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膨らんだ意識曲げ

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膨らんだ意識曲げ

Luis Scott-Vargas / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa

2016年7月1日


 賛否はあるかもしれないが、《難題の予見者》は『ゲートウォッチの誓い』で最も影響の大きいカードのひとつだ。対戦相手の手札からベスト・カードを抜き去りつつ素早いクロックを繰り出せるというものは4マナに見合う優秀さで、無色マナが必要ながらも、《ウギンの目》が使えないフォーマットにまで活躍の幅を広げている。

 そんな《難題の予見者》をひと回り大きくし、抜き去る手札も1枚に留まらないものがある、と言ったらどうする? コストが重くなっているのは間違いないが、そいつは気を抜いた獲物の前にいきなり現れることもある。

 《膨らんだ意識曲げ》をご覧あれ。

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 語るべきことは多くある。ひとつずつ見ていこう。

 まずはそのコスト――8マナだ。これではかなり重いが、実際は「現出」のおかげで8マナを支払う必要がない。

 「現出」のコストは{5}{B}{B}。クリーチャーを生け贄に捧げて、そこからそのクリーチャーの点数で見たマナ・コスト分軽減することができる。ただし、どれだけコストを軽減しても{B}{B}は支払わなければならないことに注意してくれ。「現出」で減少するのはあくまで不特定マナ・コストであり、色マナは軽減できないのだ。それでも、本来8マナのカードに2マナで唱える選択肢があるというのは大きな魅力であり、また、無理をしてまで4ターン目にプレイする必要もないだろう。

 とはいえ3ターン目に3マナのクリーチャーを展開し、4ターン目に《膨らんだ意識曲げ》を「現出」で繰り出す動きはかなりの脅威になるはずだ。さらに「現出」で生け贄に捧げるクリーチャーが《作り変えるもの》のようなカードなら、損失はほとんどないようなものだ。さて、これだけのコストを支払った結果、どんなやつが飛び出してくるのか?

 まずはそのサイズ――5/5だ。《膨らんだ意識曲げ》は決して小さなクリーチャーではなく、これ単体でも十分にフィニッシャーとして扱うことができる。大抵のクリーチャーに戦闘で負けず、対戦相手に攻撃が通れば多大なダメージを与えてゲームを素早く終わらせるだろう。だが一番の強みは「意識曲げ」、すなわち相手の手札を取り去る能力だ。

 対戦相手の手札から、3マナ以下の土地でないカード1枚と4マナ以上のカード1枚の「合計2枚」を捨てさせる。こんな能力は前代未聞だが、極めて強力であることは想像に難くない。まず、対戦相手の手札がすべて土地でない限りは少なくとも1枚は捨てさせることができる。最低限の仕事は果たすことができ、2枚捨てさせることも多々あるはずだ。(もちろんデッキにもよるが)相手の手札が5枚以上なら、そこから2枚抜き去ることができるだろう。相手によっては、手札が3枚か4枚でもうまく刺さることもあり得る。

 こうして大型のサイズに強力な能力が合わさり、恐ろしい脅威が登場した。《膨らんだ意識曲げ》は、4ターン目か5ターン目に現れて対戦相手のベスト・カード2枚を取り去っていく。しかもその上で戦場に居座り、解答を迫るのだ(手札を捨てさせられた後では除去も残りにくいだろう)。生け贄に捧げるクリーチャーを用意できないデッキでは大活躍は望めないものの、ここ最近のクリーチャーには《膨らんだ意識曲げ》を「現出」させるための生け贄として優れたものが多くある。

 ゲーム後半になると《膨らんだ意識曲げ》の能力は効きにくくなり、よくて1枚、何も捨てさせられないこともあるだろう。だがそれでも、単に5/5のクリーチャーとして繰り出すこともできる。それから、「現出」は強制ではないためクリーチャーを生け贄に捧げなくてもいい。8マナでプレイするのも、絶望的と言うほどのことではないだろう。

 以上の通り、《膨らんだ意識曲げ》はなかなか見どころのあるカードだ。その力を最大限引き出すにはデッキ構築に多少の工夫が必要だが、そうするだけの価値は十分にある。私としても、デッキを組みたくなるような「現出」持ちが他にもたくさん登場することを期待している。そういったデッキが作れるなら、この《膨らんだ意識曲げ》をぜひ最高戦力に据えたいところだ。今後こいつの姿が次々に見られることを予想するよ。

LSV

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