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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:エスパー・コントロール(スタンダード)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:エスパー・コントロール(スタンダード)

by 岩SHOW

 マジックの試合を実況する、という仕事を初めて3年ほどになるか。公式のニコ生に出演してプロツアーやグランプリといったマジック最高峰のトーナメントを日本の皆さんにお届けするようになって1年半ほど。この仕事をやっていて思うのは、本当にいろんなプレイヤーがいるなぁということ。特に思い出深いのは、初めて参加したプロツアーであるプロツアー『運命再編』。今となっては本当にあの場に呼んでもらえて「幸運」だったなと思うが、同トーナメントで強烈に印象に残っているのはアメリカの若手、初日から全勝街道をひた走っていたセス・マンフィールド/Seth Manfieldだ。

 このトーナメントで彼は自身初のプロツアーTOP8入賞を果たしたのだが......モダンでは「バーン」を使用していた彼、ゲーム中にとにかく身体が小刻みに揺れていて、まるで内面から溢れ出るエネルギーを抑えきれないかのようだった。テンポよく、ドッドッドッドッと擬音が似合いそうなその様子はバーンデッキとも噛み合っており、心の中で「マンフィールド・エンジン」と呼んでいたことをここに白状しよう。

 さて、話は最新のプロツアー『イニストラードを覆う影』へ。ここでセス・マンフィールドは2度目のプロツアーTOP8に入賞し、2015年世界王者の貫禄を見せつけたのだが......どうも様子が違う。フィーチャーマッチで、あの『運命再編』の時に見せたマンフィールド・エンジンが、かかっていない?! そこにはどっしりと腰を落とし、手札を握り熟考するマンフィールドの姿が。それもそのはず、今回彼が使用しているデッキはテンポよく攻めるデッキではなく、じっくりと構えてジワリジワリと盤面の優位を築いていくデッキだからだ。

Seth Manfield - 「エスパー・コントロール」
プロツアー『イニストラードを覆う影』 3位 / スタンダード (2016年4月22〜24日)[MO] [ARENA]
6 《
3 《
1 《平地
4 《窪み渓谷
1 《詰まった河口
4 《大草原の川
4 《乱脈な気孔
4 《進化する未開地

-土地(27)-

1 《終止符のスフィンクス

-クリーチャー(1)-
4 《予期
4 《闇の掌握
4 《究極の価格
2 《破滅の道
2 《呪文萎れ
4 《衰滅
2 《闇の誓願
1 《次元の激高
1 《シルムガルの命令
3 《卓絶のナーセット
2 《秘密の解明者、ジェイス
1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス
2 《死の宿敵、ソリン

-呪文(32)-
3 《ヴリンの神童、ジェイス
2 《ゲトの裏切り者、カリタス
2 《龍王オジュタイ
2 《強迫
2 《否認
1 《精神背信
2 《苦渋の破棄
1 《無限の抹消

-サイドボード(15)-

 彼が今回使用したデッキがこの「エスパー・コントロール」。前プロツアーを制した「青赤エルドラージ」を生み出したチーム「East West Bowl」謹製のデッキである。どうだいこのドッシリ感は。エスパーカラー(青黒白)のコントロールと言えば、現環境では「エスパー・ドラゴン」がまず思い浮かぶが......このデッキは、《龍王オジュタイ》で攻める選択肢を有するドラゴンデッキよりもさらに遅い。龍王たちとドラゴンシナジーを形成するカードの代わりに搭載されているのは《卓絶のナーセット》《秘密の解明者、ジェイス》《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》《死の宿敵、ソリン》という4人のプレインズウォーカーたちだ。凄いメンツが並んだものだ。いずれもカードを1枚手札に加える共通の能力を持っているが、1枚ずつ見ていこうじゃないか。

 最もマナコストが軽い《卓絶のナーセット》は3枚と最多枚数。[+1]能力はカードを得られない確率も高い。その分初期忠誠値が高く、戦場にクリーチャーが多少いようが無視して出して[+1]起動して忠誠値を7にしてしまえば、そう簡単には突破できない点が優れており、上記の短所を補ってはいる。[-2]能力ではこのデッキの誇る白黒除去呪文群に反復を与えて使いまわしてアドバンテージを得られる。シンプルに《予期》を使いまわすのも、相手のターンを見てからより状況にあった必要な1枚を探しに行けるのは良い。[-9]能力は決められれば勝ちやね。

 《秘密の解明者、ジェイス》は新顔で、前評判は《束縛なきテレパス、ジェイス》と同じジェイスであるため、これがスタンダードを去るまで出番はないのでは?というものだったが......ところがどっこい。5マナと重くても、戦場に出てしまえば毎ターン占術1+1枚ドローという質の高いアドバンテージをもたらし、[-2]能力でとりあえずの時間稼ぎはできるしトークン・クリーチャーには実質除去として機能、[-8]能力は決められれば勝ちやね。

 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》は追加のジェイス枠というポジションだろうか。あんまりジェイスだけ引いてもしょうがないし。[+1]能力はライフの損失は痛いがドローはドロー。[-3]能力は確実な除去。この除去にオマケで2〜3ドローついてくると考えれば儲けもん。[-8]能力はこれだけドローのできるこのデッキで決められれば勝ちやね。

 《死の宿敵、ソリン》も新顔だ。[+1]能力は確実なアドバンテージを得つつ、相手のライフを削っていける。これを毎ターン起動しているだけでだんだんと相手が敗北に向かっていくなんて、イカした能力だ。[-X]能力はライフ回復付きのダメージを与えるもので、現行スタンダードのクリーチャーなら概ね除去できるし、プレインズウォーカーにも突き刺さるのが良い。とくにこういうクリーチャーを出さないデッキは、プレインズウォーカーを処理することを苦手としているのでありがたい。[-9]能力は、オーバーキルであるがゆえにほぼ起動する前にゲームが終わるんだろうが、決められれば勝ちやね。

 これら4人を除去の連打で築いた更地に着地させて、じっくりとゲームの主導権を握ってゆく。これが「エスパー・コントロール」の新たな形だ! サイド後はクリーチャー除去を抜いてきた相手に対して《龍王オジュタイ》《ヴリンの神童、ジェイス》らをサイドインして裏をかいてやろうというもの。ただこの戦術がプロツアーで披露されてしまったことにより、その奇襲性はグッと下がった。これからは一歩進んだ読み合いに基づいて、サイドボードを作ることになるんじゃないかな。

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