マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト

読み物

Beyond the Basics -上級者への道-

authorPic_GavinVerhey.jpg

オーバーボード

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2016年12月8日

原文はこちら

 サイドボード変更は、それ単体で見ても技法を必要とするものだ。

 イベントに参加する時は、60枚のデッキのほかに15枚のサイドボードを用意するものだろう。ほとんどの人はメインデッキだけでデッキ調整を行うが、実際のところ、それでは少々調整不足と言える。競技イベントに限らず、1マッチ2ゲーム先取で行われるあらゆるイベントでは、統計上、ゲームの半分以上はサイドボードを使った対戦になるからだ。そう、2ゲーム勝利したほうが勝つマッチ戦においては、基本的にはサイドボードを入れる前のゲーム数よりも、サイドボードを入れた後のゲームのほうが多くなる。常に全勝し続けるのでもない限りはね。

 サイドボードは最大の武器となりうる――そして使い方を誤れば、自分自身に向かって妨害工作を仕掛けるような失敗も簡単に起こりうるんだ。

 正しいサイドボードの取扱いについて、いろいろ書きたいことがある。今日は、その中でも特定の要素について深く取り上げたい。スタンダードの対戦における、サイドボードの適切な交換枚数についてだ。(ほかのフォーマットにも適用できるとは思うが、スタンダードでない構築フォーマットは、サイドボード用カードの強さ、あるいは特定のデッキに対して割かなければならない対策カードの枚数といった要素により、交換枚数に関する基本的な考え方が通用しない場合があるだろう。)

 準備はいいかな? やっていこう!

サイドボード資源

 サイドボードという資源は限られている。サイドボードには15枚までしかカードを用意できないので、そのすべてを意味のあるカードとして採用しなければならない。サイドボードのうち5枚を全く使わなかったとすれば、それは全体の3分の1にもなる。その5枚が違う内容であれば、敗北してしまった対戦の相性を根本的に覆す結果を生み出していたかもしれない。

 これはつまり、サイドボードのカードをどのように用いるかについては、費用対効果をしっかり考えなければならない、ということに他ならない。例えば、特定のデッキに対してサイドボードを15枚すべて使うのであれば、そのデッキには常に勝てるだろう。すごいね。とは言え、特定のデッキがスタンダードのメタゲーム(訳注1)を支配している状態だとしても、全対戦でそのデッキと当たるなどということは、まずありえないだろう。サイドボードには、ほかのデッキに対抗するための選択肢も必要なはずだ。

(訳注1:メタゲーム/どんなデッキやカードが流行しているか)

 仮に、これから出るイベントで対戦するデッキについて何と何回当たるか、完全に全てを知ったうえでサイドボードを組めるとしよう。その前提で目指すべきは、各デッキに対して十分なカードを準備し、結果として余分なカードを1枚もデッキに残さず勝つこと、となる。私たちは全知全能ではないが、少なくとも完璧に近づけていくことは可能だろう。


《全知/Omniscience(M13)》 アート:Jason Chan

 適切なサイドボード交換が行えているかどうかを判断するいくつかの方法がある。特定のデッキに対して正しい枚数のカードを入れ替えできるよう、私は以下の3つの基本を守ることが多い。

1.入れるカードと抜くカードをはっきりさせておく

 対戦の相性をぜひとも改善したいデッキが存在するとしよう。なので、そのデッキに対してサイドボードを7枚用意した。すごい! 今やそのデッキを粉砕してしまえるだろうね。ずらりと並んだ対策に盛り上がりつつ、大会へと向かう。

 それらのサイドボード・カードを使って打倒するつもりの、目的のデッキとの対戦が始まった。1ゲーム目が終了し、2ゲーム目に入る前にサイドボードを行う......しかし、どれとどれを入れ替えればよいか、その判断がつかないということに気づく! 使いたいサイドボード・カードを全て入れるには、有用なカードまで抜かなければならない。

 これはよくある失敗だ。貴重なたった15枚の枠は、サイドボード交換によってデッキをより良く、平たく言えば相性を改善するために用いなければならない。サイドに枚数を割いてサイドボードのグレードアップするだけでは駄目なんだ。

 例えば、今のスタンダードで、速攻デッキに対抗するために、プロツアー『カラデシュ』で優勝したデッキと同じ青黒赤のグリクシス・コントロール・デッキを使っているとしよう。サイドボード後は、序盤を制するため、除去呪文を複数抱えられるようにしておきたい。とは言え、サイドボードを用意しすぎると、交換の際にどうなるだろうか。最初は簡単だ。打ち消し呪文を抜けばいいだろう。しかしその先は、より効率的な除去呪文の枠を確保するためとはいえ、《蓄霊稲妻/Harnessed Lightning(KLD)》のような除去呪文を抜かなければ大量のサイドボード・カードが収まらない! それが一体何になるのか?

