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『イニストラードを覆う影』 みんなが選ぶトップ3!

『イニストラードを覆う影』 みんなが選ぶトップ3!

by 金子 真実(WotC 日本コミュニティ担当)

 皆さんこんにちは!春、新年度、出会いの季節。そんな4月のはじめに、さっそく私たちは『イニストラードを覆う影』に出会えます!

 イニストラードに存在する数々の謎。残された手掛かり。狂ったアヴァシンと、何かおかしいこの世界。様々な情報を繋ぎ、紐解くと......!? いったいイニストラードに何が起こっているのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。

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 さて、そんな物語も気になるところですが、やっぱり今、一番気になるのは『イニストラードを覆う影』の新カードの評価ですよね!そこで今回もまた、あの3人に期待のカードをピックアップしてもらいました!


鍛冶 友浩の場合

 通称『世界のKJ』。世界的な認知度の高いデッキビルダーであり、現在はトーナメントシーンの一線を退いてはいるが、多くの練習とレベルの高い理論により、数々のプレイヤーから信頼を得ている。

 主な戦績は、プロツアー・チャールストン2006優勝・世界選手権2005トップ4を含むプロツアートップ8入賞3回、グランプリ・北九州2005優勝など。

 最近はプロツアーでのニコニコ生放送の実況や、グランプリなどで日本公式カバレージチームのリーダーも務める。

1位 《大天使アヴァシン》/《浄化の天使、アヴァシン

回転

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カードをクリックで変身

 これはいくらなんでも能力付き過ぎですね!(笑) 古くからマジックをやっている方々からはすでに、「《セラの天使》に謝るべき」と話題の《大天使アヴァシン》。私も裏面のテキストを読むのに意識が行ってしまい、最初は第1面の「瞬速」という文字を見逃していました。戦場に出た時の効果で自身も含めて破壊不能をそのターン中は得ますので、対戦相手の攻撃クリーチャーたちに対して気軽にキャストからブロックへ参加できるのが良いですね。新環境では《龍王オジュタイ》を使いたいなと思っていたのですが、コストとサイズ感も良い天使を前に、ちょっと考えなければなりません。

 第2面は「警戒」こそ失いますが、変身時に3点ダメージを撒き散らしながら6/5にサイズアップ。

 現スタンダードでも活躍中の《ナントゥーコの鞘虫》や《永代巡礼者、アイリ》を使えばいつでも彼女を刺激できるのですが、エルドラージ・末裔・トークンくらいの方が使い勝手は良さそうですね。またこのセットにはプレインズウォーカーが多く含まれているので、PWキラーとしても活躍が期待されます。

2位 《罪を誘うもの

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 カードアドバンテージが取れなそうなデザインが使ってみたいという気にさせます。対戦相手からすると、アップキープに土地が効果でめくれれば即座に墓地へ、何らかの呪文が公開されれば、カードのテキストを確認してからやっぱり墓地へと、基本的には1枚も追加のカードを与えたくはないかなと思います。しかし、そうやってライフを払い続けていくとあっという間に致死圏までいってしまいそうですね。元々持っている「威迫」で、除去呪文を交えてブロッカーを無視しながらの3点クロックも期待できます。

 何らかのカードを墓地に送ることで意味があるデッキ、例えば「昂揚」、《末永く》や《難題の予見者》のように点数で見たマナ・コストよりも明らかに厄介なカードを多用するデッキには特に相性がいいでしょう。除去呪文にはすぐにやられてしまいますが、3マナでデメリットの無い高スペックなクリーチャーなので、そこまでは期待のし過ぎかもしれません。

3位 《ウルヴェンワルド横断

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 マナの足りない序盤では基本土地を、「昂揚」条件を満たした中盤以降にはクリーチャーを探し出せる《ウルヴェンワルドの横断》は、カードの効果こそ地味ですが、幅広いデッキに採用される余地があるでしょう。『ゲートウォッチの誓い』で《ニッサの誓い》を得たエルドラージ・ランプもそうですが、重い呪文を扱うデッキのマナ基盤を安定させつつ、フィニッシャーを探せるカードは重宝していますね。

