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吸血主義 入門編

Bryan Hawley / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年8月9日

原文はこちら

 吸血鬼の日にようこそ! 『統率者(2017年版)』のリード・デベロッパーとして、特に吸血鬼デッキのデベロップ中に起こったことについていくつかと、セット全体からも少し、話したいと思う。でもまずその前に、僕のチームを紹介させてくれ! 僕はみんなの協力に本当に満足しているんだ。強力なデザイナーのチームというだけでなく、3人ともさまざまなプレイスタイルの中で統率者戦フォーマットの達人だったんだ。

ブライアン・ホーレー/Bryan Hawley (リード)
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 僕だ! 『統率者(2017年版)』のデザイン中、僕はデベロップの一員だった。でもプレイ・デザインが組織され、今はそっちのチームで働いてるんだ。ガヴィン/Gavinが今週彼の記事で言っていたとおり、彼は『Archenemy: Nicol Bolas』で初めてリード・デザイナーを務めた。そして同時に、僕は『Archenemy: Nicol Bolas』で初めてリード・デベロッパーを務めたんだ! ガヴィンと僕がリード・デザイナーとリード・デベロッパーとしてこの商品に関わっていたのは9か月で、ジュール・ロビンス/Jules Robinsは僕たちのチーム両方に参加していたよ。

 『統率者』シリーズでは、チームメンバーそれぞれが1つずつデッキを作り、調整し、所有することが通例なんだ。そしてその作った人には、リードに、自分のデッキに必要な新デザインがどんな種類のものかを伝え、その役に立つカードを提案する責任もある。僕はドラゴンの責任者だったけど、セットのリード・デベロッパーとして、ファイル全体の、そして究極的にはすべてのデッキの責任者だったんだ。


ジュール・ロビンス/Jules Robins
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 このチームの当時、ジュールはマジック開発部において比較的新人で、招きたくなるような非常に優れた人員だった。彼はデザイン・チームから連続して所属していたので、魅力的なカードをデザインすることやデッキの構築・再構築を助けるという通常の関与に加え、文脈やデザイン・チームの決定理由について語ることができる立場でもあったのさ。この種の発言が非常に有用なのは、デベロップはときおり本来の意図から外れたりうまくいかない目的を修正したりすることがあるけど、その場合には外れているということを認識した上でそうすることが重要なんだ。

 ジュールは吸血鬼の主なので、今日は吸血鬼の日であると同時にジュールの日でもあるんだよ!


グレン・ジョーンズ/Glenn Jones
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 グレンは優秀なエディターの1人で、特にこういうチームには僕は可能な限りエディターを入れるべきだと主張してるんだ。グレンは、熱心な統率者戦プレイヤーで、優れたデッキビルダーで、単純で明瞭なデザインのための鋭い目を持ってるんだよ。ウィザード・デッキをデザインして洗練していくという素晴らしい仕事に加えて、僕が欲しいと思ったカードが簡潔に実装されているかどうかの判断をかなりグレンに頼っていたね。この種の情報は、効果を説明するために必要な表記の意味がなくなってアイデアを実現する価値がないということがあって、それを事前に知ることでデザイン全体の進捗を良くするから、多人数戦向けの商品では特に有用なんだ。

 悪戯な魔法使いにして複雑な問題が大好きなので、グレンは、4つのデッキの中で最もメカニズム的独自性を決めるのが難しいと思われるデッキであるウィザードの主となったんだ。


マーク・グローバス/Mark Globus
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 マーク・グローバスはマジック開発部の大ベテランで、今は商品計画と普遍的判断を担当しているんだ。彼の普段の仕事はマジックのマクロレベルでの方向性を決める議論を主導することだけど、彼は熱心な統率者戦プレイヤーで、特にデザインが重要なことに注目するように誘導する、デザインに関する重要な質問をしてくれるんだ。これはいつでもチームにとって信じられないほど有用だよ。

 デベロップを通して、どのデッキを担当しているかと聞かれた時にマークが(すごく情熱的に)「私は猫のロードです!」と返事するのはよくある光景だったよ。

コーチ、準備完了だ!

