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リミテッドにおける2色の組み合わせ

Marshall Sutcliffe / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV Yusuke Yoshikawa

2015年5月20日

原文はこちら

 今週はここDailyMTG.comのモダン特集だが、君たちも予感している通り、《出産の殻》の禁止についてや《集合した中隊》が現在のメタゲームに与える影響について語るつもりはない。そう、このコラムは正真正銘リミテッドを楽しむためのものなのだ。きっとマジックの持つ他の要素と同じくらい、君たちのリミテッド愛を育む特別なものになるだろう。君たちもデッキ構築やマナ基盤の作成に夢中になり、多様性を愛し、戦略を練り、ブースターパックを開封し、そしてゲームを大いに楽しんでいるはずだ――時間を忘れるほどにね。

 今週もモダンというフォーマットについての話ではなく、やはり40枚デッキの世界を語ろう。ただし、そこまでかけ離れた話題ではないはずだ。『モダンマスターズ 2015年版』は素晴らしいことに、驚くべき収録カードたちを使ったドラフトも楽しめるのだ。この環境のリミテッドは多くの人にとって初めてのことだろう。今週は10通りの色の組み合わせを確認し、それらが『モダンマスターズ 2015年版』リミテッドにおいてどのように活躍するのか見ていこう。「モダン特集」というテーマに沿って、『モダンマスターズ 2015年版』で私の目を引いた色の組み合わせにも注目していきたい。


《オパールのモックス/Mox Opal(SOM)》 アート:Volkan Baga

アーキタイプを意識する

 まったく新しいリミテッド環境に挑む際は、「アーキタイプ」の考え方が役に立つ。アーキタイプとは、ある特定のものに対する基本的な例のことだ。マジックのリミテッドで言うなら、2色の組み合わせの基本的な動きということになる。

 ほとんどのセットが、リミテッドで2色のデッキを組むようにデザインされている。その傾向が目立たない『タルキール覇王譚』のようなケースもあるものの、大抵の場合は2色に少しタッチできるくらいのマナ基盤を想定すべきだろう。

 そしてその場合は、今後も何度も目にすることになる2色の組み合わせが10通りあるということだ。つまり、それぞれの色の組み合わせが過去にどのような動きをしてきたかを把握すれば、新セットにもうまく対応できるというわけだ。私は今回、普段は漠然と語られている一般的なことに注目していこうと思う。多くのセットが、2色の組み合わせやその機能について例外を持っている。新たなメカニズムやセットの構成によって、2色の組み合わせに影響を与えることもあるだろう。2色の組み合わせは時々、思いもよらない形で活かされることがあるのだ。

 それでは、様々なセットにまたがる視点から2色の組み合わせの働きを詳しく見ていこう。それから先ほど述べた通り、『モダンマスターズ 2015年版』にて予想される戦略の中から、私が気になっているものをいくつか語っていこう。

白青

 リミテッドで白青といえば、多くの人が「飛行」戦略だと考えるだろう。白と青の飛行持ちクリーチャーを駆使し(白と青の2色は最も飛行を持つクリーチャーが多い色なのだ)、空から勝利を奪う戦略だ。またこの2色の組み合わせでは、タフネスの高いブロッカーで地上を固め、青のテンポを取る呪文と白の除去も使って対戦相手の動きを鈍らせ、空からの攻撃を完遂するのに十分な時間を稼ぎ出す。

 このアーキタイプが有利な環境では、圧倒的な活躍をすることが多い。リミテッドでは、飛行がただひたすらに強力なのだ。

 『モダンマスターズ 2015年版』における白青は、強力なアーティファクトがサブ・テーマになっているように見受けられる。それから、プレビューの時期に語った「スピリット」戦略も関わっている(とはいえその戦略の色は白黒だが)。

 この白青というアーキタイプを支える優れたアーティファクトが、今回のセットには多くあるのだ。

青赤

 正直なところ、青赤の組み合わせは強力な戦略になりにくい。この組み合わせができることといえば、やはり豊富で質の高い除去に集約されるだろう。青はテンポを取る呪文や間接的な除去(クリーチャーを完全に排除するものではない除去)を持ち、赤には火力呪文の数々がある。火力呪文は昔から小型~中型クリーチャーの除去を得意とするものの、大型の「ボム」となる脅威を対処するのは難しい。

 この2色の組み合わせが使われる場合、あるメカニズムがそれを可能にしていることが常だ。それはテンポを重視した高速デッキになるだろう。速攻や飛行を持つ軽いクリーチャーを用い、それらと相互作用のある呪文を駆使するものになるだろう。守りはお世辞にも上手いと言えないが、押しの強さは色の組み合わせの中でも最高だ。

