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戦略記事

Beyond the Basics -上級者への道-

アーティファクトをピックしよう

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アーティファクトをピックしよう

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2016年9月27日


 あなたは『カラデシュ』のドラフトに参加して、素晴らしいブースター・パックを願う。1パック目を開封し――さあ、1枚目を選ぶときだ!

 中身を素早く確認し、候補を2枚に絞る。どちらをピック(訳注:ドラフトでパックから自分のデッキ用にカードを選ぶこと)したほうが強力だろうか?

 どちらも素晴らしいカードだ。かたやパワー3の飛行と速攻持ち、かたや効果的な除去呪文。一般的には、序盤に除去を確保するリミテッド戦略が支持されていることから、《本質の摘出》のほうがより強力だと考えるのではないだろうか。

 しかし、ここでの問いは「どちらのほうが基本的に強いか?」ではない。「どちらをピックしたほうが良いか?」だ。

 ここが興味深いところさ。


嘘か真か》 アート:Matt Cavotta

 最初のカードをピックする時点では、最終的にどの色を使うことになるかはわからない。

 初手に《本質の摘出》をピックした状態を想像してみてくれ。素晴らしいね! しかし、その後にほとんど黒のカードが回ってこなかったので、黒をあきらめて他の色を選ぶことになってしまった。そう、その結果、このピックは――初手が!――実質無駄に終わってしまう。

 さて、これはドラフトでは常に起こりうる話だ。そうは言っても、強力なカード全てに手を出してデッキに採用しようとして、弱いデッキで終わる羽目になるよりは、初手で序盤から色を決めるほうがいいだろう。初手が「無駄になる」可能性はあるが、ドラフトの方針を定めやすいからだ。

 しかし、選択の余地はないのだろうか? 最終的なデッキに採用できることを保証するものがあるとすれば、それは何だろうか?

 そうだね、アーティファクトだね。

どこにも属さないモノ

 無色のアーティファクトは全て、隠された能力を持っている。それはカードに記述されてはいないが、にもかかわらず効果を発揮している。それはカードの表と裏の間に潜んでいて......そしてそう、アーティファクトは常に自分のデッキに入れることができるんだよね。

 その秘密はすべてマナ・シンボルが握っている。

BB20160929_4-Mana.png

 最終的にデッキが何色になるとしても、アーティファクトは常に利用可能だ。《新緑の機械巨人》や他の色付きアーティファクトのような、珍しいものは除いてね。ドラフトのシグナル(訳注:流した色と流れてくる色から得られる、状況を判断するための情報)を把握する猶予を得つつ、デッキに使用可能なカードを手に入れておくことができるため、アーティファクトを序盤に1枚ピックしておくのは安定感がある。

 したがって、単にカードの強さという観点から2種類のカードを比較するのではなく、デッキに採用できる可能性についても同様に比較する視点を持つことが肝要だ。

 デッキが黒いときにだけ採用できる《本質の摘出》と、デッキにほぼ必ず採用できる(とは言っても、デッキが馬鹿みたいに強力になったときだけは入れないであろう)《捕獲飛行機械》。どちらがより良いピックだろうか?

 かなり悩ましくなったんじゃないかな?

カードの強さ 対 採用の可能性

 少し違う例を見てみよう。

 今度は、『カラデシュ』の1パック目を開封して、最も取りたいと考えた2枚がこの2つだった、ということにしてみよう。

 先ほどと同様、ここでもまったく同じことが言える。《金線の使い魔》は最終的なデッキにほぼ採用されるだろう。最終的なデッキがどの色になっても使えるし、いつでも役立つはずだ。

 《発明の天使》には《本質の摘出》と似たような懸念がある。これはデッキが白くなった時にしか使えず、白のダブルシンボルではタッチでの採用は難しいだろう。

 そう、「採用できるか否か」という基準で見た場合、前の例と今の例はほとんど同じだ。しかしながら、カードの強さを比較した場合、前の例と今の例ではかなりの開きがある。

 《発明の天使》は単体でゲームを決めることも可能な、極めて強力な神話レアだ。《金線の使い魔》はマナ・カーブ(訳注:マナ域ごとの枚数をグラフにすることで見える曲線)に沿った展開が可能で、少々のライフを回復してくれる上、死亡したときにカードを補填してくれる。極めて有能で安定感もあるカードだ。

 この場合は、《発明の天使》をピックしたい。使えない危険性を受け入れるだけの価値は、間違いなくある。このカードがデッキにもたらす強さは、《金線の使い魔》のそれよりも相当に上のはずだ。

 逆もまた真なり。

 この例では、悩むところは多くない。このアーティファクトが強力なのはすでに述べた通りだ。最終的に自分で自分のパーマネントをバウンス(訳注:戦場のカードを手札に戻す)する戦術になったとしても、《金線の使い魔》は依然として手堅いカードだ。ここでピックするのは《金線の使い魔》だね。どんなデッキにでも入るし、基本的に強力なカードだからだ。

 つまり、どう考えればいいかな?

