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開発秘話

Play Design -プレイ・デザイン-

ドラフトとスタンダードのための砂漠のデザイン

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ドラフトとスタンダードのための砂漠のデザイン

Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年6月30日


 「Play Design -プレイ・デザイン-」にようこそ。『破滅の刻』のカードイメージギャラリーがすべて埋まり、これから数週にわたってわたしたちがスタンダードとドラフト向けにカードをデザインした方法についての洞察をいくつか紹介していきます。今日は「砂漠」についてお話しします。

 わたしたちは、とてもフレーバーに合っていることから砂漠を『アモンケット』に入れたいと思いました。《砂漠》は実際に少しの間デザイン・ファイルにありましたが、ゲームプレイをイライラさせて混乱を招くという理由でボツになりました。繰り返し使えるクリーチャー除去はリミテッドではとても楽しくないものですし、多くのプレイヤーは戦闘終了ステップの存在さえ知りません。『アモンケット』のチームは「砂漠」のサブタイプのついた新しい土地をいくつか作りましたが、そのサブタイプはゲームプレイ上、何の意味もありませんでした。

 『破滅の刻』では、わたしたちは砂漠のサブタイプに実際に何かさせたいと思いました。砂漠をデッキに入れる理由となるカードを収録したいと考えたのです。わたしたちは砂漠による恩恵として、2種類のものから始めました。拡大型(戦場にある砂漠が多いほど効果が大きくなる)と、閾値1(開発部で使っている用語で、そのカードが機能するためにそのタイプのパーマネントが他に1つ必要であるという意味)です。今回の場合は、少なくとも1つ砂漠をコントロールしていると強くなるカードということです。

 これが拡大型のカードのサンプルです。

〈砂漠を焦がすもの〉
{3}{R}
クリーチャー―ビースト
3/3
砂漠を焦がすものが戦場に出たとき、クリーチャー1体を対象とする。砂漠を焦がすものはそれにあなたがコントロールする砂漠の総数に等しい点数のダメージを与える。

 もしあなたが《火炎舌のカヴー》をリミテッド環境でプレイしたことがあればおそらく、これが初手ピックなだけでなくゲームに勝つことができるカードである可能性を秘めていることが分かるでしょう。リミテッドではカード・アドバンテージは大事ですし、《火炎舌のカヴー》はたった4マナで大抵は2体のクリーチャーと交換できます。わたしは《火炎舌のカヴー》をスタンダードでプレイした楽しい思い出があります。ええ、それらは本当は楽しい思い出ではなかったのだと思います。《火炎舌のカヴー》のミラーはとても楽しくなくて、大抵はどちらが最後に《火炎舌のカヴー》を引いたかで決まってしまいます。この効果はとても強力で、しかもそれを強くするために何も努力をする必要がないのです。マナをタップするだけで対戦相手の一番強いクリーチャーは死んで、こちらに4/2が残ります。

 〈砂漠を焦がすもの〉は《火炎舌のカヴー》の超劣化版ですが、それでもドラフトで初手ピックするのに十分な強さです。これの主な弱体化部分はこのカードをドラフトするだけでは2対1を取ることができない点です。これのために働かないとだめなのです。あなたのデッキにはこのカードの強さを最大限に引き出すためにたくさんの砂漠が必要になります。

 このカードはいくつかの理由で機能しませんでした。主な理由はこれを働かせるのが大変だということです。これで何か意味のあるものを除去しようとするなら砂漠が2枚以上必要で、コントロールしている砂漠がゼロのときは一種の対立を作り出します。普通はこれを無意味に唱えたくないので砂漠を引いてくるまで手札に置いておくでしょうが、もし砂漠を引かなかった場合、あなたはこれを手札で無駄に置いておいたことと、4ターン目に唱えてしまわなかったことを後悔するでしょう。

 このカードが引き起こすもう1つの問題は、砂漠をドラフトすることをとても優先させてしまうことです。あなたが初手で〈砂漠を焦がすもの〉をピックしたら、砂漠を見るたびにそれらを取りたくなります。他のプレイヤーが砂漠を参照するカードを何か持っていれば、彼らも同じようにそれらをピックするでしょう。存在する砂漠には限りがあるのです。

 また、土地をドラフトするということはクリーチャーや呪文を取らないということで、ドラフトが終わったときに十分な数のプレイアブルなカードがない可能性が高くなります。さらに、砂漠の多くはタップしても無色マナしか出ないので、それらを入れすぎるとあなたのデッキはマナ基盤に苦しめられることになります。全体的に、〈砂漠を焦がすもの〉を適切な枚数のサポートとプレイすると、それをプレイしない場合よりもデッキを弱くしてしまうことがあります。

