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開発秘話

Latest Developments -デベロップ最先端-

『テーロス』イン・フューチャー・フューチャー・リーグ

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『テーロス』イン・フューチャー・フューチャー・リーグ

Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2013年12月13日


 もうご存知とは思いますが、フューチャー・フューチャー・リーグ(以下「FFL」)とは、我々がこれから発売されるカードをブロック構築やスタンダードでテストする社内のリーグです。我々の目標はメタゲームを壊すことではなく――そのセットがFFLにある間に少数のデベロッパーで答えが出せるようなメタゲームでは、現実世界の人々の前には数週間しかもたないでしょう――多くの戦略を同じぐらいのパワー・レベルで供給し、そしていくつかのデッキが人気を得たり失ったりすることでメタゲームが変化する余地を持たせるようにすることです。これはつまり、我々の主な仕事は全てのバランスを正確に取ることではなく、できるだけ多くのカードとその組み合わせを試し、全ての戦略に十分な面白さを与えることだ、ということです。我々はデッキを作ってお互いに対戦し、(あるならば)変更したいものを見つけ、そしてまたプレイすることで、これを行っています。

 私が前に歴代のFFLのデッキをご紹介したとき、多くのご好評をいただきました。そこでこれをこのコラムのレギュラー企画にしたいと思いますが、しかしながら我々はカードを変更する能力を持っており、現実世界で実際にプレイされているカードとデベロップ中のそれらはかなり違うので、デッキリストを見ながら文中に注釈をつけていこうと思います。我々の目標はそのフォーマット全体をより楽しくすることで、それはしばしばカードを個別で見た場合の楽しさや、当然のことながらその強さを、最大限と比べて減らすかもしれないことを意味しています。

 ひとつ覚えておいていただきたいのは、『テーロス』のような大型セットはFFLの第一目標として5ヶ月を費やし、そして次のセットのプレイテストが始まったときに第二目標として1ヶ月を費やしていることです。というわけで、多くのデッキリストがあり、その中の多くの最終バージョンのラインナップには無いカードが含まれています。いくつかのカードが最適ではないとしてデッキリストを弱いと一蹴するのは簡単ですが、時には含まれているカードが違うものかもしれません。その例として、私が初期のバージョンの《モーギスの狂信者》と《軍団の戦略》の相互作用をテストするために作ったデッキをご紹介します。

サム・ストッダート/Sam Stoddardのベアリー・ボロス
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
9 《
4 《変わり谷
4 《聖なる鋳造所
4 《凱旋の神殿
3 《ボロスのギルド門

-土地(24)-

4 《火飲みのサテュロス
4 《ラクドスの哄笑者
4 《アクロスの重装歩兵
4 《灰の盲信者
3 《チャンドラのフェニックス
2 《ボロスの反攻者
4 《モーギスの狂信者
1 《鍛冶の神、パーフォロス

-クリーチャー(26)-
4 《ボロスの魔除け
4 《軍団の戦略
2 《紅蓮の達人チャンドラ

-呪文(10)-

 これはテスト段階のかなり初期のものです。このセットはこの時点まで実際にリミテッドのテストしかしていなかったので、我々はいくつかのカードが間違っていることは分かっていました。しかし、これはあなたが考えているかもしれないバージョンから始めるのに最適なので後で変更について議論する必要はありません。

  • 火飲みのサテュロス》は当時〈狂ったサテュロス〉という名前で、起動型能力は{R}から{1}{R}に変更されました。
  • 鍛冶の神、パーフォロス》のマナ・コストは{4}{R}から{3}{R}に変わりましたが、当時はクリーチャーにもダメージを飛ばせました。
  • モーギスの狂信者》は〈モーギスの侍祭〉という名前で、現在は{4}{R}4/2ですが当時は{3}{R}3/1でした。

 このリストを見返すと、確かに《ボロスの反攻者》をもっと増やすべきでしたが、このようなFFLのデッキの多くは、我々が強すぎると思ったカードをとりあえず実験してみたものです。〈モーギスの侍祭〉が3マナだと危険度が高すぎるのは簡単に分かったので我々はこれを4マナにし、さらにテストした結果他のカードの変更も行われました。ここからのデッキリストについては、皆さんにわかりやすくするために現在のカード名にしておこうと思います。

