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迫り来るアンデッド

Mark Rosewater / Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru

2011年10月17日

原文はこちら

 その日はあまりに自然に訪れた。ここ公式コラムはアンデッド特集で、アンデッドについて新しい何かを示そうと思ったのだ。すでにゾンビ特集や2回の吸血鬼特集があり、書くべき内容が残されているかどうかは自信がなかった。机に座り、画面を見つめ、何を書くべきか悩んでいた。それから、1時間ほども経っただろうか、ようやく思いついたとき、私の耳に悲鳴が届いたのだった。

 周りを見回した私の目に、奇妙な形をした銛で串刺しにされたマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebの姿が飛び込んできた。私は、この奈落(訳注:開発部のこと)に、外部からの訪問者が入りこんできていることに気づかなかったのだ。その訪問者の肌は青く、エラがついていた。一見してマーフォークだと思ったが、しかし、マーフォークがウィザーズで何をしているというのだろうか?

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 開発部のほとんどは階段から逃げ出していた。一般論として、同僚が奇妙な青い奴に刺し殺されたなら逃げるものだ。1階にたどり着き、出口へと殺到した――のだが、そこには何もなかった。ドアがあったはずのところには、壁だけがあった。他の出口を求めて走ったが、どこも同じ状況になっていた。ドアがなくなり、壁だけがあったのだ。1階を見て回った結果、出口が一つもなくなっているということが分かった。

 パニックが起こり始めた我々の目の前に、天使が舞い降りてきた。どこにでもいる普通の天使ではなく、そう、それは我々のよく知っている《セラの天使》だった。彼女は血に飢えており、開発部の面々は慌てて階段に逃げ戻ったが、《セラの天使》は素早かった。トム・ラピル/Tom LaPilleが倒れ、ケン・ネーグル/Ken Nagleは脇腹にできた大きな傷口を押さえていた。

 私は階段を駆け上りながら、今起こっていることを理解しようと試みた。マーフォークや《セラの天使》のようなものに攻撃されている。ドアがなくなっていることも当然問題だ。この異常には何らかの関連があるはずだ。

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 アーキタイプを考えることが好きな私としては、これはホラーの物語の中に入ってしまったのだと理解した。攻撃してきている存在のことを知っているとしたら、攻撃してきているクリーチャーには何らかの関連があるはずだ。その関連性を見つけることが、脱出の手がかりになるに違いない。理解するまで、この問題から逃げられはしないのだ。

 よし。マーフォークと《セラの天使》の関連性は? どちらもアルファ版に存在した。どちらも基本セット2012に存在している。どちらもクリーチャーだ。どちらも人間型をしている。どちらもマジックの先住者だ。どちらもイベントで優勝したデッキに存在していたことがある。だから何なんだ。

 考えろ、考えろ、私は自分に問いかける。ドアがなくなっていることは? ドアがなくなっていたこととマジックの関連性は? マーフォークと《セラの天使》がいるのだから、マジックの関連しているに違いない。イニストラードには《地下室の扉》がある。《空虚への扉》や《運命の扉》もマジックのカードだ。いや、違う、ドアじゃない、ドアは、あったところにはないのだ。そこには壁が――壁!

 マーフォーク、《セラの天使》、それに壁。どれもクリーチャーだ。もう一度最初に戻ろう。この問題が起こったとき、私は何をしていた? 小さなこともホラーでは重要だ。主人公は無作為に本を読んでいるわけではない。主人公が読んでいる本には、物語上何らかの意味がある。来るべきものを予想させるものだ。私は何をしていた?

 アンデッド特集だ。私はアンデッド特集のコラムを書こうとしていた。マジックのアンデッドに関する独特の話を探していたのだ。つまり......

 つまり、そうだ! 我々は、マジックのアンデッドによって攻撃されているのだ! ゾンビ、吸血鬼、スケルトンじゃない。これは開発部が一旦殺したあとに再び蘇らせたものだ!

