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コラム

金子と塚本の「勝てる!マジック」

金子と塚本の「勝てる!マジック」 第11回:マナバランス その2

金子と塚本の「勝てる!マジック」 第11回:マナバランス その2

by 金子 真実 & 塚本 樹詩

登場人物:

金子 真実

ウィザーズ・オブ・ザ・コーストの人。塚本に押しかけられ突然弟子をとることになった。
高校の時の部活は、Magic Online部(部員1人、活動場所自宅)。

塚本 樹詩

マジック初心者。マジックの大きな舞台での活躍を夢見て、金子に弟子入りした。とにかく元気。
高校の時は色々な部活に所属。演劇、剣道、天文、と見事にばらばら。

前回の勝てマジ!

3色のデッキを作ってきた塚本だが、土地が全て基本土地だったために金子はデッキ内のマナバランスについて教えることに。
デッキ内の土地配分の重要さについて理解した(はず?)の塚本が次に作る『コントロール』のマナバランスは果たしてどうなっているのか!?


金子「コントロールデッキを自由に組んできてくださいって言っちゃったけど、塚本さん、どんなデッキ作ってくるんだろう。《》25枚《》25枚、その他10枚とかだったらどうしよう............。」

nounai_tsukamoto.jpg

脳内の塚本「土地以外のカードは10種類10枚なんですけど、場面場面できっちり引けば大丈夫なので、キリっ!」

金子「キリっ!じゃねーから!......や、マナバランスについても教えたから大丈夫なはず............だけどこういうパターンも......。」

脳内の塚本「これが最強の土地構成です!」

塚本スペシャル(土地のみ抜粋)[MO] [ARENA]
4 《陰鬱な僻地
4 《進化する未開地
4 《マナの合流点
4 《華やかな宮殿
4 《汚染された三角州
4 《欺瞞の神殿
1 《
1 《

-土地(26)-

脳内の塚本「25枚ずつ色マナが出せる、パーフェクトな青黒『コントロール』です!」

金子「ああああああ!惜しいけど違う!! アンタップ状態で場に出る土地が10枚しかなくて、そのうち4枚はとってもとっても痛い《マナの合流点》! これでは色マナは平気だとしても毎ターン苦労しそうですね......。さらには島と沼が1枚ずつだから《汚染された三角州》と《進化する未開地》の3枚目以降が無駄に!」

脳内の塚本「ふっふふ............金子さん、ついに最強の『コントロール』デッキを作ってしまいました! 100枚のデッキです! デッキの枚数を増やすことでカードの種類を増やし、色々な場面に対応できるようなった......倍化の術でゴザル!!」

金子「これが一番ありそうだ!! うわあぁぁぁぁ!」

同僚「さっきから様子がおかしいですよ? 大丈夫ですか? 塚本さんみたいになっていますよ?」

金子「ガーン!」

tsukamoto_kakure.jpg

実際の塚本「ふっふっふ......」

金子「その声は塚本さん! いったいどこに......?」

塚本「ここでゴザルよ!」

tsukamoto_gozaru.jpg

金子「びっくりした!忍者ですか!!」

塚本「耐えろ!って何の話ですか? それよりデッキ、作ってきましたよ!」

Nathan Holiday - 「エスパー・ドラゴン」
グランプリ・プロヴィデンス2015 17位 / スタンダード[MO] [ARENA]
3 《
2 《
4 《汚染された三角州
4 《陰鬱な僻地
4 《欺瞞の神殿
4 《啓蒙の神殿
1 《華やかな宮殿
2 《コイロスの洞窟
1 《溢れかえる岸辺
1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ
2 《精霊龍の安息地

-土地(28)-

4 《龍王オジュタイ
1 《龍王シルムガル
1 《漂う死、シルムガル

-クリーチャー(6)-
3 《思考囲い
4 《シルムガルの嘲笑
3 《胆汁病
1 《予期
4 《英雄の破滅
2 《解消
2 《忌呪の発動
2 《命運の核心
4 《時を越えた探索
1 《精霊龍、ウギン

