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Beyond the Basics -上級者への道-

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Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2017年2月9日

原文はこちら

 それはいつでも頭をもたげてくる。

 デッキ構築を始めると、使ってみたい素晴らしいカードをいくつも思いつくだろう。最適なカードだけが残るように取捨選択していくが、候補を絞る過程を進めるほどにその選択は難しくなっていく。よくないと思いつつ土地を削ろうとするかもしれないが、それでもまだ60枚には収まらない。

 そして何の気なしにふと思う。「60枚(や40枚)を超えてもいいや。」と。

 私も前にやったことがある。読者のみんなもおそらくあるだろう。実際、悪影響はあるだろうか? おそらく、ほとんど変わらないだろう。

 ......本当にそうだろうか?


《抑制する縛め/Suppression Bonds(ORI)》 アート:Chris Rallis

 はい、そこで、やめよう。

 その行為は危険だ。そうは思えないかもしれないが、しっかりカードを減らさないのであれば、結果として勝利の可能性を自分で減らしていることになる。

 過去に成功を収めたトーナメント・デッキを調べてみればわかるが、極々まれな例外を除けば、それらのデッキはすべて下限の60枚で構成されている。リミテッドのデッキと40枚という下限の関係についても同様だ。

 なぜだろうか? それはゲームにどんな影響を与えるのだろうか? この決まりを守らないほうがいい場合はあるだろうか?

 今日はこれらについて考えてみよう。

確率を知るべきだ!

「確率なんて知るか!」って? ハン・ソロ、そのデッキから61枚目のカードを抜いてくれ。

 なぜかって? 詳しく説明しよう。

 マジックではデッキに好きなだけカードを入れることができる。それでは、どうしてほとんどのプレイヤーは最小枚数にこだわるのだろうか? 結局のところ、カードを多く入れると余分なカードを引くことになるからだ。しかし、それが原因でゲームを落とすことを、構築の時点で防ぐことは可能だ。

 それはすべて、カードの質と関係している。

 あらゆるデッキには、他よりも優先して引きたいカード――つまり「最高の」カードがあるはずだ。《無私の霊魂/Selfless Spirit(EMN)》、《残忍な剥ぎ取り/Grim Flayer(EMN)》、それにご存じ《稲妻/Lightning Bolt(4ED)》。これらは基本的に、デッキの残りを埋めるために採用したカードと比較して、強いカードと言える。

 リミテッドで見られるのは、さらに大きな差だ。デッキに入っている《害悪の機械巨人/Noxious Gearhulk(KLD)》のようなレアの爆弾カードと、《不法仲買人/Lawless Broker(KLD)》のような普通に使えるカードを比べれば、その違いは歴然としている。

 デッキに最小枚数より多くカードを入れることで、ほんのわずかではあるが、最強のカードを引き当てる可能性は減少する。

 61枚目のカードは、ここまでで説明した内容に従えば、デッキを組むときに優先して採用してきたカードよりは良くないものだ。もし最高のものならば、それはもっと早くデッキに含まれていたはずなのだから!

 こう考えてみよう。まず60枚のデッキを作って、シャッフルする。次に、61枚目のカードをライブラリーの一番上に置く。この61枚目によって、その下のすべてのカードは、引ける可能性が低下する――デッキに優先して入れたそれらのカードを、だ。(この例を逆手にとって、この61枚目は土地、あるいは1マナ域だから、と言い張っても意味はないよ。)

 カードを引くそれぞれの機会で、デッキから最強のカードより弱いものを引く可能性がわずかに上昇するだけの結果となる。

ところが......

 私はマジック・プレイヤーとして16年やってきた中で、61枚目の(あるいは41枚目の)カードを採用するための様々な理屈を見聞きした。そのうちのいくつかの事例では、私自身がそう主張している人物だった――デッキに《砕土/Harrow(C14)》が十分にあれば、41枚目は入れてもいい、と人々を納得させようとしていた遥か昔の一件を思い出すよ。

 それが疑わしい理由だということを、今はわかっている。

 誰しもそう思うものではあるが、そのほとんどは疑わしい内容だ。正確な調査の元で議論した結果、それを主張した私や他の誰かが面目を失う結果となるような場面も、幾度となく見てきた。

「この61枚目のカードはドロー呪文だから、追加の呪文がある以外60枚のデッキと変わらないよ。」

 ああ、そんなことはない。まずもって、61枚目のカードが60枚のデッキを使うのと同じ成果を生み出すというのなら、それを59枚のデッキの60枚目にしたほうが優れている。最高のカードを引くためにデッキを掘り進めたいというのなら、余分なカードを加えるのは方法として正しくない。

 次に、61枚目のドロー呪文は、マリガンのような判断をするときに失敗の原因となる。60枚デッキなら来るはずだったライブラリーの7枚目の代わりに、61枚目の《彼方の映像/Visions of Beyond(M12)》が初手に来た。そうなると、そのあとの自分のドローを適切に判断しなければならないという余計な問題がついてくるんだ。

 それに、それらの問題を置いておいたとしても、そのドロー呪文を使うためにはマナと時間が(あるいは、《通りの悪霊》ならライフが)コストとしてかかる。それが無料でその1枚下のカードに入れ替わることはない。そうしたいのであれば、単に枚数を減らせばいい。

「61枚目を土地にして、土地と呪文の比率を完璧に保つつもりさ。」

 それにより土地と呪文の比率はより数学的に正しいものとなるかもしれないが、それでも最高のカードを引く確率は減少している。

 そのうえ、求めている適切な比率を目指すためのより良い方法が存在する。例えば60枚目のカードとして、起動型能力を持つ土地の採用を検討してみよう。それを土地でもあり呪文でもあるカードとしてカウントできるからだ。