 『コールドスナップ』ドラフトも同じようにこの問題に苦しめられていました。このセットは氷雪マナのテーマがあり、氷雪土地はパックからドラフトしないといけませんでした。氷雪マナはとても派手で、初手で氷雪土地をピックしても満足するぐらい強力でした。これは健全なドラフトの方法ではありません。『ゲートウォッチの誓い』も似たような問題に苦しめられていましたが、どこにでもいるエルドラージ・末裔を含むたくさんの無色マナを生み出す方法があったので、『コールドスナップ』ほどひどくはありませんでした。わたしたちは『破滅の刻』ドラフトで同じ問題を抱えたいとは思っていませんでした。

 もうお分かりかもしれませんが、〈砂漠を焦がすもの〉は《砂かけ獣》になりました。わたしたちは拡大型の砂漠のボーナスをやめて、閾値1に置き換えました。これでドラフトでの砂漠の取り合いは解決され、さらにはプレイヤーにはより幅広い選択肢が与えられます。3パック目の初手で盲目的に砂漠を取るのではなく、強力な呪文を流して砂漠を取るのが正しいかどうか考えることは、とても楽しいことです。

 これは別の閾値1のサンプルです。

〈砂丘のナーガ〉
{2}{G}
クリーチャー―ナーガ・戦士
3/2
あなたが砂漠をコントロールしている限り、砂丘のナーガは+1/+0の修整を受けるとともにトランプルを持つ。

 こんなカードがこのセットのファイルにはたくさんありました――平均的なサイズで、砂漠をコントロールしていると強くなるクリーチャーです。これはシンプルできれいでしたが、それでもまだゲームプレイ上の問題に悩まされていました。

 わたしたちはプレイテストのときに、自分の砂漠をサイクリングしたり生け贄に捧げたりはしませんでした。わたしたちは自分の砂漠関連のカードを「オフ」にしたくなかったのです。もちろん砂漠関連のカードが戦場になくてもそれらを使うのですが、ゲーム後半に砂漠関連のカードを引いた場合とても嫌な気持ちになります。わたしたちはその問題を「墓地にある」というテキストを追加することで解決しました。これがアップデートされたバージョンの〈砂丘のナーガ〉です。

 わたしたちはプレイヤーに構築フォーマットでの砂漠に幅広い選択肢をあげたいと考えました。デッキの軸になる砂漠関連の呪文に加えて、ここでのもう1つの試みはアンコモンの「ペイン砂漠」サイクルです。この土地はとても簡単にデッキに入れることができます。これらは色マナを生み出すので、《》を2~3枚《ハシェプのオアシス》に入れ替えてもマナ基盤が歪むことはなく、そのライフの損失もゲームの後半に他の土地が増えてくれば無視できるぐらいのものです。

 これらの土地は無色マナも出るので、無色マナを要求する呪文向けの2色土地としても機能します。このような2色土地は『マジック・オリジン』の敵対色ペインランド以来スタンダードになく、無色マナを要するエルドラージはそれらの土地のローテーション落ち以来スタンダードで実際に姿を見せていませんでした。この新しい砂漠で、わたしたちは《難題の予見者》と《現実を砕くもの》が競技スタンダードに戻ってくるところを見ることになるかもしれません。

今週のプレイ・デザイン

 今週、わたしたちはマイケル・メジャース/Michael Majorsをプレイ・デザインの契約メンバーとして迎え入れました。マイケルは優れたデッキ・ビルダーで、わたしたちの素晴らしい助けになってくれるでしょう。彼はヴァージニア州ロアノークからレントンに引っ越してきました。わたしたちといっしょに働くために国を横断してきた彼のために、わたしたちは彼の歓迎パーティを開くことにしました。デッキを作ってフューチャー・フューチャー・リーグでプレイをする長い1週間が終わってから、わたしたちはアンドリュー・ヴィーン/Andrew Veenの家に集まってバーベキューをしました。アンドリューは料理をしてくれて(ありがとう!)そしてわたしたちはたくさんのボードゲームとマジックをプレイしました。

 わたしたちの新しいお気に入りのゲームは、マジックの遊び方のひとつで「スリーカード・マジック」と呼んでいるものです。ブースターパックを開けて、基本土地と選んだカードを2枚取り除き、3枚の「デッキ」を4つ作ります。それからその4つのデッキでマジックをプレイします。初期ライフは5点で、マナは無限、そしてデッキが切れても負けになりません。これが4人で多人数戦をしている様子です。

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左からマイケル・メジャース、ジュール・ロビンス/Jules Robins、アンドリュー・ブラウン、アダム・プロサック/Adam Prosak。

 今週は以上です! 来週はスタンダードでの『破滅の刻』についてお話しします! それまでカードイメージギャラリーをしっかり見ておいてください。

メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)

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