緑青

 緑と青の組み合わせは、マジックの色の組み合わせの中でも私の好きなものだ。大型クリーチャーと強力なテンポ戦略でワンツー・パンチを決められるのが、この戦略の大きな魅力と言えるだろう。また、何よりも素晴らしい「カードを引く」ということにも長けている。しかし、先ほど除去について述べたが、まさにこの戦略の唯一の弱点がそこだ――直接的な除去は持っていないのだ。とはいえ、最近は緑が「格闘」を手に入れ、除去に近い働きをこなしている。そして青にもバウンスと間接的な除去がある。

 この2色の組み合わせは、私が『モダンマスターズ 2015年版』でも大いに注目しているもののひとつだ。「増殖」と「移植」の組み合わせは、極めてクールな相互作用を生み出すことだろう。

 基本的に「移植」を持つクリーチャーは+1/+1カウンターを載せているため、「増殖」で一度にそれらの+1/+1カウンターを増やすことができる。戦場に「移植」を持つクリーチャーが複数いれば、「増殖」による後押しであっという間に手に負えないサイズまで育てることができるのだ。

青黒

 ああ、その通り。これも私の好きな2色の組み合わせだ。青黒は、この2色が組み合わさるからこそ最大の効果が発揮される場合が多い。大抵の環境で、青黒は黒の確実な除去と青のドローを扱うコントロール・デッキになり、昔からカード・アドバンテージについては圧倒的な戦略だ。そしてひとたび盤面を掌握すると、優秀なボム・クリーチャーや青の飛行クリーチャーでゲームを終わらせるのだ。

 しかしこの戦略は動きが鈍くなりがちで、完成度の高いアグレッシブなデッキに素早く動かれるとそのまま圧倒されてしまうことが多い。この戦略を使う場合は、そういった相手とのマッチアップを意識すべきだと私は思う。さもなくば、ひどい目にあうだろう。それでも脅威をしっかり除去し、カードを引ければもうこちらのものだ。ようやく落ち着いたようだね。お疲れ様。

黒赤

 真にアグレッシブな色の組み合わせがついに登場だ。黒にはコストの軽い脅威がなかなか豊富で、除去については一級品だ。赤にはさらにコストの軽い脅威が揃っていて、またゲーム序盤に効果的で後半には対戦相手にとどめを刺すこともできる火力呪文を搭載している。20点で始まる対戦相手のライフをいかに早く削るか、ということに熱中できるなら、このデッキがうってつけだろう。

 『モダンマスターズ 2015版』では、「狂喜」が帰ってくる! ビートダウン使い垂涎の「狂喜」メカニズムは、対戦相手を倒すのに最高の働きを見せるだけでなく、プレイヤーたちに最高にアグレッシブなデッキを追求させることだろう。いつの時代も、それこそがビートダウンの本懐なのだ。

 普通、《ゴブリンの投火師》のようなカードはそこまで重宝されるものではない。だが《血のオーガ》のように「狂喜」を達成すれば信じられないほどのマナ効率を誇るカードを活かせるなら、採用を検討すべきだろう。

黒緑

 黒緑は「こつこつ型」の色の組み合わせのひとつだ。私たちは、ゲームを長い目で見て小さなアドバンテージを重ねていく戦略のことを指して「こつこつ型」と言う。この戦略は基本的にアグレッシブとコントロールの間を進み、強固なクリーチャーと重い呪文を駆使する傾向にある。

 突き詰めるとリミテッドのデッキはほとんどがミッドレンジになるというなら、その中でもこの2色の組み合わせが最もミッドレンジ的だと言えるだろう。緑のクリーチャーと黒の除去を併せ持ち、盤面を膠着させたかと思えば、一気に緑の巨大な怪物たちで大ダメージを与える。また遅いデッキに対しては、カードを適切に引き込めば積極的に攻める姿勢を持つこともできるのだ。

白黒

 白黒は恐らく、アーキタイプとして成立させるのが最も難しい色の組み合わせだろう。通常、除去については最高のものを持っているが、しかしクリーチャーがうまく噛み合わないのだ。白が持つクリーチャーは小型のものか、あるいはトークンであることが多い。黒が持つクリーチャーにはある程度の幅があるものの、白黒のように除去に力の入った色の組み合わせの中で理想的な高打点のクリーチャーが手に入ることは稀なのだ。除去の強さには期待していいだろう。問題は、クリーチャーの質だ。


《希望の盗人/Thief of Hope(CHK)》 アート:Greg Hildebrandt

 白黒という色の組み合わせは、そのセットのメカニズムではっきりと示されるか、あるいは多くのシナジーが用意されている場合に現れることが多い。そして『モダンマスターズ 2015版』では、白黒が存在できるかという問いに「イエス!」と自信を持って答えられる最高の相棒がいる。それは「スピリット」だ。

 これらはこのコラムでもプレビュー記事としてご紹介したが、今回のセットで白黒の戦略をとる最大の理由に据えられている。この色の組み合わせはスピリットと「秘儀」を駆使して生き残ることに長けていて、それは必然、ゲーム後半に滅法強い戦略となるだろう。

