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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:白単エルドラージ(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:白単エルドラージ(スタンダード)

by 岩SHOW

 『破滅の刻』のリミテッドにドはまりしてしまったのだ。プロツアーで実況をすることも決まっていたので、しっかりと実況できるように環境を把握しておかないとなぁなんて気持ちで始めたら、まあこれがなかなか面白い。完成度の高いデッキと、目も当てられないようなデッキ、両方できるのが楽しい(後者になった際にはもう笑うしかない)。

 目も当てられないデッキの典型はこうだ。「砂漠を参照するカードがあるのに、砂漠カードが全く取れていない」 皆も経験、あるんじゃないかな? 砂漠をどのタイミングで取るのか、どのタイミングで砂漠シナジーを諦めるのか。デッキの色・タイプを決めるのと同時並行でこれらのことも考えながらピックできて、良いデッキが完成して全勝できた時は何とも嬉しいものである。コモンとアンコモンにあるから......と後回しにしていると、全然砂漠が流れてこなかったりするもんな。砂漠を集めるというのが、物語の舞台となっている次元の中で戦っているような感覚を想起させるのも良いと、個人的には好きなリミテッド環境だ。皆にも一度は遊んでみてほしい!

 ここらで話を当コラムの主題、構築に持っていこう。砂漠の登場は、リミテッドのみならずスタンダードにも影響を及ぼしている。「ラムナプ・レッド」はその典型だが、他にも面白そうなデッキはあるよ、例えばこれなんかどうだろう。

Scott Lipp - 「白単エルドラージ」
プロツアー『破滅の刻』 スタンダード部門 7勝3敗 (2017年7月28~30日)[MO] [ARENA]
12 《平地
4 《シェフェトの砂丘
2 《霊気拠点
4 《屍肉あさりの地
3 《繁殖苗床

-土地(25)-

4 《スレイベンの検査官
4 《無私の霊魂
2 《栄光半ばの修練者
4 《作り変えるもの
3 《変位エルドラージ
4 《難題の予見者
3 《大天使アヴァシン
2 《歩行バリスタ

-クリーチャー(26)-
2 《石の宣告
3 《停滞の罠
1 《排斥
1 《領事の旗艦、スカイソブリン
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン

-呪文(9)-
1 《大天使アヴァシン
2 《歩行バリスタ
2 《断片化
1 《領事の権限
2 《歪める嘆き
1 《石の宣告
3 《厳粛
1 《領事の旗艦、スカイソブリン
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン

-サイドボード(15)-

 Scott Lippがプロツアー『破滅の刻』に持ち込んだ「白単エルドラージ」だ! 定期的にエルドラージの話題になってしまうのは、もうそういうもんだと思っていただけたら。『ゲートウォッチの誓い』が世に送り出した、無色マナを要求する真の意味での無色クリーチャーたち。やつらはどいつもこいつもレガシーやモダンで活躍するレベルのカードであり、それがスタンダードで使用可能とあれば、プレイヤーはいつだってそれを用いたデッキを模索するというもの。『イクサラン』までは、エルドラージがその勢いを緩めることはないのだ。

 『破滅の刻』の各種砂漠が、このたびエルドラージを再プッシュ。最も注目されたのは、《ラムナプの遺跡》ら色マナも無色マナも生みだせる、起動型能力も持ったアンコモンの砂漠サイクル。これは色事故を防ぎつつもエルドラージを用いることを可能にするため、大いに注目されていたサイクルだった。こういったデッキが誕生したのは、なにも不思議なことではない。

 しかしながら、白というチョイスには驚かされた。白砂漠こと《シェフェトの砂丘》の起動型能力は、「{2}{W}{W},{T},砂漠1つを生け贄に捧げる」というコストで自軍のクリーチャーをすべてターン終了時まで+1/+1するというもの。ただしソーサリータイミングでしか起動できないため、全体ダメージに合わせてとか、ブロック確定後にクリーチャーを生き延びさせるためにという目的では用いることはできない。なので、少々サイクルの中でも強さは落ちるカードかと思っていた。

 しかしどうやらそこはあくまでオプションであり、白マナと無色マナを《霊気拠点》よりも安定して供給できる時点で十分なようだ。白単の中速デッキを構成するカードとエルドラージがこの砂漠により1つに合わさり、デッキとなった。

 白いデッキがエルドラージを用いる最大の理由は《変位エルドラージ》である。

 3マナ3/3と標準的なサイズに、{2}{C}を払ってやればクリーチャーを戦場から瞬間的に追放する能力が強力だ。この追放より戻ったクリーチャーはタップ状態となるため、攻撃を通すのに用いたり、その逆に相手の攻撃を食い止めるのに使ったり。はたまた自身のクリーチャーを戦闘や除去から救出したり、何度も出し入れすることで戦場に出た際に誘発する能力を複数回使用したり。実に多芸なヤツなのだ。

 クリーチャーと除去を用いて盤面を作っていき、しかる後に《変位エルドラージ》でゲームを支配する、というのがこのデッキの1つの勝ち筋だ。それを《作り変えるもの》《難題の予見者》もバックアップする。《大天使アヴァシン》とこれが並べば、破壊不能つけ放題。《破滅の刻》ぐらいでしか対処できないだろうな。

 このデッキの《変位エルドラージ》の相方として、特に注目したいのが《栄光半ばの修練者》だ。

 2マナ3/1、攻撃時に督励能力を用いて次のターンにアンタップすることを放棄すれば、4/4絆魂という鬼のスペックに変貌する。通常ならばこれで2ターンに1回殴って対戦相手にダメージを与えつつ4点回復と動くのだが......督励して戦闘が終わった後に、自身のターンが来る前に《変位エルドラージ》でこれを追放してやると、それは督励したクリーチャーとは別のものとして扱われる。普通にアンタップして、2ターン連続督励パンチが可能だ。ここまで動ければ、「ラムナプ・レッド」の猛攻で押し込まれたライフも取り返すことができるだろう。この状況に至るまで、あらゆるリソースを用いて生き延びることができるか? そこがポイントだ。

 実際にそうやって「ラムナプ・レッド」に勝ち進んだのかは残念ながら不明だが、このデッキはプロツアー『破滅の刻』にてスタンダード部門7勝3敗という好成績を収めている。デッキを構成しているカードは、ほとんどがそのカードパワーがすでに証明されているものというのも、組む側にとってはありがたい。気になる人は、ゲームデーにでも持ち込んでみてはどうだろう。

 サイドボードには新カード《厳粛》の姿が。

 「黒緑巻きつき蛇」や「赤緑打撃体」対策といったところかな。これが実際にどれほど効果的なのかも気になるところ。さあ、8セットが共演するスタンダードを楽しもうじゃないか!


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