 デベロップの時には、カードがセットに加えられることもあります。我々はメタゲームを改善するだろうというものを考えつき、それをセットに入れる場所を探します。たとえば、下記のエスパー・コントロールのデッキリストは《英雄の破滅》が作られる前のものです。結果的にこのデッキの除去スロットは全く異なるものになりました。これは当時我々がこのコントロール・デッキをどう思っているかを表すのによい仕事をしましたが、異なる方向に向かいました。その事柄とは――《英雄の破滅》が無ければ、《太陽の勇者、エルズペス》に対処する方法がわずかしかなかったのです。さらに、当時はいくつかのアグレッシブなデッキに彼女への対処方法を与える《嵐の息吹のドラゴン》も、現在のバージョンではありませんでした。基本的にこのリストは、スタンダードに速攻クリーチャーが無ければ、プレインズウォーカーを守ることに専念する信じられないぐらい強力なデッキを作ることは簡単である、ということを示しました。

イアン・デューク/Ian Dukeのエスパー(青白黒)コントロール
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
5 《
4 《神無き祭殿
4 《神聖なる泉
4 《欺瞞の神殿
4 《静寂の神殿
4 《湿った墓
2 《平地

-土地(27)-

1 《霊異種

-クリーチャー(1)-
1 《遠隔 // 不在
4 《思考囲い
1 《払拭
2 《アゾリウスの魔除け
2 《破滅の刃
1 《究極の価格
3 《拘留の宝球
3 《解消
2 《悪夢の織り手、アショク
4 《スフィンクスの啓示
4 《至高の評決
2 《思考を築く者、ジェイス
1 《記憶の熟達者、ジェイス
1 《太陽の勇者、エルズペス
1 《無慈悲な追い立て

-呪文(32)-

 FFLの中では多くプレイされたけども、現実世界では実際に使われなかったカードも多く存在します。緑の信心デッキはプロツアー『テーロス』のトップ8にもいましたが、我々のデッキは少し違ってよりビートダウン寄りのものでした。我々は実際に現実世界よりもはるかに高い割合で《恭しき狩人》をプレイしていました。

サム・ストッダートの赤緑ビートダウン
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
13 《
4 《踏み鳴らされる地
4 《奔放の神殿
2 《ニクスの祭殿、ニクソス

-土地(23)-

4 《実験体
4 《炎樹族の使者
4 《カロニアの大牙獣
2 《漁る軟泥
4 《加護のサテュロス
4 《恭しき狩人
4 《世界を喰らう者、ポルクラノス
3 《狩猟の神、ナイレア

-クリーチャー(29)-
3 《破壊的な享楽
3 《ドムリ・ラーデ
2 《ナイレアの弓

-呪文(8)-

 特にその戦略が多分トップメタにはならなくてもある種のリスクを引き起こす場合に、我々は一見かなりおかしなデッキを試すことがあります。我々が全てをよく見て、それが強すぎるかどうか分かれば良いのですが、それは明らかに不可能です。それができるようなら多分我々は失業してしまうでしょう。その代わりに、我々は色物のようなデッキが成功するよう、適切な量の時間を費やします。一時期、《死の国からの救出》は唱えたあと追放されていませんでした。我々は正しく、これは楽しく興味深いデッキだったかもしれないし、もしくは間違っていて、これは強すぎるかもしれません。私はこれがリスクを背負うべきカードではないと考えています。

ビリー・モレノ/Billy Morenoのエスパー「死の国からの救出」
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
4 《神無き祭殿
4 《神聖なる泉
4 《欺瞞の神殿
4 《静寂の神殿
4 《湿った墓
2 《
1 《
1 《平地

-土地(24)-

4 《ただれたイモリ
4 《アゾリウスの拘引者
4 《前兆語り
4 《放逐する僧侶
4 《ザスリッドの屍術師
1 《オーラ術師
2 《古術師
2 《死者の神、エレボス
4 《影生まれの悪魔
2 《ヘリオッドの福音者