緑白

 この色の組み合わせは、とりわけ「フェア」なものだと考えられることが多い。コストに対して優秀なクリーチャーを多数擁する緑白は、ゲーム・プランも真っ直ぐなものであるため初心者におすすめの戦略だ。この色の組み合わせでは、クリーチャーを展開し、それをコンバット・トリックや少量の除去でバックアップしながらビートダウンを目指す。この戦略が現れるかどうかは、環境内に存在する白の除去や緑の「格闘」系のカードの質に大きく左右されるだろう。

 しかし他のデッキが持つシナジーが強力過ぎる場合は、この戦略を「とらない」理由になるだろう。緑白の組み合わせは対戦相手のカードに干渉することも、自分のカードと相互作用を持つことも得意ではないため、デッキにあるカード単体の強さと安定性で補う必要があるのだ。かなり厳しい条件と言えるが、これが実現することも時折ある。

赤白

 この色の組み合わせはアグレッシブな方向に偏重しつつも、ちょっとクールな工夫もある。2、3マナ域の枠にぴったりなカードの数々には、一級品のクリーチャーあり、優れた除去呪文あり、とよりどりみどりだ。この戦略では、コストの軽い脅威を戦場へ送り出し、それをコンバット・トリックや除去でサポートするという動きになる。軽い火力呪文や強力な白の除去、そして豊富なコンバット・トリックを駆使し、ダメージを与え続けるのだ。

 この2色が持つ本当にクールな一面は、トークンを生み出す能力があることだ。白と赤どちらの色もトークンを生み出すことができ、「横に広く」展開してから全体強化呪文を唱えることで、膨大なダメージを叩き出すことができるのだ。

 ちなみに『モダンマスターズ 2015年版』においてはトークンのテーマは薄く、クリーチャー寄りの戦略になっている。

 ぜひこれらのクリーチャーをデッキに織り交ぜ、これらを強化することでどれだけの力を発揮するのかその目で見てみるといいだろう。装備品、オーラ、一時的な強化呪文など、どんな方法でもいい。これらのパワーを何度か上げてやるだけで、いとも簡単にゲームを終わらせることができるはずだ。

赤緑

 この色の組み合わせを目にしたら、多くの人が「マナ加速」を思い浮かべるだろう。そしてそれは、リミテッドにおいても同じことが言える。だがそれでも、マナ加速が赤緑の主力戦略であるとは言い難い。そう、この色の組み合わせは大抵、「恐竜」デッキ寄りになるのだ。ご存知のように、このデッキは大きく重々しいクリーチャーを戦場に繰り出し、攻撃するというのが基本になる。やや単純過ぎる戦略だというのは私も分かっているが、多くの環境でそれが驚くほど強力なのだ。

 ひとつ良い例を挙げるなら、先に話した白青のデッキとの対戦を考えてみよう。こちらが対戦相手のブロッカーを乗り越え、飛行戦力とのダメージ・レースにも勝てるパワーを持つ強大な脅威を繰り出すだけで、相手は強烈なプレッシャーに晒されることになる。それに対処できるものを直ちに手に入れる必要に駆られるだろう。とはいえ公平な視点で見るなら、白青側が解答を持っていれば、赤緑側の敗北は必至だ。大型のクリーチャーを出して殴るだけではシナジーに繋がらない、というのは不利な点と言えるだろう。

 このアーキタイプについて、『モダンマスターズ 2015年版』で付け加えることはない。ただし、見事なアートを持つ素晴らしいクリーチャーのひとつが再録される、という事実だけは言っておこう。《黙示録のハイドラ》だ。


《黙示録のハイドラ/Apocalypse Hydra(CON)》 アート:Jason Chan

まとめ

 いつも言っていることだが、このコラムが君たちの学ぶ機会となりゲーム上達の助けになれば幸いだ。私たちの情熱的な想いを喜んで受け入れてくれるものはたくさんあるが、その中でも、いつも上達のきっかけをくれるものがいいと私は思う。このゲームの高みはあまりに遠く、永遠に続く航海を思わせる。私はそこに、居心地の良さを感じるのだ。

 それぞれの2色の組み合わせが基本的に何をするのかを把握していれば、あるセットを分析できる段階に上ることができる。それは、2色の組み合わせが基本から派生したときにその派生を活かすことに繋がる「基準」となるのだ。私は高校生の頃バスケットボールをしていたが、コーチがいつも言っていたものだ。憧れのプロ・プレイヤーのようなプレイを夢見る前に基本をしっかり学べ、と。

 コーチの言葉は全くもって正しかった。基本的なことに力を入れれば入れるほど、憧れのプレイにどんどん近づいていったのだ。それはマジックにおいても同じだ。2色の組み合わせが基本的に何をするのかを知っていれば、何か特別なことが起きたときにそれに気づくことができるだろう。そしてそれこそが、最先端を進むか多数と共に埋もれるかの違いを生み出すのだ。

 私なら前者を選ぶね。

 @Marshall_LR

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