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人生を変えたカード

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人生を変えたカード

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2018年3月1日


 17年前にマジックをプレイし始めた時のことを思い出すよ。そのころの地球は恐竜が徘徊し、文明はまだ発展途上だった。火の発見以来最も刺激的なセットとして、『インベイジョン』が発売されていた時期だ。

 初期のインターネット環境、その暗闇の中をさまよいながらマジックの戦略を学び始めた時、真っ先に覚えたのがアグロ――速攻戦略と、コントロール戦略の2つだ。これは当時のマジック戦略論の根幹と言える。

 アグレッシブ・デッキとディフェンシブ・デッキ。

 早いデッキと遅いデッキ。

 赤いデッキと青いデッキ。

 私はそれらを頭に叩き込んだ。アグレッシブ・デッキはクリーチャーと火力呪文を使う。ディフェンシブ・デッキは打ち消し呪文と全体除去を使う。これで私の典型例に対する認識は定まった。

 これこそがマジックの骨子なのだ。

 そう思ったことこそが、あの良き8月に「Bigfoot's Game Store」のフライデー・ナイト・マジックで体験した事柄を、決して忘れられない理由となる。

 対戦相手はここまでに《ラノワールのエルフ》、《ガイアの空の民》、そして2体の《疾風のマングース》と展開してきた。そしてこのターンは何も出してこなかった。

 完璧なお膳立てだ。

 11歳の私はしたり顔で、《神の怒り》をプレイした......

 ......そして私は、私と同じように盤面にカードを置いて、したり顔をしている20歳ぐらいの対戦相手を見上げた。

 その対戦こそが、私の認識を上回るものがある、と私が知った時だったんだ。

 アグレッシブ・デッキに打ち消し呪文を採用するという発想は、私にとって革命的だった。マジックは、特定のカードが特定のデッキに合うよう定められただけの、アーキタイプごとに決まった内容のあるゲームなどではなかったんだ。構成要素を結び付けて構築するための方法は、多種多様に存在していた。

 クリーチャーを重視したデッキについて回る弱点とは何だろうか? その1つは、ダメージ源となるパーマネントをすべて除去されてしまう展開だ。

 赤はそれに対して火力呪文や速攻クリーチャーで対抗する。対戦相手にクリーチャーを一掃されたとしても、まだ残りのライフを攻めることが可能だ。それが昔から利用されている理由となる。

 黒はそれに対して手札破壊と復帰力で優位を得る。そもそも相手にその呪文を唱えさせないか、倒されても墓地からクリーチャーを戻すことができるのだ。

 そして青は――青は打ち消し呪文でその弱点を補強することができる。それにより対戦相手はマナを消費してしまい、結果としてそのターンを丸々失ってしまうということは、特筆すべき点だろう。

 即座にピンと来た。無限の可能性を感じ取り、私の火花が点火した。

 そしてこれが、私が初めて《神秘の蛇》に出会った時なんだ。


神秘の蛇》 アート:Daren Bader

 最初に出会った時は他人のものだった《神秘の蛇》だが、1週間後には私の元へと来るよう説得して入手していた。シューという蛇のなまめかしい吐息にすっかり魅了された私は、この派手な緑青のカード4枚を中心とした自分自身の緑青デッキを組み上げたんだ。

 《翡翠のヒル》や《上天の突然変異》でデッキを武装したほか、(除去されない「浮沈艦」だと私は主張していたが、「タイタニック号」とあまり変わらない)《生体飛行船》も1枚採用し、さらに先週の対戦中に弱いと感じた低マナ域をいくつか入れ替えた。準備は整った。

 ......大敗北への準備が。

 最初のラウンドは2ゲームとも《神秘の蛇》を出せたが、勝ちには繋がらなかった。次のラウンドも負けた。そしてその後は、さらなるボディーブローの追い打ちを受けるがごとく、不戦勝となった。

 先週当たったプレイヤーが、私のデッキがどうなっているのかを見てくれることになった。その彼が、取るに足らないと思えるエルフとマングースで対戦相手を打ち負かすのを見届けたのち、アドバイスをもらうため、ともに店の脇へと移動した。

「このデッキは、先に軽量クリーチャーを出してあって、マナを立たせておける状況にあるときだけうまくいくんだ」

 その通りだ!

 さらなる新概念。さらなるデッキ構築の知見。私は自分のデッキがアグレッシブであるべきことは理解していた――しかし私はアグレッシブ・デッキは常にマナを使い切るべきだとばかり思いこんでいたんだ。赤のアグレッシブ・デッキはマナを残す必要がない......しかし青のアグレッシブ・デッキは残す必要がある! これらはそれぞれ別のデッキ構築が必要なんだ。

 2001年の当時に、頭脳を拡張する手法がすでに存在していたなら、このような別々のデッキ構築を学習するために、そうしていただろうね。(今は高度なインターネットコミュニティがある!)

 次週のために《翡翠のヒル》を《ガイアの空の民》と、《生体飛行船》を《嘘か真か》と交換し、デッキはすごく良くなった。実際に次のフライデー・ナイト・マジックに参加した時は、手札で《嘘か真か》と《神秘の蛇》の両方を構えながらターンを終えるという素晴らしい感覚もすぐに理解したし、負けたのは唯一、同系対決でのみだった。

 それはしっかり機能していた。11歳でマジックのイベントに参加し始めたばかりなら、フライデー・ナイト・マジックで3勝1敗という成績を収めることは、グランプリの2日目に進出するのと同じぐらい素晴らしい体験かもしれない。

 この《神秘の蛇》デッキは、私がマジックに対して思い描いていたその全体像を変化させた。緑青デッキではほとんど必ず《神秘の蛇》を採用したし、緑青マッドネス・デッキを使うときでさえこの愛しい蛇を重視することにしたんだ。インターネットに掲載されていたデッキリストのことなど気にしなかった――とにかく《神秘の蛇》をデッキに入れた。

 そしてついに、どのカードもそうであるように、ローテーションにより《神秘の蛇》はスタンダードから消えた。出会いから2年後に、鱗持ちの友人と私は袂を分かつことになったんだ。それぞれが違う道を歩むことになった。

 そういうことがあったのさ。

何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?