「61枚目は《戦利品の魔道士/Trophy Mage(AER)》で持ってくるためのカードで、これを持ってこれるようにしておいたほうがいいんだ。」

 これは二重にデッキを悪化させている。いつでも引きたいというわけではないカードをデッキに採用している上に、引きたいカードに出会う可能性を下げているからだ。デッキに残したいなら、他のカードを抜こう。

 デッキに61枚以降のカードを採用できるという主張は、根拠をほぼいくらでも考えることができる。何かしらの正当化はできるものだ。

 トーナメントで成功した61枚以上のデッキという例はいくつかあるが、それらの多くはかなり議論の余地が残るものだ――それぞれについて、60枚にしたバージョンのデッキを20パターンは提示できる。《機知の戦い/Battle of Wits(M13)》でグランプリ・トップ8に入賞したヒューイ・ジェンセン/Huey Jensen以外には、60枚ルールを破る理由に説得力を持たせることはできないだろう。

 定番の主張(とその誤り)についてさらに学びたければ、この題材についてパトリック・チャピン/Patrick Chapinが書いた「61枚デッキ ― マジック・ロシアン・ルーレット」(リンク先は英語)という素晴らしい記事を読むといい。

 これ以上61枚目を入れない理由を説明し続けるよりは、61枚目を検討することが正しいかもしれない極めて限られた状況についての話をしようと思う。それが最もありうるのは(《機知の戦い/Battle of Wits(M13)》というカードに言及しなければ)この3場面だろう。

1.プレイテスト中にお試しとして

 ああ、そうだ。これはトーナメントでデッキをプレイする段階にまで進んでもいない。しかし61枚目を試すには妥当な時期だろう。

 プレイテストは情報を収集するために行うものだ。何を抜くべきか、あるいはどれを試すべきかがはっきりしていないのであれば、カードを追加してデッキを試してみるのは情報収集という点では良い方法と言える。例えば、2種類の異なるカードの情報を得るために1枚ずつ入れて、61枚のデッキでプレイテストをする、というものだ。これなら効率的に情報を得られるだろう。

 イベントで実際に対戦する時までに結論を出して、60枚に減らしておこう。

2.リミテッドで、対戦相手のライブラリー切れを狙う

 構築環境では、対戦相手のデッキに応じて自分のデッキを61枚以上にする、という考えは現実的ではない。現代において長引いた結果のライブラリー切れによる敗北はほぼ考えられないし、それほどの長期戦であっても、対戦相手はドロー呪文や《不屈の自然/Rampant Growth(M12)》のようなデッキをすり減らすカードを残したままにするだろう。理論上は議論の余地があるものの、実用的ではない。

 可能性があるとすればリミテッドだが、通常狙うべきものではないことは強調しておく。デッキ切れを起こさないためだけに余分なカードを追加しないように。

 とはいえ、極端に遅いデッキや守備をがっちり固めるデッキを使っている場合であれば、相手のライブラリー切れで勝つ状況が現実的に起こりうるだろう。

 それでも、デッキのすべてを計算に入れておくことは重要だ。ドロー呪文や土地を探す呪文が、デッキに欠かせないものとして加わっていないだろうか? それらを利用するなら、この戦術は実行できない。

 利用されるカードの範囲に、効果の一部でライブラリーを削る呪文があったり、対象のプレイヤーにカードを引かせる呪文があったりしないだろうか? それもまたこの計画を台無しにしかねない要素だ。

 実際にこの手法を用いることはほとんどないが、構築フォーマットに比べれば実行する場面に出会うことは多いだろう。

3.どうすればいいかわからない場合に

 人間は不完全な生き物だ。あまり経験のないデッキを組む場合もあるし、正しい選択ができるほどの十分な実力がまだ身についていない時期もある。最小枚数に減らすという冒険に出るよりも、61枚のデッキにすることを選ぶかもしれない。

 デッキをうまく完成させられなかったと自覚した上でなら――そうするのもありだろう。

 強力なカードを引く可能性を確実に減らしてしまうことが、どれか1枚を減らすよりも本当に良いことかどうか、実際に試してみればいい。無くても問題のない余分な要素がいくつかあるはずだが、どうしても判断できなければ残しておくのもありだ。


《正確な一撃/Precise Strike(AER)》 アート:Tyler Jacobson

最小限を目指して、最大限の努力を

 私が過去に執筆していた「ReConstructed -デッキ再構築-」という連載記事は、毎週投稿されてくるデッキを私が診断するという内容だった。連載中、いつも60枚を超えるデッキが送られてきていたものだ。デッキを60枚にしないプレイヤーは、思ったより多い――そして、この記事の読者がその罠に陥らないようになれば幸いだ。

 61枚デッキで成功したプレイヤーが好きな人のために言えば、確かに成功した例を提示することはできる。しかし、61枚で成功した《孤立した砂州/Lonely Sandbar(CMD)》マッドネス・デッキや、64~65枚の中に《不死の霊薬/Elixir of Immortality(M14)》を含んだデッキの成功例よりも、60枚ちょうどで成功した同系のデッキのほうが圧倒的に数が多い。最小枚数は常に成功している。

 《機知の戦い/Battle of Wits(M13)》デッキ以外はね。もしそのデッキを使うなら......最小枚数なんて気にするな! 楽しい戦いを繰り広げてくれ。

 何か考えや疑問があるかな? いつでも気軽に TwitterTumblrで伝えてくれてかまわないし、あるいはBeyondBasicsMagic@gmail.comに英語でメールしてくれてもいいよ。

 また来週会おう。お楽しみに!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

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