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Beyond the Basics -上級者への道-

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手札を捨てるとき

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2017年3月30日

原文はこちら

 あなたは『カラデシュ』『霊気紛争』のリミテッドをプレイしている。まだ1ゲーム目の序盤で、緑白デッキを使って相手の白黒デッキと対戦中だ。戦場にはお互いに土地5枚が並んでいる。

 対戦相手のシルビアは、5つの土地のうち2つを使ってこちらのクリーチャーを除去してきた。その後、残った3マナで《精神腐敗/Mind Rot(KLD)》をこちらにプレイした。

 こちらの手札は以下の通りだ。

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《平地》《捕食》《極上の大天使》《水辺の虎》

 どれを捨てようか?

 少し考えてみてくれ。ちょっと待ってるよ。

 もちろん、本当はもっと情報が必要だということはわかっている――デッキの中身、ここまでにプレイしたカード、相手に余裕が見られるか否か、などなど――しかし今はこれだけで考えてみてほしい。この情報から、どう判断するだろうか?

 答えが決まったら、続きに進もう。


《精神腐敗/Mind Rot(KLD)》 アート:Seb McKinnon

 これは、マジックというゲームにおいて何度も遭遇する状況だ。マジックをしている限り、そこには手札破壊呪文の存在がある。対戦相手が『アルファ版』の《破裂の王笏/Disrupting Scepter(LEB)》を振りかざす状況でも、今回の例のようにうまいタイミングで《精神腐敗/Mind Rot(KLD)》が飛んでくる状況でも、それに対して最適な回答を導き出せるかどうかが重要だ。

 手札を捨てる状況に直面した時、正しく手札を残せるかどうかで、ゲームの勝ち負けが決まることがある。

 では、何を残し、何を捨てるべきだろうか?

 その決定を下すための各段階へと進むことにしよう。

1.現状を元に各カードを評価する

 まず最初に、手札の各カードを確認して、現状でどれほどの価値があるかを考えよう。今、これらのカードはどれほど役に立つだろうか? 他にも考えるべきことはあるが(それについてはすぐに見ていくが)、まずは各カードがそれぞれ単独でどれほど役に立つか、その基本的な内容を押さえておくことが重要だ。

 次のターンに引くカードが、役に立たないという前提で考えよう。ならば、今の手札のカードはそれぞれどれくらい強いだろうか?

 現状を振り返って考えてみると、次のターン確実に影響を与えられるカードが手札に1枚ある。《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》だ。《平地》も出せるが、出してもすぐに何かするわけではない。一方《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》は次のターンに唱えて出せることが保証されている。

 格闘する相手がいないので、《捕食/Prey Upon(AER)》はすぐには役に立たない。《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》はあと2枚土地を出さないと唱えられない。

 さて、現状を考えて終わりというわけではない――しかし、現状での評価は、捨てるカードを決定するために必要な要素の1つだ。《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》を残すとすれば、次のターンに素晴らしい動きができることだろう。

2.今後の展開を予測する

 現状のみから価値を判断するのは簡単だ。周りを見渡し、自分から見える範囲の情報を把握し、評価すればいい。ところが、カードができること全ての価値を計ろうとすると、より複雑になってくる。

 このゲームを続けた先、各カードはそれぞれ何ができるだろうか?

 それを推し量るには、自分のデッキについてわかっていることを確認するだけではなく、このゲームの全体の流れの中で何が問題になるかも考える必要がある。このデッキで強いのは何か、そしてこのゲームで役に立つのは何か、その両方の可能性を考えるんだ。

 各カードを調べてみよう。

 《平地》は、今後デッキから引くかもしれない6マナ域を唱えられるようになる。デッキのマナ・カーブ(訳注1)が重いなら、必要になるかもしれない。

(訳注1:マナ・カーブ/マナ域ごとの枚数をグラフにすることで見える曲線)

 《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》は、毎ターンに渡って攻撃し続けることで、圧力をかけていける。対戦相手がこの後良いカードを出せないのであれば、《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》という6/6アタッカーは相手の白黒デッキが展開できるクリーチャーを突破するに十分な存在だろう。

 おそらく、対戦相手は今後どこかでクリーチャーを出すだろう。《捕食/Prey Upon(AER)》は今は何もしないが、対戦相手が展開するクリーチャーのほとんどを打ち取れるであろう、素晴らしい除去呪文だ。

 最後は《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》だが、ゲームを決める絶対的存在になりうる。対戦相手に除去呪文がなければ、5/5の飛行クリーチャーはそのままゲームに勝てる可能性が高い。それに対するリスクは、もちろん、出すためにあと土地が2枚必要になる点だ。土地を引けなければ、死に札になってしまう。とは言うものの、今は対戦相手の盤面からはなんら圧力をかけられていないので、焦る必要はない。

3.組み合わせを考慮する

 ここまでは、主にカードを単独で評価してきた。しかし、もちろん、手札破壊呪文を食らった後に手札が2枚以上残るのであれば、残すカードの組み合わせからどのような相互作用やプレイ方針が生まれるかを常に検討すべきだ。

 いくつか例を見てみよう。

 すぐに思いつくのは、《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》と《捕食/Prey Upon(AER)》の組み合わせ、それと《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》と《平地/Plains(USG)》の組み合わせだろう。

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 《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》と《捕食/Prey Upon(AER)》を残せば、クリーチャーを――かなり大きいと言えるクリーチャーを――獲得し、《捕食/Prey Upon(AER)》も構えられるようになる。《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》もクリーチャーではあるが、出すためには数ターン待たなければならない。そして、ようやく7マナ揃って出せるようになっても、そのターンは《捕食/Prey Upon(AER)》を唱えるためのマナが残らない。《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》なら次のターンに出せることが確定している上、除去されずに次のターンを迎えれば《捕食/Prey Upon(AER)》も利用可能だ。

