Magic The Gathering Products TAKARATOMY Wizards


読み物

崖の暴君

崖の暴君

Doug Beyer

2010年1月27日


 ゼンディカーのムラーサ大陸のそばを航海することは不可能です。その場所には問題があるのです。挑むことはできますが、うまくいくことはあり得ません。賢明な旅人たちがするように大陸周りの安全なルートを探そうとするなら、砕け湾の水中に生える船底破りの樹を避け、カザンドゥの渓谷と雷裂け目の急流を切り抜け、千手巨人の像がナー高原の霧に隠れるままにせねばなりません。しかし、問題はそれだけではありません。理解不能な流れに立ち向かうだけでなく、知られざる水の中に碇を下ろし、カーゴや乗組員を犠牲にしてムラーサの沿岸に垂直に切り立った崖に強行着陸しなければならないのです。


 その着陸の代償を支払っても、それで終わりではありません。人員不足の上に手荒い歓迎を受けることになります。浜辺に降り立っただけで、まだ到着したわけではありません。しかし、ここで引き返すのはさらに悪い選択です。碇を上げようとすれば、さらなる自然の災害が襲いかかってくることになるでしょう。

 今失った損失を惜しんでいるひまなどありません。あなたの立っている場所は切り立った断崖と荒波打ち寄せる海の狭間で、何キロメートルにも及んでそびえ立つ岩は見上げるだけで首が痛くなるほどです。そして、あなたの鼓動は、誕生日のプレゼントを開けようとしているときのように激しくなっていきます。

 ムラーサにはあなたを引き寄せる重力でもあるかのようです。隠された財宝はあなたを呼び、荒々しいマナの源は人の手の触れていないままにあなたを立ち招いています。不安定な崖から逃れようと思えば思うほどに、ムラーサの自然の法に背くことはできないのです。

 しかし、ムラーサの自然の法だけがすべてだと思ったなら、大間違いです。



崖の暴君

 今日のプレビューは、純粋なマナからできたエレメンタルでもなければ強力な吸血鬼の一族からの無慈悲な遺跡の賢者でもありません。彼は巨大ですが、最大ではありません。彼は《新星破のワーム/Novablast Wurm》[WWK]のように目に入るクリーチャーすべてを絶滅させようとするわけではなく、《テラストドン/Terastodon》[WWK]を大地に組み伏せようとするわけでもありません。彼は狡猾ですが、もっとも狡猾というわけでもありません。彼は《ヘイラバズのドルイド/Harabaz Druid》[WWK]のように強くマナを拘束するわけでもなければ、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》[WWK]のように超一流というわけでもないのです。

 しかし、残酷さは彼の天分かもしれません。大地が生命に襲いかかり、住人が生き残りに挑む世界においては、日和見主義こそが最良の選択なのかもしれません。そして、必要なときに自身を示すためになすべきことは、犠牲者の絶望を餌にすることだけなのかもしれません。

 ムラーサに入りたいですか? その切り立った崖を測り、宝物をため込んでいる内層へと踏み込みたいですか? そこに立ちはだかるのが、この男です。少数の戦士奴隷に命令を下す男の名はカズール、ビジネスマンを自認するオーガです。


《崖の暴君、カズール/Kazuul, Tyrant of the Cliffs》ポール・ボナー画

 指先だけで崖にぶら下がっている活劇映画の主人公の指や顔をにやにや笑いながら踏みつける悪漢。それが、このオーガの奴隷使いカズールです。ただ、凡百の悪漢とは比べものにならないほどに卑劣で貪欲なのですが。彼には相手を罰するなどという殊勝な気持ちはなく、ただのビジネスです。この奴隷使いは、誰とだって取引できるのです。

 カズールはビジネスマンです。彼のブーツがあなたが転落して肉片をまき散らす前の最後に見るものだとは限りません。彼の奴隷たちがムラーサの自然に関する知識を生かし、頭蓋をムラーサの岩に叩きつけてあなたの探検を妨害してくるとは限りません。彼が望むもの――そう、望むもの――は、貢ぎ物です。彼が求める見返りを、崖を登りかけたときにすぐに支払えばいいのです。《崖の暴君、カズール/Kazuul, Tyrant of the Cliffs》[WWK]は象徴的な意味でその道を支配していて、あなたが通るには彼の承認が必要なのです。