 何が起こっているのかを理解した時、どこからともなく独特の音が響いてきた。それは――翼の羽ばたきの音だった。《セラの天使》が吹き抜けの下にやってきたのだ。


 ウィザーズで働き始めたばかりの私は、第5版のデベロップ・チームに参加していた。デザイン・チームは「強力すぎる」という理由で《セラの天使》を取り除いた。5マナで4/4の飛行持ち、しかも追加の能力がある。これほどに強いものをそのまま世の中に解き放ってはならないと。私はその批難が公正でないと主張して戦ったが、その主張は通らなかった。私の所属していたデベロップ・チームは、《セラの天使》をマジックから追放することに決めたのだ。

 私は私の考えを銀枠世界で申し立てようと、アングルード2に〈ケ・セラ・セラ/Que Serra, Serra〉というカードを(初代《セラの天使》のイラストレーター、ダグ・シューラー/Doug Shulerの手によるイラストとともに)作った。

mm165_queSerraSerra.jpg 〈ケ・セラ・セラ〉
{3}{W}{W}
クリーチャー ― 天使
4/4
飛行、警戒
あなたのターンの間に、対戦相手にケ・セラ・セラがどれほど壊れたカードでゲームのバランスを崩すものかを説明する。そうしない場合、ターン終了時にケ・セラ・セラを生け贄に捧げる。

 不幸にして、アングルード2は無期延期となり、このカードが印刷されることはなかった。

 時が流れ、第7版のデザイン・チームが組織されたとき、《セラの天使》は強すぎはしないという議論が起こった。当時のクリーチャーの水準から言うとかなり強かったが、それは回りのクリーチャーが弱かったせいであり、《セラの天使》が強すぎたのではないと。当時、クリーチャーはより強化されていく過程にあった。それから数年後に《悪斬の天使》が登場したとき、《セラの天使》が強すぎなかったというだけでなく、それ以上の存在も問題なく存在できるということが証明された。



 戦に長けた天使に太刀打ちできるわけがないので、我々は2階に逃げ込んだ。それから数歩も行かない間に、ライアン・スペイン/Ryan Spainが足に鋭い痛みを訴えた。足下を見ると、床一面に無数の蛇やサソリが蠢いている。私は様々な蛇を頭に浮かべた。《ナフス・アスプ》から《待ち伏せのバイパー》に至るまで、蛇はマジックの一要素であり続けた。ライアンが崩れるように倒れ込んだ瞬間、私は今直面している相手が何だかを把握した。「毒クリーチャーだ!」

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 毒が最初にマジックの世界に登場したのは、レジェンズ・セットのときだった。そして、それからビジョンズまでの間は、開発部内に充分な支持者がいて、しばしばカードになっていた。カードの強さは低く抑えられており、そのメカニズムはほとんどジョークだと思われていた。ミラージュ・ブロックの時、ゲーム全体の引き締め直しが行なわれた(その一例が、いわゆる第6版ルールの策定である)。毒は、複雑になるわりにメリットが小さいとして、マジックから除かれたのだ。

 それから、毒が冗談で済ますにはもったいない可能性を秘めていると確信させるまで、10年以上の月日とマジック開発部のメンバーの総入れ替えが必要になった。私は、毒を再びマジック世界に戻すなら、記録するだけの価値があるようにしなければならないと主張した。そして毒はミラディンの傷跡で復活を果たし、ゴッドブック研究によればブロックでもっとも好まれたメカニズムとなったのだ(詳しい話はこちら)。



 前には部屋中を這い回る毒蛇やサソリの群れ、後ろには《セラの天使》。進退窮まった中で、我々は下に駆け戻ることにした。外に出ようとしたが、ドアがない。そう、壁も復活したクリーチャーだ。


 壁というクリーチャー・タイプを抹消しようと牽引していた人間の一人が私だ。壁だから何だというのだ。クリーチャーは生きていて、呼吸していて、活動している有機体だ。壁がなぜクリーチャーなのだ? フレイバー的な意味で、クリーチャーはただのアーティファクトか、さもなければただの土地だ。ゲームにおいては、防衛を持つクリーチャーでいい。それだけで、防御状態に保たせることが出来るのだ。

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 この論理によって、壁は数年の間マジックから離れさせられていた。しかし、感傷から、それらは舞い戻ってきたのだ。壁はクリーチャーっぽいものではないが、プレイヤーを守るものという意味はその論理を超えていた。この、フレイバー以上のフレイバーは開発部の人間に好まれ、そして第10版で壁が復活したのだ。今はその使用には慎重になっており、クリエイティブは壁を動かないものというイメージから離そうとしているが、何にせよ壁は帰ってきたのだ。