 そう、デッキはそのサイドの除去呪文によって、わずかに効率が高まるかもしれない――しかし、すでに持ち合わせていたものを大きく上回るような改善は生み出せていない。私ならこの枠は、わずかに効率を引き上げるためでなく、助けが必要となる別のデッキとの対戦のために利用する。

 ほかには、サイドカードを入れすぎることでデッキの内容が薄くなる、という大きな危険性がある。これは常に起こりうることだが、特に速攻デッキでは気を付けなければならない。対策のための受け身なカード、それを大量に入れる枠を確保するためにクリーチャーを抜いてしまうと、デッキ自体の動きがかなり遅くなってしまうからだ。各々のデッキには、デッキとして機能するための核となる要素が存在する。ところがそこをサイドボードが侵食してしまうと、デッキの基本的な動きを阻害してしまうかもしれない。

 サイドボードを組み立てる時には、各デッキとの対戦においてサイドボードの入れ替えをどう行うか、あらかじめ考えよう。メインに残しておきたいカードとの入れ替えが発生しそうに思えた場合は、基本的にサイドボードを調整し直し、その枠は別の使い方ができるように変えたほうがいい。

 15枚を決定する前に、どのデッキに対して何を入れて何を抜くのか考えておくのは、本当に大事なことだ。

2.デッキの利用率に合わせたサイドボードを作る

 《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》デッキには絶対に負けたくないので、しっかり対策を練ることにした。そのためにサイドボードの枠を多く使い、抜くカードもはっきり決まった。準備はできた。《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》デッキに負ける要素はない。

 イベントに参加して、思い描いた通りに《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》デッキを撃破した。何か問題があるだろうか? イベント中、《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》デッキと対戦したのは、1度きりだった!

 どうしてこうなってしまったのか?


《逆説的な結果/Paradoxical Outcome(KLD)》 アート:Nils Hamm

 適切な枚数のサイドボードを準備して交換することも重要だが、予想されるデッキ分布に基づいて適切なサイドボードを準備することも同じくらい大事だ。特定のデッキが少ないと考えられる場合、そのデッキに対してのサイドボード使用枠を減らすことができるだろう。

 私は基本的に、まずはどのデッキが最も遭遇しそうか考え、それから(前の項目に戻って)それぞれのデッキに対して外すカードを判断した上で、入れるサイドボードの枚数が正しくなるようにしている。そのあと、それほど頻繁には当たらないであろうデッキに対して用いるカードを、残りの枠に充てていく、といった感じだ。

 他には、複数のデッキに対してまたがって利用可能なサイドボード・カードが使える場合もあるだろう。例えば、打ち消し呪文はコントロールの同系対決でも役立つし、《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》デッキ相手にも役立つ。それほど見かけないデッキへの対抗策として、そういった複数のデッキ相手に役立つカードを見つけ出すことは、バランスの優れたサイドボードを作るための素晴らしい手法だ。そうすれば、主に対処しておきたいデッキに対策を集中しつつも、さまざまなデッキに対応することができる。

3.助けが必要な対戦のためにサイドボードを用意する

 サイドボード交換は、不利な対戦の相性をひっくり返し、相手のサイドボード・カードと対決するためにある。それを前提として、絶対にしてはいけないのは、元から有利な対戦のために大量のカードをサイドボードに用意してしまうことだ。

 《霊気池の驚異/Aetherworks Marvel(KLD)》デッキに対して、前述の青黒赤コントロール・デッキをプレイしているとしよう。1ゲーム目はかなり有利な対戦と言える。そしてサイドボード交換に入り、相手はこちらに対して大量のカードをサイドボードしてくるだろう――それに対してこちらは何もない

 しかしながら、この対戦のためにわざわざ大量のサイドボード・カードを用意すべきではないだろう。

 1つには、前述した通り、1ゲーム目が有利なデッキに対しては抜くカードがあまりない、という理由がある。

 もう1つは、手厚い補助を必要としていない、という理由だ。思い出してほしい。必要なのは、その対戦に勝つための適切な枚数のサイドボードであって、過剰な枚数のサイドボードではない。この場合は、サイドボードに少量の対策があるだけで十分だ。ああ、対戦相手がこちらを処するために10枚ものサイドボード・カードを用意している可能性は常に残る――しかしほとんどの場合は、数枚に過ぎない。であれば、勝つための後押しとして数枚のカードを用意しておけば、基本的には十分だろう。

再度ボードの確認

 スタンダードのサイドボード構築には骨が折れることもある。そしてサイドボードに関する話は、最もよく聞かれる質問の1つだ。なので、願わくば、この記事が目標に向かって前進するための道具として効果的でありますように。

 サイドボードについての話題はもっといろいろあって、今回の記事で扱ったのは氷山の一角に過ぎない。だから、今回の記事が良かったなら、感想を送ってもらえると嬉しいな。そうすれば、今後の記事でまたサイドボードについてもっと扱うことができるよ。(そうでなかったとしたら、逆もまた真なり、かな。)

 感想を伝える方法? ああ、Twitterでつぶやいたり、Tumblrで質問したり、あるいはBeyondBasicsMagic@gmail.comに(すまないが英語で)メールすることで、いつでも伝えられるよ。

 来週また会おう! それまでは、必要とするカードを正確な枚数サイドボードしておいてくれ。

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

前の記事: スタンダードな付き合い方 | Beyond the Basics -上級者への道-一覧に戻る | 次の記事: トピカル・ジュース#4 少年と彼の帽子

トピックス