-クリーチャー(31)-
1 《エレボスの鞭
4 《死の国からの救出

-呪文(5)-

 色物のデッキと言えば、下記のデッキは長い間テストをしていた気がします。これはいかにも色物に見えますが、非常に良い結果を残しました。しかし我々の目標は全てを弱体化することではなく、壊れているものをなくして楽しく興味深いデッキをメタゲームの中に入れられるようにすることです。

イアン・デュークの「波使い」
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
22 《
4 《ニクスの祭殿、ニクソス

-土地(26)-

4 《審判官の使い魔
4 《凍結燃焼の奇魔
4 《潮縛りの魔道士
4 《夜帷の死霊
3 《海の神、タッサ
4 《波使い

-クリーチャー(23)-
3 《ミジウムの外皮
4 《閉所恐怖症
4 《霜のブレス
2 《タッサの二叉槍

-呪文(13)-

 プロツアー『テーロス』のトップ8に残ったこのデッキの最終バージョンはいくつかの点で違ったデザインの決定があります(そして《ニクスの祭殿、ニクソス》が伝説でないことの恩恵も受けてはいません)が、全体的に見れば我々はテストの初期にはかなり近いところまでたどり着いていました。そしてプロツアーのトップ8に残った単色の信心デッキと言えば、我々の黒単信心デッキはプロツアーでプレイされたものとほぼ同じでした。バージョンによってメインに《思考囲い》が入っているデッキも入っていないものもありました。また《群れネズミ》を採用しているデッキもそうでないものもあり、1つのリストに絞り込むことはできませんでした。私は《冒涜の悪魔》が最も過小評価されたカードだと考えています。下記のデッキリストは《英雄の破滅》導入前のかなり一般的なものなので、導入後とは除去のスロットが少し違っています。

イアン・デュークの黒単コントロール
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
23 《
2 《ニクスの祭殿、ニクソス

-土地(25)-

4 《夜帷の死霊
4 《フィナックスの信奉者
2 《死者の神、エレボス
4 《アスフォデルの灰色商人
3 《影生まれの悪魔

-クリーチャー(17)-
3 《破滅の刃
3 《漸増爆弾
2 《究極の価格
3 《地下世界の人脈
3 《闇の領域のリリアナ
2 《エレボスの鞭
2 《堕落

-呪文(18)-

 また我々は現実世界からインスピレーションを得て、最近のスタンダードで勝っているデッキが新しいスタンダードでどうなるかを確かめます。当時のスタンダードはジャンドのグッドスタッフが勝っていたので、私はそれを『テーロス』でやってみました。

 当時《霧裂きのハイドラ》は速攻とトランプルを持っていて、打ち消し呪文を使うデッキ対策として墓地から唱えることができるようになっていました。その意味では良い仕事をしましたが、一クリーチャーとしては打ち消し呪文を使わないデッキに対しても効果的に働き過ぎました。

サム・ストッダートのジャンド
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
4 《血の墓所
4 《
4 《草むした墓
4 《踏み鳴らされる地
4 《奔放の神殿
3 《
2 《

-土地(25)-

4 《エルフの神秘家
4 《森の女人像
3 《霧裂きのハイドラ
3 《漁る軟泥
3 《加護のサテュロス
3 《世界を喰らう者、ポルクラノス
2 《自由なる者ルーリク・サー

-クリーチャー(22)-
3 《戦慄掘り
3 《ラクドスの復活
4 《歓楽者ゼナゴス
3 《見えざる者、ヴラスカ

-呪文(13)-

 私だけが《霧裂きのハイドラ》を試したわけではありませんが、イアンは別の手法を試していました。彼のプランは自分のライブラリーを削り、それを唱えるものでした。モンスは似たようなデッキを作りましたが、彼は赤を加えて《鍛冶の神、パーフォロス》を入れ、Xを0にできないように即座に変更を加えなければいけないことを浮き彫りにしました。

イアン・デュークの黒緑墓地デッキ
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
7 《
7 《
4 《ゴルガリのギルド門
4 《草むした墓

