたときに何かできることが必要だったのです。緑にたまに速攻を持つクリーチャーを与えることで、構築フォーマットにいくらかのサプライズを持たせ、切望されていたコントロールやミッドレンジへの反撃手段を与えます。

開発部は最強のプレイヤーたちの勝率が何%ぐらいであるべきだと考えていますか? その理由は?

 これは正確には我々が多く語っている基準ではありません――少なくとも詳細な説明のようなものではありません。カードをデザインしてバランスを取るときにはいくつかのステップを飛ばして物事を考えるほうがはるかに有用です。1つのマッチから得られることはたくさんありますが、我々が2つのデッキの対戦を何千回も見る場合は、その結果がより重要になってきます。我々がやりたいことは、それぞれ個別の戦略がプレイされて対抗手段を持ち、そのフォーマットが全体としてバランスが取れているようにすることです――トップ・プレイヤーは対戦相手を破り、高い勝率を達成するでしょう。

 問題は、トップ・プレイヤーの勝率を見ることは彼らがどんなイベントでプレイしているか、デッキ選択のようなそのイベントの重要な部分を考慮していないということです。その時のトップ・プレイヤーの勝率が75%というのは簡単ですが、最強のプレイヤーでも半分勝つのがやっと、という世界選手権の場合はかなり期待はずれです。また「強いプレイヤーの勝率は66%だと想定しています」とも言えますが、それは力量差がどれだけあるか、その差がどれぐらい明確であるかを考慮していません。あるプラチナ・プロ、ゴールド・プロ、シルバー・プロを見たときの技術のレベルの差は、プロ同士の差のほうがフライデー・ナイト・マジックでいつも2勝2敗しているプレイヤーと比べるよりもずっと近いものです。

 全体的な我々の目標は、マジックを最強のプレイヤーにとって彼らの決定で左右される数多くの重要なマッチがあるぐらいに技術に十分な意味があって、なおかつ絶望的なゲームが存在しないようにランダム要素があるようにすることです。これは踏むにはかなり細い線ですが、我々はかなり上手く制御できていると思います。

 今週はここまでです。次の2週は私はお休みですが、その後『ゲートウォッチの誓い』のプレビューとともに帰ってきます!

 ではまた次回お会いしましょう。

 サムより(@samstod)

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索