 それまで、カードプレビューで大声を上げたことはなかった。しかしそこにはそれがあったんだ。画面にはっきり表示されていた。

 『時のらせん』では非常に多くのカードが華々しく紹介されていた。過去のカードやセットへの、とても刺激的な逆行。そして過去のセットを懐かしむことにおける面白い点といえば、どこを懐かしむのかは人それぞれ、というところだ。

 ある人々は、クリーチャー・タイプにレベルが戻ってきて興奮していた。昔のカードだけを使うフォーマット、「オールドスクール/Old-school」のプレイヤーは、《Vesuvan Doppelganger》を模した《ヴェズーヴァの多相の戦士》の登場に喜んだ。どこかの誰かにとっては、《雲のジン》と《Electric Eel》の2枚を組み合わせたいという夢が《嵐雲のジン》によって実現したことですら嬉しかったことだろう。

 そして私にとって、それは《神秘の蛇》だった。

 その当時、多色カードの再録は極めてまれなことであり、スタンダードのセットにそういったカードが入ることはまず考えられなかった。これはマスターズ・セットが登場する前だったし、ほとんどのセットに多色のカードが含まれるようになる前でもあったんだ。《神秘の蛇》には貴重な第二の機会が与えられた――そして私はその貴重な機会を逃すつもりなどなかった。

 私は最愛の蛇とともに、新天地へと向かった。もちろん私は、過去に学んだことを生かし、定番となっている手法(と、いくつかの新しい仕掛け)で《神秘の蛇》を投入できるよう、完璧に仕上げた。(《裂け目翼の雲間を泳ぐもの》のような待機クリーチャーや、《造物の学者、ヴェンセール》のような瞬速クリーチャーは、蛇の良い相棒になるということが分かった。)ところが実際に革新をもたらしたのは、別の要素だったんだ。

 それがこの素敵なカードさ。

 古い蛇に新しい芸を仕込めるようになったというわけだ。

 それまでも、カジュアルなフォーマットでは《水晶の破片》のようなカードを使って試されてはいたが、スタンダードでは競技水準の強さがあるということに私はここで初めて気がついた。多くのゲームが《神秘の蛇》に続く《一瞬の瞬き》によって決まった。

 最初に知ったカードの使い方が、そのカードの活用法のすべてであるということはない。数年前と同じように、《神秘の蛇》がその住処に隠されていた戦略を明らかにしてくれた。そしてそれにより、私はまた重要な教訓を得たんだ。カードが再登場したら、それを利用する新しい方法を探そう。環境が異なれば使えるかどうかも変わる――違う相互作用も見つかるようになるんだ。

 そして、それらの教訓は役に立ち続けた。例えば、プロツアー・サンファンでベン・ヘイズ/Ben Heyesを構築戦無敗に導いた青緑デッキを構築したのは私だが、その時も方針を定めるために《神秘の蛇》から学んだものと同じ原理を用いた。私は今日に至るまで、新しいデッキを構築するときはそれらの経験を土台としている。緑青との親密な関係を築き続けているよ。

 ついでに言えば、これは2/2なので、熊蛇だよね――この動物の組み合わせは私のお定まりになったってわけさ(訳注:リンク先は英語)。

 最初のころに《神秘の蛇》が私の目を開いてくれなかったら、私がウィザーズ社に就職する機会もなく、プロツアーに参加することもなく、そしてもしかしたらマジックを続けていない、ということすらあったかもしれないんだ。

 本当に、《神秘の蛇》がなかったら今頃どうしていたのか分からないよ。

 『時のらせん』以降も、《神秘の蛇》は何回か再録されている。『統率者(2015年版)』や『モダンマスターズ 2015年版』でも出会うことができたはずだ。私は、プレイヤーに私と同様の体験を与えるためにこれが時々再録され続けるだろうと思っている。この蛇からは学べることがまだまだあるんだ。

 私は今日、この記事を読んでいるあなたが考えている通り、新たなる懐古的セットでもその体験が再現されると発表できることをすごく嬉しく思うよ。

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 おかえり、《神秘の蛇》。

 このカードは、モダン・フォーマットで華々しく活躍しているから紹介されるというわけではないが(その名誉はもちろん《ザルファーの魔道士、テフェリー》のものだ)、私と《神秘の蛇》の物語をみんなに紹介する機会が欲しくてプレビューさせてもらった。そしてあなたが『マスターズ25th』を体験するときは、パックを開封して誰もが望む神話レアを探しつつも、カードを眺めて初心者のころに魅了された何かを1枚でも見つける瞬間があることを願うよ。

 『マスターズ25th』は単にカードが詰まっているだけじゃない――思い出も詰まってるのさ。

 他の人に話したい体験はあるかな? ぜひとも聞かせてほしい! いつでも気軽にTwitterTumblrでメッセージを送ってくれてかまわないし、BeyondBasicsMagic@Gmail.comに(すまないが英語で)メールしてくれても大丈夫だよ。

 あなたも、マジック人生におけるあなたの《神秘の蛇》に出会えますように。

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

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