 3マナ支払えば「ムラーサへようこそ、良い滞在を」という挨拶が返ってくるでしょう。

 支払わなければ? それはもう、ひどいことが起こるに違いありません。



カズールの崖

 この崖は、ムラーサの壁の外部にある崖の唯一の登り口である。タジュールのエルフたちが作り、今は人間の手で維持されている。カズールの崖という名前は、その峠の現在の支配者であり、道を探している相手に貢ぎ物を求めるオーガの奴隷使いから取られている。(道のそこかしこでリフトを操作している者への賄賂を含む)代価を支払った者は、垂直な崖の間を渡る急勾配のジグザグ道を、丸太とロープのエレベーターを使って横切ることができるのだ。カズールに適正な貢ぎ物をせずに頂上にたどり着いた者は投げ捨てられ、場合によっては荒れ狂う海で死を迎えることになる。

-ゼンディカー・スタイル・ガイド ムラーサの章 より


 カズールの戦士奴隷 ― 彼のお気に入りは筋骨隆々たるオーガの乱暴者からなる私設軍隊です ―― がやってくるだけでもひどい話ですが、カズールがその奴隷を手に入れたのはどこだと思いますか? カズールの領域を調べ回れば、オーガの鋳造した鉄輪を首にはめられたあなたの同族に遭遇することでしょう。



カズール入りデッキの作りかた

 他の暴君と同じく、カズールは一軍とは言い難い中にもいらだたせるような敵対者です。止められない脅威というわけではありませんが、対戦相手にしてみると邪魔で仕方ない存在には違いありません。カズールの力をバリケードに使い、あなたの敵を押しとどめている間に相手の指を踏みにじることができるのです。もちろん、彼自身も2メートルの肉切り包丁を振るう筋肉の塊です。クリーチャーや対戦相手を殴るのにはもってこいでしょう。カズールをデッキに入れるには、いくつかの方法が考えられます。


ゼンディカー・スタイル・ガイドより、オーガのコンセプト画

オーガの壁

 カズールは対戦相手に究極の選択を迫ります。あなたに3/3クリーチャーをただであげたいと思う人はいないでしょうが、カズールの5/4の前に潰される攻撃のために貴重なマナを3点も浪費したいと思う人もいないでしょう。多人数戦においては、カズールの存在はそれだけで攻撃をあなたに向けさせない効果があります。一騎打ちでも、カズールはゲームの足を止めてくれます。この空白期を生かしてアドバンテージを得ましょう。カズールで稼いだ時間で軍勢を整えたり、必殺のコンボを準備したり、火力呪文を揃えたりすることができます。


攻撃強制

 相手に屈辱を味わわせたいのなら、こんな方法もあります。クリーチャーをカズールに向かって攻撃させることで、3マナを払うか3/3クリーチャーを出させるかを選ばせるのです。《魅惑するセイレーン/Alluring Siren》[M10]や《流血の熱病/Bloodshed Fever》[SHM]、《玉砕/Suicidal Charge》[CON]、《卑血の芙巳子/Fumiko the Lowblood》[BOK]といったカードで無駄な突撃をさせることができます。《神聖なる評決/Divine Verdict》[M10]や《バリスタ班/Ballista Squad》[10E]、《飛来する矢の罠/Arrow Volley Trap》[ZEN]などの白のカードでさらに攻撃クリーチャーを除去してもいいでしょう。


土地戦争

 カズールが貢ぎ物を手に入れすぎる、オーガ戦士奴隷が足りない、という状況ならこれでしょう。土地破壊と組み合わせることで、カズールの求める3マナの貢ぎ物を支払いにくくしてしまえばいいのです。カズールはその状況をよく判断してくれるでしょう。対戦相手の土地が破壊されればされるほど、カズールの価値は高まります。(《オーガの放火魔/Ogre Arsonist》[P02]で土地破壊を試みるのはどうでしょう? これも3/3のオーガです!)

/Ogre%20Arsonist

奴隷の反抗!

 3/3クリーチャーを活かしましょう。ただブロックしたり攻撃したりするだけでは芸がありません、戦場に出たときに何か効果的なことをするように仕向けるのです。《伏魔殿/Pandemonium》[TSB]や《よりよい品物/Greater Good》[9ED]、《殺戮の祭壇/Carnage Altar》[ZEN]といったカードで3/3クリーチャーを活用しましょう。《シヴの収穫/Shivan Harvest》[INV]や《血の儀式/Blood Rites》[CHK]を使ってカズールの崖から投げ下ろし、土地を育てたりクリーチャーにダメージを与えたりもできます。《旗印/Coat of Arms》[M10]や《エルドラージの碑/Eldrazi Monument》[ZEN]、《今田の旗印/Konda's Banner》[CHK]でもあれば、オーガ軍団が相手を蹂躙してくれることは間違いありません。

 それでは、暴君の世界をお楽しみください!