 一方《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》と《平地》の組み合わせは、《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》を唱えるための土地を1つ確保できる。この2枚を残してもしばらくは何もできないが、2ターン以内に土地を1枚引けば、スムーズに《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》を唱えることが可能だ。

 まあ、必ずこの2種の組み合わせのどちらかを選ばなければならない、というわけではない。しかし、合わせて残すことで得られる追加要素にそうするだけの価値がある、そんな状況もあるだろう。基本的に、相乗効果を目当てに弱い2枚を残すつもりなら、「最高の」2枚を残した場合の素の強さを上回らなければならない。

4.状況を把握するための手掛かりを調べていく

 次に、見える状況以外の要素を十分に考える段階がある。これは最初に提示した例だけでは判断できないことだが、実際にゲームを行っている場合はここで考えるものだ。

 まずは自分のデッキについて考えてみよう。《捕食/Prey Upon(AER)》の除去呪文としての価値はいかほどだろうか? 緑白デッキは、基本的に除去が多くない。これがデッキ唯一のクリーチャー除去カードだとすれば、高く評価するだろう。デッキの土地の枚数は? マナ・カーブが極端に低いとすれば、《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》のための土地を引ける可能性は低いだろう。

 それから、対戦相手についてだ。相手のデッキは白黒で、戦場には土地以外何も出ていない。デッキには《精神腐敗/Mind Rot(KLD)》のような呪文が入っている。つまり、おそらく彼女は遅いデッキを使っていて、ゲームは長引くかもしれない。そうすると、《平地/Plains(USG)》を残す理由が減る。なぜなら、遅いデッキとの戦いでは脅威となりうるカードがより多く必要になり、長期戦になれば土地が7枚並ぶ可能性もより高まるからだ。そうすると、脅威となるカード2枚を手札に残すほうがよさそうに思える。

 それから、もちろん、今後引くカードについても考慮しよう。

 デッキにエネルギーを得られるカードがもっと入っているなら、《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》はより魅力的に思えるだろう。デッキに5マナ以下のカードが多ければ、《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》を残す理由は減る。自分のデッキについて(そして対戦相手のデッキについて確認できる範囲で)分かっていることは、驚くほど有益な情報となるだろう。起こるかもしれない物事について頼りすぎてはいけないが、考慮しておくべき要素だ。

5.総合して考える

 最後に、これら全ての要素をまとめて判断する段階だ。

 わかっていることを見ていこう。

 現在の盤面には対戦相手からの圧力が無い。《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》は、急いで出す必要はなさそうだ。あと2枚の土地は、長引けば引けるだろう。《平地/Plains(USG)》は《捕食/Prey Upon(AER)》や《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》とは関係しない。つまり《平地/Plains(USG)》は不要ということになる。

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 残りは3枚になった。ここから《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》か、《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》か、あるいは《捕食/Prey Upon(AER)》のどれか1枚を捨てる必要がある。

 すぐに出せて戦場に圧力を生み出せる《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》は、是非とも残したい。こちらの行動をあらゆる手段で遅らせて、長期戦で優位に立とうとしている可能性が高い白黒デッキに対して、後れを取ることなく行動できるようになる。

 《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》を残すなら、一緒に残すもう1枚はどちらがいいだろうか? これが今回の問題で最も重要なところだ。

 《捕食/Prey Upon(AER)》と《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》の組み合わせは最高だ。この2枚を残したいと考える戦況はいくつもあるだろう。対戦相手がこちらを積極的に攻撃している場合は、特にそうだ。

 しかしながら、状況をかんがみるに、私なら《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》と《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》を残す。

 次のターンに入ってカードを引き、《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》を唱える。その後の2ターンであと2枚カードを引けば、唱えられる呪文が見つかるだろう――もし土地を2枚引いたとしても、手札に《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》が残っていれば、それはそれで嬉しい。どちらにせよ、ゲームが続けば、あと2枚の土地は見つかるはずだ。

 私の答えはこうだ。《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》と《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》を残す。

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1枚ずつ切り捨てて

 この工程は脳内ではほんの数秒かもしれないが、各段階を足早に確認してそれぞれの項目から捨てるべきカードを判断していくことは、良い結果を導くための素晴らしい土台となるだろう。それが《精神腐敗/Mind Rot(KLD)》された時でも、《遁走/Fugue(EXO)》された時でも、あるいは単に手札が8枚になった時でもね。

 今回の問題は興味深い状況をいくつも設定できる。例えば、戦場に出ている土地が5枚ではなく4枚だったらどうだろう。《平地》と《水辺の虎/Riparian Tiger(KLD)》を残すことにするだろうか? それとも土地を引くことに賭けるだろうか? 《極上の大天使/Exquisite Archangel(AER)》は残すには辛すぎるだろうか? 今後手札を捨てなければならない状況になったときは、その内容を覚えておいて、他の人と意見交換してみよう。それを私も聞いてみたい。ぜひとも教えてくれ! 議論の余地は十分にあり、大きな差が生まれるだろう。

 話を聞かせてくれるなら、TwitterTumblr、あるいはBeyondBasicsMagic@gmail.comにメールを送ってくれればいつでも読ませてもらうよ。手札破壊に関することでも、他のことでも、聞きたいことがあれば気軽に送ってくれ。

 よい日々を。正しくカードを捨てられるといいね。手札破壊といえば、いよいよ近づいてきた『アモンケット』では、手札を捨てる機会がとても多くなるだろう。来週から始まる『アモンケット』のプレビューは必見だ! 見逃さないようにね。

 また会おう。

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

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