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ゲームに必要な10のこと その1

Mark Rosewater / Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru

2011年10月24日

原文はこちら

 これは私の娘、レイチェルだ。

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 私の上の娘で、現在11歳である(他の2人の子供は双子でアダムとサラといい、ともに7歳だ)。今年、彼女は中学校に進学した。書こうと思えば書ける話はいくらでもあるが、ここで取り上げるのは去年、レイチェルが小学生だったときのことである。

 レイチェルの先生はダレル・ニコルスという男で、レイチェルはニコルス先生と呼んでいた。ニコルス先生は、あらゆる親が望むような先生だった。子供たちを愛し、教えることを愛し、彼の情熱は彼の仕事に惜しみなく注がれていた。たとえば、授業で単純な装置について学ぶ時には、レイチェルの宿題はルーブ・ゴールドバーグ・マシンだった。

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 レイチェルにとって第5学年はすばらしい年だった。彼女は学びを楽しみ、ニコルス先生は教えることを楽しんでいた。これがどうゲーム・デザインに関連するのかって? その話までには、もう少し誌面が必要になる。年の初めに、私は「カリキュラム・ナイト」として知られる会合に出向いた。そこでは、生徒の保護者が教師と話し、その年の計画についての説明を受けるのだ。その会合で、ニコルス先生は保護者に教室に来て話して欲しいと言ったのだ。そうすれば、保護者の意見を知ることができるし、教室での内容にも反映できると。

 カリキュラム・ナイトの最期に、私はニコルス先生の下に行って自己紹介をした。私は教室で話すことができるなら是非やりたいと伝えた(公に話すということに関して、私は引っ込み思案ではない)。彼は私に、何の仕事をしているのかと聞いてきたので、私はゲーム・デザイナーだと応えた。「すばらしい!」 彼はちょうど私の助けを必要とする計画に取り組んでいたのだった。

 5年生は、アメリカ独立戦争について学ぶ。このとき、それに関連したゲームを作るのが生徒達の大きな課題となっているのだ。そこで教室に行って、ゲームをデザインすることについて話すことができるだろうか?

 彼は私に、短く説明するようにと頼んできた。5年生は、30分程度の、単一テーマの話になら集中できるものだという。そして、私の解説をA4用紙1枚のハンドアウトにまとめてもらえないかというのだ。可能だろうか?

 もちろん、私はすぐに首肯した。彼の出してきた条件全てを満たすのは簡単ではないが、実際に最も重要なのは、非常に複雑なことを可能な限り単純な方法で表す、ということだと私は気づいていた。ゲーム・デザインの本質を、5年生に説明できるように濃縮しなければならない。その工程の中で、私はいくつかの新しい知見を得ていた。

 学ぶための最善の方法は教えることである、という諺がある。何かについて、初心者に説明できるだけの知識を得るためにはその内容を充分に深くつかんでいなければならない。制限を愛する男である私にとって、この条件はむしろ喜びだった。これから諸君にお見せするのは、子供達に渡したハンドアウトである。これはマジックのデザインに関するコラムなので、なぜこの説明がマジックに適用されると思ったのかについて説明することにしよう。

 この授業について二月ほど考えた後、私は、この内容を完全に実践的なものにすることに決めた。子供たちはそれぞれ自分のゲームを作るのだから、ゲームに必要なものを説明しようと。考えに考え抜いた末、私は9つの要素を見つけ出した。その後、もう1つ気づいたので、10個になったのだ。


ゲームに必要な10のこと by マーク・ローズウォーター

#1) 目標(1つでも複数でも)

 ゲームには目標が必要である。プレイヤーが挑むのは何なのか、そしてどうやったら勝てるのか。


 誰かに新しいゲームについて膝を詰めて説明するとき、最初に説明することは、何をするのか、だ。このゲームの目標は何なのか、そしてどうやったら勝てるのか。ゲーム・デザインの初心者がよく犯す間違いに、ゲームの魅力的なところにばかり注目して、その魅力的なことをなぜプレイヤーが行なうのかというところを見落とすというものがある。