 デザイン中やデベロップのほとんどの期間、威光メカニズムは「コーチ/coach」と呼ばれていたんだ。クリエイティブがこのセットを見て、すぐに呆れて変更したんだ。ガヴィンの記事では威光のデザインについていろいろと語られているけど、ここではこのメカニズムの実装について少し話したいかな。

 早い時期に、僕はガヴィンが取り組んでいた威光のデザイン上の柱について考え、こういう結論になったんだ。

  1. コーチはデッキ固有で、その部族のカードを参照するべきだ。
  2. コーチはその部族の弱点を強化するものであるべきだ。
  3. コーチの強さの一部は、唱えられた統率者から来なければならない。

 このメカニズムの主な目的は、統率者戦において、そのフォーマットで楽しい形で、その部族が協力して働く方法を与えるというものだった。最大の課題は、統率領域からゲームに影響を及ぼすカードに対処する方法がないから、そういうカードに持たせる効果の種類には特に慎重にならなければならないということだった。

 最初の条件、つまりデッキ固有であるべきだという条件は、2つの問題を緩和するためのものなんだ。1つ目は、《老いざる苦行者、アローロ》のような、ゲームを決めてしまう、妨害できない形で自分のデッキをかなり強化するカードを回避すること。2つ目は、実際にデッキに入っている自分の部族のカードを参照することで、その統率者が何かしているというよりも吸血鬼やウィザードが役に立っているのだと感じられるようにすることだ。僕らが狙った雰囲気のは、統率者が部族を助けているというもので、部族が統率者を助けるというものじゃないんだ。

 2つ目の条件は、この商品が部族を楽しく、充分な形で助けるものだという最大の目標からできたものだ。各部族ごとに、僕たちは「この部族に足りないものは何なのか」と考え、そしてその弱点を埋めることで、デッキ相性や引き次第で即座に勝ち負けが決まるような一発屋ではなく、調和の取れたデッキにまとめられるようにしようとしたんだ。

 3つ目の条件は、そうなっていなかったバージョンのこのメカニズムでプレイしていて、なんか違うと思ったからできたものだよ。戦場にある統率者は楽しいものだけど、唱えなくていいと思うようなデザインになってしまうことも多かったんだ。統率者がどれぐらいの頻度で唱えられるべきかについて特定の目安はなかったけど、実際に戦場に出た時に魅力的なようにすることにしたのさ。

 そこから始まって、デザインして、もう一回デザインして、ひねりを加えて、調整して、そしてできたものがこういう統率者なのさ。

 デザインの初期に、ガヴィンはクリエイティブと協力して誰を登場させるのが最高か考えていたんだけど、その時のリストの上位にいたのがエドガー・マルコフだった。幸いにも、彼はイニストラード世界の吸血鬼の始祖だったから、吸血鬼デッキのメカニズム的要求にもぴったりだったんだ!

 比較的早いうちに気がついたのが、吸血鬼はさまざまな戦略を取ることができるけど、どれもいくらかアグロ寄りで、同時に大量の吸血鬼を戦場に出していることが大事だということだった。《カラストリアの貴人》や《蠱惑的な吸血鬼》、《マラキールの血魔女》なんかは、全体除去が大量にあって何度も何度も立て直さなければならなくなるようなフォーマットでは難しい。そこで、そういった種類の効果の助けとなるような威光能力を探すことにしたんだ。

 コーチの組み合わせを、戦場で2つ、統率領域で1つ能力を持つことに決めてから、最初にできたデザインの1つがエドガーだったんだ。それ以降、数字を調整しただけであまり大きな変更はしなかった。彼はカードやメカニズムの目標を最初に決めてからそれに沿ってデザインするという理由を示す好例だ。求めているものがわかって、その目標すべてを叶えるデザインがあれば、あとはテストをしてそのデザインがうまくいっているかどうか確認するだけでいいんだ。問題の大枠がわかっていれば、すごく簡単なことさ。

丸いサイクルを四角いセットに合わせる

 『統率者(2017年版)』は、『統率者』シリーズで初めてデッキの数が5つではなく4つになっている。この変更には、僕たちが集中するためというものから5つ目のデッキのプレイヤーにとっての価値が比較的小さいのではないかという疑念まで、いくつかの理由があったんだ。ただし、それによってデザイン的観点からの課題が持ち上がった。

 それぞれのデッキに、さまざまなレアリティの新カードを同数ずつ入れることは重要だったんだけど、それと同時に、何かクールなアイデアが浮かんだとき、同じような効果を持ったカードのサイクルを作る必要もあった。完結していないサイクルや多色だけのサイクルを試してみたけれど、結論は、各デッキにサイクルのうち2枚を入れるというものだったんだ。

 これはセットの骨格、つまりセットの枚数、レアリティや色の割り振り、サイクルに割り当てられた枠などを定義してデザインの前提とする表のことだけれど、それをいくらか揺るがすことになったんだ。その結果できたのが、こんなすごいサイクルなんだ。

