イベントカバレージ
決勝:池田 剛(福岡) vs. 栗原 伸豪(東京)
決勝:池田 剛(福岡) vs. 栗原 伸豪(東京)
by Yusuke Yoshikawa
「基本セット2010」のリミテッドで争われたグランプリ新潟も、いよいよ大詰め。
「基本セット」であるだけに、マジックの基本的な楽しみが詰まっている。
新たなキーワード能力も、明確に提示されたテーマもない。
あるのは色の役割と、基本的な機能を備えたカード群。
プレイングに必要な要素も、決して難しいことは何もない。

池田 剛(福岡) と栗原 伸豪(東京)、いずれ劣らぬ歴戦の強豪が、この場に残った。
一見、大ざっぱに思えるこの環境だが、むしろこの環境こそが細かな技術と読みを必要とされていることを、二人が示しているのかもしれない。
栗原はグランプリ・バンコクに続く、2週連続優勝の偉業がかかる。
池田は、10年越しのタイトルの悲願がかかる。
でもその思いとは関係なく、マジックのゲームは、静かにここにある。
Game 1

先攻を選んだ栗原が7枚で、池田が6枚でのスタート。
栗原の《夜の子/Child of Night》に、池田が《平和な心/Pacifism》で即対応する立ち上がり。
続く《出征路のグール/Warpath Ghoul》には《幻影の召使い/Illusionary Servant》が立ちふさがる。
だが栗原も《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》が出すと、ライフは動かないが、戦場はにわかに緊張感に包まれた。
そこに現れた池田の《白騎士/White Knight》に、栗原が息を漏らす。
栗原 「また《白騎士/White Knight》か......」
だが、池田にしてみても、《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》が根本的にはどうにもならないことには変わりはない。
栗原の《立ちはだかる影/Looming Shade》に対しては、2体目の《幻影の召使い/Illusionary Servant》が現れ、その脇で《白騎士/White Knight》が静かにクロックを刻んでいく。
だが《立ちはだかる影/Looming Shade》と《幻影の召使い/Illusionary Servant》が交換になった後、栗原の《マーフォークの物あさり/Merfolk Looter》が栗原の手札を有効カードに換え、局面を動かし始める。
栗原はそうして選んだカードから《ケリノアのコウモリ/Kelinore Bat》を追加した後、《氷の牢獄/Ice Cage》で《白騎士/White Knight》を一時的に封じ込め、時間的猶予を得た。
盤面が膠着していく中、クリーチャーが追加され、池田の《魂の管理人/Soul Warden》が少しずつライフを増やしていくのみ。
しかし、飛行(もしくはブロックされない)クリーチャーがほとんどの池田は、一度に大量アタックを仕掛ければ《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》を潜り抜けるタイミングがある。
栗原も《魔性の教示者/Diabolic Tutor》で《堕落の触手/Tendrils of Corruption》を用意し、来たるべき池田の攻撃に備える。
栗原が《グレイブディガー/Gravedigger》から《立ちはだかる影/Looming Shade》を再配備したところで、池田は考慮に沈んだ。
ここで盤面を整理しよう。
池田:ライフ20
《嵐前線のペガサス/Stormfront Pegasus》
《幻影の召使い/Illusionary Servant》
《グリフィンの歩哨/Griffin Sentinel》
《物知りフクロウ/Sage Owl》
《幻影の戦士/Phantom Warrior》
《魂の管理人/Soul Warden》《白騎士/White Knight》(《氷の牢獄/Ice Cage》つき)栗原:ライフ11
《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》
《吠えたけるバンシー/Howling Banshee》
《グレイブディガー/Gravedigger》
《立ちはだかる影/Looming Shade》
《出征路のグール/Warpath Ghoul》
《マーフォークの物あさり/Merfolk Looter》
《夜の子/Child of Night》(《平和な心/Pacifism》つき)
ここで、池田は《吠えたけるバンシー/Howling Banshee》に《破門/Excommunicate》をプレイし、《魂の管理人/Soul Warden》を残して総攻撃を宣言。
栗原は《幻影の召使い/Illusionary Servant》を《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》で除去し、《嵐前線のペガサス/Stormfront Pegasus》を《ケリノアのコウモリ/Kelinore Bat》でブロックして相打ち、結果栗原のライフが7となる。