 さらに、自身が1マナのソーサリーで使いきりの呪文であることから、2枚目の《ウルヴェンワルドの横断》の「昂揚」条件を満たす上で役に立つ点にも注目です。スタンダードから友好色フェッチランドの退場に伴い、少ない枚数のバトルランドを散らして多色化という構築はできなくなりますが、「誓い」シリーズ、《進化する未開地》らと一緒に基本土地の枚数を確保しつつ色マナをサポートする図は容易に想像できます。デッキのマナバランスにこだわるプレイヤーにこそ使ってもらいたい1枚ですね。

『イニストラードを覆う影』総評

 リミテッドについて言えば、『ゲートウォッチの誓い』がだいぶアグレッシブに攻めることが求められた環境に対し、『イニストラードを覆う影』はしっかり戦場を作り上げていくゲーム構築が必要になるのでは、と感じています。「調査」からの「手掛かり」も2マナと安くはないコストが必要になり、「昂揚」も達成できない条件ではないもののそんなにすぐには条件が揃わない。マッドネスも同様で、かなりゲームバランスを調整されたセットです。そこはぜひ、今週末のプレリリーストーナメントで体験してもらいたいですね。

 また、スタンダードの新環境は全く想像できません。果たして発売日の2週間後に開かれるプロツアーではどんなデッキが活躍するのでしょうか。《ヴリンの神童、ジェイス》がマッドネスを誘発させたり、「手掛かり」を元に《飛行機械の諜報網》のトークンを生成したりといった簡単なことばかりではなく、これから研究されていくでしょう。ストーリーラインの謎も深まるばかり、これからが楽しみですね!


射場本 正巳の場合

 通称『しゃば』。日本で初めて開催されたグランプリ・東京1997でベスト8に入賞するなど、黎明期から現在まで長きにわたりマジックを愛し、支え続けてきた人物。

 彼の作成したコンボデッキ『ピットサイクル』は、「マジック史上最も美しいコンボデッキ」と称された。現在はウィザーズ・オブ・ザ・コースト社開発部に在籍し、主として『デュエル・マスターズ』の開発に携わりながら、「統率者戦」などでマジックをカジュアルに楽しんでいる。

1位 《瓶詰め脳

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 メロンパン!

 アメリカ人はこういうグロいの好きですよね。ウィザーズ恒例のハロウィンイベントでもプリンで作った脳みそにラズベリーソースかけて食べてるゾンビがいたりしました。なんか根本から感覚が違う。

 さて、これは呪文版の《霊気の薬瓶》のようなものですが、ちょっとコストがかかりすぎで融通が利かないようにも見えます。でも、あれが『From the Vault: Relic』に入るくらい強かっただけで、これが適正なバランスなのかもしれません。それでもソーサリーがインスタント・タイミングで使えるというのはそれだけで強力で、繰り返し使える《急かし》と思うと、ワンチャン今度のプロツアー優勝デッキに入っていたりして!?と期待してしまいます。

 スタンダードなら相手のターンに《一日のやり直し》を使えたらテンションあがりそう。あと、新たな《大あわての捜索》である《熟読》を使えばマナが増えるのも面白いです。とはいえ悠長なカードですし、スタンダードでは使い道も限られます。やはり主戦場はよりカードプールが広く、多少の悠長な戦略も許される場所でしょう。そう!統率者戦にこそもってこいです!

2位 《ギトラグの怪物

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 このセットの伝説のクリーチャーは5体。どれも統率者にできそうでテンション上がりますね! 《月皇の司令官、オドリック》以外は固有色が2つあってデッキも作りやすそう。そんな中一番異質なクリーチャーはコイツ!! 背景ストーリーでも語られていた村の伝説のカエルですよ!ついに待ちに待ったカエル統率者デッキができる!やったー!