-土地(22)-

4 《死儀礼のシャーマン
4 《エルフの神秘家
3 《ロッテスのトロール
2 《霧裂きのハイドラ
4 《夜の咆哮獣
2 《縞痕のヴァロルズ
2 《ゴルガリの死者の王、ジャラド
4 《影生まれの悪魔

-クリーチャー(25)-
4 《神々との融和
4 《忌まわしい回収
3 《汚濁まみれ
2 《エレボスの鞭

-呪文(13)-

 このテストの最終結果で《霧裂きのハイドラ》のデザインをやり直す必要があることが分かり、3つか4つの試行錯誤を経て現在の形に落ち着きました。もちろん、我々がそうしたのは理由があり、その最大の理由はFFLのデッキのなかで最有力のものは現実世界に現れることがなかったからです。我々が主に使っていたコントロール・デッキは実際のところ青白黒ではなく赤青白でした。

ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verheyの赤青白コントロール
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
5 《
4 《神聖なる泉
4 《聖なる鋳造所
4 《蒸気孔
4 《凱旋の神殿
3 《平地
2 《
1 《ゆらめく岩屋

-土地(27)-

1 《霊異種

-クリーチャー(1)-
2 《岩への繋ぎ止め
1 《真髄の針
3 《マグマの噴流
3 《ミジウムの迫撃砲
4 《拘留の宝球
4 《思考を築く者、ジェイス
4 《スフィンクスの啓示
4 《至高の評決
4 《戦導者のらせん
3 《太陽の勇者、エルズペス

-呪文(32)-

 我々は現実世界でビートダウンが多いなら赤青白を使いたいと思うだろう、コントロールが多いなら青白黒を使いたいと思うだろうと想定しました。

 しかしながら、コントロールは青が入ったものに限りませんでした。我々はいくつか青以外の組み合わせのコントロールを試し、そのうちいくつかは(多少の違いはあれど)現実世界でも見かけられました。例えばこれです。

エリック・ラウアー/Erik Lauerのナヤ・コントロール
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
4 《
4 《聖なる鋳造所
4 《踏み鳴らされる地
4 《寺院の庭
4 《奔放の神殿
4 《凱旋の神殿
2 《平地

-土地(26)-

4 《羊毛鬣のライオン
4 《森の女人像
4 《復活の声
2 《世界を喰らう者、ポルクラノス
4 《嵐の息吹のドラゴン

-クリーチャー(18)-
1 《ミジウムの迫撃砲
2 《セレズニアの魔鍵
1 《パーフォロスの槌
1 《ヘリオッドの槍
4 《戦導者のらせん
4 《歓楽者ゼナゴス
3 《太陽の勇者、エルズペス

-呪文(16)-

 『テーロス』に2種類の占術土地のあるナヤ(赤白緑)は奈落の住人の間で人気のある組み合わせでした。

 これはその違った方向からのデッキの例です。

マックス・マッコール/Max McCallのナヤ・ビートダウン
『テーロス』FFL[MO] [ARENA]
4 《
4 《踏み鳴らされる地
4 《寺院の庭
4 《奔放の神殿
4 《凱旋の神殿
3 《平地

-土地(23)-

4 《エルフの神秘家
4 《実験体
4 《羊毛鬣のライオン
3 《霧裂きのハイドラ
4 《加護のサテュロス
4 《ロクソドンの強打者
3 《ゴーア族の暴行者

-クリーチャー(26)-
4 《議事会の招集
4 《セレズニアの魔除け
3 《ひるまぬ勇気

-呪文(11)-

 まだまだ語りたいところですが、そろそろお別れの時間です。あなたがFFLの様子を楽しみ、そして『神々の軍勢』や『ニクスへの旅』へのビジョンをより多く共有して頂けたなら幸いです。

 本年のこの記事は今回で終わりで、新年まで冬休みをいただきます。来月上旬からは『神々の軍勢』のプレビューが始まるので、その準備をしていてください。プレビューに向けての面白い材料を用意していますので、どうぞお楽しみに。

 ではまた次回お会いしましょう。

 サムより

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