-呪文(26)-
1 《氷瀑の執政
1 《龍王シルムガル
1 《思考囲い
2 《究極の価格
1 《胆汁病
1 《否認
3 《悲哀まみれ
1 《忌呪の発動
2 《龍王の大権
2 《悪夢の織り手、アショク

-サイドボード(15)-
(「Top Decks of Grand Prix Providence」より抜粋)

金子「塚本さん......やればできるじゃないですか......ってコレ、完全なコピーデッキじゃないですかー!!」

tsukamoto_bunshin.jpg

塚本「分身の術!」

金子「塚本さん......?」

塚本「そんなことはどうでもいいのです! このデッキは前回と違ってマナコストの重いカードがたくさん入っていて、土地の総枚数も多いので、色マナの比率がどう変わるのか教えてください! デッキ内には《シルムガルの嘲笑》と《胆汁病》と入っていて、2ターン目に{U}{U}と{B}{B}が必要なんですけど、これがデッキ内の土地でちゃんと色マナが出るようになっているのか、前回のような難しい表を出して、検証しましょう!」

金子「難しい表って!......わかりました、では説明していきましょう。実際、結果を残しているデッキリストから分析して勉強するのは素晴らしい方法ですからね。」

塚本「やった、褒められた!」

金子「さて、今回は、前回と違って青マナも黒マナも2つ必要ということですね。前回と同じようにそれぞれで『2枚以上引いている確率』を計算して考えても良いのですが、今回はせっかくなので別の計算表を使ってみましょう。」

表2
 引いた枚数(状況)
7(初手)8(2ターン目)9(3T目)10(4T目)11(5T目)
デッキに投入した枚数10.120.130.150.170.18
20.230.270.300.330.37
30.350.400.450.500.55
40.470.530.600.670.73
50.580.670.750.830.92
60.700.800.901.001.10
70.820.931.051.171.28
80.931.071.201.331.47
91.051.201.351.501.65
101.171.331.501.671.83
111.281.471.651.832.02
121.401.601.802.002.20
131.521.731.952.172.38
141.631.872.102.332.57
151.752.002.252.502.75
161.872.132.402.672.93
171.982.272.552.833.12
182.102.402.703.003.30
192.222.532.853.173.48
202.332.673.003.333.67
212.452.803.153.503.85
222.572.933.303.674.03
232.683.073.453.834.22
242.803.203.604.004.40
252.923.333.754.174.58
263.033.473.904.334.77
273.153.604.054.504.95
283.273.734.204.675.13
293.383.874.354.835.32
303.504.004.505.005.50
※デッキ枚数は60枚
※小数点第二位以下四捨五入

塚本「こ、これは......!?」

金子「デッキに入っている枚数ごと、ターンごとの、引いている枚数の期待値表ですね。例えば、表の緑のところを見てください。2ターン目、合計8枚のカードを引いた時に青マナを2枚引きたいのならば、デッキには青マナの出る土地を15枚投入すれば、とりあえずの期待値が2を超えるということになります。あくまで期待値なので、絶対に必要ならばもう少し安全圏の数字が欲しいですが、目安としては十分ですね。」

塚本「『絶対に2ターン目の青マナが2つ欲しい!』という場合、何枚くらいあると良いんですか?」

金子「絶対に欲しいと考えると、やっぱり初手に2枚欲しいですよね。初手に1枚だけで『引けるはずだ!』なんて考えながらゲームを始めたくないですし。なので、初手7枚での期待値が『2』を超える、18枚以上がオススメです。」

塚本「なるほど、確かにこのデッキでは青マナが21枚、黒マナも18枚、必要な色マナがちゃんと出るようになっていますね。でも、このデッキ、全体的にマナ・コストが重いってのはわかるんですが、それにしたってどうして土地が28枚も入ってるんですか?」(※ここでは青マナ・黒マナの枚数から《精霊龍の安息地》を除いています)

金子「よく気が付きましたね、塚本さん! そうなんです、前回の『アブザン・アグロ』よりも今回の『エスパードラゴン』のほうが、土地を多く、止まらずにプレイしたいデッキなんです。具体的にこの『28枚』という枚数がどんな意味を持つのかは、上の表の青いところを見てください。」