しかしそれ以上の追撃手段を、池田は持たなかった。
栗原は自らのターンで《幻影の戦士/Phantom Warrior》を除去、さらに最後の懸案である《グリフィンの歩哨/Griffin Sentinel》も、用意していた《堕落の触手/Tendrils of Corruption》で対応。同時にライフを危険水域から脱出させた。
そうなると、池田に逆転の機会は訪れない。
池田 0-1 栗原
池田 「《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》(の能力)、黒マナが要ると思ってた」
終わってから、苦笑いとともにこぼれでた言葉。池田にしては、らしくないミス。
「そういえば」
シャッフルをしながら、栗原が話す。
「先週のグランプリ(バンコク)では、相手が装備品(《魔道士封じの鎧/Magebane Armor》)の能力を勘違いしてくれてましたよ」
やはり、2週連続でグランプリの決勝を戦う男には、説明できない何かがあるのだろうか。
だが、その意味では、今日の池田も普通ではない、何かがある。
Game 2
池田 「先攻で!」
池田の小気味いい声が響く。
ただその表情も、手札を見ると苦笑いに変わり、池田はライブラリに手をかけた。栗原は気持ちを抑えるような声で、キープを宣言。
池田の《魂の管理人/Soul Warden》からゲームが始まり、さらに《嵐前線のペガサス/Stormfront Pegasus》、そして《アンデッドを屠る者/Undead Slayer》が、綺麗なマナカーブを描きながら池田の戦場に降り立った。
池田「《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》返し!」
池田が笑いながら言う。確かに、黒単に近い栗原の陣営を考えれば、
栗原 「ほんとに《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》だなー」
という言葉もうなずける。
この《アンデッドを屠る者/Undead Slayer》を除去する手段がない栗原は、除去される対象となる《骨の壁/Wall of Bone》を出すことしかできない。その間、池田は《風のドレイク/Wind Drake》を追加して、着々と栗原のライフを攻め立てる。
苦しい栗原も、先ほどは見えなかった《山/Mountain》をプレイし、じっと耐え忍ぶ。
そして、「『暗殺者』は除去できないですよね」と言いながら、本職の《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》を送り込み、場の立て直しを図る。さらに、《魔性の教示者/Diabolic Tutor》で大至急《堕落の触手/Tendrils of Corruption》を用意。
《ロウクスの長槍の達人/Rhox Pikemaster》も加えた池田は、対処策が仕事を始める前に決めるべく、ただひとり残る《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》に《平和な心/Pacifism》をプレイし、一気に攻撃して決めようと試みた。
だが、残る2マナから飛んできたのは《無秩序の点火/Ignite Disorder》。
ですよね。
そんな表情で、火力を浴びた《風のドレイク/Wind Drake》と《嵐前線のペガサス/Stormfront Pegasus》を、さらに《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》の標的となった《ロウクスの長槍の達人/Rhox Pikemaster》を墓地に置く。
渾身の一撃は、ライフを削りきるには至らない。
ピンチの後にチャンスあり、とはよく聞く言葉。栗原は徐々に戦線を盛り返し、盤面を掌握していく。
飛行クリーチャーを引けずとも、除去した《風のドレイク/Wind Drake》を《墓場からの復活/Rise from the Grave》で釣り上げて均衡を保ち、《ゾンビの大巨人/Zombie Goliath》が攻撃を始めた。優勝へのカウントダウンが始まる。
しかし、カウントダウンを始めていたのは、栗原だけではなかった
池田も《魂の管理人/Soul Warden》で得たライフの余裕で、攻撃を甘んじて受けつつチャンスをうかがう。壊れかけた場を、少しずつ組み立て直す。池田の擁するクリーチャーの大半は飛行を持っている。
そして、攻撃が通れば勝ち、という場面に再度、たどり着いた。
池田の手から放たれたのは、《破門/Excommunicate》。
《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》が場を離れると、十分な量の攻撃クリーチャーを止める手段は、栗原に残っていなかった。
池田 1-1 栗原
Game 3

