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岩SHOWの「デイリー・デッキ」

2017.01.05

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:Boss Naya(過去のスタンダード)

by 岩SHOW

 あなたが胸を焦がしたトーナメントは? マジックのトーナメントは、スポーツに負けないくらい熱い(知的スポーツと言っても差し支えないだろう)。観戦し甲斐のあるものだと信じて疑わない。その最たるものは、やはりプロツアー。各地の予選を勝ち上がったプレイヤー、実力を示し続けて継続参加するプロプレイヤーが、優勝というひとつの目標に向かって激突。2日間の予選ラウンドを戦い、夢のプロツアー・サンデーへ......この過程で、ドラマが生まれないわけがない。

 熱かったプロツアーというのはそれこそ多数あるが......今日はそんな記憶に残る激戦史から、プロツアー・サンディエゴ2010。このプロツアーでは、2つの「最強」が伝説を生み出した。

 ひとつは「ジャンド」。黒赤緑からなるこの攻撃的なカラーは、『ワールドウェイク』にて《怒り狂う山峡》を手に入れてパワーアップ。最強のデッキと目されていおり、大方の予想通りTOP8に3名を送り出した。決勝ラウンドにおいて、「ジャンド」は「ジャンド」にしか負けていない。決勝戦は「ジャンド」対決だ。これを制したのは、2マナ圏に《朽ちゆくヒル》《不屈の自然》の両方を採用したドイツのサイモン・ゴーツェン/Simon Görtzen。

 もうひとつの最強は、ご存知LSVことルイス・スコット=ヴァーガス/Luis Scott-Vargas。彼はこのトーナメントにおける最強の存在であった。準決勝で敗れこそはしたものの、そこに至るまでのラウンドすべてで勝利を収めている。すなわち、予選ラウンド全勝。マジックにおいて、16連勝(準々決勝を含めて17連勝)なんてできるもんじゃない。ましてや、強豪ひしめくプロツアーのという舞台でそれを成し遂げるなんて、これはもはや事件だ。

 今日はそんなルイスがスタンダード・ラウンドおよび決勝ラウンドで用いたデッキを紹介しよう。「Boss Naya」だ!

Luis Scott-Vargas - 「Boss Naya」
プロツアー・サンディエゴ2010 3位 / スタンダード (2010年2月19~21日)
5 《森》
2 《山》
2 《平地》
3 《霧深い雨林》
4 《乾燥台地》
1 《怒り狂う山峡》
1 《根縛りの岩山》
2 《活発な野生林》
1 《セジーリのステップ》
1 《地盤の際》
2 《広漠なる変幻地》

-土地(24)-

4 《貴族の教主》
2 《極楽鳥》
4 《野生のナカティル》
1 《硬鎧の群れ》
2 《石鍛冶の神秘家》
4 《聖遺の騎士》
4 《血編み髪のエルフ》
4 《イーオスのレインジャー》

-クリーチャー(25)-
3 《稲妻》
1 《流刑への道》
2 《忘却の輪》
1 《バジリスクの首輪》
1 《ビヒモスの大鎚》
2 《復讐のアジャニ》
1 《遍歴の騎士、エルズペス》

-呪文(11)-
1 《ゴブリンの先達》
1 《石鍛冶の神秘家》
4 《狡猾な火花魔道士》
2 《不屈の随員》
2 《悪斬の天使》
1 《忘却の輪》
2 《魔力のとげ》
1 《バジリスクの首輪》
1 《ビヒモスの大鎚》

-サイドボード(15)-
記事「Boss Naya」 より)

 「Boss Naya」のNayaはもちろん、ジャンドと同じく次元アラーラを形成する断片のひとつ、ナヤのこと。赤緑白の呪文とクリーチャーを用いたデッキ全般をこう呼ぶ......のは皆さんももうお馴染みのことかと。ではBossとは?

 これは「The Boss」が作成したデッキという意味。仲間達から親しみを込めてThe Bossと呼ばれるトム・ロス/Tom Rossが、ChannelFireballのメンバーに提供したナヤデッキ、というわけだ。ここ最近は「感染」および「白赤人間」で勝ちまくっているトム・ロス。彼はこのプロツアー・サンディエゴ2010の前年2009年ころからグランプリやプロツアーで勝ち星を重ね、脂の乗っている時期だった。そんなThe Bossのススメで、青いデッキが大好きなルイスもこのナヤデッキを手に取ることになった。そして、その化学反応が最強の怪物を生み出したというわけだ。

 「Boss Naya」は《野生のナカティル》から攻め立てるアグレッシブなデッキだ。1マナクリーチャーはたっぷり11枚。理想的な動きは、1ターン目に《森》から《野生のナカティル》or《貴族の教主》。ナカティルでガンガン殴るもよし、教主からクリーチャーをガンガン展開するもよし。

 トム・ロスいわく、最も大事なことは「3ターン目に4マナ出せる状況を作る」こと。このデッキの4マナ圏は......《復讐のアジャニ》《遍歴の騎士、エルズペス》のプレインズウォーカーコンビ、アドバンテージの塊《イーオスのレインジャー》、そして言わずと知れたぶっ壊れ《血編み髪のエルフ》。いずれもカード2~3枚分の働きをしてくれる強烈なカードで、これを採用している他のデッキに先んじて3ターン目に唱える、というのが必勝パターンだ。血編みの続唱から《聖遺の騎士》がめくれたりしたら......対戦相手にしちゃたまったもんじゃないな。

 このデッキの良いアクセントとなっているのが、《石鍛冶の神秘家》。現在もレガシーで大活躍中のこのクリーチャー、この段階ではまだ「生涯の伴侶」とも呼べる《殴打頭蓋》が存在していなかったものの、その強さは十分なもの。《ビヒモスの大鎚》を装備させて、あらゆるクリーチャーを《悪斬の天使》並みのスペックにさせて押し込むという戦法が対「ジャンド」において効果的だった。《野生のナカティル》が5/5絆魂トランプルって、そりゃ強いわな。

 《イーオスのレインジャー》《血編み髪のエルフ》から尽きぬクリーチャーを展開し、これを装備してゴリゴリ攻めるのだ。

 クリーチャーデッキを相手にした場合はこの石鍛冶がさらに輝く。持ってくるのは《バジリスクの首輪》、装備するのはサイドインした《狡猾な火花魔道士》。速攻でパチンとダメージを与えて、どんなクリーチャーでも対処してしまえるのだ。この殺人システムが作動すれば、「Boss Naya」を殴り倒すのは非常に困難なミッションとなる。まさしくインポッシブル。

 このデッキとルイスのプレイングが噛み合って、予選ラウンド全勝という快挙が成し遂げられた。もうこのあたりからは僕はルイスにメロメロで......そんなルイスと友達になれたのはこのコラムでも何度か述べてきたけど、このプロツアーのチャンピオン、サイモンさんともルイスを通じて話すようになって......僕の中では今になってその熱さがさらに増したプロツアーになったね。

 皆もぜひ、ネットにしっかりと残っている過去のプロツアーの記録に目を通してみてほしい。自分が知らない時代にこんなことが起きていたのかとか、さまざまな発見がそこにはあるはずだ!

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