 私には執筆という基礎があるので、物語を語ることにたとえて話すことにしよう。メインとなる登場人物がいて、その存在が何かをしたいと思っている。そのしたいことというのは物語を動かすことだ。目的というのは、ゲームを動かすことだ。1ページにまとめなければならなかったので、この点について深く掘り下げはしなかったが、ここで知っておくべき事は他にも存在する。プレイヤーが、ゲームの目標であることをしようと思わなければならないということだ。

 目標は魅力的でなければならない。言い換えると、目標を目指す行動が楽しげでなければならない(諸君はこれらを満たす方法を見ていくことになる。#8までは納得できないかも知れないが、これはあらゆる面で重要なのだ)。プレイヤーは、そのゲームでやるべきことを楽しそうだと思えるからこそそのゲームをプレイしたいと思うのだ。「針を自分の顔に刺そう」ゲームなんてものがあったとしても、誰もやりたいとは思わないだろう。

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 また、この目標はわかりやすく明確でなければならない。もう一つ、デザイン初心者が陥りやすい落とし穴に、目標が不透明なものを作ってしまうというものがある。その場合、プレイヤーはそのために何をすればいいのか分からず右往左往することになってしまうのだ。これはいけない。プレイヤーに充分な自由度を与えるべきではあるが、目標は確実で正確なものでなければならないのだ。プレイヤーが「これで勝ちだっけ?」と聞かなければならないようなゲームは、この視点に欠けていると言えよう。

 マジックはこの条件を完璧に満たしている。目標? 対戦相手を魔法の決闘で倒す――あるいは、ゲーム的に言うなら、相手のライフ総量を20から0に減らすこと、だ。これは楽しそうに聞こえるし、何をすべきかは明白だ。実際、マジックの長所の一つには、目標が明確であるということが挙げられると思っている。

 だがちょっと待って欲しい。ライブラリー切れや毒、あるいはライブラリーの枚数が多いことその他の勝利条件で勝つこともあるじゃないか。――それでいいのだ。まず、基本的な目標は変わらない(他のプレイヤーを魔法の決闘で倒す)。そして、それらの他の勝利条件のこのゲームにしめる割合は非常に、非常に小さい。マジックのように大きく柔軟なゲームには他の勝利条件が存在しうるのだが、それこそが目標が明確であることの証なのである。

#2) ルール

 プレイヤーができること、できないことの一覧が必要である。制限はゲームの重要な要素であり、目標の達成があまりにも簡単であるべきではない。


 ほとんどの物において、デザインとは、それをできる限り簡単にすることである。照明器具をデザインするとしたら、その目標は簡単に点灯したり消灯したりできるようにするということになる。ゲーム(やパズル)のデザインは、物事を達成しにくくすることが必要だという点で独特だと言えるだろう。ゲームの目標を定めたなら、次にすべきことはその目標を達成することに対する障害を置くことになる。

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 本質的に、ゲームをプレイすることとは、障害を乗り越えることである。プレイヤーは目標を達成しようとし、ゲームは(そのシステム自体か、あるいは他のプレイヤーを通してかはともかく)それを妨害しようとする。目標を達成することが楽しいのは、そこに困難な障害があるからである。生物学的に言って、何かをするためには動機が必要である。そこで、そのために化学的、あるいは精神的に(どちらも同じだという意見もあるだろう)利益があるようになっている。ゲーム・デザイナーとして、このハードルを作らなければならない。あまりにも簡単にすれば勝利に至る興奮が存在しなくなるが、一方、あまりにも難しくすると誰にも達成できなくなってしまう。

 私のコラムをよく読んでくれている諸君は、私がよく「制限は創造の母」と唱えていることを知っていることだろう。ゲーム・デザインにおいてこれが最も当てはまるのはルールの作成の時である。ゲーム・デザイナーとしてしなければならないことは、諸君の作った制限を乗り越えるためにプレイヤーが創造的にならなければならないようにするということである。設定した目標について、そしてプレイヤーがその目標をどう達成するかということについて充分に考えを巡らし、その上でそこに障害物を設置するのだ。

 楽しめる時間を作るということがこのコラムの本題の一つだとすれば、もう一つは明快であることの重要性ということになる。ルールの機能のうち2つめに重要なのは、プレイヤーが何をできるか、何をできないかということを完全に明確にするということである。曖昧さは人生のいろいろな場所ですばらしい働きを見せるが、ゲームのプレイにおいてはそうではない。ゲームがどう動いているのかを見極めようとするたびに、プレイヤーはゲームから引き離されているのだ(これには例外はあるが、ここでは基本的なことを述べておく)。