泣いても笑っても最後、天王山のゲームは、互いにマリガンなく始まった。
栗原の《血の署名/Sign in Blood》がファーストアクション。そして《嵐前線のペガサス/Stormfront Pegasus》に対して栗原がプレイしたのは、第3ターンの《凄腕の暗殺者/Royal Assassin》!
池田は静かに《風のドレイク/Wind Drake》を追加。
栗原は《出征路のグール/Warpath Ghoul》を攻撃に向かわせ、《嵐前線のペガサス/Stormfront Pegasus》と相打ちになったこれを《グレイブディガー/Gravedigger》で拾う、という攻撃的な動き。
しかし、池田の《白騎士/White Knight》が場に降り立った。
この場面で、攻守ともに回答になりえるカード。ため息に似た音が流れる。
攻撃に回れなくなった栗原は、先を見据えてクリーチャーを並べるのみ。
池田は《白騎士/White Knight》に守りを任せながら、《物知りフクロウ/Sage Owl》で見つけた《グリフィンの歩哨/Griffin Sentinel》で攻撃を開始。栗原のライフがわずかずつ、減り始める。
ライフの動きは少ないのに、ふたりが対峙するテーブルが、緊張感を帯び始める。
有効なカードを引けない栗原に、池田は慎重に攻撃を続ける。
一時は手札が8枚になり《ロウクスの長槍の達人/Rhox Pikemaster》を捨てても、対処用にマナを残し続ける。
そして土地が並び始め、《幻影の召使い/Illusionary Servant》を引き当てるとこれに守りを任せ、ついに《白騎士/White Knight》が攻撃に回りだした。
静かに、だが確実に栗原のライフが減っていく。
勝利への道は、決して平坦なものではない。それは細く、長い道のり。
確かに、栗原が《白騎士/White Knight》に対処できるカードは限られているだろう。それでも、《無秩序の点火/Ignite Disorder》もある。他に、目にしていないカードがあるかもしれない。
その選択肢を常に考えて、池田は歩を進める。
準々決勝・準決勝で見せた勢いとは全く別のものだった。むしろ、それが本来の姿だった。
劇的な勝利は、そこにはない。
しかし着実に、表情を変えず、一歩ずつ勝利に向かう姿は、彼が10年以上にもわたって積み重ねてきた、時間の重みを感じさせるもの。
ついに、栗原が投了の意思を示すべく、右手を差し出す。

それまで、ゲーム中はほとんど表情を崩さなかった池田が、不意に相好を崩し、

喜びに天を仰いだ!
池田 2-1 栗原
継続は、力なり。
表彰式の席上、「この2日で一番活躍したカードは何ですか」という問いに、池田は迷わず
池田 「《白騎士/White Knight》です」
と答えた。
マジックの黎明期から、白のクリーチャーを象徴してきたカードではあるが、近年は活躍の場を得られず、しばらく姿を消していた。
レギオン前後しか知らない方は、《白騎士/White Knight》が2日間のグランプリを象徴するなんて、と思うかもしれない。
さらに以前を知っている方は、世界選手権で活躍したカードが復活!と思うかもしれない。
新たなカードが現れ、どれだけ時間が流れても、変わらないものがあり、それぞれの人にいろいろな気持ちを思い起こさせる。
マジックを知らないあなたへ。マジックを始めるのは簡単だ。少し覚えることもあるけれど、勇気を持って踏み出してみれば、きっと楽しい世界が待っている。
マジックから少し離れているあなたへ。《稲妻/Lightning Bolt》、《惑乱の死霊/Hypnotic Specter》、そして《白騎士/White Knight》、マジックを始めたころ、あなたの心をワクワクさせたカードがまた大活躍を始めている。ぜひ手にとって、夢中で楽しんだ感覚を思い出してほしい。
そして、マジックを今も楽しみ続けているあなたへ。あなたのおかげで、マジックは今も最高のゲームであり続けている。でもマジックは簡単ではない。単純な要素でさえ、組み合わせれば新たな戦略が生まれる。考えて、工夫して、奥の深さと勝負の緊張感を味わえるあなたは、きっと楽しい時間を過ごし続けられる。
次のグランプリは、10月31日-11月1日に北九州市で開催される。本大会のチャンピオン・池田のお膝元でもある福岡県で、いったいどんなマジックが待っているだろうか?

勝つ喜びも、負ける悔しさも、ここに。
ショップで、大会で、プレミアイベントで。
マジック:ザ・ギャザリングは、いつもあなたの挑戦を、待っています。
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