 ホラー映画では、主人公達が逃げ場がないと気づくシーンはお約束だ。そして、我々もまた出口を失い、毒を持った生物の群れがほんの数メートルという距離まで迫っている。ライアンが倒れたことでも明らかなように、毒でひと噛みされればそれだけで致命傷だ。

 私は周りを見回し、何か武器になるものはないかと探したが、目にしたのはウォーター・クーラーぐらいだった。このままではやられてしまう。そのとき、私はふと自分の髪の毛が逆立っていることに気づいた。......これだ!

「おい、誰かこの水タンクを外すのを手伝ってくれ」

 私は回りにいた仲間に声をかけ、毒クリーチャーに水をかけるように伝えた。

「水であいつらが止められるとは思えないけれど」

 イーサン/Ethanが言う。

「ああ。あいつらはただのクリーチャーじゃない、アンデッドだ」

「......あんでっど?」

「いいから、あいつらに水をかけるんだ」

 しばらくして、イーサンは戻ってきた。

「あいつらを濡らしたし、あいつらは怒ってる。で、これが何の役に立つのさ?」

 私はフランネルを脱ぎ、その質問に答え始めた。

「《セラの天使》はクリーチャー・タイプじゃなく、1枚のカードだ。そう考えると、もう1枚、この局面を打開できるカードがある。このカードだ! 開発部はここにいる、今こそ復活の時だ!」

 私はそう叫び、自分の腕の毛に視線を落とした。

「避けろ!」

 その次の瞬間、《稲妻》が走った。

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 この赤の1マナ・インスタントは、アルファ版からの「恩恵」の1枚で、あまりにも強すぎることが証明されていたために取り除かれた(「恩恵」はアルファ版に存在したカードのサイクルで、各色の1マナで3点の効果をもたらす、《治癒の軟膏》《Ancestral Recall》《暗黒の儀式》《稲妻》《巨大化》の5枚のカードのことだ)。《稲妻》を消すにあたって、我々はその劣化版の《ショック》を作り、代わりに入れることにした。

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 そして時は流れて基本セット2010に至り、アーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheはそのセットに入れる魅力ある、誰も戻ってくると予想できないようなカードを探していた。その条件を満たすカードとして、彼が選んだのは《稲妻》だった。《ショック》の作成によって、二度と戻ってこないと確信されていたカードだったが、アーロンは、《稲妻》は非常に危険ではあるが、現代のスタンダードにおいては問題を起こさないと感じていた。そして、アーロンのその考えは、《稲妻》が充分な衝撃を与えた一方で、2年間にわたって強すぎることによる問題を起こさなかったことによって証明されたのだった。



 《稲妻》は私の狙ったとおりの働きを見せてくれた。開発部も驚いたが、濡れた毒クリーチャーはひとたまりもなく感電死していた。

「急ごう。上に、4階に行くんだ!」

「なぜ4階に?」

 ケンが尋ねてくる。その傷は悪化しているように見えた。

「黒幕が分かった。多分そいつらは4階にいる」

 我々はレベルどもから逃げ回らなければならなかった。エリック/Erikとビリー/Billyはスラルの群れに襲われて姿を消した。ブレイディ/Bradyはもう一歩というところでリスの群れに打ち倒された。数々の犠牲を払って、我々はついに4階にたどり着いたのだ。

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「どこに行くんです」

 イーサンが尋ねる。

「ブリッジだ」

 4階のロビーに隣接した会議室、ブリッジ。スタートレックの舞台になぞらえてそう呼ばれている部屋だ。

 不幸にして、我々とブリッジの間にはマーフォークが陣取っていた。奴らは、開発部の部屋からここにまっすぐ来ていたのだ。


 クリエイティブ・チームはいつでも、海棲生物であるクリーチャーのことを問題視していた。マジックのゲームは、フレイバー上、「戦場」で行なわれている。海棲生物であるクリーチャーを戦場に呼び出す、というのはまったく意味が分からない。タコやサメを消すのはそう難しくなかったが、マーフォークは青の中心的種族であり、他に代わりになる種族も存在しなかったのだ。