 マジックのルールは呪いでもあり祝福でもある。呪いというのは、ルールのせいでこのゲームは入門しにくい物になっているということである。マジックのプレイの仕方を学ぶときに存在する障壁について、何度も何度も語ってきた。一方で、マジックの内側に飛び込んだ諸君にとっては、ルールはすばらしい物に早変わりだ。全ての問題には答えがあり、そこには道理が存在する。

 我々の目標から見ると、マジックのルールは職人芸だ。マジックを作った男リチャード・ガーフィールドは、構造化されてバランスの取れたゲーム・システムを作り上げた。全ての戦略には対抗手段があり、マジックの無限の構造のおかげでプレイヤーはその能力をふるって解決手段を探すとともに対戦相手にとっての新しい困難を作り出すことができるのだ。マジックがプレイヤーを惹きつけている理由の一つに、この奥深い戦略と、複雑な組み合わせと均衡をもたらすルールの構造が存在すると私は信じている。

#3) 相互作用

 ゲームの本質に、他のプレイヤーに影響を及ぼすことを求めるものが必要である。ゲームの中でプレイヤー同士が関わり合うために何ができるだろう?


 プレイヤーは何かを求めるものでなければならない。ゲームにおいては、それを得るためには困難が伴わなければならない。その次に求められることは、みんなが同じゲームをプレイするようにする、ということだ。もっとも単純な方法は、全てのプレイヤーに同じ目標を与え、それぞれが他のプレイヤーにとっての障害になるようにすることである。どうやってそうするにせよ、ゲームにおいてプレイヤーの行動が相互に影響を及ぼすようにすることが大切なのだ。

 これが重要な理由は何かと問われれば、いくつかの理由がある。まず、ゲームをプレイするということの重要な要素に、プレイヤー間のやりとりがある。コンピューターやモバイルの存在によって、ゲームを1人でプレイすることが簡単になった。そんな中で古典的な非電源系ゲームに人気がある理由は、大きな利点、つまり人間同士のやりとりが存在するからである。人間は本質的に社会的な生物である。ゲームをプレイすることは、人々の相互作用をもたらす。相互作用は重要な目標の一つであり、ゲームをデザインする上でそれを強調することは重要なのだ。

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 次に、他のプレイヤーを障害として使うことで、リソースを大いに節約できる。たとえばマジックがそうだ。マジックにおいては、もう一人のプレイヤーと知恵比べをさせるという形でプレイヤーを障害として見事に使っている。対戦環境を選ぶことで、どういうゲーム体験がより良いものかという見方を共有しているプレイヤー同士が対戦しやすいようにもなっているのだ。

 開発部が常に意識していることの一つに、マジックにおける相互作用を維持するということがある。これは、コンボ――つまり、ほとんどそのまま勝利につながるような強力な効果を生み出すカードの組み合わせ――に常に注意を払っている理由の一つである。コンボが強力で早すぎたなら、他のプレイヤーが何をしているかに気を払う必要はなくなってしまう。

 マジックにおいて、相互作用を生み出すための強力な道具は2つ、クリーチャーとインスタントである。クリーチャーは対戦相手に行動を求めるという点で相互作用を求めるものである。攻撃されればブロックできるのだ。インスタントは、通常は対戦相手が行動するタイミングでも行動できるようになるという点で相互作用を生み出すものだ。

 マジックの相互作用という意味でもう一つ大きいのは、問題への対策カードである。リチャードは、トレーディング・カードゲームを成立させるために必要なのはあらゆる脅威それぞれに対応する手段が存在することだと理解していた。それによってメタゲームが変遷するたびにデッキが変わっていくというのだ。マジックは変化のゲームであり、そのための重要な部分として、その時点で猛威をふるっている戦略への対策カードをプレイヤーが入れることができるということがあるのだ。

