READING

戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:グリクシス・キキジキ(モダン)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:グリクシス・キキジキ(モダン)

by 岩SHOW

 環境が流動していくためには、犠牲もつきものである。ローテーションのないフォーマットでは、支配的なデッキを野放しにしているとそれだけが勝ち続けてしまう。かつての「奇跡コントロール」がそうだった。《師範の占い独楽》が放置されている間、レガシーはこのデッキの庭みたいなもんだった。その独楽が禁止され、これまで日の目を見ることがなかったデッキやカードに注目が集まり始めている。良いことだ。環境は流動してナンボなんだなぁ。

 モダンにおいても、そんな環境変化への思いが込められ、禁止になったカードがいくつかある。《欠片の双子》もそのひとつ。このエンチャントと《詐欺師の総督》or《やっかい児》を組み合わせて、《欠片の双子》がついたクリーチャーをタップしてコピートークンを出す→誘発型能力で双子付きのクリーチャーをアンタップ→以下繰り返しで無限にトークンを生産して攻撃、対戦相手のライフが何点あろうが一瞬でケリをつけることができる瞬殺コンボが、モダン黎明期より環境のトップクラスのデッキであり続けた。

 隙が無く、そこそこ安定して4ターンキルを狙えるこのデッキは、数多くのプロプレイヤーにも愛用された。過去4回のモダンのプロツアーで3度TOP8入賞(うち2つは優勝)という輝かしい成績を誇り、このデッキのバリエーションも増えたが......環境で支配的な存在となったこと・そして青赤の組み合わせであれば双子デッキが最上位であり、他のデッキを選択する理由がなくなってしまっている、といった状況を打破するためにプロツアー『ゲートウォッチの誓い』前に《欠片の双子》は禁止カードに指定されることとなった。以降のモダンは、それまでとは別世界だと語るプロプレイヤーも多数、それほどまでの激変だったのだ。

 あれから1年半......その間のモダンは、エルドラージ一強時代、コンボ戦乱、《死の影》の台頭を経て......良い環境になっているんじゃないかなと思う。グランプリ・神戸2017の結果を見れば、多種多様なデッキが勝っていることは明白。参戦したプレイヤーの多くが、15回戦を戦って同じタイプのデッキと当たったのは2回あるかないかと口にする、バリエーションに富んだ環境となったのだ。

 僕みたいな人間からすると、環境にあるデッキは多ければ多いほど楽しいので現状には大満足。双子ユーザーには残念かもしれないが......と思っていたら、グランプリ・コペンハーゲン2017にて「双子」復活!? 11勝3敗1分けという成績を残したデッキが紹介されていたので、ここでも取り上げてみようと。「グリクシス・キキジキ」入場ッ!

Duncan Tang - 「グリクシス・キキジキ」
グランプリ・コペンハーゲン2017 11勝3敗1分け / モダン (2017年5月27~28日)[MO] [ARENA]
4 《
1 《
1 《
2 《蒸気孔
2 《湿った墓
1 《血の墓所
4 《沸騰する小湖
3 《汚染された三角州
2 《硫黄の滝
1 《滝の断崖
1 《僻地の灯台

-土地(22)-

1 《渋面の溶岩使い
4 《瞬唱の魔道士
3 《詐欺師の総督
3 《やっかい児
1 《ヴェンディリオン三人衆
2 《鏡割りのキキジキ
1 《嵐の神、ケラノス

-クリーチャー(15)-
3 《祖先の幻視
4 《血清の幻視
3 《稲妻
2 《致命的な一押し
2 《呪文嵌め
1 《払拭
4 《差し戻し
1 《四肢切断
1 《コラガンの命令
2 《謎めいた命令

-呪文(23)-
3 《大爆発の魔道士
1 《イゼットの静電術師
3 《外科的摘出
2 《否認
1 《集団的蛮行
2 《神々の憤怒
1 《対抗変転
1 《コラガンの命令
1 《仕組まれた爆薬

-サイドボード(15)-

 《鏡割りのキキジキ》は《欠片の双子》健在の頃も「双子」デッキにて5枚目の双子枠として、コンボパーツを担っていた。そのキキジキをデッキの決め手として採用した、グリクシス(青黒赤)カラーのデッキだ。

 もともと、双子系のデッキはコンボに完全特化したものではなく、軽量ドローと打ち消し、《稲妻》などを《瞬唱の魔導士》で使いまわしつつ殴り勝つ、テンポデッキの要素を強く持ったデッキが主流だった。このデッキもそれに倣って、相手の動きを捌きながら殴るプランをメインの勝ち筋とした構成になっている。

 青赤に黒を足している理由は《致命的な一押し》と《コラガンの命令》、あとは《四肢切断》をライフを払わずに唱えられるという点、つまりは除去の強化だ。

 《タルモゴイフ》などの高タフネス持ちを確殺できることから《致命的な一押し》を採用しつつも、《稲妻》をしっかり3枚残してある。瞬唱で使いまわしてプレイヤー本体に撃ち込んで勝利、という使い道があるので、このカードが0枚になることはないだろう。

 瞬唱と言えば、《コラガンの命令》との相性の良さは当コラムでも何度か書いてきたのでご存知の方もいらっしゃるかと。こちらもライフを攻めつつ、対戦相手のドロー・ステップに手札を捨てさせてロックしたり、アーティファクトを割ったり、瞬唱を回収したり......器用なインスタントだ。もちろん、序盤に手札破壊で捨てさせられたキキジキを回収したりもできるぞ! まあ黒はあくまでアクセント、ちょっとしたスパイスぐらいのもの。

 対戦相手のアクションに打ち消しと除去、瞬唱による使いまわしで対処。《祖先の幻視》で手札を補充し、リソースの差がついたところでターン終了時に《詐欺師の総督》《やっかい児》を投下して対戦相手の土地などをタップしつつ、返しの自分のターンでおもむろにキキジキを展開してコンボで勝ち!というのが理想的なストーリーだが、何度も言うようにそれ以外にも《謎めいた命令》などで足止めしながら瞬唱や《ヴェンディリオン三人衆》を展開して殴り切ることもできる。《嵐の神、ケラノス》で3点ダメージを自動的に飛ばしながら勝てるし、消耗戦にも強い。

 なかなか良いデッキに仕上がってはいるが、線の細さは否めない。プレイングはなかなか難しい方に入りそうだが、グランプリの成績を見るにデッキの地力はありそうだ。モダンのトーナメントに普段から参加しているという方、気分転換にこんなデッキはいかがだろうか。一度死んだデッキで勝つというのは、なかなかに気持ちのいい体験だと思うぞ!

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER

サイト内検索