塚本「つ、つまり?」

金子「5ターン目、11枚を引いた時の期待値が『5』を超えていますね。つまり、5枚目までは土地をスムーズにプレイできる可能性が高いということです。そして、このデッキの5マナ域を見てください。《龍王オジュタイ》、《命運の核心》............ゲームを決める力があるカードが多いですよね?こういった強力なカードを引いているのに唱えられない、というのを避けたいからこその28枚なんです!」

塚本「おお、確かに!」

金子「それ以外にも、このデッキには2マナと3マナの呪文がいっぱい入っています。2マナ+3マナ、みたいな動きをして場を有利にするためにも、5枚目の土地が必要なんですよね。どこかで2回行動しないとビートダウン相手に追いつけなかったりするんですよ。」

2マナ+3マナ

3マナ+2マナ

塚本「なるほど! そして《龍王オジュタイ》のための白マナは......確かにデッキに8枚......5ターン目11枚の時には82.4%で引いていますね!ってことは、かなり安定して唱えることができますね!」(※ここでは白マナの枚数に《精霊龍の安息地》を含んでいます)

金子「お、その確率は、前回の表1からですね!そのとおりです! そしてこの確率の考え方は、土地だけでなくいろいろなことに応用できますよ。例えば今回の表2から『デッキにクリーチャー除去が11枚入っていれば、大体5ターン目までに2枚引くことができるな』と考えられますし、前回の表1から『2マナ域のクリーチャーが12枚入っていれば、2ターン目に85.3%で1枚は引くことができる』と読み取ることができます。それにしても、塚本さんもデッキのマナバランスや確率のことに関してかなり理解してきましたね!」

前回の表1
 引いた枚数(状況)
7(初手)8(2ターン目)9(3T目)10(4T目)11(5T目)
デッキに投入した枚数111.7%13.3%15.0%16.7%18.3%
222.1%25.1%28.0%30.8%33.6%
331.5%35.4%39.1%42.7%46.2%
439.9%44.5%48.8%52.8%56.6%
547.5%52.4%57.0%61.2%65.1%
654.1%59.3%64.0%68.3%72.1%
760.1%65.4%70.0%74.1%77.8%
865.4%70.6%75.1%79.0%82.4%
970.0%75.1%79.4%83.1%86.1%
1074.1%79.0%83.1%86.4%89.1%
1177.8%82.4%86.1%89.1%91.5%
1280.9%85.3%88.7%91.3%93.4%
1383.7%87.7%90.8%93.1%94.9%
1486.1%89.8%92.5%94.6%96.1%
1588.2%91.6%94.0%95.8%97.0%
1690.1%93.1%95.2%96.7%97.8%
1791.7%94.3%96.2%97.5%98.3%
1893.0%95.4%97.0%98.0%98.8%
1994.2%96.3%97.6%98.5%99.1%
2095.2%97.0%98.2%98.9%99.3%
2196.0%97.6%98.6%99.2%99.5%
2296.7%98.1%98.9%99.4%99.6%
2397.3%98.5%99.2%99.5%99.8%
2497.8%98.8%99.4%99.7%99.8%
2598.3%99.1%99.5%99.8%99.9%
2698.6%99.3%99.6%99.8%99.9%
※デッキ枚数は60枚
※小数点第二位以下四捨五入

塚本「金子さんのおかげだってばよ!! それに俺、ここまで教えてもらってウズウズしてるんだ......自分の忍術がどこまで通用するか試してえ!」

金子「塚本さんが勉強しているのは忍術じゃなくてマジックですし、マジックに忍術を披露するような試験の場はありませんが、そろそろまた、イベントに出てみますか? 最初に『マジック・リーグ』に出たきりイベントに出てませんし、構築のことについては結構勉強してきましたし。」

塚本「むむ......忍法幻覚の術!!」

金子「うわっ......視界が......!!」

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金子「なんじゃこりゃぁ!!」

続く。

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