今週のおたより

 今週のお手紙です。

 マジック クリエイティブ・チームの皆さんへ。

 ゼンディカーの主要な種族や場所についてはプレインズウォーカー・ガイドにまとめていると聞きましたが、マイナーな、重要でないセジーリ大陸についてはどうでしょうか。私はどうにもこの極寒の台地と、それが隠しているかもしれない秘密に興味がそそられています。これについて記事を書いていただける予定があればうれしいのですが。

 それでは、失礼します。ゼンディカーでお会いしましょう。

ダブ・フレイムロック


 セジーリも掘り下げています。そして、いずれはガイドの中で足を踏み入れ、探検することになるでしょう。セジーリはゼンディカーにおいて世界を作り上げたある決定を象徴しています。多くのファンタジー・ゲームと同じように、マジックの世界にも単一の気候しか存在しない世界や地域があります。砂漠だけの世界ラバイア、氷のテリシア、火山のラースなどがそうです。そういった、単純で分かり易いテーマを世界全体に持たせることは簡単ですが、単純化しすぎなきらいがあります。ゼンディカーでは、土地とその探検に焦点が当てられているので、全体の生態系などを意識的に明確化しました。ゼンディカーには熱帯雨林があり、霧に包まれた島があり、木の根に包まれた洞窟があり、そして寒冷地のセジーリがあるのです。さまざまな環境の中で、冒険者たちは冒険することができます。マジックの舞台となる次元がゼンディカーのように多様な環境に恵まれているわけではありませんが、ゼンディカーがそうであることには意味がありましたし、そうすることに骨を折ったことを喜ばしく思っています。

ダグ・ベイアー様

 他の色に比べて、黒絡みのプレインズウォーカーがずっと多いように思います。これは、黒絡みのプレインズウォーカーがみな非常に長生きなことによると思います。リリアナは100歳以上ですし、《ソリン・マルコフ/Sorin Markov》[ZEN]は1000歳以上、《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, Planeswalker》[CON]に至ってはいったい何歳だか分かりません。

 黒絡みのプレインズウォーカーは長命なのでまだいると思うのです。この仮説は正しいですか? それとも、まだ見ぬ500歳の火魔法使いや1000歳の天使・プレインズウォーカーがいるんですか?

- タイラー

 確かに黒絡みのプレインズウォーカーは思い通りに寿命を延ばす方法を知っています。吸血鬼になるときに灯を手放さない方法を知っていれば、《ソリン・マルコフ/Sorin Markov》[ZEN]がしているように、他の生き物の血液を食らって何千年も生きることができるでしょう。《リリアナ・ヴェス/Liliana Vess》[M10]は、より大胆にして直接的な方法で永遠の命と力を手に入れました。つまり、悪魔との契約です。そして《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, Planeswalker》[CON]は複数の次元に渡る神秘的な魔法を駆使し、生き続けることができる呪文を手にしていることでしょう。まあ、大修復によってプレインズウォーカーが定命の者になって以来、彼はどんどん衰えてきていますが。


 そうは言っても、寿命を延ばすことは黒マナの本質的に備えている能力ではありませんし、黒にだけある特権でもありません。どの色の魔術師も、死から逃れる呪文を手にしない限りは普通の人と同じように死にます。黒魔術師の中には死を回避する不気味な方法を手にするものもいますが、その多くはその種の魔法を手に入れることもなく、普通の寿命のままに死んでいくのです(あるいは小うるさい白や緑の戦力に殺されるものもいますし、野心的な黒魔術師に殺されるものもいるでしょう)。さらに、他の色の魔術師やプレインズウォーカーも、死に神の手を逃れる方法を見つけることがあり得ます。白や緑の魔術師は回復魔法や再生魔法で加齢と戦い、青魔術師は肉体から解き放たれる方法を求め、アーティファクトを作るなりして大事な精神を守ることで死と戦います。赤魔術師が寿命を延ばす方法があるかないかというのは簡単には答えられません。というのは、彼らの多くは不死性を目標にしていないからです。多くの赤魔術師は何百年にも及ぶ魔法研究の方針を立てませんので、古の赤魔術師というのは滅多に見かけられません。もちろん、最近の黒絡みのプレインズウォーカーに長命の者が多いのは事実ですが、これは厳密なルールを示しているわけではありません。長命のプレインズウォーカーは、どの色にもいるのです。

この記事についてツイートする

前の記事: 多重キッカーの座りどころ | 翻訳記事一覧に戻る | 次の記事: 一番のお気に入りというわけではないけれど