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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:テゼレッター(エクステンデッド・2009年)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:テゼレッター(エクステンデッド・2009年)

by 岩SHOW

 解禁。良い響きだ。ボジョレーとか、各種漁とか、エンタメ情報とか。秘められていたものが解放される時は、否が応でもテンションが上がるものである。マジックでも、時折秘められていた危険な力が、世に解き放たれることがある。つい先日、2枚のカードが新たな活躍の場を手に入れた。モダンが公式フォーマットに制定された時から禁止カードに指定されていた《祖先の幻視》と《弱者の剣》が、遂にその長い禁を解かれ、使用可能となった。これには、モダン環境からすっかり去ってしまったコントロールデッキの復権への願いも込められているように思う。

 《祖先の幻視》は、見たまんま3枚ドローできるカードで......待機が解決されるまでゆったり構えて相手の動きを捌いて、ほら降って来たよ3ドローが!息切れしている相手と差をつけちゃうよ!という形で運用する。「フェアリー」(※1)デッキで用いるのがベストのようにも思える。

(※1:わずか2マナで1/1飛行を自動的に生み出す《苦花》を設置したら、後は相手の動きを打ち消し呪文などで封じていれば勝てる......というコンセプトで作られる青黒のデッキ。《呪文散らしのスプライト》《ウーナの末裔》《霧縛りの徒党》と同族と強力なシナジーを形成するフェアリーも多数採用されており、トリッキーに相手を攻め立てる動きはそういうデッキが好きな人にはたまらないもの。)

 では《弱者の剣》は? このカードを初めて見た人には、何故これが禁止されていたのかわからないことだろう。『未来予知』でその姿を現した時も「これどういう使い方すりゃいいんだ?」と僕らも思っていました。セット名の通り、そこからさらに進んだ未来で《飛行機械の鋳造所》という唯一無二の相方を手に入れて、この装備品の運命は変わったのだ......今日は、そんな一時代を築き上げ、一度は封印された力を振るったデッキを紹介しよう。世界選手権2009、エクステンデッド・ラウンドを堂々の全勝!William Cavaglieriの「テゼレッター」だ!

William Cavaglieri - 「テゼレッター」
世界選手権2009 エクステンデッド 6勝0敗 / エクステンデッド (2009年11月21日)[MO] [ARENA]
4 《
2 《平地
3 《神聖なる泉
2 《沸騰する小湖
4 《教議会の座席
4 《古えの居住地
1 《アカデミーの廃墟

-土地(20)-


-クリーチャー(0)-
3 《金属モックス
3 《発展のタリスマン
4 《流刑への道
4 《呪文嵌め
3 《仕組まれた爆薬
4 《交錯の混乱
4 《飛行機械の鋳造所
3 《マナ漏出
3 《弱者の剣
4 《知識の渇望
2 《神の怒り
3 《求道者テゼレット

-呪文(40)-
4 《翻弄する魔道士
3 《ヴェンディリオン三人衆
2 《トーモッドの墓所
1 《アカデミーの廃墟
2 《大祖始の遺産
2 《虚空の杯
1 《神の怒り

-サイドボード(15)-

 《求道者テゼレット》を中心に、彼の持つ「-X:あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストがX以下のアーティファクト・カードを1枚探し、それを戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。」という能力により、その時その時で必要なカードを探し出して戦うデッキだ。

 多くの場合、彼が探してくるアーティファクトは《弱者の剣》《飛行機械の鋳造所》のどちらか、あるいはその両方。これらを揃えると...

  1. 1マナ払って《弱者の剣》を生け贄にし、《飛行機械の鋳造所》の能力を起動。
  2. 1点のライフを得るとともに飛行機械・トークンが戦場に出る。1/1のクリーチャーが戦場に出たので、墓地にある《弱者の剣》の能力が誘発。
  3. 弱者の剣》が戦場に戻る。これをまた1マナ払って生け贄に捧げて......マナがある限りこれを繰り返す。

 うじゃうじゃと飛行機械が群れを成し、ライフがモリモリと回復する。このコンボが成立すると、ダメージレースで負けることはほぼなくなる。ビートダウンやバーンなどのライフを狙うデッキにとっては、まさしく悪夢としか言いようがない光景だ。エクステンデッドのトーナメントでは、このコンボを前に「ハァ...」と脱力した状態で投了を宣言するビート愛好家が多数いたのも今となっては懐かしい光景である。

 このデッキの場合は、上記のようにコンボパーツのサーチ係としての役目が大きい《求道者テゼレット》だが、アーティファクトなら何でも持ってくることができるため、《罠の橋》《大祖始の遺産》など用いたシルバーバレット(※2)を強く打ち出したデッキに調整するのもアリだ。

(※2:吸血鬼を退ける力を持った銀の銃弾のように、特定の相手・状況に劇的に効くカードをメインデッキから複数種類採用し、サーチカードで必要なものを持ってくるという戦術およびデッキの構築法を、上記の銀の銃弾から取ってこう呼ぶ。)

 元々エクステンデッドのデッキだが、一部の禁止カードを除けば簡単にモダン版に作り変えることが可能だ。今のモダンに存在するデッキをギャフンと言わせるアーティファクトをズラリ並べて、どれを何枚採用するか......デッキを作る楽しさはピカイチだと思う。自分だけの至高の「テゼレッター」を作り上げてみてはいかがだろうか。

 余談だが、《弱者の剣》は《ペンデルヘイヴン》を守護する戦士《Jacques le Vert》の所持する剣、という設定だ。彼がイラストで背負っているものがそれなのだろうか。

 何度破壊されても破片から再生するという特性を持った武器で、《クローサの掌握》や《塵への帰結》でもバッキバキに破壊されているが、この後自動修復するのだろう。《塵への帰結》は追放するのでは?とか言っちゃいけないよボーイ。

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