 と思いきや、実は使えるカエル言うほど多くなかった。シミックギルドの青がらみのカエルが多かったからせっかくなら青も足してほしかったなー。とはいえ、性能だけならアヴァシンにも負けず劣らずのかなりのハイスペック。アップキープのコストで生け贄に捧げつつ引き増していくのは《息詰まる忌まわしきもの》を思わせるけど、必要なのが土地でありより維持しやすくドローもしやすいとあって、普通に構築でも使われそう。

 統率者戦なら各種フェッチランドはもちろん、《壌土からの生命》、《風景の変容》、《世界のるつぼ》などなど相性のいいカードは盛りだくさん。土地デッキ作りたいですね。

3位 《熱病の幻視

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 過去の強力デッキ「ハウリング・オウル」の戦略を1枚で体現したかのような、青赤らしいよいカード。しかも、《吠えたける鉱山》とは違いすべて自分が有利なように設計されており、多人数戦も見越した隙のないデザインになっています。

 《寺院の鐘》が出た時もすごいと思ったもんですが、以前にも増して最近のカードデザインはプレイヤーにやさしくなりましたね。これも時代の流れというか、周りのストレートなカードパワーレベルの上昇につれて単体で運用しにくいコンボ的カードも見直されてきた結果なんでしょう。殴る一辺倒のフェアデッキが強くなりすぎても面白みがないので、環境にスパイスはほしいっていうことでしょうか?

 これでデッキを作ってくれといわんばかりのデザインで、開発部からの挑戦状とわかっていてもデッキ構築欲をくすぐられるというもんですね。僕も久々にスタンダードのデッキ作りたくなってきました。出来たらフライデー・ナイト・マジックにでも行ってみようかなー。

『イニストラードを覆う影』総評

 帰ってきましたイニストラード! 前回にも増してホラー感満載のこのセット。すでに世界観が共有されているだけあってイラストレーターさんもノリノリで描いている感じがします。さらに今回はホラーだけでなくジェイスが謎解きするミステリーの要素があるのもまた面白いですね。新キーワードの「調査」で「手掛かり」を得るって響きだけでもワクワクしますよね。この調子でイニストラード版CLUEとか出たら楽しそう。

 そして今回もデザイン部のこだわり要素満載。マロー本人が《古き知恵の賢者》/《古き飢えの人狼》で狼男になって入っているのにはニヤリとさせられました。本家に比べてだいぶ強くなりましたねー。手札を保持したい欲求と変身欲求がかみあっているところがナイス。

 また、おなじみの13絡みのカードが今回も登場。デザイナーとしては数字遊びをフレーバーときっかり揃えられると、テンションが上がります。テーマがはっきりしているイニストラードの世界はそれがしやすくていいですね。《驚恐の目覚め》は2つの異なるカードタイプを両面で結ぶ試みをしており、僕好みのよいデザインですし、《十三恐怖症》はネタかと思いきや、リミテッドで使われてみると超強力でビックリします。スタンダードでもこれからは簡単にフェッチでライフ調整ができなくなるので、意外と13点勝利の可能性あるかもしれませんね。


浅原 晃の場合

 通称『エーツー』。強豪プレイヤーにして、デッキビルダー・ライター。主な戦績は、世界選手権2005・世界選手権2008トップ8、グランプリ優勝2回、「The Finals」2連覇など。

 デッキブランド「G.o.D.(God of the Deck)」、「みのむしぶらりんしゃん」などで有名。独自の視点から、セットに切り込む。

1位 《タミヨウの日誌

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 『イニストラードを覆う影』では謎がテーマになっており、新キーワード能力に調査というものがある。ゲーム内でも、手掛かりを得て真相を解き明かすという流れが再現されているのだが、現実の我々にも謎は用意されているのはご存知だろうか、そう、マジックというゲームは新しいセットが出るたびに、カードの本当の価値をみんなで解き明かすという謎が用意されているといっても過言ではないゲームなのだ。そして、今まさに、この《タミヨウの日誌》の強さを調査している人もいるのではないだろうか?

 そんな君たちに私の調査結果を報告したい。それは、こいつは来そう!である。いっつも自分は5マナの伝説のアーティファクトを推しているような気もするが、今回こそは多分本物。あなたはマナも払わずに好きなカードをサーチしてくる相手を見てどう思うだろう? ゴキゲンすぎる、インチキだ! と思うに違いない。このカードは条件さえ満たせば、そんなインチキの動きを可能にしてくれる一品。持ってくるカードはターンを得られる《水の帳の分離》などだと、そりゃあもう、ゴキゲンの極みである。このセットの謎はすべて解けた!