#4) 逆転要素

 出遅れたプレイヤーが追いつける手段が必要である。勝ち目がなくなったゲームはただいらいらするだけのものになってしまう。


 この制限についてのもう一つの考え方に、投資というものがある。ゲームを最大限に活かすには、プレイヤーたちの意思が必要になる。そうしなければ、プレイグループの興味はゲームから離れてしまうだろう。ゲームに集中させるためには? 全てのプレイヤーをゲームに惹きつければいいのだ。

 プレイヤーがゲームから離れる理由の最大のものは、興味を失うことである。その理由として最初に挙げられるのは、勝ち目がないと思うことだ。ゲームの目標を達成することがゲームの目標である。もはやそれができないとなれば(あるいは、できないと思えば)、ゲームの魅力は失われてしまうことだろう。

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 そのための古典的な方法は、出遅れているプレイヤーが追いつけるようにする何かをゲーム内に設定するというものがある。たとえば盤面を一変させるようなランダムなイベントが存在する。優勢なプレイヤーには何らかの障害が与えられるかもしれない。あるいはゲームが進行するにつれて得られる点数が大きくなるというものもある。どういう方法であれ、わずかでもプレイヤーに逆転の可能性があるようにすることが重要なのである。

 マジックにおける最大の逆転要素は何か? その答えは、マジックの元々のゲーム・デザインにおける非常に賢い部分、マナ・システムに隠れている。ゆっくりとマナを積み重ねていくので、ゲームの後半になるとより強力なカードを使えるようになる。すばらしいのは、引いたカードは時によって最善の物にもなり、そうでないものにもなるということだ。たとえば、1マナのカードは第1ターンに引けばすばらしいが、10ターン目に引いたらジャマになる。5マナのカードならその逆だ。

 カードはいつ引くかによって価値が変わるので、常に良い引き、悪い引きというものが存在する。それによって、それまで出遅れていたプレイヤーにも劇的な復活のチャンスが与えられるのだ。加えて、次に引くカードは誰にも分からないので、ゲーム中のプレイヤーはいつでも逆転できるようなカードを引くことに期待をかけられるのだ。

#5) 勢い

 ゲームには、終局に向かう性質が必要である。ゲームが終わるような要素を入れなければならない。


 私は、初めてゲームをデザインするゲーム・デザイナーがもっとも犯しやすい問題は、ゲームの長さだと思っている。巧く作られたゲームは、プレイヤーが飽きる前に終わるようになっている。そのためにはどうすればいいか? ゲームに、終わりに向かう性質を持たせればいいのだ。

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 そのために、ゲームは放っておくとそれだけで終局に向かうようにすべきである。プレイヤーがゲームを終わらせるべく戦う必要があるようなら、プレイヤーがゲームを終わらせたいと思ったときのうちざっと半分はそこで終わらないということになる。逆に言うと、半分のゲームではプレイヤーにつまらない思いをさせるということだ。

 私の執筆上の師匠の一人は、「ストーリーの長さを最適にするというのは、物語を可能な限り短くして、その上で10%削ることだ」というのが口癖だった。

 ゲームは、終わらせられる限り早く終わらせる必要がある。もう少し遊びたいと思うタイミングで終わらせる方が、もう少し早く終わらせたいと思っても続けるよりもずっといい。もう少し遊びたいと思うようなタイミングで終われば、すぐにもう一度遊ぶことができる。だが、もう少し早く終わらせたいと思っても続くようなゲームは二度とプレイしないだろう。また遊んでもらえるようなゲームを作るには、そのゲームにおいてプレイヤーを終局に向かわせなければならない。

 マジックを例に挙げてみよう。マジックにおいて終局をもたらす要素は何かといえば、呪文の強さが上がり続けると言うことである。マナ・システムによって、ゲームが長引けば長引くほどに強力な呪文を使うことができるようになる。決着をつけられるような強力な呪文を使えるようになれば、そのゲームは終わりだ。このように、マジックにはプレイヤーを終局に向かわせるようなシステムが準備されているのだ。

これで半分だ

 最初はこの記事は1回のコラムで終わらせるつもりだったが、誤解がないように書いてみると2回分の内容になった。近いうちに、後半の5つの内容についても諸君にお伝えしよう。

 それではまた次回、現代のデザインについての話でお会いしよう。

 その日まで、教えることによる学びがあなたとともにありますように。

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