 アーティファクトに対して色を持つカードがどの程度強力なのかを検討しなくてはいけない。アーティファクトは常に採用可能という利点がある。それでは、その色を持つカードは、カードパワーの差を十分に克服できるのかを判断することになる。未知の採用可能性と既知のカードパワーの両方を考慮しなければならない、という慣れない問題を解決するには、この考え方が必要になるだろう。

 これは難問だね。

ピックの時期とアーキタイプ

 ドラフトで一番最初にピックする時は、デッキがどの色になるかが最も不確定な状態だ。

 2枚目以降のピックでは、それまでよりも得られる情報は増えていく。つまり、ドラフトの後半では、その色のカードを採用できるかどうかについて、より多くの情報があるということだ。一番最初の例に戻ろう。

 これが3パック目で、すでに黒緑をしっかり取っているなら、《本質の摘出》がデッキに採用できることは明らかだ。デッキに何が入って何が入らないのかはすでに分かっているため、デッキに必ず採用できるという《捕獲飛行機械》の「隠された力」は価値を失い、採用の可能性については《本質の摘出》と同等になっている。ここに至り、この2枚は直接比較できるようになる。

 逆もまた真なりだ。黒を一切利用していない場合、《本質の摘出》が使えないことはわかりきっている。どんなにそのカードが強くとも、ピックするかどうか考慮する余地はない。

 最後に、無色であるにも関わらず、採用できるかどうかわからないことがあるアーティファクトについて考えよう。例えばこのカードだ。

 さて、これは確かにどんなデッキにでも入れることはできる。唱えたり能力を起動したりするのに、特定の色マナを必要とはしない。とはいえ、これを採用するのに向いているのはどんなデッキだろうか?

 《捕獲飛行機械》はリミテッドにおいてパワー3と飛行を持つ有能なクリーチャーであり、基本的にどんなデッキでも手軽なコストで利用できる。一方で《抽出機構》は、それをうまく利用できるよう、デッキの方針を変更させ始める。エネルギーを使い、自分のカードを自らバウンスすることとの相互作用を持つ、遅いデッキで最も活躍するだろう。《抽出機構》をピックしたものの、最終的なデッキが攻撃的な白赤機体デッキになった場合、《抽出機構》は使わないほうがいいだろう。

 同様に、《航空艇》はクリーチャーをマナ・カーブに沿って展開できるなら、うまく活用できる。《領事府の空船口》はコントロール要素を持つデッキで役立つだろうし、《金属紡績工の組細工》は黒を使っているなら採用したいかもしれない、等々......

 まあ、端的に言えば、すべてのアーティファクトがいずれも汎用的というわけではない、という話だ。

 どれを選ぶか判断するためには、そのアーティファクトを使える可能性も判断しなければならない。それが特定のアーキタイプ(訳注:典型的なデッキの構成)において最も役立つ類のアーティファクトであるなら、常に採用できるものとしてカードをピックするのではなく、改めてカードを評価しなおさなければならない。

アーティファクトの価値

 さて、最初の例ではどちらのカードをピックしたほうがいいだろうか?

 私なら《捕獲飛行機械》を選ぶよ。

 基本的には常にデッキに入るし、確かに《本質の摘出》の3点ダメージは素晴らしいけれども、《捕獲飛行機械》のほうが強いんじゃないかな。

 これらの例や考えは基本に過ぎず、ここから深く判断し始めるための、さまざまな要素がある。

 例えば、トークンが並ぶこと、そして大型クリーチャーに対処できない不安から、3点ダメージはこの環境では少し弱いのでは、と感じるかもしれない。また、いくつかの黒がらみのアーキタイプは、最終的にアーティファクトをサブテーマとして持つ可能性があり、結局黒を使う流れになったとしても、アーティファクトが必要なことに変わりはないかもしれない。こういった、さまざまな要素から比較検討を重ねられるだろう。

 そして、最初にどちらをピックしたとしても、そこで終わりではない。各色の各カードとアーティファクトを比較してピックしていく過程は、色が確定するまで、それぞれをデッキに採用できる可能性が変動し続ける。すでに黒のカードを1枚ピックしている状態で4手目の束が回ってきて、黒よりアーティファクトのほうが良い中身だった場合、それらをどう比較してドラフトしていくかは、あなたの判断次第だ。

 これらをしっかり覚えて、『カラデシュ』のドラフトをするときに実践してみよう!

 アーティファクト世界でのドラフトは久しぶりだが、序盤から汎用性の高いアーティファクトをピックすることを恐れないでくれ。いつだって役に立つものさ。

 この記事について何か意見を思いついたり、何か別の『カラデシュ』についての考えがあれば、聞かせてもらえると嬉しいよ! いつでもTwitterに送ってくれて構わないし、Tumblrに質問してくれても構わない。BeyondBasicsMagic@gmail.comにメールしてくれてもいいよ。また来週会おう。

 初手のピックがいつもデッキの最終形に入りますように!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

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