 これらのカードのデザインはかなり難航したんだ。僕たちが気に入っていた、対戦相手に懸賞金をかけて対戦相手同士戦うように仕向けるというちょっとしたミニゲームを生み出す1枚のカードが最初だったんだ。僕たちはそれをサイクルに広げようとして、いくつかのデザインは気に入ったものができたけど、いくつかは恐ろしく複雑で把握できないようなものだった。

 そこで、その効果を狭めたんだ。でも、再調整を重ねた後で、埋め合わせの効果が多くない、複雑な呪いのように感じられたので、それらを新しくひねりを加えた呪いに作り直すことにしたんだ。呪いを誘発させたプレイヤーだけでなく、その呪いのオーナーも利益を得られるようにしたのさ!

そして煙に消ゆる前に

 このセットのリード・デベロッパーは僕で、ブレイク/Blake(コンテンツ・マネージャー)は子犬の目に弱くて、このカードは吸血鬼デッキに入っているから、最後に特別プレビュー・カードをお見せするよ! これはガヴィンが初期にファイルの穴埋めのために作ったもので、工程全体を通してほとんど変化しなかった珍しいカードなんだ。数字すら変えてないんだよ。見た瞬間に気に入って、あとはどうすれば実際に狙い通り動くようにできるかというだけの問題だったんだ。

 最初はこんな感じだった。

〈煙に消ゆ〉
{2}{W}
インスタント
あなたがコントロールしているパーマネントをすべて追放する。次のあなたの終了ステップの開始時に、それらをすべてタップ状態で戦場に戻す。ターン終了時まで、あなたはプロテクション(すべて)を得る。
[カード名]を追放する。


 そしてこれが、こうなったんだ。

 その通り。フェイジング関連のカードを印刷したのは実に20年ぶりなんだ。でも、戻ってきたんだよ。楽しんでほしいけど、慣れちゃだめだ。どこからどう見ても、以前と同じように、奇妙で、そう楽しくはないメカニズムなんだ。でも、ここでの役には立ってるんだよ。

ほんとにフェイジング?

 なんでフェイジングなのかって?

 『統率者』やその他の多人数戦向け商品では、デザイナーがやりたいことがあったとき、特定の場合にどう動くかということよりも把握できて直観的なカードのほうが優先されることがあるんだ。人々が想像する通りの処理でデザインの意図を保ったものになるようなカードに仕上げるため、エディターがデザイナーにとって何が重要で何がそうでないのかを探らなきゃならない。そのために、編集中のかなりの努力が費やされるんだ。

 100%の機能を持たせるためには誰にも読めないような恐ろしい表記が必要になってしまうけれども、95%の機能でずっと明瞭で魅力的なカードを作ることができるというようなとき、デザインが変更されることもある。

 特に、3人以上のプレイヤーが決定を下したり効果に何か関与したりするというような状況を扱う場合には、非常に複雑になることがあり、その場合にはデザインを調整したり、うまくカードの働きを書き表せるような方法が見つからなければボツにしたりするんだ。

 このカードの場合、こんな会話があったよ(細部は適当だけど)。

編集:このカードの作用で、何が重要なんですか?

:プレイヤーがちょっとの間ゲームから離れて、誰も邪魔できないこと。それに、芝居がかった調子で「じゃあね!」と言えることだよ。

編集:これが、戦場に出たときの能力や戦場を離れたときの能力を誘発させるのは重要ですか?

:いや、誘発したら狙いと違うところで強くなりすぎて、重くしないといけなくなるから、誘発しないほうがいいと思う。

編集:《瀉血》のようなことについてはどう思います?

:《瀉血》が《地震》のように働いたら凄いと思うけど、必須じゃないよ。

編集:《嘘か真か》は?

:明瞭になるようにしてくれればどっちでも。(これは数回繰り返された)

編集:つまり、プレイヤーとそのプレイヤーがオーナーであるものがしばらく存在しなくなればいいんですね。

:そうそう。

編集:つまり、フェイジングですね。

:それだ。


 1週間ほど後、アーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheが奈落に現れた。

アーロン:「このセットにフェイジングを入れたのは誰だ?」

:多分僕だよ。

アーロン:ほう、進めたまえ(笑)


 そしてこれができたのさ。

 君たちも僕たち同様、吸血鬼化を楽しんでほしいな!

――ブライアン

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