2位 《十三恐怖症

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 こういうカード大好き。見た感じネタカードに見えるが、13というライフの水準は注目すべき点。かつて、《碑出告の第二の儀式》という、ちょうどライフ10点の相手に10点のダメージを与える4マナのインスタントがあったが、使用感はそれに近い。ただ、こちらの方が13点なので、削るライフは7で良いのが利点。

 しかも、このカード自体にライフ調整の機能が付いているのがポイントで、1点ずつ回復か失うかを選べるため、ちょっとずれているのを合わせることもできなくはない。また、単純にピンチの時に回復したり、相手を追い詰めるのに失わせたりと普通の使い方ができるのもうれしい。

 逆にうれしくない点としては、こちらのライフが13だと、こっちが負けてしまうという点。しかし、この恐怖を逆に面白いじゃねえか、考えれるなら、そんな悪いところは無いとさえ言える。一応、ダメージランドなど、アップキープに13から逃れられる工夫を入れておくと少しは恐怖は和らぐだろう。

 このエンチャントを張るとお互いに別のゲームがスタートして楽しそうなので、ぜひ専用デッキを作って試してみたい。

3位 《ウェストヴェイルの修道院》/《不敬の皇子、オーメンダール

回転

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カードをクリックで変身

 マジックの世界では悪魔は定番の種族だが、現実でも悪魔の力を借りたいシーンは多い。土地引かなすぎ、土地引きすぎ、除去を全然引かない、朝起きれない、大会中にボールペンを絶対無くす、対戦相手の顔が怖い、仕事がブラックすぎる、などなど、そんなとき悪魔が居ればそっと助けてくれるのにと思ってしまうのだ。

 この《ウェストヴェイルの修道院》は、土地に見えて実は悪魔がそっと見守っていてくれている素晴らしい土地。普段は無色マナを供給する普通の土地として使え、土地を引きすぎた場合も、そっと1/1の人間を出してくれる。そして、圧巻なのは、変身して悪魔が降臨するモードを備えていること。もちろん、悪魔なので要求する代償は5体のクリーチャーと小さくはないが、出てくる《不敬の皇子、オーメンダール》がかなり強いので、クリーチャーデッキのお供に入れておくには十分すぎる性能と言える。

 また、変身せずとも、悪魔が見てくれているという安心感から、メンタル面のケアも万全。アヴァシン率いる天使が変なことになった以上、頼れるのはもう悪魔だけ。これから先、何かあったらとりあえず、オーメンダール!と叫んでいきたいと思う。

『イニストラードを覆う影』総評

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 新ローテーションが実施される最初の時がついに。フェッチランドや《包囲サイ》といった、環境を作ってきたカードが去り、そして、イニストラードの新しい世界が訪れる。

 個人的にはこのローテーションの時期がすごく好きで、新しいデッキをいろいろと試せるのは単純に楽しい。また、今回もストーリー展開が気になるところ、ナヒリの登場やタミヨウがどうなったのか、など、気になる点も多い。今後の展開も含めて、目が離せないセットだ。


プレリリースに行こう!

 皆さん、お楽しみいただけましたか? 今週末は『イニストラードを覆う影』プレリリース!いままで様々な謎が解かれましたが、まだまだこれからもイニストラードの世界は謎だらけ。もちろんプレリリースでも......?

おわりに

 またまた3人のチョイスに被りなし!面白いですね~!

 前回の『ゲートウォッチの誓い』の時のチョイスを見なおしてみると、統率者戦視点で予想しているしゃばさんのチョイスがスタンダードで大活躍中の《世界を壊すもの》と《炎呼び、チャンドラ》だったりとなかなか面白いです。あなたの視点と違うチョイスも、じつはすごい天啓だったりするかも......?

 今回選ばれたカードが本当に活躍するのは神のみぞ知る......かもしれませんが、ぜひみなさんの参考にしてみてくださいね!

 そんな楽しみな『イニストラードを覆う影』、4月8日発売です! それではみなさんご一緒に、「Crack-a-Pack!」

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