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 オデッセイの時に、変化を求めて中心的種族のいくつかを使わないことにした。マーフォークはそのときに消え、戻らなかった――数年間は。多くのプレイヤーはマーフォークを好み、それが存在しないことを不満に思ったのだ。クリーチャー・タイプについて問えば、マーフォークが欲しい、という返事が返ってくる時代だった。結局、マーフォークを戻すことのほうが、存在することによるフレイバー上の不合理よりも大きいと判断したのだ。クリエイティブ・チームは、マーフォークが存在できるように頭をひねった。たとえば、ゼンディカーのマーフォークは魚の尾ではなくヒレがついた足を有する(マーフォークの歴史については、マーフォーク特集の時に記事にしている(リンク先は英語))。



 彼らは陸上が苦手だとされているにも関わらず、我々は彼らを突破してブリッジに向かうことはできなかった。我々はウィザーズのビルが奇妙な構造をしていることを活かすことにした。そう、ウィザーズのビルは回廊構造になっているのだ。一旦引いて奴らを誘い出し、その隙に反対側から回り込んでブリッジに向かう。グレムリン単独の妨害はあったが、それ以上のアンデッドに出会うことはなかった。

 ロビーにつながるドアにたどり着く寸前に、ケンが倒れ伏した。ケンは嫌な汗を流し、顔色も悪かった。最初は傷が悪化したのだと思ったが、回りを見るとショーン/Shawn、ザック/Zack、イーサンも同様に苦しげな様子を見せていた。そして、私もまた。その状況をどう描写すればいいのか分からない。病気とも疲労とも衰弱ともつかない、その全てが組み合わさったような感覚だった。

 ――そうだ。-1/-1カウンターだ。


 かつて、マジックには様々なパワー/タフネスを変更するカウンターが存在した。+1/+1、+1/+0、+0/+1、+2/+0、+0/+2、-1/-1、-1/-0、-2/-0、-0/-1、-0/-2、-2/-2......並べてけば切りがない。やがて、開発部はそれ以上作らないという決定をした。あまりに多くの種類のカウンターを作っても、プレイヤーが状況を把握できなくなるだけだと。そこで我々は最も有用なただ1つだけを残し、あとを全廃したのだ。残したのは、+1/+1カウンターである。

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 それから何年も経ったローウィンの作成中、我々は「殺戮」の存在しない柔らかな世界を作ろうという発想に至った。ただ弱体化させるだけなのだ。聞いた限りでは平和っぽく聞こえるが、実際は非常に残虐である。クリーチャーを除去するのではなく、苦しめることを楽しむというのだ。-1/-1カウンターを使った実装から、萎縮と頑強メカニズムが生まれた。どちらも非常におもしろいもので、新たなデザイン空間の可能性を見せつけてくれた。そこで、我々は-1/-1カウンターの封印を解くことにしたのだ(ただし同じリミテッド環境に+1/+1カウンターと混在することは今もって認めていない)。これについてより詳しく知りたい諸君は、-1/-1カウンター特集の記事を読んでくれたまえ(リンク先は英語)。



 全員がまるでハエのように倒れても、私は這いずって進み続けた。私には3人の子供がいるので、這うことならお手の物だ。このアンデッドの襲来から生き延びるためには、ブリッジに行かなければならないことがわかっていた。私は会議室の扉を開け、転がり込んだ。その瞬間、-1/-1カウンターが私から離れていったことのに気がついた。部屋の中にいる何者かは、-1/-1カウンターでさえ近づきたくない存在なのだ。

 私は、背中を向けて座っている3つの椅子に向かった。私は、ジョス・ウェドン/Joss Whedon曰くの「大悪」を目にしようとしている。そう確信していた。もちろん、そこに座っているのが何者であるかは、もうわかっていた。

「何が起こっているか気がついたとき、開発部が今までに殺して、そして蘇らせた様々なものが思い浮かんだ。そして、そのリストの中に、黒幕がいることも分かったんだ。話をしようじゃないか、デーモン諸君!」

 その呼びかけに応えるかのように、3つの椅子がこちらを向いた。そこには、史上最強最凶最驚最恐の悪魔3人が座っていた。


 遠い遠い昔、まだマジックが幼かった頃、一般市場に参入しようとした時のことだ。我々は悪魔崇拝というイメージのもたらす悪影響を恐れた。念のため、全てのデーモンと悪魔崇拝っぽいイメージをゲームから取り除いたのだ。

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 デーモンはビーストやホラーに衣替えし、悪魔崇拝につながりうる全てのシンボルは消去された。

 それから時が流れ、悪魔崇拝っぽさがありとあらゆるポップ・カルチャーに存在するようになった(たとえば「バフィー 〜恋する十字架〜」、「ロード・オブ・ザ・リング」)。マジックは成長し、市場においても一定の地位を確立した。デーモンはファンタジーの中心をなすようになり、マジックから除外しておくことはマジックにとって害にしかならなくなったと認識した我々は、マジックを戻すことにした(これについての詳細な話もコラムに書いたことがある(リンク先は英語))。



 デーモンの中でも偉そうな1人が口を開いた。

「マローよ。貴様のマジックに関する豆知識、パズルを解く能力、それに貴様のコラムでの主人公願望から見て、ここにたどり着くのは貴様だと確信していた」

 そのデーモンは立ち上がり、天井に頭が着かないように身体をかがめたままで話し続ける。

「黒枠基本セット、アン・セット、ブースター内の基本土地、『唱える』という言葉、文章欄内の色つきマナ・シンボル、基本セットのトランプル、韓国語版......いくらでもあるぞ。開発部は殺戮を楽しんでいる。貴様らの考え違いは、我々が黙って死んでいると思っていたことだ」

「何が目的なんだ。復讐か? 我々がお前達を殺したから、お前らも我々を殺すと?」

「それもある。だが、それ以上に......そうだな、真実の探求と言っておこう」

「開発部を攻撃したのがか?」

「手慰みだ」

「お前達は開発部員全員を殺したんだぞ!」

「手慰みだと言ったはずだ」

 デーモンは身振りで自分自身と、その脇に控える2人のデーモンを示した。

「我々はデーモンだからな」

「何を知ろうというのだ」

「我々は死を知っているし、強力な道具ということも知っている。何か問題があれば、貴様らはそれを殺す。同じ事だ。我々が知らないことは、その逆だ。なぜ貴様らはそうも簡単に様々なものを蘇らせるのかだ」

「......なんだと?」

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「開発部はシャドーのことを失敗作だと公言している。ストームは二度と印刷されないだろうという発言もあった。貴様らはマッドネスは複雑すぎたという。――しかし、時のらせんにおいては、その3種全てを再録しただけでなく、それらのメカニズムを持った新しいカードまでも作ったではないか。何度も、何度も、様々なものを虐殺しては数年後にもう一度墓地から引きずり出す。殺すことは理解できる。それなら、なぜそれを蘇らせるのだ」

「私が決して口にしないと思われていることだが......その答えは、謙虚さだ。開発部がマジックを総括ていくために、我々は自分たちの決断について考えなければならない。状況が変わることもある。プレイヤーが、我々の思わぬものを好むこともある。我々が単に間違えただけということもある。変更する、という中には、何かを抹消することだけではなく、何かを復活させることも含まれるのだ。マジックに無数のアンデッドが存在するのは、開発部がいつでも何かを戻すべきかどうかを検討しているからなのだ」

「なるほど。それが我々の知りたかったことだ」

 その言葉とともに、デーモンは手を打ち鳴らした――はずだ。はずだというのは、フェアリーの群れが私を持ち上げ、ホールに運び始めたからだ。私がブリッジを離れると、再び病気が戻ってきた。開発部の面々はロビーで倒れている。意識を失う寸前に、《極楽鳥》が飛び立つのを見た。

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 ......そこで目が覚めた。

 私はキーボードに突っ伏して眠っていた。周りを見回すと、愛すべき奈落はいつものままだった。ディスプレイにはこの記事が表示されていた。そして、最後の一行は赤文字で――。


アンデッドの世界へようこそ

 それではまた次回、デザインの授業でお会いしよう。

 その日まで、あなたの過去の決定があなたの心にありますように。

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